魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第117陣闇の胎動
全身が痛い。落ちた衝撃で何本か骨が折れてしまったのだろうか。完全に落下する直前に、魔法で少しでも衝撃を和らげたものの、完全に失くすということはできなかったらしい。
「怒りになんか任せるなんて、無様ですね」
声が聞こえる。マルガーテの声だ。俺は薄く目を開けて彼女を見る。
「あれだけの高さから落ちておきながら、まだ意識があるとは予想外ですね。ここら辺で殺しておきましょうか」
意識が朦朧とする中で、心臓に向けて剣を突き立てるマルガーテ。身体を未だに動かせない俺はそれに抗うすべがない。
(ちくしょう……リアラ、桜……俺は……)
二人の為に何もできないのか。
「今度こそさようなら」
そして刃は俺の心臓を無情にも貫かれたと思ったその瞬間、
「私の背後に立つ愚かなあなたは何者ですか」
マルガーテがその動きを止めた。と同時に、別の声がした
。
「ったく、久しぶりに顔を見たと思ったら、ボロボロじゃねえか」
マルガーテのまさに背後、そこには久しぶりに見る顔がいた。
「シンゲン……?」
そう、その人物は何度か城下町で会ったことがある武田信玄、そのものだった。
「よう、元気にしてたかヒスイ」
「元気そうに見えるか?」
「全くその通りだな」
シンゲンはマルガーテに刃を突き立てたまま動かない。その為マルガーテもへたに俺に手を出せずにいた。
「あなたは彼の仲間なんですか?」
「仲間ではないな。だけが、ある人物に頼まれて助けに来たって言った方が正解だろ」
「つまり私の敵ですね。ならばあなたも」
「させないぞマルガーテ!」
シンゲンのおかげでマルガーテにできた一瞬の隙を見逃さなかった俺は、素手でありながらもマルガーテに一撃を加える。
「なっ、ろくに動けないくせにどこにそんな力が」
一撃を食らったマルガーテは、痛みを感じてはいないものの俺が動き出したことに心底驚いていた。
「シンゲンのおかげで体力を回復させる時間が出来たんだよ。おかげでお前と戦えるくらいの力は残っている」
「何故です。お前にはそんな力などなかったはずでは」
「お前に殺されたリアラの力だよこれは」
「あの治癒術師の……何故それを」
「お前には分からないんだろうな、本当の力とは何なのかを」
ヒデヨシが受け継いだように、俺も僅かではありながらもその力を受け継いでいた。彼女が俺に残してくれた想いの力、絶対に無駄にはできない。
「シンゲン、戦ってくれるか」
「指図されるのは嫌いだが、あいつと約束した以上はお前に協力するぞヒスイ」
「ありがとう。さあ、マルガーテ、今度こそ決着つけるぞ!」
「決着を……? そんなのとっくについているじゃないですか」
「何をふざけたことを……」
と言った時には既に遅かった。彼女が俺に仕掛けた本当の罠が動き出したのだ。急に胸が何かに締め付けられるような感覚に陥り、俺はその場に倒れ込んでしまう。
「いつしか私は言ったはずです。あなたには私を倒せないと。その理由をあなたは考えましたか?」
「ヒスイ? おい、どうした」
鼓動が早くなる。まるで別の血が俺の中に流れ出しているようなそんな感じ。
(何だよこれは……)
「随分と動き出すのに時間がかかってしまいましたが、ようやくその時が来たようですね」
「マルガーテ、お前……」
「私とあなたは何度も戦っています。その間にあなたの身体を侵食することなんて容易い御用です。それに私があなたを捕まえた時に、何もしなかったとでも思いましたか」
身体中をどす黒い何かが侵食していく。俺はそれに抗うことができずに……。
「お、おいヒスイ」
「我、マルガーテ様に仕える者」
飲まれてしまった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「ヒスイ様?」
サクラさんが亡くなってしまった事で、ヒスイ様はしばらく目を覚ましいていなかった。けど、サクラさんが亡くなった翌日、部屋を見に行くと彼の姿が見当たらなくなっていた。
「ノブナガ様、大変です」
彼の姿を探していると、ヒデヨシさんが何かを急いだかのように私の部屋に入ってきた。
「こちらも大変な事があったんですヒデヨシさん。ヒスイ様が」
「安土城近くの森にて、大怪我を負った武田信玄が発見されました」
「え? どうして彼女がそんなところで」
「ともかく急いで来てください」
ヒスイ様の方も気になりながらも、シンゲンが運び込まれた部屋へと急いで駆けつけた。
「シンゲン!」
部屋に入ると、既に治療は施し終えて布団で寝ているシンゲンの姿が。敵とはいえ、大怪我を負ったとならばやはり心配になってしまった。しかも近くで戦があったという報告もない上、他の武田の軍勢もない。
それはつまり、戦以外の誰かによって、恐らくマルガーテの手によって怪我したのではないかと考えられた。
「まさかあんたに助けられるなんてな、ノブナガ」
「何があったんですか? 私の領土で一人で入って、大怪我までするなんて」
「イエヤスに頼まれたんだよ……お前達を助けて欲しいって」
「イエヤスさんが?」
そんな話知らなかった。まさか彼女が裏でそんな事までしてくれていたなんて……。
「なあノブナガ、お前のところにヒスイって名前のやつがいたよな」
「は、はい。今はどこかへ行っちゃいましたけど」
「そのヒスイなんだけどさ、ちょっと大変な事になった」
「大変な事?」
その後シンゲンの口から、この怪我にも関連する信じられない話が語られた。
「ヒスイ様がマルガーテの手に? 嘘……ですよね?」
「残念だけど事実なんだ。ヒスイはそのマルガーテの手によって、闇に飲まれた。そして俺はヒスイにやられたんだよ……」
「そんな、そんな事って」
「怒りになんか任せるなんて、無様ですね」
声が聞こえる。マルガーテの声だ。俺は薄く目を開けて彼女を見る。
「あれだけの高さから落ちておきながら、まだ意識があるとは予想外ですね。ここら辺で殺しておきましょうか」
意識が朦朧とする中で、心臓に向けて剣を突き立てるマルガーテ。身体を未だに動かせない俺はそれに抗うすべがない。
(ちくしょう……リアラ、桜……俺は……)
二人の為に何もできないのか。
「今度こそさようなら」
そして刃は俺の心臓を無情にも貫かれたと思ったその瞬間、
「私の背後に立つ愚かなあなたは何者ですか」
マルガーテがその動きを止めた。と同時に、別の声がした
。
「ったく、久しぶりに顔を見たと思ったら、ボロボロじゃねえか」
マルガーテのまさに背後、そこには久しぶりに見る顔がいた。
「シンゲン……?」
そう、その人物は何度か城下町で会ったことがある武田信玄、そのものだった。
「よう、元気にしてたかヒスイ」
「元気そうに見えるか?」
「全くその通りだな」
シンゲンはマルガーテに刃を突き立てたまま動かない。その為マルガーテもへたに俺に手を出せずにいた。
「あなたは彼の仲間なんですか?」
「仲間ではないな。だけが、ある人物に頼まれて助けに来たって言った方が正解だろ」
「つまり私の敵ですね。ならばあなたも」
「させないぞマルガーテ!」
シンゲンのおかげでマルガーテにできた一瞬の隙を見逃さなかった俺は、素手でありながらもマルガーテに一撃を加える。
「なっ、ろくに動けないくせにどこにそんな力が」
一撃を食らったマルガーテは、痛みを感じてはいないものの俺が動き出したことに心底驚いていた。
「シンゲンのおかげで体力を回復させる時間が出来たんだよ。おかげでお前と戦えるくらいの力は残っている」
「何故です。お前にはそんな力などなかったはずでは」
「お前に殺されたリアラの力だよこれは」
「あの治癒術師の……何故それを」
「お前には分からないんだろうな、本当の力とは何なのかを」
ヒデヨシが受け継いだように、俺も僅かではありながらもその力を受け継いでいた。彼女が俺に残してくれた想いの力、絶対に無駄にはできない。
「シンゲン、戦ってくれるか」
「指図されるのは嫌いだが、あいつと約束した以上はお前に協力するぞヒスイ」
「ありがとう。さあ、マルガーテ、今度こそ決着つけるぞ!」
「決着を……? そんなのとっくについているじゃないですか」
「何をふざけたことを……」
と言った時には既に遅かった。彼女が俺に仕掛けた本当の罠が動き出したのだ。急に胸が何かに締め付けられるような感覚に陥り、俺はその場に倒れ込んでしまう。
「いつしか私は言ったはずです。あなたには私を倒せないと。その理由をあなたは考えましたか?」
「ヒスイ? おい、どうした」
鼓動が早くなる。まるで別の血が俺の中に流れ出しているようなそんな感じ。
(何だよこれは……)
「随分と動き出すのに時間がかかってしまいましたが、ようやくその時が来たようですね」
「マルガーテ、お前……」
「私とあなたは何度も戦っています。その間にあなたの身体を侵食することなんて容易い御用です。それに私があなたを捕まえた時に、何もしなかったとでも思いましたか」
身体中をどす黒い何かが侵食していく。俺はそれに抗うことができずに……。
「お、おいヒスイ」
「我、マルガーテ様に仕える者」
飲まれてしまった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「ヒスイ様?」
サクラさんが亡くなってしまった事で、ヒスイ様はしばらく目を覚ましいていなかった。けど、サクラさんが亡くなった翌日、部屋を見に行くと彼の姿が見当たらなくなっていた。
「ノブナガ様、大変です」
彼の姿を探していると、ヒデヨシさんが何かを急いだかのように私の部屋に入ってきた。
「こちらも大変な事があったんですヒデヨシさん。ヒスイ様が」
「安土城近くの森にて、大怪我を負った武田信玄が発見されました」
「え? どうして彼女がそんなところで」
「ともかく急いで来てください」
ヒスイ様の方も気になりながらも、シンゲンが運び込まれた部屋へと急いで駆けつけた。
「シンゲン!」
部屋に入ると、既に治療は施し終えて布団で寝ているシンゲンの姿が。敵とはいえ、大怪我を負ったとならばやはり心配になってしまった。しかも近くで戦があったという報告もない上、他の武田の軍勢もない。
それはつまり、戦以外の誰かによって、恐らくマルガーテの手によって怪我したのではないかと考えられた。
「まさかあんたに助けられるなんてな、ノブナガ」
「何があったんですか? 私の領土で一人で入って、大怪我までするなんて」
「イエヤスに頼まれたんだよ……お前達を助けて欲しいって」
「イエヤスさんが?」
そんな話知らなかった。まさか彼女が裏でそんな事までしてくれていたなんて……。
「なあノブナガ、お前のところにヒスイって名前のやつがいたよな」
「は、はい。今はどこかへ行っちゃいましたけど」
「そのヒスイなんだけどさ、ちょっと大変な事になった」
「大変な事?」
その後シンゲンの口から、この怪我にも関連する信じられない話が語られた。
「ヒスイ様がマルガーテの手に? 嘘……ですよね?」
「残念だけど事実なんだ。ヒスイはそのマルガーテの手によって、闇に飲まれた。そして俺はヒスイにやられたんだよ……」
「そんな、そんな事って」
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