チート・ご都合主義いらないけどハーレムいります

平涼

第二十七話 盗賊再会

 俺達はあれから馬車であの街を出た。

 もういる必要もないし、最後に良いことをしたからいいだろう。

 ちなみに馬の操縦はセシリアさんがやってくれる。

 セシリアさんは大抵の事は何でも出来る。俺も一度やってみたが、全く思い通りに出来なかった。

 何でセシリアさんは何でも出来るのか聞いたら一人で旅をして同胞のエルフを探し復讐をしようとしていたらしい。

 聞かないでよかったね。

 俺とリリアとタマは先程の話をしていた。

 「さっきの女の子一緒に連れて行くのかと思ったわ」

 「私もそう思ったニャ。どうして連れていかなかったのかニャー?」

 リリアとタマは仲間になるものだと思ってたらしい。

 「俺も最初は一緒に連れて行こうか迷ったけど、やっぱりあの子は自分の力で頑張らせるのがいいかなって思ってな。何かあの子は自力で何とかしてそうだろ?」

 「そうね。あの子強くなりそうね」

 リリアはそう言った。

 「ほんとな」

 俺もそう思う。あの子はきっといつか強くなるだろう。

 また会える気がする。その時が楽しみだ。

 俺達がそんな雑談をしながら荒野を馬で走る。次の目指す所は決めてない。

 ただ真っすぐ進むだけだ。

 「伏せろ!」

 いきなりセシリアさんの叫び声が響き渡る。

 俺達はすぐに伏せた。

 馬車がいきなり急ブレーキで止まる。

 俺は何事かと思い、外に出た。

 「どうしたんです......」

 俺は何があったのか聞こうと思ったがすぐに状況を理解した。

 俺達の馬車の目の前には、盗賊がいた。

 盗賊はこの世界で冒険者のなれ果てと言われている。冒険者の仕事は段々とランクが上がる事で難しくなり、大抵の人は嫌気がさして止める。

 だがその場合、稼ぎが無くなる。だからこそ冒険者を止めた連中が盗賊になり、商隊の人達や、露店を経営している人達が他の場所に行こうとしている所を襲い、金品を奪うらしい。

 「おい。命が欲しいなら馬車にあるもの全てよこしな」

 盗賊の頭らしき人はそう言った。

 それから、リリアもタマも降りて来て状況が分かったらしい。

 「誰がお前らに......」

 俺は言い終わる前に気付いた。

 「......あんた」

 リリアとタマも気付いたらしく、呆然としていた。

 「ああ?ん?お前らどこかで見たことがある気がするな」

 そこには村長の家を襲った張本人がいた。

 「どうしてお前がここにいるんだ?」

 盗賊は鼻で笑い、思い出したようだ。

 「あん時あそこにいたガキ共か。それはこっちのセリフだよ。何でお前らがここにいんだよ」

 こいつがここにいるってことは......。

 俺は嫌な予感がしつつも聞いた。

 「お前あの家の村長どうしたんだ?」

 「ああ。あいつか。あいつなら殺したよ。あの魔法使いがちょっとだけ強くて苦労したがな」

 その言葉にリリアは手に拳を作り歯を食いしばりながらも、盗賊に襲い掛からなかった。

 以前のリリアなら襲いに行ったんっだろうなと成長に感動している場合じゃない。

 俺は今すぐにでも村長とアンリの仇を討ちたいが必死に我慢しながら、聞いた。

 「あの村に金髪の剣士がいなかったか?」

 その俺の言葉に盗賊は頭を傾げ思い出したかのように、

 「ああ。そういえばそんな奴がいたってことを聞いた気はするな」

 「聞いた?」

 「そうだ。俺はその時いなかったから知らないが、奇妙な技を使う金髪の剣士がいたってことは聞いたな」

 間違いない。それは俺の親父だ。

 「その人も殺したのか?」

 「いや。多分殺されてねえな。俺達の仲間は何人もそいつにやられたって聞いたが、俺がやってもねえし。どこかに避難したんだろ」

 良かった。俺は親父達が生きていることに安心し今すぐにでもこいつを倒しに行こうと考える。

 それが盗賊のこいつにも分かったようで手で制す。

 「まあ待てよ。俺も答えてやったんだから、お前も答えろよ。何となく分かるがフラウスがどこに行ったか分かるか?俺らはあいつにまだ報酬貰ってないんだよ」

 その盗賊の言葉に周りの連中不満のことばをだす。

 俺は短く一言だけ、

 「地獄に行った」

 その言葉に盗賊は笑い出し、

 「やっぱりお前らにやられたか。けどそこのエルフの姉ちゃんにやられるならまだ分かるが、お前みたいなガキにやられるとは未だに信じられないな」

 盗賊は俺を値踏みするかのように見てくる。

 俺はその目を無視し、こいつをどうやって倒すか考える。

 するとリリアに服を引っ張られた。

 「今度は一緒に戦うわよ」

 リリアも自分で仇を討ちたいのだろう。

 俺は頷いた。

 「一緒に仇を討とう」

 それから俺はセシリアさんに向き、

 「セシリアさんに周りの連中をお願いしてもいいですか?」

 周りにも数十人はいる。しかもこの人達も冒険者のなれ果てだから強いのだろう。

 「分かった。しかし、もしお前達が危険になりそうだったら助けるからな」

 セシリアさんはもう周りの連中を倒すつもりらしい。

 頼もしい限りだ。

 「それにあいつは強いと思うぞ」

 セシリアさんは付け足すように言った。

 確かにその通りだろう。

 一度あいつの剣を振っている所を見たがあれだけで十分強い事が分かるぐらいだ。

 けど、今回は何の不安も無かった。

 今回はパーティで戦うからだろうか。

 安心感が違う。

 俺はリリアに近づき作戦を伝える。

 「分かったわ」

 リリアは頷き準備に入る。

 「タマ。お前は俺達のどちらかがピンチになったら教えてくれ」

 「分かったニャー」

 タマは上空に行った。

 俺とリリアは仇である盗賊と対峙する。

 盗賊の方も俺達と戦いたいのか一人だ。

 「最近強い相手がいないんでな。楽しませてくれよ」

 盗賊は自分の武器であるサーベルを舐めまわしながら俺らを値踏みするかのように見る。

 サーベルは戦士等が使う盾をすり抜けるように作られたものだ。これは盗賊の為にある武器と言ってもおかしくはない。

 だが、俺はこいつの余裕の表情を絶望の顔にしてやる。散々俺達の村で暴れ回り、危うく皆死ぬ所だった。

 俺はすぐに盗賊に向かって、走り剣を横に振る。

 しかし簡単に受け止められる。更に言えば盗賊の武器であるサーベルが曲がっている為、若干俺の横腹に剣先が当たりそうだった。

 だが、リリアの剣は短剣でもないからこの剣先が当たる事はない。だからこそ俺は攻める。

 「ほう。中々いい振りじゃねーか」

 盗賊は余裕そうにして剣を振って俺の攻撃を受け止める。

 今回の作戦は俺がリリアの盾になり魔法が出来るまでの時間を稼ぐというものだ。

 リリアは最近セシリアさんに罠魔法のようなものを教えて貰ってるらしい。

 しかし、これには問題がある。

 未だ教えて貰う期間が短いリリアには罠魔法を使うには時間が掛かる。

 普通にリリアに魔法で援護してもらってもいいのだが、それだと多分こいつには当たらないだろうと思い、初見だと見破れない罠魔法を使ってもらうことにした。

 しかし、これに問題が生じた。

 俺が思ってたより、盗賊が強い。

 「おいおい、どうした。こんなものか!」

 盗賊は段々と剣の振る速さを上げていく。

 こいつ強い。俺はサーベルの攻撃が読めないのもあり全く攻めきれず、防戦一方だ。

 「くっ!」

 俺は少し腕に傷を負ってしまった。

 このままではいつか重傷を負ってしまう。

 俺はこの時間稼ぎの一秒が何十秒にも感じてしまう。

 リリア、早くしてくれ。

 俺は今回魔法は使っていない。魔法を使えば反撃は出来るかもしれないが、倒せるところまではいかないだろう。

 それにリリアの作っている罠魔法の所から離れるのはあまりよくないだろう。

 俺は何度か反撃を試みるが無駄だった。

 強引に力でねじ伏せられてしまう。

 「先生!」

 その時リリアの叫び声が聞こえた。

 準備が出来たのだろう。

 俺はそれから盗賊の攻撃に耐えきれず退避したようにみせ、わざと相手が攻めやすいように退避した。

 しかし、ここでも問題が起きた。

 何故か、盗賊は俺を追いかけてこなかったのだ。

 普通ならばここで畳みかけて攻める所だ。

 俺の驚いた顔を見て、盗賊は笑った。

 「やっぱりそこに何かあるんだろう。俺の直感が行ったらやられるって感じたんでな」

 ......やばい。

 こいつどうみても俺との実戦経験の場数が違う。

 今のでも分かる。盗賊は俺の攻撃を受け止めるが、決して侮ってはない。

 正直に言って今のままでは勝てる気はしない。

 セシリアさんが来るまで時間を稼ぐか?

 いや、その前に俺達がやられる可能性が高い。

 今もセシリアさんは他の盗賊を相手にしている。

 それに村長の仇は俺達の手でするのが今までの村長への恩返しみたいなものだ。

 こいつには俺の人生を狂わされたしな。

 俺は一度リリアがいるところまで戻った。

 「リリア。俺が今から切り札を使う」

 「切り札?」

 「ああ。けど、それには時間がかかる。それまでの時間稼ぎを頼めるか?」

 リリアは胸を張り、

 「何をするか分からないけど任せて。先生は自分の事に集中しなさい」

 そんな頼もしい事を言ってくれる。

 俺は一応時間稼ぎに最適な魔法を教える。

 「先生ね。それ簡単に言うけど相当難しいからね」

 そんな事を言いながらも出来ないとは言わないのは流石だ。

 盗賊は俺達が話し終わるまで待ってくれた。

 「やっと話し合いは終わったか?さっきのはそんなに楽しくなかったから楽しませてくれよ」

 盗賊は余裕そうだ。

 リリアは俺の前に立ち、言った。

 「ええ。あんたが泣いて謝るような計画を立てたわ」

 盗賊は笑いながら、

 「そりゃあ楽しみだ」

 サーベルを構えた。

 俺も準備を始める。

 今のままなら確かに勝てない。なら今のままじゃないならどうなるのか?

 俺が準備を始めると、盗賊は急に表情を変え、

 「おい。そこのガキ。お前何をしようとしている?それはやらしたらいけねえ気がする」

 盗賊は俺の気配が変わったことを敏感に察知したのだろう。

 今から第二ラウンドだ。

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