ボクの完璧美少女な弟子は変態すぎて手に負えません(笑)

花水木

夜は長いですね(長)


 誕生日パーティーも終盤に近づき、みんなの盛況が下がりつつある中、今まで様々な人に囲まれて祝福されていた瑞希さんが、一人寂しく隅の壁にもたれかかりながらボーッとしているボクに近づいてくる。

「今日は本当にありがとう。ハル君」

「いえっ、ボクはほんとに何も……」

 謙遜でも何でもなく、ただここに連れてくる役目しかしていないボクは、距離の近い瑞希さんにたどたどしく言葉を返す。

 横目で見る瑞希さんは今日も可憐で美しく、意識せずとも視線が吸い寄せられるようであった。
 すると、目がバッチリと合い、視線が交錯する。何だか気まずいボクは、顔を真っ赤にして視線をそらす。

「どうしたの?」

「い、いやっ。なんでもないです」

 ここで、『いや、ボクは君に見惚れてたんだよ』なんてキザなセリフが言えたのならボクもモテたりするのかなぁ、なんて空想を脳内で思考していると、不意に。

「二人で、抜け出しちゃおっか?」

 言いながら瑞希さんは、ボクの手をそっと握り、出口の扉の方に引っ張っていった。



 あれから数十分と経っていない今、ボクは服を脱ぎ、風呂場で体を入念に洗っている。
 泡まみれの体をシャワーの水で洗いながし、一息ついて目の前のガラスに映っている何とも間抜けな自身の顔を見ながら一言。

「……おかしい。……こんなことがあっていいものなんだろうか?」

 あの後、ボクが連れてこられたのは、とある寝室。
 そこには、二人くらいがゆうに寝られるサイズのベットがど真ん中に鎮座しており、ピンクの光がボクを何とも変な気分にさせてくる。
 いまいち状況を飲み込めず、ただ言われるがままについていったボクは、「お風呂、先に入る?」と聞かれて、上の空のまま首を縦に振った。

「お先、失礼しました」

「あ、うん。……私も入ってくるね」

 首にタオルを巻いたまま脱衣所から出ると、瑞希さんはベットの上で緊張した面持ちで座っていた。
 入れ違いになるように瑞希さんは風呂場に行き、ボクはベットにちょこんと身を縮めて座る。

 静まり返った部屋の中では、シャワーから出たお湯が体から滴り落ちる音が鮮明に聞こえ、それを勝手に脳内で妄想してしまい、余計に興奮してしまう。
 未だ状況が飲み込めていないボクも、だんだんと冷静さを取り戻し、事の重大さを理解してきた。

 やっとこさこの後起きる展開を把握した時には、風呂場のドアが開く音が聞こえてきた。
 ボクはベットから立ち上がると、いつも使っているカバンの奥底からいつしか兄さんに貰ったゴムの避妊具を取り出し、心の中で感謝を告げてからポケットにねじ込む。

 瑞希さんは自身の長い黒髪を乾かすと、ボクの横へ何も言わずに座り込み、ただひたすら時が流れていく。
 この沈黙に耐えられなくなったボクは、「……テ、テレビでもつけようか?」と震える声で言い、リモコンでテレビをつける。

『……アァン、アッ。アンアンッ。アァッ』

「えぇっ!?ちょっと、これ……」

「…………」

 テレビをつけて画面に流れて来たのは、なんと大人のビデオだった。
 ボクは慌ててチャンネルを変えるが、どれも同じようなもので、瑞希さんは顔を真っ赤にして画面を見えないようにと目を手で隠しているが、指の隙間からチラチラと盗み見ている。

「み、み、瑞希さん」

 赤い顔をしながら悶えている瑞希さんを見ていると、こちらも悶々としてきて、ついにはその場の衝動に身を任せてしまう。
 ボクは瑞希さんの肩を掴むと、後ろに押し倒し、そのまま覆いかぶさる。



 ……はてさて、ここまでは勢いでいってしまったものの、この後はどうすればいいのか?
 電気を消す?服を脱がせる?うるさいテレビを消す?

 わからない。わからない。わからない。
 こんな事に一回もなった経験のないボクには、わかりっこない。
 
 そう言えば、確か兄さんにこんな状況になった時どうすればいいかいってた気がする。
 
『いいか?晴人。初体験ってのはな、人生の中でも重大イベントの一つだからな。ドジ踏まないように俺様が教えといてやるよ』

 あの時の記憶がだんだんと蘇ってくる。

『まず部屋の中に入ったのなら、いきなりがっついて押し倒すんじゃなくて、まずは話をしてからだなぁ……』

 あれ?じゃあボク。もうすでにゲームオーバーじゃないの?

『まぁ、もしあるわけないとは思うが、すぐに押し倒してしまったのなら……』

 あぁ、よかった。何とか解決策を見出せそうだ。

『気合いで何とか頑張れ!』

 って、何のアドバイスにもなってないよ兄さん!



 とりあえず電気を消そうと、部屋の隅にあるボタンを押す。
 慣れないボクは照明を真っ暗にして、見えない足元を怖がりながらゆっくりとベットに近づく。

 流石に少しくらい光を照らしたほうがよかったかなと反省していると、ベットにボタンがあることに気がつく。
 ベットにも明かりがついてるんだと思い、ボタンを押すと、

「ぎゃあぁっ!」

「ハル君!?だ、大丈夫?……ねぇ、ハル君!?」

 ベットがグルングルンと回転しだし、そんなこと予想だにもしなかったボクは、足元をすくわれ頭から地面に落っこちる。
 かすれゆく意識の中、瑞希さんが心配そうにこちらを覗き、ボクは溢れかかった双丘を見て、笑顔で目を閉じた。
 

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