事故死したので異世界行ってきます

暇人001

第42話 躍進②



「国王様、全ての準備が整いました」

 大臣が立膝をつきながらそう言った。

「では、開校しましょう」

 扉の前に居た戦士が俺が放ったその言葉を聞き入れたのと同時に重々しい鉄の扉を数十人の戦士たちが押し開けた。
 扉が開いたのと同時に大勢の人々が雪崩のように押し寄せてくる。

「やはりかなりの人数が入学を希望しているようですね」

「そうですね……」

 あまりの人数の多さに唖然としてしまった俺をフォローするようにラギナが口を開く。

「しかし、受付にあれだけ人を補填したのだからなんとかなるだろう」

「ラギナの言う通りにしておいてよかったよ……」
 
 学校を開く前日にラギナに受付の人数をもっと増やしたほうがいいと言われ実行していなければ今頃大混雑になっていただろう……





「なんとか無事手続きが終わったようだな」

「そうだな」

 ラギナが隣で俺に相槌を打つ。

「国王様、こちらが今回手続きを完了し入学された方々のリストです」

 流石はデキる大臣、頼んでいない仕事までしっかりこなしてくれる。それも必要な事を的確にだ。本当に優れてた人材だと改めて思い知らされる。

「ありがとうございます」

 そしてなぜ国王である俺が大臣に敬語を使うのかというと、シンプルに人として尊敬しているからである。
 素直に凄いと思う人に敬意を表さない人間は居ないだろう。

「いえ、大臣として当然の事をしたまでです」

「流石はミルコじゃ、儂が国王であった時からそなたの敏腕には幾度となく救われたものだ」

 やっぱりラギナも頼りにしてたのか……まぁこんだけデキる人がいるのに頼らない方がおかしいか。
 そして、そんなデキる男が持ってきた資料には目を塞ぎたくなるような現実が淡々と記されていた。





合計入学手続き人数 2059人
内国内入学手続き人数 2059人
内国外入学手続き人数 0人
売上 0リン
純売上 0リン
費用 259,000,000リン
損失 259,000,000リン




 約2億6千万リンの損失……ま、まぁそれくらいならなんとかるだろ…な、なるよね??

「ラギナ、この損失についてどう思う?」

「ん? ……なるほど」

 ラギナは資料を見ると、一瞬硬直しその後ゆっくりと口を開く。

「約2000人か……思ったよりも少ないな」

 そっちかよ!!!思わずコケそうになったわ!

「損失の方はどう思う?」

「2億6千万程度なんて事はない、闘神の月給の1/5程度でしかないからな」

 そういや、闘神は月10億リンももらえる契約だったな。でも王になった今その契約はどうなっているんだろう?

「それもそうか…… 因みに王になったとしても毎月10億リンは支払われるのか?」

「もちろん支払われるとも」

 と言う事はまだ闘神だという事か。
 それにしても月10億リンも貰っても使う気がしないな……

「そのお金貰わないと言う事は出来ないのか?」

「出来るが何故なにゆえそのような事を聞く?」

「そんな大金貰っても使う気がしないから国の為に使って欲しい」

「なるほど……では、儂から大臣等に伝えておこう」

「助かる」

「では、ユウスケよ入学式とやらを務めてきてくれ」

「すっかり忘れていたよ、ありがとう。じゃあ行ってくる」

 危ない危ない……自ら企画した入学式をすっぽかすところだった……





 だだっ広いドーム状の建物。日本で言う所の体育館を馬鹿みたいに大きくした建物を埋め尽くすように並べられたイスには入学する人やその保護者たちが座っており、空席は数える程しか無かった。人が埋め尽くすその空間には有象無象の雑音が飛び交っていた。そんな騒音が支配するドームの正面出入り口から最も遠い場所には壇上の様なものがありそこは少し高くなっている、日本の学校で言うステージの様なものだ。そして俺は今そのステージの裾で入学式が開始されるのを待っている。

「ふぅ……異世界に来ても、どんなに強くなっても人前で話すのは緊張するな……」

「大丈夫??」

 優しく明るい声でそう囁いたのはリリカだった。

「あぁ……なんとかなると思うよ……わざわざ来て貰って悪いな」

「ううん、もともと来ようと思ってたから全然大丈夫だよ!」


「只今より国立全階級一貫学校入学式を挙行致します」

 ドームに響く突然の挨拶、その声の主は大臣だった。彼は風魔法を使い音の波を大きくし、総勢2000人を超える人々の耳へ自らの声を届けた。先程までザワザワとしていた館内にはピリッとした緊張感が走る。

「一同ご起立下さい」

 大臣の指示で入学生並びにその保護者がまるで訓練を受けた戦士たちの様に一斉に立ち上がった。

「学校長挨拶」

 俺は大臣のこの一言により更に緊張感が増す、近くにいるリリカにまで聞こえているのではないか、或いはこのまま張り裂けて死んでしまうのでないかと言うほど心臓が大きな音を立てる。
 深呼吸をして、裾から一歩足を踏み出す。ステージの中心には講義卓をこれでもかと言うほど煌びやかにし淵には凡ゆる宝石たちが燦々と輝いている台が異様なまでの存在感を放ち、設置されている。俺がその卓に着くと大臣の声が三度館内を支配する。

「立膝」

 その声と同時に先程まで立っていた子供から大人まで皆が平等にそして瞬時に立膝を付いた、最前列は前に椅子がない為すんなり立膝ができていたが後ろの方はかなりキツそうだ。
 いやいやいや、そんな感想言ってる場合じゃないっ!何これこんなの聞いて無いんですけど。

 そう、俺はあろうことか入学式についての打ち合わせを殆どして居らず学校長挨拶等の基本的な事しか大臣に伝えなかった為、実質入学式について念密に考えていたのは大臣だった。その結果この様な事態になってしまった。
 まぁこれは間違いなく俺の責任だしなぁ……

「頭を上げ御着席下さい」

 俺の声は大臣の魔法により大音量となり館内を包み込んだ。
 そして、入学式を受ける人とその保護者達は前の椅子にぶつからない様にゆっくりと座った。

「この度は入学おめでとうございます。本格的に学校が始まるのは今日を入れて1週間後です。それまでの間に予習をしておくのもよし、或いは友と楽しい時間を過ごすのも良いかと思います。皆様の良い学園生活をお祈りし手短ではありますが挨拶とさせて頂きます。カルダドに大いなる栄光を」

 俺は挨拶が終わると一礼し、元いたステージの裾へと逃げる様に移動した。

「ふぅ……なんとかなったな……」

「すごく良かったよ!」

「うむ、とても良かったぞ」

「ありがとうリリカ。ラギナまで見に来てくれたのか」

「私も見届けさせて貰ったぞ」

「リベリアルまで…… みんなありがとう」

 こうして今までで最も強いプレッシャーに打ち勝ち学校長の挨拶をなんと終え、入学式自体もなんのトラブルも無く終えることができた。





急いで書き上げた為、矛盾点等あるかと思います。
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次回の更新は3/20を予定しておりますm(__)m
最近忙しく中々更新出来ずに申し訳ないです。

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