魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した

りょう

第78陣結婚と邂逅

 それから一時間経った後の、城への帰り道。四人でワイワイしながら帰っている中で、ようやくノブナガさんと二人きりで話す時間ができた。

「じゃあやはり、今回の件も一年前の出来事と一緒だと考えられるんですね?」

「はい。師匠が仕留めたはずだったんですけど、やはり手強いみたいなんです」

「それを今度は私達が倒さなけれらならないのですね」

「はい。師匠の手助けはないですから」

 話す事は当然今回も起きてしまっている事。本来なら一年前に振り払ったはずの闇は、振り払えてなかった。その闇を今度は俺達の手で振り払わなければならない。

「じゃあそれが全部終わってからですね、式を挙げるのは」

「ん? 誰か結婚するんですか?」

「何をとぼけているんですかヒスイ様。約束したじゃないですか、もう一度帰ってきた時には結婚でも何でもするって」

「あ、そういえば」

 ここを一度出る日の前日か何かに、そんな約束をした気がする。ちゃんと覚えてたんだなノブナガさん。

「え? 翡翠結婚するの?」

 その話を聞き捨てならない言わんばかりに、桜が割り込んでくる。

「え、えっとまあ、約束したし……」

「ちょっと何でそんな大事な事を教えてくれないのよ」

「それは……」

 というかそんな大事な話を忘れていた自分が情けないけど、それ以上にこの桜の反応にも少し驚いた。

「全く。それじゃあもう元の世界に戻るつもりがないの?」

「それは何とも言えないんだけど」

「じゃあ何で結婚なんて約束しちゃうのよ、馬鹿」

「わ、悪い」

 黙っていたからってここまで怒らなくてもいい気がするんだけど、何故にして彼女はここまで怒りをあらわにするのだろうか。

「うーん、ヒッシーも罪な男だね」

「それどういう意味だよ、ヒデヨシ」

「乙女心はいつだって複雑なのだよ」

「お前いつからそんなキャラになった?」

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 何はともあれ、無事にこの世界にもう一度やって来ることができた俺は、城へ戻るなり皆に大歓迎された。時間も遅いというのに、わざわざ記念パーティまでも行われ、なかなか楽しい夜を過ごした。

 そしてパーティ終了後、皆が寝静まる中で、なかなか眠れずにいた俺は外の空気を吸っていた。

(結婚、か)

 先程のノブナガさん達との会話を思い出す。確かに俺はノブナガさんが好きだ。告白もしたし、彼女もそれを受け入れてくれた。ただ、勢いとは言っても、結婚まで約束したのは少し早すぎたのかもしれない。結婚するという事は、この世界にずっと居続けるという意味になる。

(もしそうなったら、桜はどうするんだ)

 彼女はずっとこの世界に居たいとは思ってないだろうし、できれば帰してあげたい。ただしその時、俺は見送る側になっていいのだろうか?

「どこにもいないと思ったら、こんなところにいたの?」

 そんな事考えていると、その本人である桜が隣に座ってきた。

「うまく寝付けなくてな。そういう桜は?」

「私も。昨日はちゃんと寝れたんだけどね」

「そうか」

 やっぱり気になっているのだろうか、さっきの事が。でも俺からどんな言葉を彼女にかければいいのか分からない。

「私はね翡翠が選びたい方を選べばいいと思う」

「え?」

「私は気にしてないから。それにまだ先にやる事だってあるでしょ?」

「いや、そうだけどさ」

 確かに彼女の言う通り、俺にはやるべき事がある。でも一つだけ、不安になっていることがある。それはこの魔法を使った事により、結婚以前の話になる。

「でも私、隠し事は嫌なんだ」

「それは悪かったよ。俺も隠すつもりはなかったんだよ」

「ううん、その事じゃない。私には分かるんだ、翡翠がもっと大変な事を隠しているんじゃないかって」

 それを分かっているかのように桜は、そんな言葉をかけてくる。

「そ、そんな事ないよ」

 俺はその言葉に動揺してしまう。この事は誰にも話していないのに、何故彼女には分かってしまうのか。やはり幼馴染だからなのか?

「じゃあ何で動揺しているの?」

「それは」

「まあ今話せとは言わないけど、いつかは絶対に話してよね」

「その時が来たら話すよ、多分」

 うんとは言えなかった。この事は誰かに話すようなものではない。こんな悲しい話をしたら、皆どんな反応するの目に見えている。だからせめて、命を尽きずに全てを終わらせたい。そうすればきっと……。

「じゃあ、私は先に寝るからね」

 俺のその答えに対して何も言わないで桜は城の中に戻っていく。少し経った後に城に戻ろうと立ち上がろうとした時、俺はある事に気がつく。

(あれ? 何で体が動かないんだ)

 そう、体が全く動けなくなっていた。しかもそれは誰かが意図的に束縛の魔法をかけたかのような感覚。一体誰が……。

「まさか本当に来るとは思っていなかったけど、こうも私の罠に簡単にかかってくれるとはね」

 どこからか声が聞こえる。この声はまさか……。

「この声マルガーテか。どこにいる」

「私はここですよ魔法使い」

 俺の目の前に姿を現わすマルガーテ。まさかこんな簡単に姿を現わすとは。

「あなたの師匠、ノアも逝ってしまわれたこの状況で、私に勝てるなんて思えるんですかね」

「そんなのやってみなきゃ分からないだろう」

「ならこの束縛魔法を解いてから、言ってもらえますか?」

「だがなマルガーテ、別に俺は一人で戦うつもりはないんだよ」

「何を今更……っ!?」

 俺を見下しているマルガーテに一閃が走る。こんな状況で誰かが来てくれるなんて、普通は思わない。だから俺は予め用意していた。

「ヒスイ様に手を出すなら、私が許しません!」

 途中からただならぬ魔力を感じていた俺は、こういう事態を避けるために、桜にノブナガさんを呼んでもらっていた。

「俺だって簡単に罠にはまるつもりはないんだよ、マルガーテ」

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