虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

天然要塞



「タビビト、お前凄い!」

「いえいえ、それ程でも」

「みんな、タビビト、歓迎」

「え? いいんですか?」

「ああ、ぜひ来てくれ」

 食べ物はやはり、コミュニケーション方法として使えました。
 彼ら――古代人(仮)は、俺がこの場で調理した箱庭の魔物を食べ、俺を何かに歓迎してくれているようだ。
 丸焼きでも構わなかったのだが、現代人としての意地を見せて調味料を幾つか使った料理となりました。

 初めは、俺が入れた調味料を変な物と疑っていたが、食いしん坊っぽい奴が物凄い勢いで食べているのを見て、他の奴らもバクバクと食べていった。

「タビビト凄い」「タビビト美味い」

 などの意見が出ていた。
 ……二つ目、俺が美味いみたいなんだが。



 それから、俺は古代人に連れられて移動を行った。
 今更箱庭の区画を詳しく説明すると、九等分にしたときの真ん中の上に居たが、現在はその左側に移動中と言ったところだな。

「なあ、お前たちっていつ頃からここに住んでいるか、分かるか?」

「タビビトの言うこと、よく分からない。お前は、生きるときにそんなことを気にしているのか?」

「……そうだな。悪い」

 彼らも、この箱庭の中で精一杯生きているのだろう。
 ただでさえ、人間という虚弱スペックの生き物が、恐竜などというハイスペックな魔物と同じ場所で生きていかねばならないのだ。
 人生に道楽を混ぜても生きていける現代日本とは異なる、強い意志と覚悟が生き抜くために必要なのだろう。

 まあ、彼らの中にもゆとってる奴もいるだろうが……そういう奴は、直ぐに死んで逝きそうだよな。



「タビビト、あれを見ろ!」

「……えぇえええええええええっ!」

 どこかバラエティ番組のような驚きぶりなのだが、それぐらい驚きだったのだ。
 彼らの里を一言で言うならば――天然の要塞、だろうか。
 植物と地形を魔法で加工したのだろうか、本来の自然ではありえない形で要塞が形成されていた。
 それでも緑の成長を弄ったり、地面をずらしたりしているだけなので、ある意味で天然の要塞になるのだろう……そう思った。

 ドローンで分からなかったのは、上から見ればただの森のように見えていたからだ。
 空から襲ってくる魔物への対策だろう。

「あ、あれは一体……」

「ふふんっ。それはだな――」

 要は、俺の予想通りだった。
 土魔法と木魔法を使い、要塞を築き上げたとのことだ。
 箱庭に住む古代人は、エルフ専用の魔法であった木魔法を使えるようだ。
 これも人間の進化の可能性……といったものだろうか。

 俺はこれから、彼らによるもてなし――の前に、代表とやらに挨拶するらしい。
 こういうとき、やっぱり会うのは老人ってのがテンプレだよな。
 この箱庭に関する詳しいことを、知っていると良いんだが……。


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