魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第75陣もう一度あの場所へ②
翌日、俺は約束の時間までに全てを済ませ、その時を待っていた。
(魔法は使うな、何て無理な話だよな……)
昨日の師匠の言葉を改めて思いかえす。俺は今まで魔法使いとして、二つの異世界で戦ってきた。その俺から魔法を取ってしまうということは、ただの人間に戻れという事を意味している。
ただの人間の状態で、今度こそ決着をつけるだなんて蟻が人に挑むくらい難しい話だ。
(それを受け止めろなんて、そんなの無理に決まっている)
何故師匠がそんな事を言い出したのか、あっちに行ったら改めて聞かないと。
『そろそろ時間ですよヒスイ。準備はできていますか?』
全ての準備が整ったところで、まるでタイミングを見計らったかのように、師匠の声が聞こえる。
「勿論準備万端です」
『ではあなたの部屋の扉と、こちらの世界を繋げましたので入ってください』
「はい」
手荷物を手にとって、部屋の扉に手をかける。またしばらくこちらの世界に戻ってくることはないけど、きっと大丈夫だよな。
「じゃあ行ってきます」
誰もいない部屋に最後にそう言って、俺は部屋の扉を開けた。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
戦国時代にやって来て迎えた初めての朝。昨晩聞こえた謎の声が気になって、なかなか寝つけなかった私は、眠い目をこすりながら朝食を取る為に部屋を出た。
「あ、もしかして君がヒッシーの幼馴染の人?」
部屋を出たところで背の小さい子に声をかけられる。彼女もここに住んでいる武将の一人だろうか?
「そうだけど。あなたは?」
「私は羽柴秀吉。これでもヒッシーとは結構仲良しだったんだ。よろしくね」
羽柴秀吉という事は、彼女はかの有名な豊臣秀吉らしい。風林火山で有名な本来の豊臣秀吉は違い、どちらかというと小動物みたいに可愛らしい印象を受ける。
「私は日向桜。知っての通り翡翠とは幼馴染なんだけど、もしかしてヒデヨシさんのいうヒッシーって、翡翠の事を言っているの?」
「そうだよ。その方が呼びやすくていいんだ」
「へえ、そうなんだ」
何をどう文字ったらそうなるのかは多少疑問だけど、本人がそう呼びやすいと感じているなら、何も言う必要はないかな。
「それでヒナッチはどうしてこの世界に来たの?」
「えっと、何か勾玉が突然光り出して、気がついたらここにいたんだけど、詳しい理由は分からないの」
「じゃあヒッシーと同じ感じなんだ」
「そうなの。ところで、そのヒナッチって私のあだ名?」
「うん。今考えたんだ」
今までそんな名前で呼ばれたことのない私は、どこからそんなあだ名が生まれてくるのか不思議に思う。というかヒナッチってそこはかとなくチャラい感じがするんだけど。
「これから大変だと思うけど、よろしくねヒナッチ」
「う、うん。よろしくねヒデヨシさん」
「さん付けしなくていいよ。皆呼び捨てで呼んているから」
「でも、初めて会ったし」
「ヒッシーも最初からさん付けしてなかったから、平気平気。私だって変なあだ名で呼んでいるんだし」
「変なあだ名って自覚はあったんだ」
そんな感じでヒデヨシさんと会話している間に、朝食を取るであろう場所へと到着する。
(有名な戦国武将だから、話しづらいと思っていたけど、どうやら大丈夫そう、かな)
昨日のノブナガさんといい、今のヒデヨシさんも気軽に話しやすい感じの人柄だった。翡翠から話は聞いていたけど、これならやって行けそうな気がする。
「お姉様〜、おはようございます」
朝から彼女に遭遇するまでは、の話だけど。
(もしかして、ここって百合の世界?)
そうだとしたら、とんでもない世界なんだけど。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
昼になってノブナガさんが城下町を案内してくれるということで、ヒデヨシさんも引き連れて城の外に出た。
「わぁ、すごい」
城下町に入ってまず私の目に入ったのは、いかにもその時代を感じさせるような、素晴らしい街並みだった。
(本当にタイムスリップしたみたいに感じるけど、あくまでここは異世界なのよね)
まさか自分が、戦国時代が主体と思われる異世界にやって来るなんて思ってもいなかったので、その感動は何倍にも増した。
「いいとこでしょ?  自慢の街なんだよ」
「うん。すごいよ。私こんな所来た事ないから、すごい新鮮」
「何度戦をしようと、この街並みだけは守ろうと思うんです」
しみじみに言う二人。確かにこの街並みは守るだけの価値がある。だけどそれよりも一つ気になることがあった。
「そういえば私も、戦に参加するべきなんですか?」
「勿論ですよ。私達が基礎からしっかりと教えてあげますから、サクラさんにも出来る限り参加してもらいます」
それはこの世界では当然の答えだった。私もその事は理解できていたのだけれど、いざその言葉を聞くと少しだけ怖くなる。
「心配しなくても大丈夫だよヒナッチ。ノブナガ様はすごく強いし、いざとなればヒッシーだって来てくれる。だから頑張ろう」
そんな私を見たヒデヨシさんに励まされる。そういえばノブナガさんはともかく、翡翠も戦えるんだっけ。今この場にいなくても、いつかは彼と一緒に戦う日が来るのかもしれない。その時私は、彼の力になれるのだろうか?
「さてと、その話はこの辺りにして行きますよ、サクラさん」
「は、はい」
でも今はそれを考えなくていいか。あくまで私は、今は一般人なんだから、せめてこの街を楽しまないとね。
(魔法は使うな、何て無理な話だよな……)
昨日の師匠の言葉を改めて思いかえす。俺は今まで魔法使いとして、二つの異世界で戦ってきた。その俺から魔法を取ってしまうということは、ただの人間に戻れという事を意味している。
ただの人間の状態で、今度こそ決着をつけるだなんて蟻が人に挑むくらい難しい話だ。
(それを受け止めろなんて、そんなの無理に決まっている)
何故師匠がそんな事を言い出したのか、あっちに行ったら改めて聞かないと。
『そろそろ時間ですよヒスイ。準備はできていますか?』
全ての準備が整ったところで、まるでタイミングを見計らったかのように、師匠の声が聞こえる。
「勿論準備万端です」
『ではあなたの部屋の扉と、こちらの世界を繋げましたので入ってください』
「はい」
手荷物を手にとって、部屋の扉に手をかける。またしばらくこちらの世界に戻ってくることはないけど、きっと大丈夫だよな。
「じゃあ行ってきます」
誰もいない部屋に最後にそう言って、俺は部屋の扉を開けた。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
戦国時代にやって来て迎えた初めての朝。昨晩聞こえた謎の声が気になって、なかなか寝つけなかった私は、眠い目をこすりながら朝食を取る為に部屋を出た。
「あ、もしかして君がヒッシーの幼馴染の人?」
部屋を出たところで背の小さい子に声をかけられる。彼女もここに住んでいる武将の一人だろうか?
「そうだけど。あなたは?」
「私は羽柴秀吉。これでもヒッシーとは結構仲良しだったんだ。よろしくね」
羽柴秀吉という事は、彼女はかの有名な豊臣秀吉らしい。風林火山で有名な本来の豊臣秀吉は違い、どちらかというと小動物みたいに可愛らしい印象を受ける。
「私は日向桜。知っての通り翡翠とは幼馴染なんだけど、もしかしてヒデヨシさんのいうヒッシーって、翡翠の事を言っているの?」
「そうだよ。その方が呼びやすくていいんだ」
「へえ、そうなんだ」
何をどう文字ったらそうなるのかは多少疑問だけど、本人がそう呼びやすいと感じているなら、何も言う必要はないかな。
「それでヒナッチはどうしてこの世界に来たの?」
「えっと、何か勾玉が突然光り出して、気がついたらここにいたんだけど、詳しい理由は分からないの」
「じゃあヒッシーと同じ感じなんだ」
「そうなの。ところで、そのヒナッチって私のあだ名?」
「うん。今考えたんだ」
今までそんな名前で呼ばれたことのない私は、どこからそんなあだ名が生まれてくるのか不思議に思う。というかヒナッチってそこはかとなくチャラい感じがするんだけど。
「これから大変だと思うけど、よろしくねヒナッチ」
「う、うん。よろしくねヒデヨシさん」
「さん付けしなくていいよ。皆呼び捨てで呼んているから」
「でも、初めて会ったし」
「ヒッシーも最初からさん付けしてなかったから、平気平気。私だって変なあだ名で呼んでいるんだし」
「変なあだ名って自覚はあったんだ」
そんな感じでヒデヨシさんと会話している間に、朝食を取るであろう場所へと到着する。
(有名な戦国武将だから、話しづらいと思っていたけど、どうやら大丈夫そう、かな)
昨日のノブナガさんといい、今のヒデヨシさんも気軽に話しやすい感じの人柄だった。翡翠から話は聞いていたけど、これならやって行けそうな気がする。
「お姉様〜、おはようございます」
朝から彼女に遭遇するまでは、の話だけど。
(もしかして、ここって百合の世界?)
そうだとしたら、とんでもない世界なんだけど。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
昼になってノブナガさんが城下町を案内してくれるということで、ヒデヨシさんも引き連れて城の外に出た。
「わぁ、すごい」
城下町に入ってまず私の目に入ったのは、いかにもその時代を感じさせるような、素晴らしい街並みだった。
(本当にタイムスリップしたみたいに感じるけど、あくまでここは異世界なのよね)
まさか自分が、戦国時代が主体と思われる異世界にやって来るなんて思ってもいなかったので、その感動は何倍にも増した。
「いいとこでしょ?  自慢の街なんだよ」
「うん。すごいよ。私こんな所来た事ないから、すごい新鮮」
「何度戦をしようと、この街並みだけは守ろうと思うんです」
しみじみに言う二人。確かにこの街並みは守るだけの価値がある。だけどそれよりも一つ気になることがあった。
「そういえば私も、戦に参加するべきなんですか?」
「勿論ですよ。私達が基礎からしっかりと教えてあげますから、サクラさんにも出来る限り参加してもらいます」
それはこの世界では当然の答えだった。私もその事は理解できていたのだけれど、いざその言葉を聞くと少しだけ怖くなる。
「心配しなくても大丈夫だよヒナッチ。ノブナガ様はすごく強いし、いざとなればヒッシーだって来てくれる。だから頑張ろう」
そんな私を見たヒデヨシさんに励まされる。そういえばノブナガさんはともかく、翡翠も戦えるんだっけ。今この場にいなくても、いつかは彼と一緒に戦う日が来るのかもしれない。その時私は、彼の力になれるのだろうか?
「さてと、その話はこの辺りにして行きますよ、サクラさん」
「は、はい」
でも今はそれを考えなくていいか。あくまで私は、今は一般人なんだから、せめてこの街を楽しまないとね。
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