チート・ご都合主義いらないけどハーレムいります

平涼

第九十六話 犬神・狼神の説得

 ~修行の合間~

 俺は現在タマと一緒に獣人の森に行くことに決めた。

 それは邪神との戦いで人族が信用できないからだ。自分が人族なのにそれを信用できないって言うのもおかしな話だがこればっかりはしょうがない。人族に裏切り者がいるのだから。

 タマを触りながら森に入る所までは成功した。

 これからが問題だ。俺は戦争に参加してくれと頼みに行くのだから。そう簡単に行くとは思ってないが一応考えはある。

 俺はミラさんに助けを求めようと思い、村の門番の人にミラさんが何処にいるか聞く。

 「すいません。ミラさんは何処にいますか?」

 「ミラなら自分の家に居ると思うが話が出来る状態じゃないぞ」

 「何かあったんですか!?」

 ミラさんに何かあるのは俺は全く知らなかった。

 「いや。病気とは聞いてないんだが、何故かずっと自分の家から出てこないんだ」

 何があったんだ?俺は全く分からないが自分で確認した方が速いと思い、向かう事に決めた。

 ミラさんの家の前まで行き、

 「ミラさん。いますか?」

 俺がそう呼んだ瞬間だ。

 ドアがおもいっきり開けられ俺はドアに直撃してしまった。

 こんな事本当にあるんだな。

 俺は当てられた額を抑えていると、

 「すいません!大丈夫ですか!?」

 ミラさんが慌てて俺に駆け寄ったのだが、

 「ミラさん。今日は可愛らしいパジャマですね」

 水玉模様のパジャマを着ていた。これは当分家を出ていないのかもしれない。

 「へ!?あ!すいません!今すぐ着替えてきます!」

 急いで自分の家に戻って行った。

 「なあ。ミラさんって外にでてこないんじゃなかったけ?」

 「私に聞かれても困るニャ」

 それから着替えてきたミラさんが顔を赤くしながら現れた。

 「......大変すいませんでした」

 「いえ。それは構わないんですが、ミラさん大丈夫なんですか?ずっと家から出てないって先程聞きましたけど」

 「......それに関係ある張本人に言われるとは」

 ミラさんは小さな声で言ったが俺は難聴系ではない為はっきりと聞こえてしまった。

 そして何故家に引き籠っていたのかが分かってしまった。だがミラさんは聞こえないように小さく言ったのだ。敢えて気付いて何かを言わなくてもいいだろう。

 俺は敢えてスルーして話を進めようと思ったがここで空気を読まない一匹の猫が、

 「あっ。ご主人様。ミラはあの別れの時の事で引き籠っていたに違い無いニャ」

 ほんとに空気を読んで欲しい。

 「猫神様!敢えて言わなくてもいいですから!」

 顔を真っ赤にして叫ぶミラさん。もう話したものはしょうがない。俺もきちんと話そう。

 「ミラさんの事は呼ぼうと思ったんですよ?ですけど最近忙しくて無理だったんですよ」

 「.......そうだったんですか」

 ミラさんは何だか安心したようで気を取り直したようだ。

 「ご主人様。いつかリリア達に刺されても私は知らないからニャ」

 そんな本当にありそうな話は怖いから止めて欲しい。

 「それでどうして今日はここに来たんですか?」

 本題に入った事で俺はお願いを話した。

 今回邪神が戦争を起こそうとしていることはここにいる人も知っているようだった。

 だがムー大陸という事で関係ないとなっているらしい。

 そして俺は狼神達を説得して一緒に戦争に参加してくれるようにして欲しいという事をミラさんに伝えた。

 「私は全然構いません。.......それに戦争に勝ったらレイさんは忙しくなくなる。ていう事は」

 何だか後半ぼそぼそと言って聞こえなかった。難聴系ではないがあそこまで小さいと流石に聞こえない。

 「行きましょう!今すぐ犬神と狼神達を説得しましょう!」

 ミラさんは何故か先頭に行き、一人やる気を出している。俺もその後をついて行くときに、

 「私のおかげニャ。これで死んだふりの件はチャラニャ」

 タマがぼそっと俺にそう言ってミラの隣に行った。

 ......あいつ。空気をよまないんじゃなくて、ミラをやる気にさせる為にわざと。

 「ありがとな」

 俺は聴こえてないかもしれないけどそう言うのだった。

 「断る」

 「俺まだ何も要件言ってないんですけど」

 俺達は犬神と狼神が一緒にいる所まで行ったのだが、要件を言う前に断られてしまった。

 「わしの能力を忘れたのか?お前さんの考えとることは分かっとる。戦争じゃろ?断るぞ」

 そういえば犬神は人の考えることが分かるんだった。狼神の方も意見は同じなのか口出しはしない。

 「ちょっと待ってくださいよ。俺の説得についても読み取ってそれで断っているんですか?」

 「なんだそれは?ワシはもうお前さんが戦争を参加させてほしいという事が見えた時点で読みとることは止めた。あれは結構つかれるんだ」

 ならまだ説得の余地はある。

 「ならせめて話だけでも聞いてくれませんか?あなた方の暇つぶしだと思って」

 「わし達はお金なんぞで説得は出来んぞ。人族はお金を払えば何とかしてくれるかもしれんがわし達が求めるのは平和だ」

 「お金ではないので聞いてくれませんか?」

 「......少しだけだぞ」

 犬神は何とか少しだけ聞いてくれるようで、狼神も黙っていることから言っても大丈夫だろう。

 「一つ考えてください。もしもムー大陸が邪神によって無くなったら次は邪神は何処を目指しますか?」

 「それはメルニア大陸だろうな。それぐらい俺達だって分かっている。だがこの森だけは大丈夫だ。結界があるからな。魔物は通れても魔人は通れない」

 これだけで納得するとは俺も思ってない。

 「そうですね。だけど考えても見てください。今はこの結界は破られていない。ですが未来はどうですか?」

 「この結界が破られるとでも言うのか?在り得ない話だな」

 「本当にそうですか?今は結界を破る魔法は無いかもしれません。ですが未来は分かりません。もしも結界を破る魔法を邪神が発明したらどうしますか?その時にあなた方だけで勝てるんですか?無理でしょう。それなら勝てる可能性が高い今戦う事があなた方が願う平和に近づくんじゃないですか?」

 「......だが邪神がここを攻めるか分からないだろう」

 「それは絶対に来ると断言できます。なぜならあの邪神は世界征服をすると言ったんですよ?それなのに中途半端に終わりますかね?絶対終わらないですよ。必ずどうにかしてここの結界を壊しにきますよ」

 そこで犬神は考え、

 「......俺の負けだ。我ら犬人はお前に力を貸す」

 「俺は反対だ」

 そこで一番説得が出来ると思っていた狼神が反対した。

 「どうしてだ!?このレイロードが言うことはワシでも正しいと分かったぞ」

 犬神もその答えに驚きを隠せないようだ。狼神は俺を見て、

 「こいつの態度がさっきから気に食わん。まるで自分に従って戦わなければお前達の事は知らんと言っているような態度が。それにこの戦いに勝ったら本当に平和になるのか?そうではないだろう。勇者の頃もそうだった。覇王を倒しても未だ平和にならずに次の勢力が暴れだすんだ。今回もそうに決まっている。ここで俺達が戦争に参加しても結局は新しい勢力が暴れだすんだ。そう思わないか?」

 「確かにそうかもしれませんが今戦わない理由には」

 「今俺はこのレイロードに聞いている」

 ミラさんが何かを言う前に狼神は止める。俺はその問に対して答える前に確認したいことがあった。

 「狼神が以前の役目と言うのは平和になるまでですか?」

 「ああ。そうだ。その役目がいつ来るのか分からないがな」

 それが聞ければ十分だ。

 「俺の師匠である勇者が以前言ってたんですけど」

 俺が言う前に犬神が遮って、

 「ちょっと待て。勇者はもう死んでいるのではないのか?」

 「生きてますよ。その件に関しては今は生きているという事だけ分かってくれたら大丈夫です」

 「その勇者がどうしたんだ?」

 狼神がそう言ったので続きを話す。

 「師匠に俺は以前聞いたんですよ。師匠でも邪神は倒せないのかって。けど師匠はまず邪神と戦ったことが無いって言ったんです。何でか分かりますか?」

 「知らん。負けると思ったからじゃないのか?」

 俺も最初はそう思ってたんだよな。

 「理由は俺の役目は邪神を倒す事じゃなくて覇王を倒すことだって決めてたからだそうです」

 「何が言いたい」

 「要するに区切りが必要なんですよ。師匠は覇王を倒して平和になった所で自分の戦いは終わったんです。それ以上は邪神とは戦わず、もしも戦いたいと言う人がいるのなら助言も手助けもする。だけど邪神を倒すのは他の誰かでだ。それが今のあなたにも言える事です」

 「意味が分からない」

 「簡単に言うと、師匠は自分がこれ以上戦って邪神を倒してもその後自分達が死んだあとはどうするのかって言ったんです。もし次の勢力が現れたとき自分が戦えなかったらどうするんだ。その場で何も出来なくて死ぬのかって。だからこそ師匠は自分はあそこで引退して剣術を教えたり、手助けをすることに決めたそうです」

 「遠まわしに言わずにはっきり言え!」

 狼神の気配がとてつもなく怖い。だけどこれは遠まわしに言った訳ではないのだ。必要な話だ。俺は今までの話を踏まえて狼神に言った。

 「だからこそ狼神。あんたもここを区切りにしませんか?」

 「お前は俺にこの戦争をきっかけに狼神を止めて自由にしろって言うのか?」

 「そうです」

 「無理に決まっているのだろう!もしも俺が引退したらその後......」

 狼神は俺が何であんな事を言ったのかようやく理解出来たようだ。

 狼神が言いたいことは誰でも分かるだろう。もしも自分が引退した時にその後の狼人達はどうするのかと言いたかったがそれは俺が先程言ったことだ。

 「その後の獣人についてはその人たちにしか分かりませんよ。あなた達も不老不死ではないんです。もしもあなた方が死んだとき獣人が何も出来なくて滅亡でもしたらそれこそあなた方の努力が報われないじゃないですか。だからこそ狼神も今が区切りをつけて誰かにその狼神の椅子を渡すべきなんです」

 一瞬の静寂が流れ、

 「......まさかこんな小僧に気付かされるとは思わなかった。気に入った。狼人も協力しよう」

 「ありがとうございます。それにこれは言ってませんでしたが獣人達を説得する場合、この戦争に勝ったら自分達の居場所が増えると言ってください」

 「どういうことだ?」

 俺はあの説得で無理だった場合はこれを言おうと思っていた。

 「メルニア大陸では獣人達がいてもなんら不思議ではありません。ですから俺が獣人達をそこでも楽に住まわせてあげるようにメルニア王国の王に助言します」

 「お前にそんな力があるのか?」

 犬神は俺にそんな力があるとは思っていないようだ。俺も前まではなかった。

 「俺はここで龍人達を倒しています。その恩で大丈夫です。それにこの戦争であなた方獣人が活躍したと俺が広めます。すると人族も簡単に獣人が怖くて手が出せない筈です」

 あの国で、俺が龍人と戦っている所を会場にいる人に見られている。だからこそ俺達が泊まっていた宿に多くの感謝状やお金が来ており、その中に王からの感謝状も来ていた。だからこそ大丈夫だ。

 「何処までも抜かりが無いの」

 犬神が感心したように言う。

 「ほんとに気味が悪いぐらいだ」

 酷いな。だがこれは俺だけが考えたんじゃないんだよな。

 俺は平凡な高校生だった男だ。そんなにも考えが思い付くわけがない。狼神については戸惑ったが、他については沢山の人と意見を出し合ったりして考えた事だ。

 「ですからここで同盟を組みましょう」

 そこに誰も反対する人はいなかった。それからは入念に打ち合わせをして俺はここに獣人という手助けを得るのだった。

 ~狼神~

 まさか俺が説得されるとはな。だが悪い気はしなかった。それよりいい気分だった。

 「獣人の力を見せてやれ!」


 狼神の叫びに獣人全員が叫びをあげ少数でこの戦況を乗り切ろうとしていた。

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