第三百三十四話血の匂い

8章復活儀式

白い光がシグレの体を包み、浮遊感とともに空間を跳躍する。
どこともわからない異空間、漂流した船のように常に座標の変化する大図書館にたどり着いたシグレは、驚愕した。
閑散としている？
是だ。もとより此処は主人の大賢者以外はその旧友と自分シグレしかしらないのだから、これの大図書館となればその程度の人間が少し喋ったところで静寂を打ち破れるはずがない。
驚愕などしようはずもない。
静寂に包まれ、いつものように動かずにただ読まれるのを待つだけの本たちが乱れずの本棚の中に収納されている。

シグレを最も驚愕おどかせたのは、その空気である。

「これは……」

血の匂い・・・・。

瘴気とともに鮮血の匂いが図書館に広がっていた。
それを認識した瞬間シグレは駆け出し、立ち並ぶ本棚の間を駆け抜けて唯一この空間に存在する生命の場所まで一気に駆けてゆく。
生命反応は一つのみ、体温は平均より少し低い程度、魔法を使える人種であり、モンスターではない。
身長は140cmほど、つまりはセフィロやアリスと同程度であり、失血が激しいようである。
セフィロが常時施している対感知結界のせいで此処までしか感知できないが、位置と静音が確認できただけでも僥倖である。

『さすがは大賢者だな、契約者の能力ちからを一部だとしても阻害するか』
『しかし………なにがあったんだ？』
「とりあえず現場を確認して見ないことには何も言えません。急ぎましょう」

そうしてシグレはさらに加速する。

『転移はしないのか？契約者よ』

「ニャルラトホテプのようなものが敵として存在していた場合、転移した瞬間に撃ち抜かれるう可能性があります。やつなら私の感知を潜り抜けることも容易でしょうしね」

それに、死んでから少し経った程度なら問題なく蘇生が可能だ。
そう言外に告げたシグレは疾走する。
生命反応の方向に進むごとに血液の匂いはより濃く、強く臭っている。
人の血の匂い。
真っ赤な絨毯を蹴りながら、書架の森をかき分けて進む。

「師匠！」

そして、到着したのは実験室、そこにいたのは、血まみれで横たわる・・・・・・・・・セフィロだった・・・・・・・・・。

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