チート・ご都合主義いらないけどハーレムいります

平涼

番外編10 セシリアVSシア

 ~セシリア視点~

 ......まさか巫女の力を使ってまで勝ちにくるのか。

 私もリリアの言う通り確かに第一の妻の座は欲しい。だけどそこまでして欲しいとまでは流石に思わない。

 だけどシアが本気で行くのならいくしかない。

 「シルフ。力を貸してくれ」

 「初めに言っとくけど巫女に勝てる可能性は低いからね」

 「分かってる」

 シアは杖を取り出し、超級を放つ。だがここで問題なのがシアの場合、全種類の超級を同時に放ってくるからこそ対処が普通なら無理だ。

 ならば、出来る所だけを回避すればいい。

 土、水、風の超級はシルフの龍級で防ぎ、火だけは躱す。

 「流石ですね。普通ならこれで終わる筈なんですけどね。やっぱりセシリアも第一の妻の座が欲しいんですね?」

 「違う。流石に無様に負けるのだけは嫌なんだ」

 だってそうだろう。弱くてレイに幻滅されることは無くても、私自身がそれを嫌だ。

 ならどうするのか。ここで勝つか善戦するしかない。

 「それなら勝ってみてください!」

 シアは更に超級の数を増やす。

 「シルフ、防げるか!?」

 「ギリギリと思うわよ!」

 シルフの力を借りて風の防御壁を作る。

 そうする事で攻撃は風により跳ね返る。

 「そうきましたか!」

 シアはすぐさま同じ数の超級を放ち、防ぐ。

 もしかすると、巫女になったら魔力量も増えるのか?流石にあれだけの数の超級を何度も使えば、魔力がもつわけがない。

 だが、実際シアは平然としている。

 このままじゃヤバイな。シルフの力を借りて、シアに攻撃をしても相性の悪い魔法が出れば分が悪い。

 魔法使い同士の戦いで勝つには、相手が防げないような一手を使うしかない。

 シアが知らない魔法.....ある。あれならいけるかもしれない。

 私は風魔法を圧縮させる。これを地面に放ち強風を放つ。

 「何のこれしき!」

 シアは見たことも無い魔法に少し驚きながらも耐える。だが、私はこれだけでは終わらない。

 「ライトニング!」

 あの時レイとタキシムの戦いを見た魔法、これならいける筈だ。

 「な!?」

 シアは迫ってくる雷に驚き対処に遅れる。だがそれでも火の上級魔法で防いでくる。

 その隙を見逃すわけにはいかない。私は風の龍級を放ち、勝つ......。

 ......待て。私はここで一つ最高の終わり方を思い付いた気がする。

 「審判!私は棄権する!」

 「......へ!?え、ええとセシリア選手棄権の為シア選手の勝ちです!」

 彼女は終始私達の実況をしていない気がするが別に構わないだろう。観客も戦いは素晴らしいものだったのか棄権しても拍手を送ってもらった。

 偶にはこういう歓声を浴びるのも悪くはないな。

 そう思っていると、シアが近付いてきた。

 「......どうして棄権したんですか。もしかして情けを掛けたんですか?」

 シアは若干怒りながらこちらを睨む。だが、私はそんなつもりはない。

 「情けを掛けた訳じゃない。私はこれが最善の手だと思っている」

 「どういうことですか?」

 シアは第一の妻の座を気にするあまり今の状況を理解出来ていなかったらしい。まあ、私も先程気付いたんだがな。

 「今に分かるさ」

 私は風魔法を足に放ち、観客席に行く。

 「「「あああ!その手があった!」」」

 シアの他にリリアとマリ―の声が聞こえた。ここでようやく分かったのだろう。

 私が棄権した理由は簡単だ。今の魔力ではどうせ決勝では勝てないと思う。ならばここで潔く負けた方が良いと思うのが一つ。そして、今現在レイの周りには誰もいない。要するにいつもは独占出来ないが、今回一人で独占出来るという事だ。

 更に言えば、

 「シア選手!勝った方は控え室に戻ってください!失格になりますよ!」

 「そんな!少しぐらいいいじゃないですか!」

 実況の人とシアが揉めている。

 これが最大の理由だ。私は勝ちが確信した時こう思った。もう善戦はしている、そして今の状況なら独占出来ると。

 だが、これをあの三人はしないだろう。理由は明白だ。今棄権してもレイを独占出来るわけではない。ならばまだ第一の妻の座を奪った方が良いだろう。

 「.....レイ。今日だけは一人占めしていいか?」

 レイは少し驚きながら、察したのか、

 「いいですけど、それは明日でもいいですか?」

 「どういうことだ?」

 レイはその返事に不適な笑みを浮かべるのだった。

 ~レイロード視点~

 シアとセシリアの戦いを見て思った。

 このまま、マリーとリリアが戦えば明らかに体力をどちらも消費する。多分シアも平然としているが結構魔力がない筈だ。

 本選は一日空けない為、決勝もそのまま行われる。

 だが、このまま戦えば折角の決勝があまり面白くなくなってしまう。

 立ち上がり、実況の所に向かう。

 「あの、ここは関係者以外立ち入り禁止なんですが」

 実況の人は困ったような表情をしながら言ってくるがこれはあなた方にも良い話だから許して欲しい。

 「あの、俺から提案があるんですけど、明日今いるメンバーで三人で戦う事とか出来ないですか?」

 「ええと、それは無理です」

 実況の人も俺が言いたい事が分かったが返事は駄目だった。

 「どうしてですか?」

 「私達も最初は本選を二日に別れてやった方が良いかと思っていましたが、この会場で試合を見るのには結構お金が掛かるんですよ。なのに何日も繰り返してやると批判の声が殺到するんです。何度もお金を取るのかと」

 成る程。確かにそう言われると分かる気持ちもあるんだが、折角なら良い試合が見たいじゃないか。

 「すいません、ちょっとだけ時間ください」

 俺は実況席から大声を出す。

 「今のような最高な試合が見たいか!?」

 これに観客は盛り上がる演出だと思ったのか乗ってくれる。

 「「見たいぞ!!」」

 「ならば明日この会場にいる三人は今の戦いよりも凄い戦いを見せてくれる。万全な状態で戦う所を見てみたいか!」

 「「見たい!!」

 「ならば明日に試合を開始する!最高な試合だぞ!」

 「「うおおおお!!」」

 今以上の試合が見れるとなり会場のテンションはマックスだ。

 分かるだろうか。テンションが上がると冷静に考える事が出来なくなる。

 冷静に考えれば、お金もかかるし今日見れればそれでもいい気がすると思う輩も普通はいるものだ。だからこそ会場が湧けば冷静な判断が出来なくなり大丈夫と思ったが案外上手くいったな。

 「これなら文句は出ないと思いますよ」

 「あなた、実況者になりませんか?」

 「遠慮しときます」

 意外と本気で言っているようなのできちんとお断りをしておく。現在俺の次の仕事は教師になろうと思っているからな。

 そして明日ここで前代未聞の三つ巴の戦いが始まるのだった。





 

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