魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第110陣結託と迷走
師匠から思わぬ告白を受けてから三日後、俺はノブナガさんと共にある場所へ来ていた。
「久しぶりじゃのうノブナガ。先日は大変な目に合ったみたいじゃが、被害の方はどのくらいじゃ」
「城がほぼ全壊の状態ですよ。今一応直してはいますが、次何かあったら完全に駄目ですね」
「なるほどのう」
それは徳川家康の元だった。とは言っても、こちらが自ら向かったのではなく、向こうから手紙がつい先日届いて、
それに乗る形で今に至る。
「それでこの手紙に書いてある大事な話とはなんでしょうか」
「おっと、そうじゃった。先日お主達が治療してくれたおかげもあって、妾の体調も良くなり始めた事に感謝がしたくてのう。そのお礼と言っても何じゃが、徳川軍と織田で手を組まぬか? 勿論無条件で、じゃ」
「え? いいのか?」
以前一度イエヤスに頼んだ時には、なかば力づくで頼む形になってしまったけど(しかもイエヤスが倒れてしまったので、決着つかず)、今回は無条件というならそれは大変ありがたい。
「それはありがたいのですが、どうして急に」
「実はのう先日、ついにボクっ娘が闇触というものにかかってしまい、今や徳川軍の戦力はほんの一握りしか残っておらぬ」
「ボクっ娘が?」
この環境下で唯一なっていなかったのがボクっ娘だったので、いつかは彼女をも蝕むのではないかとさえ思っていた。
(やっぱりまだ終わらないんだな)
あれから五日、ボクっ娘がその間にかかってしまったのであれば、それはまだ力が残ってしまっている証拠。あの時マルガーテには大きな傷を与えたはずなのに、どうしてまたこんな……。
「お主達が襲撃にあっておるほぼ同時期に、実は妾達も同じような事態に陥っておった。魔物とやらにこの城が包囲されておってのう。何とか払いのける事はできたが、それと引き換えにボクっ娘はその目にあってしまった」
「私達が知らないところでそんな事が……」
「しかもその戦いでも大半の兵を失ってしまっておる。そして妾は分かったのじゃ。この戦い徳川軍だけではどうにもならぬと」
「それで今回の話を?」
「そういう事じゃ」
イエヤスの言う通り、今回の戦いは一つの軍ではどうにかできない戦いだ。それ故にこうした協定も必要となってくる。それにイエヤスの実力は身をもって体感しているので、いい戦力になるかもしれない。
「どうじゃノブナガ、ここは一つ妾徳川とお主の織田、一つ手を組もうではないか」
手を差し出すイエヤス。その手をノブナガさんはしっかりと握った。
「勿論ですイエヤスさん。打倒マルガーテの為にも、ここは一度手を組みましょう」
こうして徳川家と織田家の一時的戦線協定は結ばれたのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
安土城に戻って、ネネや師匠にその事を話した。二人ともそれには了承してくれたが、ヒデヨシの姿が見当たらない。
「ヒデヨシさんは、もう戦いに参加しないかもしれません」
「え? どうしてですか?」
その事についてノブナガさんに聞くと、彼女はそう答えた。もう戦いに参加しないって、どういう事だ?
「ヒデヨシさんは先の戦い以来、戦に参加する事に躊躇い始めました。私は彼女の選択を止めようとはしませんが、ヒスイ様ならいかがなさいますか?」
「どうするって言われてもな……」
俺もそれが本人の意志だというなら、止める事はない。ヒデヨシは何度も痛い目を見ている。特にマルガーテが俺達の目の前に現れ始めてからだ。戦う事が嫌になる気持ちも充分に理解できる。
「ヒデヨシがそうしたいなら、俺は別に止めたりしませんけど、何か引っかかるんですよね」
「引っかかるとは?」
「いや、ヒデヨシってそんな簡単に心が折れる奴だったかなって思うんですよ」
「それは私もよく知っています。それが溜まりすぎたのではないでしょうか」
「それはあり得ますけど」
そういえばここ五日くらいヒデヨシの姿を見ていない気がする。二日引き篭もっていたって事もあるかもしれないけど、他の皆もヒデヨシの姿を見かけていないらしい。
「お姉様なら先日どこかへ出かけるといって、城を出て行きましたけど」
その会話にネネが入ってくる。
「先日っていつだ」
「確か昨日の夜です。何かあったのか私はとても心配です」
「昨日の夜か。徳川のところから戻ってきた時は、姿は見えなかったけどな」
「ヒデヨシさんが一人でどこかへ出るなんて珍しいですね。やはり何かあったのかも」
「ちょっと俺、ヒデヨシの事探してきます」
「あ、ちょっとヒスイ様!」
話を聞くにつれて益々不安になってしまった俺は、ヒデヨシの捜索へ向かう事にする。
(どうしたんだよ、ヒデヨシ)
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
度重なる戦いと、その被害に私の心は壊れかけていた。こんな傷つくだけの戦いは何度もあったかもしれないけど、この戦いの先に何も見えない。
(ノブナガさん、ヒッシー……)
もう怖い目に合うくらいなら戦いも何もない、どこか遠くへ逃げたい、その気持ちがただただ私を動かしていた。
(ごめんなさい、私はもう……)
昨晩城を出て、もうすっかり夜は明けてしまっている。もうかなりの距離を私は走っているかもしれない。
でもまだ足りない。
もっと遠くへ逃げないと、また戦う事になる。
だから私はひたすら走り続けていた。
「そんなに逃げたって無駄ですよ」
突然耳に声が入る。この声はもしかして……。
「どこへ逃げても闇は纏わりつく。そう、今もこうして」
「え?」
私が乗っていた馬が突然足を挫き、バランスを崩してそのまま倒れてしまう。スピードの勢いもあってか、私は馬の上から飛び出しかなりの距離を吹き飛んでしまった。
「痛……」
走っていた場所が森の中だった事もあって、体を枝が擦ってしまい全身が痛い。そして私の目の前に一つの影が現れる。
「あなたはもう戦いたくないのですよね? それでしたらあなたは私の元でずっと僕として働いてください。そうすれば戦には出しませんから」
「そんな事……したくない」
「それでは死にますか? それ以外に答えはありません」
「うぅ……」
もう身体が動かす事ができない。このままだと私は……。
(誰か……助けて)
「久しぶりじゃのうノブナガ。先日は大変な目に合ったみたいじゃが、被害の方はどのくらいじゃ」
「城がほぼ全壊の状態ですよ。今一応直してはいますが、次何かあったら完全に駄目ですね」
「なるほどのう」
それは徳川家康の元だった。とは言っても、こちらが自ら向かったのではなく、向こうから手紙がつい先日届いて、
それに乗る形で今に至る。
「それでこの手紙に書いてある大事な話とはなんでしょうか」
「おっと、そうじゃった。先日お主達が治療してくれたおかげもあって、妾の体調も良くなり始めた事に感謝がしたくてのう。そのお礼と言っても何じゃが、徳川軍と織田で手を組まぬか? 勿論無条件で、じゃ」
「え? いいのか?」
以前一度イエヤスに頼んだ時には、なかば力づくで頼む形になってしまったけど(しかもイエヤスが倒れてしまったので、決着つかず)、今回は無条件というならそれは大変ありがたい。
「それはありがたいのですが、どうして急に」
「実はのう先日、ついにボクっ娘が闇触というものにかかってしまい、今や徳川軍の戦力はほんの一握りしか残っておらぬ」
「ボクっ娘が?」
この環境下で唯一なっていなかったのがボクっ娘だったので、いつかは彼女をも蝕むのではないかとさえ思っていた。
(やっぱりまだ終わらないんだな)
あれから五日、ボクっ娘がその間にかかってしまったのであれば、それはまだ力が残ってしまっている証拠。あの時マルガーテには大きな傷を与えたはずなのに、どうしてまたこんな……。
「お主達が襲撃にあっておるほぼ同時期に、実は妾達も同じような事態に陥っておった。魔物とやらにこの城が包囲されておってのう。何とか払いのける事はできたが、それと引き換えにボクっ娘はその目にあってしまった」
「私達が知らないところでそんな事が……」
「しかもその戦いでも大半の兵を失ってしまっておる。そして妾は分かったのじゃ。この戦い徳川軍だけではどうにもならぬと」
「それで今回の話を?」
「そういう事じゃ」
イエヤスの言う通り、今回の戦いは一つの軍ではどうにかできない戦いだ。それ故にこうした協定も必要となってくる。それにイエヤスの実力は身をもって体感しているので、いい戦力になるかもしれない。
「どうじゃノブナガ、ここは一つ妾徳川とお主の織田、一つ手を組もうではないか」
手を差し出すイエヤス。その手をノブナガさんはしっかりと握った。
「勿論ですイエヤスさん。打倒マルガーテの為にも、ここは一度手を組みましょう」
こうして徳川家と織田家の一時的戦線協定は結ばれたのであった。
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安土城に戻って、ネネや師匠にその事を話した。二人ともそれには了承してくれたが、ヒデヨシの姿が見当たらない。
「ヒデヨシさんは、もう戦いに参加しないかもしれません」
「え? どうしてですか?」
その事についてノブナガさんに聞くと、彼女はそう答えた。もう戦いに参加しないって、どういう事だ?
「ヒデヨシさんは先の戦い以来、戦に参加する事に躊躇い始めました。私は彼女の選択を止めようとはしませんが、ヒスイ様ならいかがなさいますか?」
「どうするって言われてもな……」
俺もそれが本人の意志だというなら、止める事はない。ヒデヨシは何度も痛い目を見ている。特にマルガーテが俺達の目の前に現れ始めてからだ。戦う事が嫌になる気持ちも充分に理解できる。
「ヒデヨシがそうしたいなら、俺は別に止めたりしませんけど、何か引っかかるんですよね」
「引っかかるとは?」
「いや、ヒデヨシってそんな簡単に心が折れる奴だったかなって思うんですよ」
「それは私もよく知っています。それが溜まりすぎたのではないでしょうか」
「それはあり得ますけど」
そういえばここ五日くらいヒデヨシの姿を見ていない気がする。二日引き篭もっていたって事もあるかもしれないけど、他の皆もヒデヨシの姿を見かけていないらしい。
「お姉様なら先日どこかへ出かけるといって、城を出て行きましたけど」
その会話にネネが入ってくる。
「先日っていつだ」
「確か昨日の夜です。何かあったのか私はとても心配です」
「昨日の夜か。徳川のところから戻ってきた時は、姿は見えなかったけどな」
「ヒデヨシさんが一人でどこかへ出るなんて珍しいですね。やはり何かあったのかも」
「ちょっと俺、ヒデヨシの事探してきます」
「あ、ちょっとヒスイ様!」
話を聞くにつれて益々不安になってしまった俺は、ヒデヨシの捜索へ向かう事にする。
(どうしたんだよ、ヒデヨシ)
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
度重なる戦いと、その被害に私の心は壊れかけていた。こんな傷つくだけの戦いは何度もあったかもしれないけど、この戦いの先に何も見えない。
(ノブナガさん、ヒッシー……)
もう怖い目に合うくらいなら戦いも何もない、どこか遠くへ逃げたい、その気持ちがただただ私を動かしていた。
(ごめんなさい、私はもう……)
昨晩城を出て、もうすっかり夜は明けてしまっている。もうかなりの距離を私は走っているかもしれない。
でもまだ足りない。
もっと遠くへ逃げないと、また戦う事になる。
だから私はひたすら走り続けていた。
「そんなに逃げたって無駄ですよ」
突然耳に声が入る。この声はもしかして……。
「どこへ逃げても闇は纏わりつく。そう、今もこうして」
「え?」
私が乗っていた馬が突然足を挫き、バランスを崩してそのまま倒れてしまう。スピードの勢いもあってか、私は馬の上から飛び出しかなりの距離を吹き飛んでしまった。
「痛……」
走っていた場所が森の中だった事もあって、体を枝が擦ってしまい全身が痛い。そして私の目の前に一つの影が現れる。
「あなたはもう戦いたくないのですよね? それでしたらあなたは私の元でずっと僕として働いてください。そうすれば戦には出しませんから」
「そんな事……したくない」
「それでは死にますか? それ以外に答えはありません」
「うぅ……」
もう身体が動かす事ができない。このままだと私は……。
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