虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

植樹



「んじゃあ、早速始めるか」

 ホ°イホ°イカフ°セルを再び取り出し、ある生産用のアイテムを準備していく。
 カチッとスイッチを押し、カプセルを地面にホイッと投げる。
 何だか良く分からないが煙が、モクモクと周囲に広がる。
 煙が消えたときには、アタッシュケースのような物がそこには置かれていた……やっぱり、これがカッコイイよな。

「はい、植物栽培セット~(濁声)!」

 アタッシュケースを開くと、そこには幾つかの薬品が入った試験官が仕舞われている。
 これは、最初の拠点で植物を栽培するために作ったアイテムである。
 どこかの某青狸級に様々な状況に対応できるようにしており、これがあるだけでほぼ全ての植物の栽培に成功できるぞ。

「よし、:DIY:発動!」

 まあ、いつも通りの怪しい言葉の羅列が流れ、体に充実感が訪れる。
 この状態なら、称号の効果も十全に使えるな……攻撃とかは、全くできないけど。

「来い、とにかく硬いスコップ!」

 ポンッと軽快な音が鳴り響き、俺の注文通りのスコップが出現する。
 それを使って、適度な間隔で穴をせっせと掘っていく。
 大き過ぎず小さ過ぎず……まあ、丸形? 楕円型? に掘っていったぞ。

「続いて……どう森風のフルーツの木!」

 ただ桃や林檎、葡萄といったフルーツが、そのままこの場に出現する。
 ……いや、確かに21世紀内に登場していたけどさ、俺もまさかこれが出現するとは、最初は思っても無かったからな。
 最初の拠点でこれは既に実験済みで、今ではフルーツ盛りをお中元に出せるぐらいには木が育っているぞ。

 それらのフルーツを地面に埋めて、土を被せる。
 すると、ピョコンという擬音が付きそうな程突然、芽が地面から生えてくる。
 うん、毎度のことだが魔法がある世界って凄いよな。
 まさかこんな細かい部分まで、しっかりと再現してくれるとは。

「さて、果物はこれぐらいにして……次は普通のだな」

 今度はネットで調べておいた、様々な種類の樹木を出現させる。
 様々な気候に合わせた木々を出したが、魔力のある世界ではどう育つのかが気になる。
 初期地点では環境を調整する施設の中で育てているので、これらは自然の中に置いておいた場合として、調べようというわけだ。

「調べたいのは成長速度と魔力による変質、あとは……本当に育つかだな」

 そもそも、造り上げた施設すら:DIY:が密接に関わっている物だ。
 何か特殊な効果があって、植物が育ったのかも知れない。
 そこら辺を、今の内に理解しておいた方がいいかもな。

 そんなことを考えながら、出現させたジョウロで水をやっていった。


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