魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第68陣師と弟子
「そういえばノブナガさんって、料理得意なはずでは?」
「サプライズですよ、サプライズ」
「そんな危険なサプライズは、勘弁してほしいんですけど」
散々な目にあった昼食を終えて、闘技大会再開。準決勝戦の相手は、予想はしていた通りノアル師匠だった。
「まさかこんな所で師匠と戦えるなんて、俺嬉しいですよ」
「そう言っておきながら、私と戦う気満々だったじゃないですか」
「まああれから大分経っているから、俺の成長した姿を見てほしいというのが、一番の理由だったりするんですけどね」
お互い真剣な眼差しで対峙する。こうして師匠と再び手を合わせるのは、二年ちょっとぶり。果たして俺は彼女に勝てるのだろうか?
「私の可愛い弟子相手ですから、手加減をしたいところですけど」
「全力で来てくださいよ師匠」
「分かりましたよ。では」
『勝負!』
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「光の剣よ、参れ」
師匠が最初に使った魔法は、無数の剣を呼び出してそれを敵目掛けて放つものだった。どうやら最初から本気で来るらしい。
「やっぱりその魔法ですか。だったら俺だって」
それに対抗して、俺は太刀を鞘から抜いて集中させる。そして横に一振り、大きく振った。そして剣の軌道に沿って炎が発動し、やって来た刃を全て焼き払った。
「その魔法、ここに来て覚えたんですか?」
「ノブナガさんの太刀使いを見よう見まねして、そこに魔法を乗せたんですよ。だからこうやって……」
俺は次の一手に太刀を縦に振りかざし、魔法を加える。それによって炎を纏った斬撃が師匠へと向かう。
「なるほど、確かに成長していますが」
それをも簡単に受け止める師匠。でも俺はそれを囮として放っただけで、既に次の一手を放つために師匠との間合いを一気に詰めていた。
「戦いというのは、先の手を読むんですよヒスイ」
「え?」
だがそれをも予想していたかのように、俺の足元に魔法陣が発動。まさに近接の為のトラップ。慌てて魔法陣から離れようとするが、間に合わずに光の鉄槌を喰らってしまう。
「くっ……」
もろ直撃を喰らってしまった俺は、そのまま地面に倒れ込んでしまう。
「もう少し手加減するべきでしたかね」
勝負あったかのように言う師匠。いや、勝負ありなのかもしれない。
(やっぱりすごいや、師匠は。でもまだ俺は……)
それが昔の俺なら、の話だけど。
「まだ……終わってませんよ、師匠」
「あれを直撃で受けて、立てた人はほとんどいないんですけど。やはり成長しましたねヒスイ」
何とか残っている力を使って立ち上がった俺を、嬉しそうにそう言う師匠。そう、俺はあれから成長したんだ。
そう、あれから……。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
ノア師匠は主に光属性の魔法を使う魔導師で、世界でも名高い魔法使いの一人だった。噂ではかつて世界を一度救っているとか。
『本当は弟子とか苦手なんですけど、国の命令ですし、仕方ないですね』
出会った頃、師匠はそんな事も言っていた。でもその言葉とは裏腹に、特訓にはかなり厳しい人で、地獄のような毎日を俺は過ごした。
でもそんな師匠は、どんな時でも優しかった。
『師匠ぉぉ』
特にサクラが亡くなった直後は、今にも壊れてしまいそうな俺を支えてくれたのは彼女だった。
『ヒスイ、あなたはよく頑張ったじゃないですか。だから胸を張らなきゃ駄目ですよ』
『でも俺……俺のせいで……サクラが』
『ヒスイのせいではないですよ。そういう運命だったんですよきっと』
「運命だなんて、そんな……」
厳しいように思えたその言葉も、彼女なりの慰めだったのかもしれない。だからこそ悲しくて、俺は涙が止まらなかった。
『師匠、俺……格好悪いよ。こんなんで世界を守っただなんて……』
『どこが格好悪いんですか? 世界の為に頑張ったあなた達の姿を見た沢山の方々が、決してそれを成し遂げたあなたを格好悪いとは思いません。むしろ今そうしているあなたの方が格好悪いです』
『……』
『確かに犠牲は大きかったかもしれません。それでもあなたはこの世界を救った。それだけで充分じゃないですか』
『師匠……』
今となっては俺もサクラの事から完全に立ち直れたけど、恐らく師匠の言葉がなかったら、自分の世界に戻ることすらしていなかったかもしれない。
あの言葉があったから俺は今ここにいる。
あそこで少しでも立ち直れていなかったら、俺は弱いままだった。
「師匠には感謝しています。俺をここまで成長させてくれた事を」
「成長なんかさせていませんよ。ヒスイが自分で乗り越えて、自分で強くなっただけです。私はその背中を押してあげただけにすぎませんよ」
俺は近距離でありながらも再び太刀を持ち直す。師匠もそこから動く気はないようだ。
(つまりこの状態で一撃を与えたほうが勝ち、か)
状況的に一振りで相手に与えられる俺が有利。だけど師匠は、その状況ですら一転させる力がある。果たしてどちらがこの状況を制するのか。
「今日こそ俺が勝たせてもらいます!」
「さあ、来てください、ヒスイ!」
その言葉と共に、両者の一手が放たれて……。
「サプライズですよ、サプライズ」
「そんな危険なサプライズは、勘弁してほしいんですけど」
散々な目にあった昼食を終えて、闘技大会再開。準決勝戦の相手は、予想はしていた通りノアル師匠だった。
「まさかこんな所で師匠と戦えるなんて、俺嬉しいですよ」
「そう言っておきながら、私と戦う気満々だったじゃないですか」
「まああれから大分経っているから、俺の成長した姿を見てほしいというのが、一番の理由だったりするんですけどね」
お互い真剣な眼差しで対峙する。こうして師匠と再び手を合わせるのは、二年ちょっとぶり。果たして俺は彼女に勝てるのだろうか?
「私の可愛い弟子相手ですから、手加減をしたいところですけど」
「全力で来てくださいよ師匠」
「分かりましたよ。では」
『勝負!』
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「光の剣よ、参れ」
師匠が最初に使った魔法は、無数の剣を呼び出してそれを敵目掛けて放つものだった。どうやら最初から本気で来るらしい。
「やっぱりその魔法ですか。だったら俺だって」
それに対抗して、俺は太刀を鞘から抜いて集中させる。そして横に一振り、大きく振った。そして剣の軌道に沿って炎が発動し、やって来た刃を全て焼き払った。
「その魔法、ここに来て覚えたんですか?」
「ノブナガさんの太刀使いを見よう見まねして、そこに魔法を乗せたんですよ。だからこうやって……」
俺は次の一手に太刀を縦に振りかざし、魔法を加える。それによって炎を纏った斬撃が師匠へと向かう。
「なるほど、確かに成長していますが」
それをも簡単に受け止める師匠。でも俺はそれを囮として放っただけで、既に次の一手を放つために師匠との間合いを一気に詰めていた。
「戦いというのは、先の手を読むんですよヒスイ」
「え?」
だがそれをも予想していたかのように、俺の足元に魔法陣が発動。まさに近接の為のトラップ。慌てて魔法陣から離れようとするが、間に合わずに光の鉄槌を喰らってしまう。
「くっ……」
もろ直撃を喰らってしまった俺は、そのまま地面に倒れ込んでしまう。
「もう少し手加減するべきでしたかね」
勝負あったかのように言う師匠。いや、勝負ありなのかもしれない。
(やっぱりすごいや、師匠は。でもまだ俺は……)
それが昔の俺なら、の話だけど。
「まだ……終わってませんよ、師匠」
「あれを直撃で受けて、立てた人はほとんどいないんですけど。やはり成長しましたねヒスイ」
何とか残っている力を使って立ち上がった俺を、嬉しそうにそう言う師匠。そう、俺はあれから成長したんだ。
そう、あれから……。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
ノア師匠は主に光属性の魔法を使う魔導師で、世界でも名高い魔法使いの一人だった。噂ではかつて世界を一度救っているとか。
『本当は弟子とか苦手なんですけど、国の命令ですし、仕方ないですね』
出会った頃、師匠はそんな事も言っていた。でもその言葉とは裏腹に、特訓にはかなり厳しい人で、地獄のような毎日を俺は過ごした。
でもそんな師匠は、どんな時でも優しかった。
『師匠ぉぉ』
特にサクラが亡くなった直後は、今にも壊れてしまいそうな俺を支えてくれたのは彼女だった。
『ヒスイ、あなたはよく頑張ったじゃないですか。だから胸を張らなきゃ駄目ですよ』
『でも俺……俺のせいで……サクラが』
『ヒスイのせいではないですよ。そういう運命だったんですよきっと』
「運命だなんて、そんな……」
厳しいように思えたその言葉も、彼女なりの慰めだったのかもしれない。だからこそ悲しくて、俺は涙が止まらなかった。
『師匠、俺……格好悪いよ。こんなんで世界を守っただなんて……』
『どこが格好悪いんですか? 世界の為に頑張ったあなた達の姿を見た沢山の方々が、決してそれを成し遂げたあなたを格好悪いとは思いません。むしろ今そうしているあなたの方が格好悪いです』
『……』
『確かに犠牲は大きかったかもしれません。それでもあなたはこの世界を救った。それだけで充分じゃないですか』
『師匠……』
今となっては俺もサクラの事から完全に立ち直れたけど、恐らく師匠の言葉がなかったら、自分の世界に戻ることすらしていなかったかもしれない。
あの言葉があったから俺は今ここにいる。
あそこで少しでも立ち直れていなかったら、俺は弱いままだった。
「師匠には感謝しています。俺をここまで成長させてくれた事を」
「成長なんかさせていませんよ。ヒスイが自分で乗り越えて、自分で強くなっただけです。私はその背中を押してあげただけにすぎませんよ」
俺は近距離でありながらも再び太刀を持ち直す。師匠もそこから動く気はないようだ。
(つまりこの状態で一撃を与えたほうが勝ち、か)
状況的に一振りで相手に与えられる俺が有利。だけど師匠は、その状況ですら一転させる力がある。果たしてどちらがこの状況を制するのか。
「今日こそ俺が勝たせてもらいます!」
「さあ、来てください、ヒスイ!」
その言葉と共に、両者の一手が放たれて……。
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