英雄様の非日常《エクストラオーディナリー》 旧)異世界から帰ってきた英雄

大橋 祐

第33話 近くて遠い他人

 イムが目を覚ますと蒼月はいなかった。

「ご主人さま?」

 どこにもいない。
 念話で話しかけてみるが遠すぎるのか繋がらない。

 一体なぜ?

 思い当たる節を探すが見つからない。

 自分に何も伝えないことはおろか置き手紙すらない。
 おかしい。
 そう判断するのに長い時間は必要無かった。

「どうして?」

 絶対に返ってこない疑問を空に投げる。


 天宮家に急ぐ、今は夏休み。誰かしらいるだろう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「お兄ちゃんが消えた?」

 朝からのことを説明された愛月は不安を感じていた。
 兄が消えた。
 その事実だけで愛月の心は既に折れかかっていた。

 また。
 また兄が消えた。

 状況から察するにおそらく自分の意思。
 帰ってきてからまだ何もしてないのに。

「私も探す!」

 口が先に動いた。
 考える暇なんてない。
 だが、急ぐ余地などどこにもない。

 それでも。
 いや、だからかもしれない。

 少女はもう二度と失いたくないものを探し出す。

コメント

  • 伊予二名

    何故かスライムちゃんも置いていかれてる(´・ω・`)

    0
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