ノベルバユーザー156672

愛と罪

 1月8日 私はある事件に巻き込まれた。
私の名前は坂上春香。
看護学部に通う大学三年生。
いつものように学校を終えて
帰っている時、一台の車が私の方へと
向かって走ってきた。
スピードが落ちる気配はない。
「え?なんでこっちに…」
「きゃあぁぁぁぁ」
そこからの記憶はない。
目が覚めると病院のベッドの上

ピ ピ ピ ピ ピ
「あれ、私何してたんだっけ」
「痛っ」

「気がついた?」
母が泣きそうな顔で聞いてきた。
何があったのか全く理解ができていなかったが
さっきの車のことを思い出して
一瞬でことを理解することができた。

「大変だったわね」
「何か飲む?買ってくるね」

「お茶でいいよ」

母が病室から出ていった時
なぜか不安になった
足が動かないからだ。
怖くて怖くて震えが止まらなくなった。
足が麻痺していた。
看護学部に通っているだけあって
すぐにどうなっているのかがわかった。

ガラッ

「はい、お茶」

「ありがとう」
「お母さん、診察っていつ?」

「目が覚めてからとしか聞いてなかったわ」

「そう」

沈黙が続いた。
母も何を言えばいいのかわからないんだろう

「坂上さん?」
看護師さんが入ってきた。
「先生がお呼びです」

「はい」



コンコン

「入ってください」

「失礼します」

「先生、娘は大丈夫なのでしょうか?」

先生は顔をしかめた
「大変言いにくいのですが
   娘さんは足を麻痺しています
   もう治らないと思われます。」

「そんな、春香は車椅子生活に
   なるということですか?」

「そういうことになります。」

私はなんとなくわかっていた
だから悲しさよりも
犯人への怒りがこみ上げてきた。

「わかりました。覚悟はできています」
「それより犯人は捕まりましたか」

「ええ、捕まったわ、春香と同じ年よ」

犯人に会おう、そう思った瞬間だった

「お母さん、私、犯人に会いにいく」

「何言ってるの!」
母は怒っていた。
そりゃそうだ
でも私は決めた

「被害にあったのは私よ、私が決めることよ
   考えがあるの、警察署へ連れて行って」

私は母に自分の意思を伝えたことがなかった
から母は驚いたようだった
そして
大きな決断を許してくれた

「わかったわ」

車で警察署へ向かった

「こちらです」
刑事さんに連れられて
私は犯人と対面した。

怖さも少しあったせいか
私は下を向いていた。
相手の前で顔をあげ、

「はじめまし………」

自己紹介をしようとした時、
言葉が出なくなった。
私と同い年と聞いてはいたけど
まさか私の知り合いだったなんて

「はじめましてじゃないね。
   笑っちゃう。どうしてあいにきたと思う?」

彼は、高橋りきと。
私が高校時代好きだった人
許せない、許せないのになんでだろう
心がちぎれそうになるのは。

「誰でもよかったんだってね、
   警察官になる夢はどうしちゃったのよ
   それよりもそんなことを言いにきたんじゃないわ」
「対面時間はあと15分」
「私が今から提案することを聞いてね
   いや、命令よ、聞きなさい」

「あなたは私の足を奪ったの、両足をね
   あなたは私の足の代わりになるのこの先ずっと」
「懲役15年?バカなこと言わないで
   私は足を奪われた、なのに牢屋で15年すごし反省
   しただけで、許される、そんなことあるわけない」
「だから、15年たって出てきた時
   迎えに行くわ。そしたら結婚しましょう。」

私は自分がなにをいってるかわからないまま
言葉を続けた

「結婚式は盛大にね
  純白の白、真っ赤な赤そして黒、ドレスはその三色」
「人は沢山集める、みんなに見てもらわないと」

「ちょっとまってくれよ」
「かってに決めんなよ」

「何様なの?あなたは犯罪者よ」
「私はその被害者、だから命令する権利はある」
「これが罪の重さってゆうものよ」
「それぐらいわかりなさい」


「15分経ちました。面会は終了です」

「あ、はい!ありがとうございました」


「さっきのは約束よ、またくるね」

そうして私たちは約束をした。




「本日も面会でよろしいですか?」

「はい」

「こちらへどうぞ」

「またきたよ」
「今日はね、病院で友達ができたよ」

春も、夏も、秋も、冬も、
なんども会いにいったたわいのない話をしながら
私たちは少しづつ仲を深めた。

でも最後にいつも決まって私は言う

「あなたは犯罪者、私はその被害者」

「今日もありがとう、許しはしないよ、じゃあね」


そういって
15年が経った。

「迎えにきたよ」

「おう、悪かった」

「明日は結婚式よ、楽しもうね」

「ああ」

なんだか彼は乗り気じゃない
そりゃそうだ


2033年1月8日私たちは籍を入れた。
結婚式にはみんな呼んだ
中学校、高校、大学の友達
高校の先生も
そして議員、警察、記者
本当に盛大に行った

そこで、私は友達のスピーチのあと
私自身もスピーチをした。

「本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。
   みなさん、驚かれたでしょう。 
   いまから15年前、私はある事件に巻き込まれました。
   それはある車が暴走し、突っ込んできたというなんとも   
   残酷な事件です。被害者は3人いたのにもかかわらず 
   私だけが足を失うという重傷を負いました。
   その犯人はここにいる旦那です。
   彼は私の同級生でした。みなさん知っているひとも
   いるのではないでしょうか。
   彼は、犯罪者です。その被害者は他の誰でもなく私です
   それでも私は彼と結婚しました。
   彼は人として、してはいけないことをしました。
   もしかしたら私はここにいなかったかもしれません
   だけど私は一度、彼を本気で好きだったことが
   あります。だからといって許したわけではありません
   一生かけて愛してもらいます。一生かけて守ってもらい
   ます。一生かけて償ってもらいます。だから
   あなた、あなたの犯した罪は重いです。
   許しません。ずっと憎むでしょう。それと同時に
   愛するでしょう。私と残りの生活を共にしてください。
   そしてお母さん、お父さん、わがままいって
   ごめんなさい。私の意思を受け入れてくれてありがとう
   幸せになります!長々と失礼いたしました。みなさん  
   ありがとうございました」

彼の頬には涙が見えた。
あんなに嫌がってた彼が
涙を見せた。
彼だけじゃありません
みんなの目に涙が浮かんでいました。

事故から15年大きな決断と新たな一歩でした。
そこから私たち高橋りきとと高橋春香は
この選択を間違えたと思うことなく
幸せに過ごすことができました。
いつかは許せる日が来るのでしょうか。
この2人には他の人にないなにかが
あるのでしょう。

翌年、男の子と女の子の双子が生まれました。
そしてこの先、ずっと彼は私の足の役目を果たしてくれ、
すごく幸せな生活を送っています。
きっとあの事故はあってはいけなかったけど
私たちにとって大きなことに気づけるチャンスだったのではないかと、いまではポジティブに生きています。

「ままとぱぱってすごく幸せそうだね」
2人から言われた言葉に笑顔と涙がこぼれました。

「大好きよりきと」


「ああ、俺も、愛してます春香」



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