突然不死身という最強の能力に目覚めちゃいました

カナブン

学園トーナメント予選 終

「珍しいなこのご時世に機械使って闘うなんてな」

水谷が右手に装着した武器を見て思わずそう言ってしまった。

「お前がそれ言う?武器も能力も使わないで拳だけで戦ってるアンタの方がよっぽど珍しいと思うんだけどな」

水谷は言葉の終わりと共に勢いよく突っ込んで来た。
その動きは明らかに人間の速さではなかった一瞬の内に間合いが詰められる。そして鋭い剣先が玲の眼球の目の前まで迫って来た。しかしそれは眼球には届かずむしろ離れて行った。
思いのほか速かった攻撃に出遅れはしたが咄嗟に出した蹴りが見事に水谷のみぞおちにヒットしたのだ。
水谷は初めにいた場所まで吹き飛び両腕を地面につき胃液と血をぶちまけた。
敵とはいえ水谷その悲惨な状況に何故だか無性に罪悪感に襲われた。
四つん這いになり嘔吐する水谷の姿に耐え切れず玲は水谷の元へ駆け寄って背中をさすっている始末だ。

「おい、大丈夫か?なんかごめん、わざと狙ったんじゃないんだ、咄嗟に足出したら入っちゃっただけだから」

「ゲホォッ  ゲホォッ、あっりがゲホッゲホォッ!」

対する水谷も玲の親切を素直に受け取り礼を言っているもはや戦いなのか分からない様な状況になってしまった。
しばらくして水谷が段々と落ち着いて来たところで玲は誰にも聞こえないよう小さな声で水谷に話しかけた。

「なぁ、この戦いの決着は本戦にすることにして一旦引いてくれない?なんか誰かに監視されてるみたいなんだよね」

その話は水谷にとっては有り難い話だ、普通なら脱落だったところを見逃してもらえるのだ乗る他ない。

「え!?本当に?お前がそう言うんならいいけど・・・・本当にいいん?それお前になんのメリットも無いんだけど」

普通なら即答するところだが水谷はわざわざ利益の確認をして来た。

「ぷっ!お前やっぱ変わってんな、そんな確認とってどうすんだよそれこそお前にはなんのメリットも無いだろ、俺が考え変えたらどうするつもりなんだよw」

水谷の馬鹿正直な態度に思わず笑みがこぼれてしまった。

「その時は仕方ないでしょ、キッパリと諦める、だいたい瞬殺された上介抱までされた奴相手にもう闘う気は起きないし、それにさっきの蹴りだって加減してもらってなかったらリタイアどころか御陀仏するところだったみたいだし」

その答えは正直以外だった。まさかあの加減した蹴りを見破られるとは思いもしなかった。

「お前凄いな、あの状況で見破られるとは思わなかったよ、やっぱお前がとの戦いはまた今度にするわ、じゃあな負けんなよ」

水谷 悠、戦い方といいその態度といい他の奴らとは明らかに違う少しだけ興味が湧いた。


*     *     *     *     *


「・・・・・・・・はぁ〜〜〜〜っ」

玲が去った後水谷は近くの木にもたれかかり安堵の溜息を吐いていた。

「ミスったな〜、予想外だったまさかあそこまで強いとは、これなかったら完全リタイアだったな」

そう呟き服の下からプレートの様な物を取り出した。そこにはさっき玲に蹴られたときの足跡が付いていた。

「「縮小型衝撃吸収盤」500キロくらいの衝撃までなら通さないはずなんだけどな・・・・あいつ本当に人間かよ」

まだ痛む腹部をさすりながら誰もいないはずの場所で語りかけた。

「アイ俺は少し休む体の制御は任せた、くれぐれもやられんなよ」

それに応えたのは水谷が身に着けている機械だった。

「了解しましたこれより自動防衛モードに移行します。それではマスター良い眠りを」

首後ろに向かい制服の裾から黒い一本の線がまるで蔦の様に伸びてくるそして先端が平べったく変形すると水谷の首へ貼りついたそれと同時に水谷はまるで電源を抜かれたかの様に一瞬で眠りに就いた。

「自動防衛モードに移行しましたこれより防御壁の展開及び索敵を開始します」

水谷が眠る中装着された機械だけが独りでに動いていた。
腰につけたタンクが開き中から蜘蛛に良く似た機械が12機出て来たそしてその内の4機は水谷の周りに、残りの8機は水谷から離れ森の方へと向かって進んで行った。


*     *     *     *     *


数分後

森へ索敵に向かった一機が相手を確認した。そしてその情報は水谷の使用する機械全ての司令官であるマスターコンピューターのAIアイの元へと送られる。

「生体反応確認これよりデータの照合を開始します・・・・・・・照合完了「イイジマ タケル」能力プレッシャー勝率・・・・99%これより戦闘を開始します」

アイは索敵機の映像とデバイスデータを照合し相手を確認すると戦闘態勢に移行した。
戦闘態勢と言っても別に本体が動く訳では無い索敵用の機械を使って戦うのだ。

「A-Eドッキング ののちターゲットと戦闘を開始して下さいF.GはA-Eの補助、HはI-Lと合流後Iと共に再び索敵に移って下さい」

指示に従い12機の機械はそれぞれ行動を始める。
A.B.C.D.Eと見られる機体は一箇所に集まると一つに合体し蜘蛛から百足へと姿を変える、F.Gと見られる機体はターゲットである飯島の元へ近付くと気づかれない様その周りへ糸を張り始めた。Hと見られる機体は水谷の元へと後退しIと合流後再び索敵に向かったその際警戒範囲を狭めると共に四方八方へ黒い欠けらの様な物をばら撒いた。
残された3機はそのまま水谷の前に留まり電気の膜のようなものを張った。
そうしている間にもA-E機は飯島の元へと辿り着き戦闘態勢に入った。
水谷のデバイスと接続されているため百足型は自ら飯島に対戦を挑み攻撃を開始する。背中の一部が開き中から拳銃程の小さな砲台が姿を表せたらそしてまだ気づいていない飯島に向かい弾丸を放った。

ズキューン!!!

森の中に銃声が響き渡る、飯島はその音に驚き体勢を崩し運良く急所を避けた。
だが弾は急所は外したものの当たらなかった訳ではない肩を貫いていた。
予知しない奇襲に肩に受けた弾丸、飯島は体勢を立て直すべく後退しようと森の奥へ走り出す。
しかしその行動は詠まれていた。向かった先はさっきまで無かったはずの謎の糸により塞がれていた。逃げ道を探そうと辺りを見回すがよく見ると糸はグルっと一周飯島を囲っていた。
行き場のない飯島の元へ百足型が草木に隠れて忍び寄る。そして飯島の体に巻きつき強烈な力で締め付けた。

「グァァァァァーー!!!」

森一帯に飯島の叫び声が轟いくだがそれもそう長くは続かない締め付ける力は次第に強くなっていくそれとは逆に飯島の叫び声は弱くなっていき終いには消えてしまった。

ウウウウゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜!!

フィールド内にサイレンの音が響き渡るどうやら飯島が最後の1人だったらしく人数が16人に達し予選が終了を迎えた。残った16人の生徒達も次々に校舎へと呼び戻された。

*     *     *     *     *

予選が終了したため、まだ午前中だが帰りのHRが行われていた。
玲達のは教室でも担任の石田が締めの話をしていた。

「え〜みなさんトーナメントお疲れ、まぁ今日このクラスで戦ったのは神谷だけだから「神谷お疲れ」かな?
まぁともかくこれで予選も終了なんだが今年は例年より2日も早く終わった訳だ、この2日は校則により休みにします各自土日と合わせて4連休ゆっくりと休むように、以上解散」

石田の話も終わり玲はいつも通り早々と荷物をまとめ帰る支度を始める。

「か・み・や・く・ん♪」

急に後ろから肩を叩かれ振り向くとそこには戸田の姿があった。

「なんだ戸田か、なんかあった?」

「なんか素っ気ないな、数少ない友達がせっかく予選突破祝いに来てやったてのに何が不満なんだよ!」

「お前が男子って事かな、生まれ変わって出直して来い」

「マジか〜、全否定じゃんw冗談はさておきこの後時間ある?あのケース開けて見ようと思うんだけどさ」

戸田はやたらと楽しそうに話してくるあげるのが楽しみで仕方ないみたいだ。

「いいんじゃない?特に予定も無いし」

学校が早く終わった為予定なんてあるはずもない今やらなきゃいけないことも特にないので玲は誘いに乗ることにした。

「おっ!そうこなくっちゃじゃあ駅前のカラオケでいいな」

返事を聞くなり戸田は店の予約にスマホをいじり始めた。

「ねぇそれウチも一緒に行っていい?」

後ろの席まで聴こえていたらしく凛が話しに入って来た。

「いいねカラオケ代も割れるし男2人ってのもつまんないしね」

戸田はスマホの画面を見たまま応えると予約を終えたらしく立ち上がり「じゃあ行きますか」と歩き出した。するとまた玲達に声が掛けられる仁だ。

「玲、我等に隠し事など不要だろ、俺もついてくぜ」

こうして玲達は4人でカラオケへ行くことになった。









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