チート・ご都合主義いらないけどハーレムいります

平涼

番外編 バレンタイン

 これはまだレイロードがリリアとセシリアといたアドルフ王国での話である。

 ~リリア視点~

 今日は、冒険活動は休みの日だ。

 それで、今私はタマと買い物に出かけている。

 本当は、先生も連れて行きたかったけど、鍛錬があるからいいと断られてしまった。

 セシリアは何やら用事があると言っていた。

 なのでタマと買い物をしているのだが、何やら先程から、聞いたことがない名前がちらほらと看板に書いてある。

 私は先程から何回も見るので気になって、タマに聞いた。

 「ねえ。さっきから見るバレンタインって何なの?」

 「リリアは知らないのニャ?」

 「ええ。私村にずっといたから全然知らなくて」

 「確か女子がチョコレートを渡す日ニャ」

 何で女子がチョコレートを渡す日なのだろうか。

 普通にいつでも渡せばいいんじゃないかと思う。

 「今日渡すと何かあるの?」

 「そこまでは知らないけどニャ。けど今日好きな人とかにチョコを渡して告白する人もいるらしいニャ」

 なるほど。

 要するに、好きな人に送ればいいのね。

 けど、先生に送ったら告白しているようなものだ。

 私は、先生の事は好きだけど、今は告白する気にはなれない。

 一応バレンタインを頭の隅にやって、買い物を続けた。

 買い物の時に改めてバレンタインについて聞くと、どうやら好きな人だけでなく、友達や大切な人にも送るらしい。

 そして、手作りが多いそうだ。

 私は、それを聞いてすぐにチョコを作ると決めて、材料を買った。

 作る機材は、宿の料理室を貸してもらおう。

 今の宿にずっといる為、私達はちょっと待遇されている為、大丈夫と思う。

 私はタマと一緒に料理室を貸してもらうよう頼むとあっさり了承してくれた。

 だけど、料理長が最後までニヤついていたのは何でだろう。

 私はそう思いながらキッチンに行くと、そこには笑顔で何かを作っているセシリアがいた。

 「セシリア、何やってるの?」

 セシリアは、一瞬時を止めて、こっちを振り向いた。

 「リリアこそ、どうしてここに?」

 「チョコを作りに来たの」

 「奇遇だな。私もチョコを作ってたんだ」

 そう言って、話は終わりとばかりにチョコ作りを再開させた。

 絶対に先生にこっそり渡す気だ。

 セシリアは誰にも言ってないからばれてないつもりかもしれないけど、先生の事が好きなのはバレバレだ。

 だから私は作る準備をしながら、抜け駆けしようとしたセシリアをからかう。

 「セシリアは誰にあげるつもりなの?」

 その瞬間、又してもセシリアの時が止まる。

 「......レイに日頃の感謝を込めて渡すんだ」

 そう言って、又しても作業を再開させるが、顔が赤い。

 「私はてっきり先生の事が好きだから渡すのかと」

 そう言うと、セシリアはこちらを振り向いた。

 「なな何のことか分からんな」

 平静を保っているつもりかもしれないが、耳まで真っ赤だ。

 「まあ、いいや。こっち借りるわ」

 そう言って、私は違う所で作る。

 セシリアと目があいながらも作業を続ける。

 だが、先程からセシリアがガン見してくる。

 「どうしたの?」

 「いや。形はどうするのかと思ってな」

 「そりゃあ、ハート形に決まってるじゃない」

 「やはりそうか」

 そしてまたセシリアは一人で考える。

 私が作業を再開していると、今度はセシリアがタマに聞いた。

 「なあ、タマ。チョコはどんな形がいいと思う?」

 タマは少し考えて、

 「そういえば、バレンタインと言ってもチョコだけじゃない筈ニャ」

 「そうなの!?」

 それなら、先生の好みに合わせるべきだ。

 タマが頷く。

 「だからセシリアもチョコじゃなくて、リボンで自分を巻いてプレゼントしたらご主人様もきっと喜ぶニャ」

 そうタマが言うと、セシリアは自分で想像したのか一瞬で顔を真っ赤にして、

 「そんなこと出来るわけないだろう!」

 「ニャーーーーーーー!」

 そう言って、風魔法でタマを吹き飛ばした。

 そして、やはりチョコにしようと決め、セシリアも作業を開始した。

 絶対にセシリアより美味しいチョコを作ってみせる!

 ~レイロード視点~

 今日ほどソワソワする日はない。

 なんせバレンタインだ。

 この世界でもバレンタインはあるらしい。

 だから、ちょっとリリアかセシリアから貰えないかなと期待してしまう。

 なので、宿の周りをうろうろしてしまう。

 「先生!」

 俺は、なるべく平静を保って聞いた。

 「どうした?」

 「今日バレンタインでしょ!これ!」

 そう言って、そう言って、可愛らしい袋に入ったものを渡してくれた。

 俺は内心相当嬉しくて今すぐ告白してしまいそうだが、何とか理性を保つ。

 「ありがとう」

 俺はそう言って袋を受け取った。

 「食べてみて!」

 そう言うので、袋を開けると、ハート型のチョコレートだった。

 なので、俺は一口食べた。

 バリ。

 今、チョコでは鳴ってはならない音が聞こえた気がする。

 そしてやばい。

 味がしょっぱい、苦い、甘いの三つがそろっている。

 どうやったらこうなったのか詳しく聞きたい。

 だけど、落ち着け。

 俺はそこで思い出した。

 リリアは、村長の家で料理なんてしたことない筈だ。

 なのに出来るわけがないんだ。

 だからと言って、まずいと言っては絶対にダメだ。

 俺は見てしまった。

 リリアは回復魔法が使えない為、指の怪我を直してない。

 渡すときに、指が所々怪我していた事を見てしまった。

 そんなに頑張ってくれたのに、まずいなんて絶対に言わない。

 「美味しいよ。ありがとう」

 俺がそう言うと、リリアは笑顔になった。

 「チョコって初めて作ったから、心配だったのよね」

 今度からは、ちゃんと味見した方がいいと心で言っておく。

 そして、きちんとレシピを見ようと。

 「じゃあ、片付けがあるから」

 そう言って、リリアは去って行った。

 だが、俺はリリアの片付けを手伝おうかと思ったが、それ所では無くなった。

 ......お腹が痛い。

 俺はすぐに部屋に戻ろうとした所で、

 「ちょっといいかレイ」

 セシリアさんが、俺の後ろにいた。

 「どうしました?」

 ちょっと急いで欲しい。

 俺のみせてはいけないものがここで出てしまう。

 「バレンタインだからチョコだ」

 そう言って、リリアとは違う袋を渡してくれた。

 「ありがとうございます」

 俺の便意は何処かに消え去ってしまった。

 俺はそれを受取ろうとしたが、セシリアさんが離してくれない。

 「セシリアさん?」

 「あんまり美味しくできてないかもしれないから期待はするなよ」

 そう言って、渡してくれた。

 「セシリアさんが作ったものが美味しくないわけないじゃないですか」

 俺はそう笑顔で言うと、セシリアさんの顔が赤くなった。

 何かしただろうか。

 「じゃじゃあ片付けがあるからちょっと行ってくる」

 そう言って、走っていった。

 セシリアは、レイの顔がかっこよくて赤くなってしまったのだった。

 ~リリア視点~

 美味しくできて良かった。

 私はそう思いながら、片付けをする。

 余ったチョコを少し食べてみた。

 なにこれ。まずい。

 私はそこで気付いてしまった。

 「.......先生」

 私は、大好きなその人の名前を呼んでしまう。

 だって、私の好きな人は、私のこんなまずいチョコも美味しそうに全て食べてくれるなんて。

 この日、リリアの好感度が上がりまくった日だった。

 ~レイロード視点~

 不吉だ。

 俺はそう思ってしまう。

 俺は部屋に戻ってセシリアさんのチョコを開けた。

 そこには、ハート型に割れ目があるものだ。

 何でセシリアさんはこれを俺にくれたのだろうか。

 割れている理由は、リリアが料理室にいないことに気付いたセシリアが、急いで渡しに行こうとして割れたことは誰も知らない。

 味は美味しかった。

 ~セシリア視点~

 どうしよう。

 あの受け取ってくれた時のレイの顔がカッコよすぎた。

 慌てて何処かに行ってしまったが、味は大丈夫だろうか。

 一応、一週間前から考えて作ったものだから美味しい筈だが。

 そう思いながらもあの時のレイの顔が忘れなくて、ずっと赤面のセシリアだった。

 この日、誰もが眠れない夜を過ごした。

 そして、レイロードが一週間腹痛に襲われたのは、悲しい出来事だった。

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