虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

再会



『騎士王』との邂逅からしばらくして、続いていた平穏な日々に再び危機が訪れた。

「久しぶりだな、『生者』よ」

「……ええ、本当に」

 いつものように草原に向けて移動をしていると、『闘仙』さんと出会ってしまう。
 他の人たちには見えていないのか、誰も注目していない。
 認識阻害の魔道具も、あるにはあるしな。

「早速だが、勝負をしないか?」

「いえ、遠慮しておきます」

「……そうか」

 そう言うと、『闘仙』さんは少し残念そうに顔を落として立ち去っていった。
 ……何がしたかったんだろうか。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「今度は貴方ですか……」

「……おや、既に『闘仙』が動いておったようじゃのう?」

「はい。いきなり勝負を挑んだあと、断ったらしょんぼりして帰っていきました」

「ふぉっふぉっふぉ。やはりそうなるのか。儂もそうしようと考えていたのじゃがな」

「……いや、本当に何がしたいんですか」

 今度の客は『龍王』さんだ。
 草原での狩りが一段落ついたそのとき、どこからともなく現れた。
 いや、この完璧なタイミングからして、だいぶ前から狙ってだろう。

「いやはや、『騎士王』がな――」

「ちょ、ちょっと待ってください」

「おや、どうしたのかのぅ?」

「…………これでよし。それでは、続けてください」

「……なんだか嫌な予感がする物じゃな。奴が暇を潰していた儂らに言ったのじゃ、『そうだ、遊びに行こう』とな」

「――起動ファイヤーッ!」

 用意していた装置を起動させ、その中に格納されていた兵器が飛び出していく。
 ゴゴゴッと白い煙を吐き出しながら、それはここでは無いどこかへと向かい続けた。

「……のぅ、何をしたのじゃ?」

「本当に、訊きたいですか?」

「……いや、止めておこう。触らぬ神に祟りなしじゃしな」

 そう言って『龍王』さんは、何も聞かずにこの場から去っていった。
 やれやれ、結局犯人はアイツだったのか。
 ――用意しておいて正解だったよ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 そして数日が過ぎ、焼き串を食べているとどこからか、地面を揺るがす音を引き下げて何かが向かって来る。

「『生者』ーーッ!!」

 嗚呼、もう分かったわ。
 全く、自業自得だと言うのにな。

「ほらほら、周りの迷惑になる。新作の焼き串があるから食べてみろ」

「『生じゅぐっ! ……んむ、美味いな」

「タレをジュレ状にしてみたんだ。兎肉の食感も残せるし、見た目も良いだろう?」

「そう、だな……じゃない! 『生者』、どうしてあんな物を!!」

「あれだって、俺は『騎士王』のためを思ってやったんだぞ」

「……そのせいで、私はこの街に入るのに苦労したんだぞ」

 既に邂逅時に特定した『騎士王』の魔力、それに反応して作動する結界を街に展開したのだ。
 あのときに使ったのは、それの下準備をするための装置だな。
 しかし、あれにはかなりの魔力を注ぎ込んだはずなんだけどな……さすが『超越者』。

「ほら、お詫びに五本まで奢るからさ、あんまり怒らないでくれ」

「……むぅ。今回だけだぞ」

 試作で作った『龍王』さんの結界、その模造品は失敗だったようだ。
 もっと強化しないとな……。


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