チート・ご都合主義いらないけどハーレムいります

平涼

第八十二話 シアの隠された力・アンリの思い

 私は今ままでずっと何かの命を奪うことを躊躇っていた。それが悪人であろうとも。

 だけどもう躊躇わない。それが今の幸せな日々を崩そうとしている人がいるのなら私はその人を許さない。

 「......あんた。その力が使えた」

 「今自分にある枷を外したようなものですよ。ではいきます」

 私はアンリさんの声を遮った。 私には今まで無かったはずの杖があった。それをアンリさんに向けた。

 「ちょっ!」

 アンリさんがそれを言う前に私は全属性の超級を生み出した。

 その全てを放つ。

 「キャア!」

 アンリさんはガード出来ずに殆どが当たってしまった。

 「これは先程のお返しです」

 私はそれからアンリさんに近づこうとすると、アンリさんは瞬時に後ろに下がった。

 「あんたにこれは破れない!」

 アンリさんは再び分身魔法を使った。

 だが私は先程の戦いで不自然な所があった。なので分身魔法の攻撃を一撃だけ受ける。そこで分かった。

 「あんたの分身魔法の弱点が分かりましたよ」

 それにアンリさんの表情が少しだけ強張る。

 「そんなものはないわ!」

 そう言ってまたしても全員で攻撃してくるのだが、

 「何故あんた自身が攻撃してこないんですかね?」

 それにアンリさんは表情を冷静に保っているつもりかもしれませんが少しだけ強張ったのが分かります。

 「それに何故あんたはあの時の攻防で私に超級を放つまでは良かったんですが、周りの分身魔法を消してしまったんですかね?消さなくて周りからも攻撃した方が完璧だと私は思うんですが」

 私はそう言ってアンリさんに微笑むと悔しそうな表情になっていた。

 「いつからこの魔法の弱点に気付いたの?」

 「先程あんたの分身の攻撃を受けてです」

 あれを食らって明らかに威力が弱い事が分かった。

 あの分身魔法は完璧に見えて実は明らかに弱い。まず分身して攻撃する代わりに力が四等分され本人が攻撃出来ない。それに加え威力が弱い。

 だけどその分実力が自分より上の人には有効だったのだろう。この人は私が全て防ぐ事を分かってたのだろう。だからこそ最後の一撃に賭けたのだろう。 だからアンリさんは私に攻撃する時に分身魔法を解いたのだ。

 だけど一つの誤算は私にこの力がまだ使いこなせていないと思われていたこと。

 二つ目が後に残っているセシリアの事を考えての事だろう。

 それもあってこの人は最後の詰めを怠った。

 「もう降参しますか?」

 出来ればこれ以上私は誰かを傷つけたくない。

 「はっ。誰がするもんですか!私は最後まで魔王様に仕えると決めています」

 「そうですか。では私の幸せの為です」

 私は超級の全属性をもう一度更に数を増やして攻めた。

 その数にアンリさんは防ぐ術がなく直撃し倒れていた。

 私は巫女の姿を解除すると元の服に戻り、服がアンリさんの攻撃で殆どボロボロでした。だけどそれを気にしている場合じゃない。私はこの人に聞きたいことがあった。

 「どうして戦争してまで私を連れ去ろうとしたんですか?」

 それにアンリさんは倒れながらも答えてくれた。

 「.......あの戦争はあんたを捕まえる為のものじゃないわ」

 私はそこで不思議に思った。ならば何故戦争をする必要があったのか。

 「.......私たちはあんたという存在を探す為に魔王様に変身魔法をかけてもらいアドルフ王国に潜伏していた。だけどあの戦争は違うわ」

 「ならなぜ?」

 「.......あれは魔王様の独断と聞いていたわ。それに戦争なら私達幹部がいないとおかしいでしょ。戦争に私達も出ようと思ったけど魔王様にこれは自分の独断だからお前達はここに残ってくれって言われたのよ」

 意味が分からない。何故魔王はそんな独断で戦争なんて。そこでアンリさんはため息をついて語った。

 「ほんと意味が分からない人生だったわね。アドルフ王国にメイドとして侵入したらちんけな村に連れて行かれてちんけな小娘のメイドになるし、村の襲撃に巻き込まれるし」

 そう言って最悪と呟いていた。

 「本当にそう思ってるんですか?」

 「......どういう意味よ」

 この人は気付いてない。

 戦闘が始まる前に自分で言った言葉を。

 「アンリさん。あなたは勝負が始まる前にリリアの話題が出たときに『リリア様』と言ってませんでしたか?最悪な主の事を未だ様を付けるとは思いませんがね」

 私はもう一個疑問がある。

 何故この人はもう一人の幹部の人と二階で待ち伏せを行わなかったのか。

 このアンリさんの魔法は集団戦でこそ明らかに強い筈なのにだ。

 私がそれを言った瞬間にアンリさんはそっぽを向いた。

 私はそんなアンリさんに聞いた。

 「本当はリリアと戦いたくないから三階にいたんじゃないんですか?」

 これはまあ賭けだろう。ただ一階であの人がいるからリリアが止まってくれると思ったのかもしれない。

 「あーあ。もう本当最悪ね。丁度いいから愚痴に付き合いなさいよ。どうせこんだけダメージ食らったから長くはもたないと思うし」

 それにセシリアも頷いて聞いてあげることにした。

 アンリさんは元々弱い魔人で誰からも見下されるような存在だったらしい。そして、そんなアンリさんにさんを偶々魔王様に助けてもらい、魔王様と幹部あの二人で一緒に魔王城を建て幸せに暮らしていた。だが邪神が現れこの魔大陸を支配しようと考えたらしい。

 それをどうにか食い止めたかった。

 そこで遥か昔から記憶を残して、生き残っている巫女の存在がいる事が判明した。そいつの力を貸してもらえば、邪神も倒せてまた幸せな日々が過ごせるであろうと思っていた。

 なので巫女は水色の髪をしているという噂があり、魔王様にアンリさんは変身魔法をかけてもらい人口が一番多い人族のアドルフ王国にメイドとして潜伏していたらしい。

 そこでアンリさんは仕えていた貴族の娘の所に行くことになったがこれは何かあった時に貴族の娘を人質にでも使えると思いそれに了承したらしい。

 そして森にある村にメイドとして働くことになったのだがそこでアンリさんは思ってしまったらしい。

 楽しいと。

 村長のアスロさん。自分が仕えるリリア、執事であるフラウス、そして途中から来たレイとの生活が。

 特にレイが来てからは何もかもが違ったらしい。

 リリアも幸せにそうになり、アスロさんもそんなリリアを見て幸せそうにしていた。そんな楽しい時間だった筈だった。

 「本当最悪な男に恋したもんよね」

 アンリさんはフラウスさんの事が好きだったらしい。だけどその好きな人が村を襲った主犯という事を村長がやられ森に避難した時に盗賊の話から聞いたらしい。

 「それでも恋したものはしょうがないんですよ」

 恋をしたらいけないという事はアンリさんも分かっていた。その気持ちは本当に分かる。

 「.....もうそろそろやばいから最後のお願いしていい?」

 「何ですか?」

 「リリア様達が上がってくるかもしれないから顔を隠してもらえないかしら」

 私はそのお願いを聞いてアンリさんの顔に持ってきていたハンカチを置いた。

 「.......ありがと」

 その言葉を最後にしてアンリさんは話さなくなった。

 「シア達も勝ったの?」

 そこに丁度マリー達が来ました。

 「ええ。何とか。強敵でしたけど」

 私は一瞬アンリさんの方を向いて、命を奪ったという事を改めて実感した。だけど後悔はなかった。

 「それじゃあレイの所に行きましょう」

 それに皆が頷いた。

 ~レイロード視点~

 「俺は最初から全開で行くからな」

 師匠には最初から全力で戦うのはよくないと言われたがこいつの場合は違う。

 最初から全開で戦って本気を出される前に勝つ。

 「ほお。なんだその白い光は」

 「さあ。何だろうな」

 俺は雷纏いをして、剣を抜く。

 これから魔王と戦い衝撃の真実を聞く事を俺はまだ知らなかった。

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