紅鯨

ノベルバユーザー162616

完成度

紅鯨は夏の間路上漫才を毎日駅前で続けた。とにかく晴れの日でも雨でも天候が酷くても、毎日やると決めていた。とにかく数をこなさないとネタの、漫才の完成度とお客さんの笑い、ここは絶対ウケてくれる。でも、ここは日によってウケる日とめっちゃスベる箇所がある。などなど研究しながら紅鯨は路上漫才をやりながら完成度を高めていった。手塚とマリはこれだけの人が通る中での駅前でたまに人が立ち止まってくれてのあの笑いの感じでは到底爆笑漫才コンクールの決勝に出るなんてレベルが低すぎる、と手塚はお笑いが大好きがゆえにそう分析していた。マリは素人ながらにもこのテンポが良くない漫才ではダメだと思っていた。「完成度がダメだ。」
二人が思っていたことだった。そんなことを思いながら自動販売機に手塚は行きオレンジジュースを買った。
お金を入れてボタンを押してジュースが落ちてきてそれを取ろうとした瞬間、一人の男が手塚に「しょーもな!お前らのままごと漫才なんかやるなよ!」あっけにとられていた手塚。その男はかつて伝説のピン芸人ドラティスさんである。手塚は動揺のあまりオレンジジュースのことは忘れてドラティスさんにいろいろ訊いてみたかった事を頭に巡らせていた。

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