魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第115陣桜と翡翠 前編
あの後ヒデヨシと共にノブナガさんの元へ向かい、無事立ち直れた事を説明。その間ヒデヨシは迷惑かけた事を何度も謝っていた。
「もういいですよヒデヨシさん、顔をあげてください」
「でも私ノブナガ様にもあんな事を言って……」
「私は何一つ気にしてませんよ。それよりももっと嬉しい事がありましたから」
「嬉しい事?」
「ヒデヨシさんが戻ってきてくれた事ですよ」
「あ……」
ノブナガさんの言葉に目をウルウルとさせるヒデヨシ。結構泣き虫なところがあるんだな、ヒデヨシって。
「戻ってきてくれてありがとうございます、ヒデヨシさん」
「うわぁぁん、ノブナガ様ぁ。ごめんなさぁぁい」
まるで子供のように泣くヒデヨシをノブナガさんは優しく抱きしめる。俺はそれを離れたところから眺めていた。
「お姉様、よかったです。本当にご無事で。私もどれほど心配した事か」
「お前まで泣くなよネネ」
こうしてまた一つの犠牲を払ったものの、ヒデヨシは無事に織田軍に復帰。これで今度こそ、マルガーテへの決着に向けての準備に取りかかれると思っていた。
そう、思っていたのだ。
「さく……ら?」
「ひ……すい……。よかった……来てくれ……た」
今目の前で起きているこの現実さえ目の当たりにしなければ絶対に。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
それはヒデヨシの件から二日が経った後の事だった。
「桜がいない?」
「うん。昨日の夜は見かけたんだけど今日部屋に行ってもいなくて」
「城にもいないのか?」
「うん」
ヒデヨシから桜がいない事を知らされた事から始まった。その時はたまたま見つからなかっただけだと思っていたが、それから俺も桜を見かけていないので焦り始めた。
(何だろ胸騒ぎがする)
前にも似たような事が一度あったが、今はそれ以上の嫌な予感がしていた。
「ヒスイ様、大変です! サクラさんが」
だが不運にもその嫌な予感は的中してしまう。ノブナガさんが俺を見つけると、急いで来てほしいと俺をある場所へと連れて行った。
そこにあった光景は……。
「さく……ら……?」
「ひ……すい……。よかった……来てくれ……た」
血を流しながら一本の木に打ちつけられている桜。俺はその光景に、ただただ唖然するしかない。急いで助けないといけないのに、体が動かない。
「ヒスイ様、早く助けないと!」
「あ……ぁぁ」
「ヒスイ様!」
頭が回らない。誰が何の目的でやったのか、そんな事ばかりが巡っていて、もう何が何だかわからない。
「急いで治療をしましょう! ノアさんを呼んできてください」
気づけば桜は打ちつけから外されていて、ノブナガさんが急いで桜を運ぶように指示する。
「早く……早く桜を……」
「そう思うならヒスイ様も手伝ってください!」
何度目かのノブナガさんの声でようやく俺は我に返る。
「は、はい」
いつまでも呆然としていられない。早く桜をなんとかしないと。
「ひすい……」
「な、なんだ桜。何か伝えたい事があるのか?」
「ごめんなさい私……。迷惑しか……かけて……ない」
「迷惑なんかじゃない。お前は何一つ悪くないから、絶対に死ぬな! 約束の一つくらい守れないなんて、情けないからな!」
「それ……ひすいが……言う事?」
「っ!? とにかく生きてくれ桜!」
桜を師匠がいるところまで運び、あとは全てを師匠に任せる事にした。こういう時にリアラの存在の大切さを知る事になるなんて……。
(頼むから……桜だけは……)
桜の傷はかなり深かった。だから下手をすればその命も危険だ。だから俺はただ彼女の無事を祈る事しかできなかった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
師匠が桜の治療をしている間、俺はずっと部屋の入口で彼女を見守る事にした。
「ヒッシー、大丈夫?」
一人膝を抱えて座っていると、ヒデヨシが声をかけてきてくれる。
「何とか大丈夫……だけど。今日は眠れそうにない」
「まだ夜になったばかりだから、少しは寝ないと」
「分かっているけど、怖いんだ。その間に何かあったらって思うと」
ゆっくりと眠りにつく事ができない。
「ヒッシーにとって、桜ちゃんは大切な存在なの?」
「小さい頃から一緒だったからな。桜が火事にあって両親を亡くしたって聞いた時も、すごく心配だったし。俺にとって桜は、いつでも隣にいないといけない存在なんだ」
「それはノブナガ様よりも?」
「もしかしたらそうなのかもしれない。でもそれは分からない」
ヒデヨシの質問に対して、俺はそう答えるしかなかった。桜はずっと俺にとってはかけがえのない存在で、それがいなくなるなんて考えられない。
それはノブナガさんも同じなのかもしれないけど、それと桜を比べるような事は出来ない。
「誰が……桜ちゃんをあんな目に合わせたのかな」
「間違いなく言える事は、マルガーテが絡んでいる事だと思う。それ以外は考えられない」
「もしそれが、違ったらどうする?」
「どういう意味だよ」
「マルガーテのやり方って、だいたい魔法を使われているはずだよ。でも今回の桜ちゃんは、どちらかというと刺し傷とかそういったどんな人間でもつけられるような傷だった」
「それは……そうかもしれないけど。だとしたら誰がそんな事を」
「ヒスイ、部屋に入ってください」
と考えている内に、突然師匠が部屋を出て俺を呼んできた。何か起きたのだろうか。
「どうしたんですか師匠、桜に何が……」
ヒデヨシを置いて急いで俺は部屋に入る。そこには桜が寝かされている。
「私のできる事はしました。今日の山を越えればきっと大丈夫です。ですから、その間ヒスイが見守っていてあげてください」
そう言って師匠は部屋を出て行き、俺と桜だけが部屋に残される。
「翡翠……ごめんね」
「謝るなよ……」
「もういいですよヒデヨシさん、顔をあげてください」
「でも私ノブナガ様にもあんな事を言って……」
「私は何一つ気にしてませんよ。それよりももっと嬉しい事がありましたから」
「嬉しい事?」
「ヒデヨシさんが戻ってきてくれた事ですよ」
「あ……」
ノブナガさんの言葉に目をウルウルとさせるヒデヨシ。結構泣き虫なところがあるんだな、ヒデヨシって。
「戻ってきてくれてありがとうございます、ヒデヨシさん」
「うわぁぁん、ノブナガ様ぁ。ごめんなさぁぁい」
まるで子供のように泣くヒデヨシをノブナガさんは優しく抱きしめる。俺はそれを離れたところから眺めていた。
「お姉様、よかったです。本当にご無事で。私もどれほど心配した事か」
「お前まで泣くなよネネ」
こうしてまた一つの犠牲を払ったものの、ヒデヨシは無事に織田軍に復帰。これで今度こそ、マルガーテへの決着に向けての準備に取りかかれると思っていた。
そう、思っていたのだ。
「さく……ら?」
「ひ……すい……。よかった……来てくれ……た」
今目の前で起きているこの現実さえ目の当たりにしなければ絶対に。
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それはヒデヨシの件から二日が経った後の事だった。
「桜がいない?」
「うん。昨日の夜は見かけたんだけど今日部屋に行ってもいなくて」
「城にもいないのか?」
「うん」
ヒデヨシから桜がいない事を知らされた事から始まった。その時はたまたま見つからなかっただけだと思っていたが、それから俺も桜を見かけていないので焦り始めた。
(何だろ胸騒ぎがする)
前にも似たような事が一度あったが、今はそれ以上の嫌な予感がしていた。
「ヒスイ様、大変です! サクラさんが」
だが不運にもその嫌な予感は的中してしまう。ノブナガさんが俺を見つけると、急いで来てほしいと俺をある場所へと連れて行った。
そこにあった光景は……。
「さく……ら……?」
「ひ……すい……。よかった……来てくれ……た」
血を流しながら一本の木に打ちつけられている桜。俺はその光景に、ただただ唖然するしかない。急いで助けないといけないのに、体が動かない。
「ヒスイ様、早く助けないと!」
「あ……ぁぁ」
「ヒスイ様!」
頭が回らない。誰が何の目的でやったのか、そんな事ばかりが巡っていて、もう何が何だかわからない。
「急いで治療をしましょう! ノアさんを呼んできてください」
気づけば桜は打ちつけから外されていて、ノブナガさんが急いで桜を運ぶように指示する。
「早く……早く桜を……」
「そう思うならヒスイ様も手伝ってください!」
何度目かのノブナガさんの声でようやく俺は我に返る。
「は、はい」
いつまでも呆然としていられない。早く桜をなんとかしないと。
「ひすい……」
「な、なんだ桜。何か伝えたい事があるのか?」
「ごめんなさい私……。迷惑しか……かけて……ない」
「迷惑なんかじゃない。お前は何一つ悪くないから、絶対に死ぬな! 約束の一つくらい守れないなんて、情けないからな!」
「それ……ひすいが……言う事?」
「っ!? とにかく生きてくれ桜!」
桜を師匠がいるところまで運び、あとは全てを師匠に任せる事にした。こういう時にリアラの存在の大切さを知る事になるなんて……。
(頼むから……桜だけは……)
桜の傷はかなり深かった。だから下手をすればその命も危険だ。だから俺はただ彼女の無事を祈る事しかできなかった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
師匠が桜の治療をしている間、俺はずっと部屋の入口で彼女を見守る事にした。
「ヒッシー、大丈夫?」
一人膝を抱えて座っていると、ヒデヨシが声をかけてきてくれる。
「何とか大丈夫……だけど。今日は眠れそうにない」
「まだ夜になったばかりだから、少しは寝ないと」
「分かっているけど、怖いんだ。その間に何かあったらって思うと」
ゆっくりと眠りにつく事ができない。
「ヒッシーにとって、桜ちゃんは大切な存在なの?」
「小さい頃から一緒だったからな。桜が火事にあって両親を亡くしたって聞いた時も、すごく心配だったし。俺にとって桜は、いつでも隣にいないといけない存在なんだ」
「それはノブナガ様よりも?」
「もしかしたらそうなのかもしれない。でもそれは分からない」
ヒデヨシの質問に対して、俺はそう答えるしかなかった。桜はずっと俺にとってはかけがえのない存在で、それがいなくなるなんて考えられない。
それはノブナガさんも同じなのかもしれないけど、それと桜を比べるような事は出来ない。
「誰が……桜ちゃんをあんな目に合わせたのかな」
「間違いなく言える事は、マルガーテが絡んでいる事だと思う。それ以外は考えられない」
「もしそれが、違ったらどうする?」
「どういう意味だよ」
「マルガーテのやり方って、だいたい魔法を使われているはずだよ。でも今回の桜ちゃんは、どちらかというと刺し傷とかそういったどんな人間でもつけられるような傷だった」
「それは……そうかもしれないけど。だとしたら誰がそんな事を」
「ヒスイ、部屋に入ってください」
と考えている内に、突然師匠が部屋を出て俺を呼んできた。何か起きたのだろうか。
「どうしたんですか師匠、桜に何が……」
ヒデヨシを置いて急いで俺は部屋に入る。そこには桜が寝かされている。
「私のできる事はしました。今日の山を越えればきっと大丈夫です。ですから、その間ヒスイが見守っていてあげてください」
そう言って師匠は部屋を出て行き、俺と桜だけが部屋に残される。
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「謝るなよ……」
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