魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第97陣蘇る二つの悪夢
「私はリアラと申します。ヒスイとは一年間一緒に旅した仲間です」
あの炎の中から私を助け出してくれた人物、リアラさんという方だった。ヒスイ様の話の中にも何度かでてきたけど、確か彼女は治癒術師という仕事をしているはず。
「ヒスイ様が言っていましたけど、治癒術師というのをやっている方ですか?」
「はい。長年私は沢山の方の傷を癒す仕事をしています」
「でも何故その方が、私達の世界に?」
「それは後ほどヒスイも交えて説明させてもらいます。それよりお怪我の方は大丈夫ですか?」
「あ、そういえば……」
あの炎の中歩いていたから、それなりに火傷等をしていたはずだけど、今はその形跡すら見当たらない。
「もしかして治療してくれたんですか?」
「それが私の仕事ですから」
笑顔で言うリアラさん。第一印象としてはかなり優しい人みたいだけど、ヒスイ様の話によると裏があるとかないとか。
「そういえばここって、どこですか?」
「あの火災があった場所からある程度離れたところに、丁度いい小屋があったので、そこに避難しました」
「私を抱えて、あなた一人でですか?」
「はい。そうですけど?」
何を言っているんだと言わんばかりの顔をするリアラさん。もしかしてヒスイ様の言う裏って、この力持ちの事を言っているのかな。
「ところでノブナガさん、ヒスイに関して私から聞きたいことがあるんですけど」
「ヒスイ様の事ですか? 答えられる範囲なら大丈夫ですよ」
「ヒスイがノアさんと同じように、残りの命が少ないというのは本当ですか?」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「へっくし」
「どうしたの翡翠、風邪でも引いたの?」
「いや、多分誰かが噂しているんだと思う」
ノブナガさんが行方不明になってから間もなく一週間。ノブナガさんが確実に戻ってくるまでの間、徹底的にここの守りを固めないといけないので、今日は城の脆くなった設備などの強化を行っていた。
「もうすぐ一週間だけど、未だに有力な情報はないの?」
「一応捜査とか人を替えながら行っているんだけど、未だに掴めてないんだよ」
「でもさ翡翠がその時の事を思い出せれば、有力な情報になるんじゃないのかな」
「そうは言ってもだな、そんな簡単には……」
そう言いかけたところで、突然頭痛が起きる。
「痛っ!」
「頭痛いの? やっぱり風邪引いたんじゃ」
「そうじゃないと思う。何かこう記憶喪失の人がたまに起きるあれな感じの痛み」
「何その意図的に忘れているみたいな感じ。本当に大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だよ」
その後も何度か頭痛に襲われたけど、俺は全く気にしない事にした。
だけどその頭痛が、形になってしまったのはその日の睡眠中の事だった。
『全く。自分で燃やしたんですから責任取ってくださいよ』
ノブナガさんの声が聞こえる。すると突然身体は急激に熱さを感じた。
(この感じ、あの時の……)
気がつけばあの炎の中に俺はいた。出口間近で倒れてしまった俺は、ノブナガさんに抱えられている。あとは扉を開いて外へ出るだけなのだが、ここで屋敷が崩落し始め、上からは天井が降ってきた。
(ノブナガさん、危な……)
と心で叫ぼうとしたところで、何故か俺の身体は外へと投げ出されていた。
(え?)
「ノブ……ナガ……さん?」
そこで意識が一瞬だけ戻ったのか、俺は声を出している。そして俺が見る先には完全崩壊していく屋敷と、その中で取り残されながらも優しく微笑んでいるノブナガさんの姿だった。
「ノブナガさん!」
そこで俺の悪夢は覚めた。外はまだ暗い。
「はぁ……はぁ……」
とんでもない夢を見てしまった。この夢がもし、俺が忘れようとしていたものだというなら、ノブナガさんは……。
俺を庇って下敷きになって、死んでしまったのか?
それは俺が知るべきではなかった、あまりに過酷な現実だった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
悪夢にうなされ、更に過酷な真実を知ってしまった翌日、そんな俺に追い打ちをかけるかのようにさらなる事件が発生する。
「た、大変だよヒッシー!」
それはヒデヨシが俺の部屋に突然入ってきたことから始まった。
「何だよヒデヨシ……。俺は今お前の相手する元気はないぞ」
「そんな呑気なこと言っている場合じゃないよ! ヒナッチが……」
「桜が?」
ヒデヨシに連れられて桜の元へと向かう。するとそこには、何かに怯えているかのように肩を震わせる桜の姿があった。
「桜、どうした!」
「火……怖い……。私の……せいで……」
「おい、桜!」
異常なくらい震えだす桜に触れようとするが、手で弾かれてしまう。
「桜?」
「触らないで! ごめん、ゴめんね……」
泣きながら謝り続け、そしてそのまま倒れてしまった。これはもしかして……。
「ヒデヨシ、最近桜の目の前で火事とか何かボヤ騒ぎとか起きたか?」
「え? えっと、少し前に城下町で火災があって、それを消火には向かったけど」
「多分それだ」
「でもそれって、もう一週間以上前の話だよ?」
「そんなの関係ないんだよ。とりあえず桜を部屋に運ぶぞ」
この尋常じゃない怯え方、多分あれが影響している可能性がある。もしかしてヒデヨシが言っていた俺がいない間に桜がかなり怖がっていた事って、これの事なのかもしれない。そうだとしたら、
(早く何とかしないとまた……)
とにかく俺は大急ぎで、桜を部屋へと運ぶのだった。まさか自分の事で不安定になっているのに、こんな事が立て続けに起きるなんて……。
これはもしかしたら、人生で最悪の日なのかもしれない。
あの炎の中から私を助け出してくれた人物、リアラさんという方だった。ヒスイ様の話の中にも何度かでてきたけど、確か彼女は治癒術師という仕事をしているはず。
「ヒスイ様が言っていましたけど、治癒術師というのをやっている方ですか?」
「はい。長年私は沢山の方の傷を癒す仕事をしています」
「でも何故その方が、私達の世界に?」
「それは後ほどヒスイも交えて説明させてもらいます。それよりお怪我の方は大丈夫ですか?」
「あ、そういえば……」
あの炎の中歩いていたから、それなりに火傷等をしていたはずだけど、今はその形跡すら見当たらない。
「もしかして治療してくれたんですか?」
「それが私の仕事ですから」
笑顔で言うリアラさん。第一印象としてはかなり優しい人みたいだけど、ヒスイ様の話によると裏があるとかないとか。
「そういえばここって、どこですか?」
「あの火災があった場所からある程度離れたところに、丁度いい小屋があったので、そこに避難しました」
「私を抱えて、あなた一人でですか?」
「はい。そうですけど?」
何を言っているんだと言わんばかりの顔をするリアラさん。もしかしてヒスイ様の言う裏って、この力持ちの事を言っているのかな。
「ところでノブナガさん、ヒスイに関して私から聞きたいことがあるんですけど」
「ヒスイ様の事ですか? 答えられる範囲なら大丈夫ですよ」
「ヒスイがノアさんと同じように、残りの命が少ないというのは本当ですか?」
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「へっくし」
「どうしたの翡翠、風邪でも引いたの?」
「いや、多分誰かが噂しているんだと思う」
ノブナガさんが行方不明になってから間もなく一週間。ノブナガさんが確実に戻ってくるまでの間、徹底的にここの守りを固めないといけないので、今日は城の脆くなった設備などの強化を行っていた。
「もうすぐ一週間だけど、未だに有力な情報はないの?」
「一応捜査とか人を替えながら行っているんだけど、未だに掴めてないんだよ」
「でもさ翡翠がその時の事を思い出せれば、有力な情報になるんじゃないのかな」
「そうは言ってもだな、そんな簡単には……」
そう言いかけたところで、突然頭痛が起きる。
「痛っ!」
「頭痛いの? やっぱり風邪引いたんじゃ」
「そうじゃないと思う。何かこう記憶喪失の人がたまに起きるあれな感じの痛み」
「何その意図的に忘れているみたいな感じ。本当に大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だよ」
その後も何度か頭痛に襲われたけど、俺は全く気にしない事にした。
だけどその頭痛が、形になってしまったのはその日の睡眠中の事だった。
『全く。自分で燃やしたんですから責任取ってくださいよ』
ノブナガさんの声が聞こえる。すると突然身体は急激に熱さを感じた。
(この感じ、あの時の……)
気がつけばあの炎の中に俺はいた。出口間近で倒れてしまった俺は、ノブナガさんに抱えられている。あとは扉を開いて外へ出るだけなのだが、ここで屋敷が崩落し始め、上からは天井が降ってきた。
(ノブナガさん、危な……)
と心で叫ぼうとしたところで、何故か俺の身体は外へと投げ出されていた。
(え?)
「ノブ……ナガ……さん?」
そこで意識が一瞬だけ戻ったのか、俺は声を出している。そして俺が見る先には完全崩壊していく屋敷と、その中で取り残されながらも優しく微笑んでいるノブナガさんの姿だった。
「ノブナガさん!」
そこで俺の悪夢は覚めた。外はまだ暗い。
「はぁ……はぁ……」
とんでもない夢を見てしまった。この夢がもし、俺が忘れようとしていたものだというなら、ノブナガさんは……。
俺を庇って下敷きになって、死んでしまったのか?
それは俺が知るべきではなかった、あまりに過酷な現実だった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
悪夢にうなされ、更に過酷な真実を知ってしまった翌日、そんな俺に追い打ちをかけるかのようにさらなる事件が発生する。
「た、大変だよヒッシー!」
それはヒデヨシが俺の部屋に突然入ってきたことから始まった。
「何だよヒデヨシ……。俺は今お前の相手する元気はないぞ」
「そんな呑気なこと言っている場合じゃないよ! ヒナッチが……」
「桜が?」
ヒデヨシに連れられて桜の元へと向かう。するとそこには、何かに怯えているかのように肩を震わせる桜の姿があった。
「桜、どうした!」
「火……怖い……。私の……せいで……」
「おい、桜!」
異常なくらい震えだす桜に触れようとするが、手で弾かれてしまう。
「桜?」
「触らないで! ごめん、ゴめんね……」
泣きながら謝り続け、そしてそのまま倒れてしまった。これはもしかして……。
「ヒデヨシ、最近桜の目の前で火事とか何かボヤ騒ぎとか起きたか?」
「え? えっと、少し前に城下町で火災があって、それを消火には向かったけど」
「多分それだ」
「でもそれって、もう一週間以上前の話だよ?」
「そんなの関係ないんだよ。とりあえず桜を部屋に運ぶぞ」
この尋常じゃない怯え方、多分あれが影響している可能性がある。もしかしてヒデヨシが言っていた俺がいない間に桜がかなり怖がっていた事って、これの事なのかもしれない。そうだとしたら、
(早く何とかしないとまた……)
とにかく俺は大急ぎで、桜を部屋へと運ぶのだった。まさか自分の事で不安定になっているのに、こんな事が立て続けに起きるなんて……。
これはもしかしたら、人生で最悪の日なのかもしれない。
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