邪神と一緒にVRMMO 〜邪神と自由に生きていく〜

クロシヲ

第百三十九話 救済の聖焔

6章 玩具は盤上で踊る


「フェンリル様!」

MPとHPを濃縮ポーションで無理矢理回復させつつシグレはフェンリルに迫る。
素材が足りない状況で無理矢理錬金したため、後にHPとMPを一定時間回復できなくなるが関係ない

光に包まれシルが現れ、嗚咽とともに母へと抱きつく。

幼い子供の鳴き声を無視して、シグレは懸命に治癒魔法をフェンリルへと使う。

魔法全強化マジック・フル・ブースト
偽・黄金の林檎イミテート・ゴールデンアップル!」

シグレの使える最大の治癒魔法。
意識が遠のき、視界がぼやけていく。 
本来ならば不死を与える金の林檎がフェンリルに吸い込まれ光を放つが、体を快癒させるはずのその暖かな光は本来の効果をもたらさず、数秒後に儚く消えた。
倒れそうになる我が身を魔法とポーションで無理矢理治し、シグレはフェンリルを助けんと尽力する。

魔法全強化マジック・フル・ブースト偽・神々の神酒イミテート・ソーマ!」

不死の神酒はやはり何の効果も表さずに四散し、フェンリルの体はやはり黒々とした炭化したままである。

魔法全強化マジック・フル・ブースト全権移譲トランスファー・オール

HPとMP、そして状態異常をすべて移し替える魔法を使ってもフェンリルに変化はない。

「治れ!治れよ!治って…くださいよ!」

怒りのままに振るった骨刀が壁をバターのように切り裂き、主人らしからぬ行動をシルは意にも介さず母の元ですすり泣いている。

「やめな…」

荒れ狂うシグレにそんな声がかけられる。

小さくか細い、吹けば飛んでしまいそうな、でもしっかりとした意思を感じる。そんな声が二人の時間を凍らせた。

「私は…もう…長くない…」

「いえ!私が…あなたを…貴方を救って見せます!」

「嘘はやめな…現実を理解できないわけじゃないだろう…?
私は破壊の杖ヴァナルガンドの代償で消滅する。これに間違いはないんだ…
救うというのなら、今私を殺して、私を継いでおくれ。それが…私の今の願いだよ…」

そう言いながらもフェンリルの体は光の粒子へと解けて消えていく。

「さあ、早く…」

優しく、どこか諭すようにいうフェンリルに、シルが滂沱の涙を流しつつ泣きついた。

「嫌だよ!行かないでお母さん!行かないで!」

「お前はもう、旅立つ時さ」

そういうとフェンリルは目を瞑り、じっと横たわったままでシグレにその言葉を告げる。

「さあ、私を殺してくれ」

「さようなら…」

俯くシグレが貪欲の業火でフェンリルを焼く。

地獄の業火ではあるが、フェンリルにとっては救済の聖焔であろう。

自らを、罪ごと焼き払ってくれるのだから。

(その子を、頼んだよ…)

燃えていくフェンリルが泣きじゃくるシルを見て、そういったような気がした。


はい、フェンリル死亡です

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