ボクの完璧美少女な弟子は変態すぎて手に負えません(笑)

花水木

脱衣トランプですと!?(脱)


 その後、刻一刻と夜も更けていき、時刻は午後九時となっていた。
 ボクはずっと寝ていたのだが、開けっ放しになったドアから聞こえる彩奈と瑞希さんの話し声で目覚める。

「私、もうそろそろ帰ろうかな」

「えー、もう帰っちゃうんですか?」

 なんだか彩奈がやけにテンション高く、瑞希さんを引き止めていた。

「もう夜も遅いし」

「そんなのここに泊まっていけばいいじゃないですか!」

「いやでも家の人に迷惑じゃ……」

「そんなことないですって、両親はほとんど帰ってこないし全然大丈夫ですよ!」

「そう?じゃあ泊まらせてもらおうかな」

「やったー!じゃあ私の部屋で女子トークの続きしましょうね」

「う、うん」

 彩奈のテンションに押されて、瑞希さんは戸惑いながらもこの家に一晩泊まることを決めたようだ。



 ボクは二人が彩奈の部屋で女子トークをしているうちに、一人でゆっくりと風呂に入る。
 風呂で全裸でばったり会ってしまうなどというテンプレ展開を防ぐために、ちゃんと鍵を閉めておいたボクは偉い。

 だがしかし、脱衣所に一人の人影が見える。
 その人影は一枚、また一枚と服を脱いでいく。

 ボクはその様子を見ながら、頭の中で激しい葛藤を繰り返す。
 さんざん悩んだ結果、ボクはバレないようにこっそりと風呂場への鍵を開けた。

 だってしょうがないじゃないか、ボクだって男の子だもん。
 ハプニングに見せかけるのは少々心が痛むが致し方ない。ボクは猛烈に見たいのだから、女の子の肌を!

 ガラガラッ

 扉が勢いよく開く。ボクはびっくりした風を装い、扉の方に振り向く。
 そこから現れたのは、ガッチリとした肉体美。

「んあ?なんだ晴人が入ってたのか?」

 兄さんが前を隠さず肩にタオルをかけながら、入って来たのであった。

「…………」

 歯を食いしばりながら無言で睨んでいると、兄さんは口に手を当てボクを指差し、小馬鹿にするように言う。

「えっ?もしかして期待してた?俺様じゃなくて彩奈か瑞希ちゃんかと思ったの??」

「う、うるさーい!!」

 ボクは半泣きになり、ずぶ濡れのまま浴槽から出て行った。



 そして一人で自室に戻り、ベットに横になる。
 一日中寝ていたのであまり眠気はないのだが、病気を治すには睡眠が一番だと思い、頭まで布団をずり上げる。

 すると案の定眠気が誘って来て、ボクはそれに身を委ねまた眠ろうとしていた。
 そんな時、なんの前触れもなくドアが勢いよく開く。

 そこから現れたのは、少し顔が赤く服が着崩れた、なんだか様子のおかしい瑞希さんだった。

「み、瑞希さん?どうしたんですか?」

「…………ハル君!」

「はい?」

「トランプしよ」

「へ?ま、まあ別にいいですけど」

 ボクがそう言うと、瑞希さんはトランプを配り出す。
 どうやら定番のババ抜きをするようだ。

「あーあ、負けちゃった」

「あの瑞希さん?何かあったんですか?」

 ババ抜きの最中も虚ろ虚ろしている瑞希さんを不審に思い問いかける。

「なんかねー、彩奈ちゃんからもらったお菓子食べてたら、なんだか気分が良くなってねー」

 瑞希さんは上機嫌でポケットから件のお菓子のゴミを取り出す。

「ちょ、これウイスキーボンボンじゃないですか!?」

 ポケットから出したゴミは大量で、これを一人で食べたのならこうなってしまうのも少し納得した。
 そして瑞希さんは、いきなり羽織っていた服を一枚脱ぐ。

「言い忘れたけど、負けたら一枚脱ぐことね」

「ええっ!?」

「うふふ、ハル君も彩奈ちゃんと同じようにひん剥いてあげる」

 瑞希さんは虚ろな目で、ボクの股間を凝視してきた。

「それじゃあ脱衣トランプ開始ー!」



 それからボクと瑞希さんは一進一退の攻防を繰り広げ、瑞希さんはtシャツ一枚、ボクはパンツ一枚になった。
 ボクの持っているトランプの残り枚数は一枚、瑞希さんが二枚持っていて、ボクがジョーカーでない方のカードを引くと勝利である。

「瑞希さん。いきますよ」

 と、言いながら右のカードを掴むと、瑞希さんの表情が一気に曇る。
 左のカードを掴むと、歓喜に満ちた表情になる。

「くそったれー」

 ボクは左のカードを涙を飲んで引き抜いた。
 それは予想どうりジョーカーだったが致し方ない。
 もしもこの場でボクが勝ち、瑞希さんの下着姿を見たとしても、のちに酔いが覚め瑞希さんが傷つくのは嫌だからだ。

「やったー私の勝ちだー」

 直後ジョーカー出ない方のカードを引かれ、ボクは負けてしまう。
 だが、ボクは自分の選択に一片の悔いはない。

「し、仕方がないですね。ボクも男です覚悟を決めました」

 ボクは腹をくくり、瑞希さんから目を背けてからパンツをずり下げる。

「…………」

「み、瑞希さん?もうパンツをあげてもよろしいでしょうか……」

 恐る恐る目を開くと、瑞希さんは壁に寄りかかりながらすやすやと寝息を立て眠っていた。

「なんだ寝ちゃってたのか」

 刹那、不意に部屋のドアが開く。

「……晴人、俺様も無理やりってのは感心しないぞ」

 寝ている女の子にいたずらしそうなこの状況を見て、兄さんはボクに冷ややかな目を向け言い放った。

「いや、そんなんじゃないから!」

 その後必死に弁解したが、誤解が解けることはなかった。

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