魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第77陣再会と喜びと悲しみと
気づいていた。
だけど振り返れなかった。
そうであってほしくなかったから。
師匠に魔法の話を聞いた時点で察してはいたんだ。同じ魔法を使う彼女の身体はどうなのかと。ましてや一年前師匠は俺達を守るために、かなりの魔力を使用している。
その素振りは一切見せなかったけど、本当は彼女の身体はもう……。
「ううっ……師匠……」
走っている途中で涙が止まらなくなってくる。彼女が今回は手伝えないと言ったのは、もう自分の最後が分かっていたからなのかもしれない。
だから彼女は最後、気づかないほどギリギリのところで涙を流していた。その涙を見た瞬間に全てを俺は理解した。理解したけど、俺は何もできなかった。
「今まで……ありがとうございました……」
俺は最後にそう言って、本当の別れを大切な師匠に告げた。もう会う事はないのかもしれない。だけど、俺は進まなくてはならない。今俺がするべき事を成すために。
そしていよいよ、ゲートの出口が近づいてくる。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
城下町を一通り見回る頃には、既に夕日が沈みかけていた。このまま城に戻るのかと思いきや、もう一つ案内したいところがあるらしく、私達三人は山道を歩いていた。
「こんな山の奥深くに、何かあるようには思えないんだけど」
「ふっふっふ、それがそうでもないのだよヒナッチ。実はこの先にはとても綺麗な物が待っているのだよ」
「すごいキャラがブレてるけど、大丈夫?」
「まあそれほど期待していいもの、という事ですよサクラさん」
そんな会話を進めることさらに十分。ようやく目的の場所であろう所に到着した。そこで私を待っていたのは、
「うわぁ、綺麗な星空」
満天の夜空に輝く星達と、それを一望できる広い草原だった。まさかこんな山奥に今で言う絶景スポットがあるなんて思ってもいなかった。
「ここはヒッシーもすごく気に入っている場所で、また見ようねって約束したんだ」
「へえ、翡翠がそんな事を」
綺麗な場所を探して大の字になって、寝転がる。そうした事によって、私の視界ほぼ全てに星空が見えるようになる。確かにここまで綺麗なものを見させられると、ヒスイだってそんな事を言いたくなるよね。
「私も翡翠と一緒に見れたらなぁ」
思わずそんな事をぼやいてしまう。この空を二人で見たら、それなりにいいシチュエーションになったりしてね。
「じゃあ今その願いを叶えてやるよ」
『え?』
私だけでなく他の二人も、突然聞こえた声に反応する。私達が視線を向けた先には、つい先日まで一緒にいた彼、桜木翡翠がそこにいた。
「ヒスイ……様?」
「ヒッシー!」
私が反応するより二人が驚きを隠せない表情で、彼を見ている。
「ノブナガさん、ヒデヨシ、そして桜。来るの遅くなってごめん。そして、ただいま」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「ただいま」
三人は出掛けていると先に城の人から聞いた俺は、すぐに思い当たる場所を回った。とは言っても、何となく最初から向かう場所は分かっていたので、ほとんど時間はかからなかったけど。
「遅いですよ……私どれだけ待ったと思っているんですか」
「そうだよ、ヒッシー。皆、ヒッシーが帰ってくるのを待っていたんだから」
それぞれが口々に言う。ただ、未だに桜だけは喋らないでいた。
「どうしたんだよ桜。もしかして怒っているのか?」
「そんなんじゃないわよ、馬鹿。たった一日だけでも遅くなったんだから、帰ったらちゃんと返してもらうからね」
「覚えておくよ」
三人で出掛けている辺り、どうやら桜は二人とすぐに打ち解けたらしい。一日で仲良くなれるなんて、大したものだと俺は思う。
でもまあ、今はそんな事はどうだっていい。こうしてまた、二人に再会できたのだから今はそれでいい。
「それにしても相変わらずここで見る星は綺麗だな」
「やっぱりそうでしょ? ヒッシーもすっかりお気に入りなんだね」
「ああ。ここにまた戻ってこれて、俺は今すごく幸せだよ」
改めて星空を三人と一緒に見上げる。一年前、またこうして星を眺めようと約束して、それが今果たされた。それがどれだけ嬉しくて、どれだけ……。
「翡翠?」
「う……えっぐ」
「ヒスイ様、もしかして泣いていますか?」
「な、泣いてなんかいない……ですよ」
悲しい事か。
今ここに帰ってこられたのは、師匠のおかげだし、彼女が背中を押してくれなければここまで生きてこれなかったかもしれない。それなのに俺は一度も彼女に面と向かって、ありがとうと言えなかった。
「ヒッシー、大丈夫?」
「だ、大丈夫に決まっているだろ。ただ……」
「ただ?」
「もう会えなくなるなんて、思ってもいなかったんだよ。せめてありがとうだけでも言いたかった」
「誰かお亡くなりになられたんですか?」
「直接見てはいないけど、恐らくあの人はもう……」
師匠の事を思い出すと、余計に涙が溢れてくる。そしてそれを、俺は止める事はできなかった。
「その人は翡翠にとって、どんな人だったの?」
「あの人は俺にとって、師でありとても大切な人だった。だからいなくなるだなんて、考えられなかったんだよ……」
「翡翠……」
 
ノア師匠、俺はやっぱりあなたがいなくったと思うと、とても寂しいよ。だからもう一度だけ会わせてくれ。無事帰ってきた俺達の姿を見てほしい。
せめて約束だけは破らないでくれ。
だけど振り返れなかった。
そうであってほしくなかったから。
師匠に魔法の話を聞いた時点で察してはいたんだ。同じ魔法を使う彼女の身体はどうなのかと。ましてや一年前師匠は俺達を守るために、かなりの魔力を使用している。
その素振りは一切見せなかったけど、本当は彼女の身体はもう……。
「ううっ……師匠……」
走っている途中で涙が止まらなくなってくる。彼女が今回は手伝えないと言ったのは、もう自分の最後が分かっていたからなのかもしれない。
だから彼女は最後、気づかないほどギリギリのところで涙を流していた。その涙を見た瞬間に全てを俺は理解した。理解したけど、俺は何もできなかった。
「今まで……ありがとうございました……」
俺は最後にそう言って、本当の別れを大切な師匠に告げた。もう会う事はないのかもしれない。だけど、俺は進まなくてはならない。今俺がするべき事を成すために。
そしていよいよ、ゲートの出口が近づいてくる。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
城下町を一通り見回る頃には、既に夕日が沈みかけていた。このまま城に戻るのかと思いきや、もう一つ案内したいところがあるらしく、私達三人は山道を歩いていた。
「こんな山の奥深くに、何かあるようには思えないんだけど」
「ふっふっふ、それがそうでもないのだよヒナッチ。実はこの先にはとても綺麗な物が待っているのだよ」
「すごいキャラがブレてるけど、大丈夫?」
「まあそれほど期待していいもの、という事ですよサクラさん」
そんな会話を進めることさらに十分。ようやく目的の場所であろう所に到着した。そこで私を待っていたのは、
「うわぁ、綺麗な星空」
満天の夜空に輝く星達と、それを一望できる広い草原だった。まさかこんな山奥に今で言う絶景スポットがあるなんて思ってもいなかった。
「ここはヒッシーもすごく気に入っている場所で、また見ようねって約束したんだ」
「へえ、翡翠がそんな事を」
綺麗な場所を探して大の字になって、寝転がる。そうした事によって、私の視界ほぼ全てに星空が見えるようになる。確かにここまで綺麗なものを見させられると、ヒスイだってそんな事を言いたくなるよね。
「私も翡翠と一緒に見れたらなぁ」
思わずそんな事をぼやいてしまう。この空を二人で見たら、それなりにいいシチュエーションになったりしてね。
「じゃあ今その願いを叶えてやるよ」
『え?』
私だけでなく他の二人も、突然聞こえた声に反応する。私達が視線を向けた先には、つい先日まで一緒にいた彼、桜木翡翠がそこにいた。
「ヒスイ……様?」
「ヒッシー!」
私が反応するより二人が驚きを隠せない表情で、彼を見ている。
「ノブナガさん、ヒデヨシ、そして桜。来るの遅くなってごめん。そして、ただいま」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「ただいま」
三人は出掛けていると先に城の人から聞いた俺は、すぐに思い当たる場所を回った。とは言っても、何となく最初から向かう場所は分かっていたので、ほとんど時間はかからなかったけど。
「遅いですよ……私どれだけ待ったと思っているんですか」
「そうだよ、ヒッシー。皆、ヒッシーが帰ってくるのを待っていたんだから」
それぞれが口々に言う。ただ、未だに桜だけは喋らないでいた。
「どうしたんだよ桜。もしかして怒っているのか?」
「そんなんじゃないわよ、馬鹿。たった一日だけでも遅くなったんだから、帰ったらちゃんと返してもらうからね」
「覚えておくよ」
三人で出掛けている辺り、どうやら桜は二人とすぐに打ち解けたらしい。一日で仲良くなれるなんて、大したものだと俺は思う。
でもまあ、今はそんな事はどうだっていい。こうしてまた、二人に再会できたのだから今はそれでいい。
「それにしても相変わらずここで見る星は綺麗だな」
「やっぱりそうでしょ? ヒッシーもすっかりお気に入りなんだね」
「ああ。ここにまた戻ってこれて、俺は今すごく幸せだよ」
改めて星空を三人と一緒に見上げる。一年前、またこうして星を眺めようと約束して、それが今果たされた。それがどれだけ嬉しくて、どれだけ……。
「翡翠?」
「う……えっぐ」
「ヒスイ様、もしかして泣いていますか?」
「な、泣いてなんかいない……ですよ」
悲しい事か。
今ここに帰ってこられたのは、師匠のおかげだし、彼女が背中を押してくれなければここまで生きてこれなかったかもしれない。それなのに俺は一度も彼女に面と向かって、ありがとうと言えなかった。
「ヒッシー、大丈夫?」
「だ、大丈夫に決まっているだろ。ただ……」
「ただ?」
「もう会えなくなるなんて、思ってもいなかったんだよ。せめてありがとうだけでも言いたかった」
「誰かお亡くなりになられたんですか?」
「直接見てはいないけど、恐らくあの人はもう……」
師匠の事を思い出すと、余計に涙が溢れてくる。そしてそれを、俺は止める事はできなかった。
「その人は翡翠にとって、どんな人だったの?」
「あの人は俺にとって、師でありとても大切な人だった。だからいなくなるだなんて、考えられなかったんだよ……」
「翡翠……」
 
ノア師匠、俺はやっぱりあなたがいなくったと思うと、とても寂しいよ。だからもう一度だけ会わせてくれ。無事帰ってきた俺達の姿を見てほしい。
せめて約束だけは破らないでくれ。
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