虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

貢献イベント その25



「……えっと、どうしてこんなことになっているんでしょうか?」

「必要のない質問をする意味は、無いと思うのだがね」
「そろそろ覚悟を決めろよ」

「ま、まだ心の準備が……」

 さて、状況を説明しよう。
 魔物を掃討したことによって生まれた広い荒地帯。
 そんな所でエルフの隠れ里の戦士たちが、俺と里長兄弟を取り囲むように円を描いて立ち並んでいる。
 俺と相対するように立っている二人は、何故か武器を俺に向けるようにして構えを取っている。

 ……まあ、理由は分かっているさ。
 里長兄弟を無理矢理眠らせて放置し、魔物たちと里にそれぞれ結界を張って、結局俺独りで全てを終わらせたからだ。

 少なくとも日々の間に、里長(弟)の方が戦闘狂であることは把握している。
 だからこそ、魔物の報告をした時も小さく口角を上げてたんだよな~。

 それでも、俺の目的のためには彼にも眠ってもらわないとならなかった。

 ――そして、折角里に戻った俺はUターンさせられたんだよ。
 ただい、と言った瞬間にラリアットの要領で吹っ飛ばされ、それ以降は首根っこを捕まれてこの場所まで引き摺られた。
 俺の悲鳴はまー! だったよ。

「準備はいいよな? お前は散々魔物と遊び尽くしたんだからよ。とりあえず十回は殺して、体を温めるぞ」

 既に俺を殺しまくっているはずだが……どうやら、まだ物足りないようです。

「…………や、優しくしてくださいね」

「ええ、優しくしますよ――貴方が弟を満足させましたら」

 それ、もう無理ゲー!

 放たれた威圧で一度死にながら、俺はそう心の中でツッコんだ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 そして数日後、俺は里の入り口にいた。

「……今日で、私は帰ります。短い間でしたが、お世話になりました!」

 既にイベント終了の時刻は24時間を切っており、何もせずともこのままではこのエリアから強制的に排除されてしまう。

 俺が突然消えても、もちろんエルフの隠れ里は回っていく。
 それでもさよならだけは言っておきたかったので、こうして別れを告げるのだ。

 ――――――――

 ……でも、まさか誰も送迎のために集まってくれないとは思っていもいなかった。
 里はいつもの賑わいを見せているが、俺の元にそんなものは何もない。
 ただ、俺のセリフが空気に流されて何処かに飛んでいくだけだ。

「……さて、帰るか」

 心が折れそうになるが、それでも諦めずに足を動かしていく。
 森を抜けるための方法は、この滞在期間中に習っていた。
 なので案内人も必要なく、本当に独りでのご帰還ですよ……ハァ。

 森を歩き、霧を抜け、スリュと出会った湖に出る――。

「――ッ! ……ハハッ。全く、こんなサプライズをしてるなんてな」

 湖に広がる光景は、行きに来た時と全く異なるが目立っていた。

 え? それが一体何かって?

「答えは『ワァアアアアア!』……みんな、本当にありがとう!!」

 ――俺の応えが答えだよ。


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