魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した

りょう

第11陣焔・一の太刀

 まず先手に走ったのは俺だった。先手必勝と言わんばかりに、相手の懐に入ろうとするが、当然のように槍の突きが俺に襲いかかる。

「そんな分かりやすい攻撃じゃ、私を倒せませんよ」

「それはどうかな」

 だが俺はその突きを華麗にかわすと、その体制から一回転してその勢いを利用して敵を切りつける。

「くっ」

 当然それを相手は避けることができず、喰らってしまうが一歩引いたりでもしたのか、全く手応えのない一撃になってしまった。

「どうやら反射神経は、かなりのものみたいですね」

「褒めてくれるのはありがたいけど、まだまだこれからだからな」

 目を閉じ、精神を集中させ刀に魔力を宿す。この一撃がどれほどの威力を持ってくれるか分からない。物体に魔法をのせたことなんてないので尚更だ

(焔の太刀とでも名付けようかな)

 俺が太刀に宿したのは火属性の魔法。果たして成功するのかちょっと予想ができないけど、何とかなる。

「敵を目の前にして目を閉じるとは。私も舐められたものですね。ではこちらも遠慮なく切らさせていただきます」

 相手が動き出したのを感じる。あの長さの槍だから攻撃はすぐに到達するだろ。チャンスは一瞬。

(今だ!)

 俺は足に力を入れていっきに飛び上がる。そして目を開くと空中に浮く己の姿と、槍の一撃を思わぬ形でかわされて、驚きを隠せないでいる義元の姿がそこにはあった。

「ど、どうして飛べるんです?」

「聞きたいか? それはな……」

 そして俺はその空中から、魔力を宿した太刀を縦にひと振り、義元に向かって振りかざした。その斬撃は炎を伴って義元に向かって一直線に飛んでいく。さきほど使ったかまいたちを応用した技、

『焔・一の太刀』

「ひ、火? そんなどうして」

「それは俺が魔法使いだからだよ!」

 それは義元に直撃し、そして彼女を燃やし尽くした。

「きゃー」

 その一撃は、あらゆるものを焼き払う。今までも物質に魔法を乗せるという事はやった事はあるが、自分自身のものに魔法を乗せることはなかったので、ほぼぶっつけ本番だったが、どうやらうまくいったらしい。

「この勝負、俺の勝ちだ。今川義元」

■□■□■□
 何とも呆気ない勝ち方だったが、これでいい。勿論殺す気などなかったので、これ以上燃え広がらないように水の魔法を使って火を消してあげた。

「あなた、さっきマホウとか言っていましたけど何でしょうかそれは」

「不思議な力みたいなもんだよ。俺はそれを使うことができる人間だ」

「不思議な力……覚えておきましょう」

 助けてもらったことにも言わず、その場を立ち去る義元。が、俺はその彼女を呼び止めた。

「あ、ちょっと待った」

「何ですか? 勝負はついたんですから、私は帰らさせて……」

「とりあえず服きろよ」

 何故なら彼女は、服が燃えてしまったせいで半裸状態だった。ていうか何で今まで気がつかなかったんだ?

「きゃぁぁ。変態!」

 本日二度目の悲鳴。彼女は悲鳴とともに何かを投げつけてきた。彼女が投げつけてきたのは、何とさっきまで彼女が身につけていた兜。あんな重いものを思いっきり投げるなんてどれだけの腕力なんだろうか彼女は。いや、そんな事考えている間もなく、兜は俺の顔面に直撃。そのまま俺は意識を失い、気がついたときには自分の部屋で寝ているという、何とも締まりのない初陣となってしまった。

(でもまあ、勝てたからいっか)

 こうして俺の初めての戦いは、義元のサービスシーンとともに終わりを告げたのであった。

■□■□■□
 初めての戦いが終わったその日の夜、俺の初勝利を祝って祝杯が上がることになった。

「もう本当に焦っちゃったよ。やっと合流したと思ったら、ヒッシーが気絶しているからびっくりしたよ」

「悪かったなヒデヨシ。心配かけて」

 今回は昨日の歓迎会で使ったあの渋い場所ではなく、何とノブナガさんの部屋を使用。今回参加しているのは、俺とヒデヨシは勿論、ノブナガさん、リキュウさん、そしてネネという昨日一日で出会った人物の殆どが勢ぞろい。しかも全員が女性であるがため、男の俺にとってはムフフな状態だ。

「でもそれはヒスイさんは悪くないですよね。悪いのはあちらの方ですから」

「でも油断しているヒスイ君も悪いよねぇ。わたしだったら最後まで警戒するよぉ」

「そもそもあんたは戦えないだろ」

「ふふふ、私を舐めてもらっては困りますよぉ。実はこれでも……」

「まさかリキュウ、お前……」

 そんな事実があったら今までの歴史をひっくり返せるくらいの大事だぞ。

「戦力にはなっていないんですぅ」

「何にもないのかよ!」

 ちょっと期待してしまった俺が馬鹿だった。

「私はお姉さまの為ならどんな修羅場でも戦いますわ」

「そう言って助けに来てくれた覚えはないんだけど」

「私のお姉さまへの愛なら誰にも負ける気がしません!」

 祝杯をあげると言いながらも、会話はいつも通り。特にネネは何をしに来たのかさっぱり分からない。でもこういう時間は悪くない。魔法使いとして異世界を勇者達と旅していた頃は、こんな余裕はなかった。常に戦いとの隣り合わせ。勿論こういう平和な時間は沢山あったけど、それとはちょっと違った雰囲気。ただ純粋にこの平和な時間が、俺はとても好きだ。

「あ、そうそうヒッシー」

「ん? どうかしたか?」

「ヒッシーは魔法というのを誰に教えてもらったの?」

「魔法を? えっとそれは……」

 急に話を振られたので、どうしようかと思ったが、折角なので皆に俺の魔法を覚えることになった経緯を話すことにした。

 話は遡ること今から二年前の高校三年生の夏。
 突如異世界に呼ばれ急に魔法を覚えろとか世界を救ってくれとか言われて困惑していた時の事だった。半ば強制的に魔法を覚えることになってしまった俺は、二週間彼女の元で魔法を教えてもらうことになった、

『はじめまして。私はノア・イストワールと申します。今日から二週間、あなたに魔法を一から全て叩き込むつもりなので、どうぞ覚悟していてください』

 その彼女とは、俺が後に師匠と呼ぶようになる魔法使い、いや世界三大魔法使いの一人ノア・イストワールだった。

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