虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
海再生プロジェクト 直前
――こうしてこの世界の住民による、海を再生するプロジェクトが始まった。
・総監督:ツクル
・現場監督:ツクル
・作業員:ツクル
全てツクルPによって行われるのだが、現実では一人でできないことも、ゲームの世界でならば簡単にできる……と思う。
まあ、まずはこの世界の海の大きさが分からないと始められない。
ここは原始の星では無いので、ある程度地形は整っている。
海の範囲内でのみ海に関する事象を起こさないと、地上が大変なことになってしまう。
なので、大気中に広がっている魔力と俺の魔力で海を囲ってから作業は始まる。
「よし、それまでは待機にするか」
再びドローンを飛ばし、海限定での測定を行っていく。
海の土は回収済みだし、解析も何回かしている。
素人なので良くは分からないが、今までの場所とは違う成分なのはそれでも分かった。
ドローンはただひたすら真っ直ぐ飛び、新しく地図を書き足す。
海の終点らしき部分に到達すれば、一旦解析をしてから、そこに結界生成の魔道具を設置する。
そうすれば、いずれは海のラインに沿って結界が張れるんだ。
それまでに、色々と作らないとなー。
叡智のスキルや機械を使い、海を蘇らせる方法を調べていった。
「それで、結局どうなったんだ?」
「まだまだ海の調査中だよ。俺の居る世界って結構広いみたいだ。未だに俺以外に生命もプレイヤーも見ていないけどな」
「……本当に、何処なんだよ」
拓真から連絡があり、ある日外出した。
待ち合わせ場所はとある公園。
子供たちから見れば、おっさん二人がベンチで仲良くお話し中、みたいに見えてしまうのだろうか。
色んな情報を交換していたのだが、今の話題は俺の海再生プロジェクトに関してだ。
あれからあんまり時間は経っていないのだが、調査以外のことは大体準備できている。
「というか、あの世界は天動説なのか? それなら果てがある分楽なんだよな~。それだと世界の法則を物理法則的なものを調べる必要もありそうだが」
「ファンタジー設定乙だな。どのプレイヤーも世界の果てなんてまだ知らないし、地図も見たことねぇよ。お前だけだぞ? そんな文明チートを起こした奴は」
「いやいや、俺のはスキルのお蔭だしな。普通の奴ならもう魔法の銃ぐらい作れたんじゃないか? ほら、職人のNPCに弟子入りしたり、こっちの技術を応用したりでさ」
「……んなわけないだろ。まだ素材の方で四苦八苦してるのが現状だ。大体、弟子入りをしたプレイヤーはまだ下の下だった話だし、独学でやろうとした奴も失敗の反動で死に戻りした、なんて話があったぞ」
俺の質問に、拓真は物凄く冷めた目で回答する。
え? そういうものか?
魔法銃はともかく、ビームのサーベルぐらいなら、それなりに完成度の高いヤツができたんだが……。
「俺の所なんて、最初はただただ黒い地面しか存在していなかったぞ。だから色々と手を尽くして、どうにか植物が生える環境を整えるのだけは成功してやっとこさだよ」
「そういうの、世の中ではチートって言うんだよ。どうやったら素材が無いのに植物が生えてくるんだよ」
「えっと……スキル?」
「やっぱチートじゃねぇか!」
その叫び声にビックリした子供たちに謝ってから、その後も情報を交換していった。
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