邪神と一緒にVRMMO 〜邪神と自由に生きていく〜
第二百九十六話 星の剣
8章 復活儀式
「なんですかね……これ」
『ヤバいな。ここからでもよく分かる』
目の前に広がるは見まごう事なき黄金のみ。
敵と思わしき生物の姿は視覚的にも魔法的にも存在しない。
だが、一人と三柱は明瞭に、そして確実にこの先にいる守護者の強さを判断していた。
それ即ち____
((((少しでも気を抜いたら、死ぬ))))
会敵すらしていないこの状況ですら神々にそう感じさせる殺気。
美しき黄金の野原とは裏腹に、周辺は剣のような鋭い空気に包まれていた。
従魔たちは一様にして息を呑む。
緊張と警戒の糸が周囲に対し常時最大限に、それこそ千切れそうな程に張り巡らされ、外敵の接近を警戒していた。
「……」
ジリジリと、シグレは黄金の野を進んでいく。
何かを恐れるかのように、あるいは、何かを探すかのように静かに、ゆっくりと黄金の野を歩いていく。
もちろん足音や微かな衣擦れ、呼吸の音、それに加えて体臭や気配すら消し去り、さらに魔法とスキルによる最大限の隠形をすることでシグレたちは限りなく完璧に近い隠密行動を実現していた。
「ッ!回避!」
しかし、それでも見つかる時は見つかってしまう。
いきなり現れた白銀の剣身に反射する陽光を瞬間的に知覚したシグレは、すぐさま全員に回避命令を出すが、横なぎに切り払われた大剣の斬撃はシグレの胸を掠め、紫紺のローブの一部を切り裂いた。
「……これは驚いた。まさか壊れないものを切るとは」
『星の剣たる不朽天剣と悪龍の呪いの力に過ぎん。こんなものは児戯に等しいさ』
「それを児戯と言ったらなにが戦いになるんですか……ねっ!」
純粋な賛美を込めてシグレがそう言うと、敵は大剣を振り払う。
すると大剣にまとわりついていた粘液が周囲に弾け飛び、消滅した。
「なんで表面が溶けた程度なんですかねぇ……」
メルの粘液ですら軽く表面を溶かし、斬れ味を落とすのみである。
『いいや、誇って良いとも。我が神剣不朽天剣は龍殺しの特性以前に悠久の時をもって世界の地の底において鍛造された言わば世界全ての力の結晶。その剣身にダメージを負わせるなど、神器でも難しいだろう』
「原典の神話と違う気がするんですがねぇ……」 
『……だろうな。奴は、既に理外の存在だ』
ひとり愚痴ったシグレに、ヨグ=ソトースは返答する。
目の前の英雄は、静かに佇んでいた。
 
誤字脱字や作品への意見等ございましたらコメントしていただければ幸いです
(誤字脱字がありましたら、何話かを明記した上で修正点をコメントしていただければ幸いです)
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緊張と警戒の糸が周囲に対し常時最大限に、それこそ千切れそうな程に張り巡らされ、外敵の接近を警戒していた。
「……」
ジリジリと、シグレは黄金の野を進んでいく。
何かを恐れるかのように、あるいは、何かを探すかのように静かに、ゆっくりと黄金の野を歩いていく。
もちろん足音や微かな衣擦れ、呼吸の音、それに加えて体臭や気配すら消し去り、さらに魔法とスキルによる最大限の隠形をすることでシグレたちは限りなく完璧に近い隠密行動を実現していた。
「ッ!回避!」
しかし、それでも見つかる時は見つかってしまう。
いきなり現れた白銀の剣身に反射する陽光を瞬間的に知覚したシグレは、すぐさま全員に回避命令を出すが、横なぎに切り払われた大剣の斬撃はシグレの胸を掠め、紫紺のローブの一部を切り裂いた。
「……これは驚いた。まさか壊れないものを切るとは」
『星の剣たる不朽天剣と悪龍の呪いの力に過ぎん。こんなものは児戯に等しいさ』
「それを児戯と言ったらなにが戦いになるんですか……ねっ!」
純粋な賛美を込めてシグレがそう言うと、敵は大剣を振り払う。
すると大剣にまとわりついていた粘液が周囲に弾け飛び、消滅した。
「なんで表面が溶けた程度なんですかねぇ……」
メルの粘液ですら軽く表面を溶かし、斬れ味を落とすのみである。
『いいや、誇って良いとも。我が神剣不朽天剣は龍殺しの特性以前に悠久の時をもって世界の地の底において鍛造された言わば世界全ての力の結晶。その剣身にダメージを負わせるなど、神器でも難しいだろう』
「原典の神話と違う気がするんですがねぇ……」 
『……だろうな。奴は、既に理外の存在だ』
ひとり愚痴ったシグレに、ヨグ=ソトースは返答する。
目の前の英雄は、静かに佇んでいた。
 
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