歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

第168歩目 ある親子の想い!① side -ラピスラズリ-

前回までのあらすじ

村は救えたけど、手柄はアテナに横取りされた!

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□□□□ ~悩める乙女part.1~ □□□□

 アユムさんと再会の約束を交わしてから3年近くが経ちました。
 その間、私は変わらず、アユムさんに毎日手紙を出し続けています。

 3年間も毎日、よくそんなに書くことがあるな?とお思いになる方もいるでしょうが、書いている内容は至ってシンプルです。
 その日、あった事、感じた事を日記に綴るように、手紙にただしたためているだけなのですから。

「また手紙?」
「はい」
「ラズリはギルド職員なんだから、手紙を書く必要はないんじゃないの?」

 呆れたような表情でそう語るのはアシーネさん。
 ここパレスのギルド職員で、私の同僚にあたる方です。

「いえ、職員であろうとプライベートボードの私的利用は規則違反ですから」
「そうだったっけ?.....でも、誰も気にはしないわよ?」
「ちゃんと規則事項を覚えてください。それと、覚えたら忘れないでください」

 同僚のアシーネさんはとても忘れっぽい性格の方で、重要な事ほど忘れやすいという性質を持っています。
 特に驚いたのが、自分の子供の名前すら忘れたことがあるということです。.....普通、忘れませんよね?

「いつの話をしてんのよ。今は写真に、ちゃんと名前を書いてあるから忘れないわよ?」
「.....」

 そう言って見せてきた写真には、確かに旦那さんと二人のお子さんの名前がきちんと書かれてありました。
 どうやら、お子さんだけではなく、旦那さんの名前も忘れてしまうみたいです。

 これで、そういう病気持ちだというのならまだ多少の理解はできるものの、至って正常だというのだから驚きです。

「でも、そのおかげで冒険者さん.....竜殺し様に出会えたんでしょ?感謝して欲しいぐらいだわ」
「うっ.....。そ、それはそうなんですけど.....」

「竜殺し様は女性に対してどこか気後れしていた感じだったから、
 私がこんなんじゃなかったら、ラズリに声を掛けることすら無かったかもよ?」

 こんなんって自覚があるのなら治してくださいよ.....。

 ただ、アシーネさんが言っていることは事実なので、その事については感謝してもしきれないのは本当です。

 基本的に、冒険者の窓口となる受付嬢は担当制となっています。
 それは、冒険者の方々が今までどういった活動内容をしてきたのかをきちんと把握している必要性があるからです。

 当然のことながら、冒険者に貸与するギルドカードに活動内容の一部始終が記録されてはいます。
 しかし、駆け出しの冒険者ならともかく、ベテランの冒険者に至っては何年も何十年もの記録があったりしますので、確認するだけでも、覚えるだけでも一苦労だったりします。

 なんでも、生涯、受付嬢一人あたりで10000万人前後の冒険者を担当すると言われていますので、村には3人、町には5~6人、都には10人前後の受付嬢が配置されることになっています。(※人数は日中と夜間の合計です)

 だから、受付嬢は余程の事がない限りは担当制となります。
 一度、その冒険者を担当したら、別の受付嬢が担当になることはまず有り得ません。

 つまり、受付嬢には担当している冒険者一人一人を即座に見分け対応する必要が、資格が求められるのです。
 そしてそれが、その冒険者に見合った依頼内容やアドバイス、雇用契約者を紹介することにも繋がっていくことになるという訳です。

 もっと大袈裟に言えば、受付嬢はその冒険者の命を左右するとても重要な仕事だとも言えます。
 だからこそ、アユムさんの担当がアシーネさんから私に移ったことは幸運中の幸運だったと言っても過言ではありません。アシーネさんがこんな方で本当に感謝しています。

「言うじゃないの。それにしては、元気がないようだけど?」
「.....」

 少しは察して欲してください。

 確かに感謝はしているものの、写真に写っているアシーネさん一家の微笑ましくも幸せそうな表情。
 それを見ると、羨ましくもあり、同時に切なくもなります。

「羨ましいはともかく切ないって.....。気持ちは伝わっているんでしょ?」
「はい.....」

 アユムさんは旅に出る前に、私を好きだと言ってくれました。
 毎日ではないですが(アユムさんは旅をしているのだから当たり前です)、頻繁に手紙を寄越してもくれます。おねだりすれば、贈り物も送ってくれます。

「この前なんて、仕事そっちのけで一日中ニヤニヤしていた時もあったじゃない」
「だ、だって.....。アユムさんが今でも私の事を想ってくれているって、手紙にそう書いてあったので.....」

「3年も会えていないことが寂しいのは分かるけど、
 竜殺し様の気持ちがラズリから離れていないのなら心配はないでしょ」

 心配に決まっているじゃないですかっ!

 ちょっとウザい女かな?と心配になりつつも、私が求めれば、アユムさんは間違いなく私への想いを手紙に綴ってくれます。
 そして、その文字一つ一つを見る度に、照れて書いているだろうアユムさんを想い浮かべられる程、私の心は明るく幸せに満ち溢れ、弾んだ気持ちになることは間違いありません。

「だったら、問題ないでしょ」
「でもですね?最近よく思うんです」

「何を?」
「手紙で気持ちを何万遍と綴られるよりも、
 たった一言、側で気持ちを伝えてもらったほうが嬉しいなって.....」

 確かに、私とアユムさんは相思相愛になれました。
 もちろん、アユムさんにはニケさんという想い人がいるのは知っています。

 それでも、間違いなく、アユムさんが私の事を好きだと言ってくれた事実は変わりません。
 それはとても嬉しいことで、とても幸せなことです。

 ですが、私の気持ちがアユムさんに伝わった代わりに得たもの代償は、アユムさんといつ会えるかも分からないといった寂寥感だけです。いくら再会の約束を交わしていたとしても.....。

『この町に残る』

 当然、この決断は私自身が下したものなので、今更泣き言を言ってもしょうがありません。
 それに、お母さんのことは本当に大好きで.....。だからこそ、一人で残していくことは心配でした。今もその気持ちは変わりません。

 ですが.....。

「竜殺し様に付いていかなかったこと.....後悔してる?」
「.....」

 返事はおろか、頷くことすらもできませんでした。

 後悔している自分は間違いなく居ます。
 ですが、それに答えることは、それを認めることは、何だかお母さんに申し訳なくて.....。

『後悔しない選択をしてください』

 旅に出る前、アユムさんは私にそう言いました。
 結局、『町に残る』・『付いていく』、どちらを選択しても私が後悔することを分かった上で、アユムさんは敢えてそう言ってきたのだと私は思っています。

 なんて残酷な人なのでしょう.....。
 なんて残酷な優しさなのでしょう.....。

 でも、それが嬉しかった。
『ラピスラズリ』という私個人を、アユムさんがちゃんと見ていてくれたことが何よりも嬉しかったのです。

「.....アシーネさん。一つ、伺ってもいいですか?」
「なに?」

「好きな人に気持ちが伝わっていて、お互いに相思相愛ではあるけれど、いつ会えるか分からないのと
 好きな人に気持ちは全く伝わっていないけれど、毎日一緒に居れるのとではどっちが幸せなのでしょうか?」
「難しいこと聞くわね.....」

 私は.....後者かな?
 気持ちが全く伝わらないのは悲しいけれど.....。

 それでも、好きな人と一緒に居れる時間は、幸せは、何物にも代えがたいものだと本気でそう思います。
 もし仮に、それを不満に思う方がいるのなら、私が代わってあげたいぐらいです。

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「くしゅんっ!」
「どうした?風邪か?」
「い、いや。.....特に変調は感じぬのじゃ」
「それならいいが.....。何かあったらすぐ言えよ?」
「済まぬ。(.....誰かが妾の噂でもしておったのかの?)」
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「私は.....どっちかを選ぶなんて嫌かなぁ?」
「それじゃあ、質問の答えになっていませんよ」
「だから、今の旦那を選んだんだしね。選べる訳がない!」
「もう、アシーネさんったら.....」

 ギルド職員は派遣された地に住まう方や冒険者と結婚して、その地で生活していくことがほとんどです。
 だから、私が特殊なだけなのかもしれません。

 それでも、こんな私の悩み事を嫌な顔もせず相談に乗ってくれるアシーネさんには感謝の言葉もありません。

「なに言ってるの。私達、友達じゃない。遠慮しないの」
「ありがとうございます」
「それにね?ラズリが優秀過ぎて暇なのよ、私。だから、恋愛相談とかいい暇潰しになるじゃない?」
「それを私の前で言いますか?」

 悪びれもなく、いけしゃあしゃあとそうのたまうアシーネさんを、私はどこか憎めません。
 きっと、本心からそう言っているのではないと分かっているからでしょう。.....いえ、もしかしたら、少しはあるかのもしれませんが。

「少しは落ち着いた?」
「はい。おかげさまで。ありがとうございます」

「それは良かった。これで、しばらくは大丈夫そうかな?」
「そう.....ですね」

「まだ何かあるの?」
「.....」

 アユムさんに会えないこと以上の悩みなんてありません!

 そう胸を張って宣言したいところなのですが、実は他にもあるんです。
 割とこちらの問題も気になって気になって仕方がないというか.....。

「あるみたいね。全て吐き出しちゃえばいいじゃない。聞いてあげる。.....仕事中だけど」
「聞いてもらえますか?.....仕事中ですけど」

 私もアシーネさんも伊達にギルド職員に選ばれた訳ではありません。
 ぺちゃくちゃと会話を楽しんではいるものの、手だけは別の生き物のようにしゃきしゃきと働いています。ギルド職員は結構こういう人が多いのです。

 話が逸れましたが、私のもう一つの悩みというのが.....。

「竜殺し様のPTメンバー?」
「はい。少しずつなんですが、増えてきているようで.....」
「確か.....すごいかわいい子が一緒に居たような?その子以外もってこと?」
「はい。アシーネさんが言っているのは、恐らくアテナさんのことですね」

 最近貰った手紙には、アテナさんを含めて3人の女の子と一緒に旅をしているとかなんとか。
 アユムさんは、『いずれも手のかかる子供のような存在』だと手紙には書かれていましたが、それでも、どうしても気になってしまいます。

 正直なところ、アユムさんが他の女性を好きになるのは全然構いません。私も一緒に愛して頂けるのなら。
 問題は他の女性に気持ちが傾く中で、私への好意が薄れてしまわないか。ただそれだけが気になるのです。

「はぁ.....。せめて、写真とかで確認できたらいいんですけどね.....」
「写真ね~。カメラ自体が高いものね~」

 それは何気ない一言でした。

 カメラそのものが文化大革命後に発明されたもので、まだ一般の人々には浸透していない大技術です。
 そんな大技術を私やアシーネさんが知っているのは、ひとえにギルド職員だからです。

 雇用契約名簿には冒険者の写真を一緒に掲載するので、ギルドにもカメラが一式用意されています。
 だから、カメラや写真の存在を知ってもいるし、見たこともあるという訳です。

「う~ん?写真?」
「どうしました?」

 しかし、そんな私の何気ない一言に、何やら気になる反応を示すアシーネさん。
 とても嫌な予感がします。

 そして───。

「.....あっ!そう言えば、機構から新しい通達が来てたんだけどさ」
「またですか?この間、十傑のキャベツ様から届いたばかりですよね?」

 十傑であるキャベツ様より、『竜殺し君とともに複数の竜族の侵攻から海都ベルジュを守りきった』という通達が来たのが約半年前でした。
 その前には『フラッペ消滅』という信じがたい通達が届き、ギルド中が震撼していただけに、その時は歓喜に沸いたものです。

 そして、また発行された新しい通達。
 何かあったのでしょうか。吉報なら良いのですが.....。

「その新しい通達と一緒に、竜殺し様の写真も一緒にあったんだった。
 いや~、いつものように、うっかりと忘れてたよ~。あははははは。.....ごめんね?」
「.....」

 なん、、ですって!?

「てへっ♪」
「てへっ♪じゃないですよ!
 私にとっては、超!超!重要な通達じゃないですか!!」


 はぁ.....。もうやだ。
 これがうっかり八○衛ならぬうっかりアシーネさんの居る、私達のいつもの日常です。


□□□□ ~悩める乙女part.2~ □□□□

 いつものこととは言え、今回ばかりはさすがの私も怒りました。
 別に仕事をうっかりされるのは構いません。私がフォローをしますので。

 ですが、アユムさんに関することでうっかりすることは許されません。
 私が日々、どれだけ思い悩んでいると思っているのか.....。

「いや、さすがに仕事もダメでしょ」
「それをアシーネさんが言いますか?そう思うなら、しっかりしてください」

 アシーネさんのもの忘れは一種の病気みたいなものなので注意しても無駄ですが、一応念の為に。
 そんなことよりも、今はアユムさんです。

 アシーネさんから写真を分捕って、ともに眺めます。
 心が張り裂けそうな程、期待感と幸福感でドキドキと高鳴っているのが自分でもよく分かります。

「あぁ.....。アユムさん.....。アユムさんです.....。やっと.....、やっと会えましたね.....」
「いやいや。会えてはいないでしょ。気持ちは分かるけど、少しは落ち着きなさい」

「.....(キッ!)。私とアユムさんの感動の再会を邪魔しないでください!」
「だから、再会してないっての。
 ラズリ、どんだけ竜殺し様に飢えてるの.....。ちょっと?本当に大丈夫?」

 この時の私はアシーネさんの言う通り、相当危ない状態に陥っていたのだと思います。

 3年ぶりのアユムさんの姿。
 それを見ただけで、あの楽しかった日々がフラッシュバックのように思い起こされ、目の前に本当にアユムさんが現れたかのように見えていたのですから。私はただ写真を見ていただけなのに.....。


 ・・・。


 その後、意識を取り戻した私は、アシーネさんを始めとして関係各所に謝罪をしてギルドに戻ることになりました。
 そして、アシーネさんを私の監視役として、再び写真をともに眺めることにしました。

 写真に写っていたのは全部で5の人物です。

 写真中央に写っているのが、私の愛しいアユムさん。
 3年前に比べると、どこか垢抜けて精悍のある凛々しい顔付きになっています。自信に溢れているというか、頼りがいのある素敵な男性になったという印象を受けます。

「これがあの竜殺し様なの!?.....ず、随分と雰囲気が変わったわね」
「旅は人生観を変えるって言いますしね。色々と大変な苦労をしたみたいですよ?」
「ふ~ん。.....いい男だこと」
「言っておきますが、わ・た・し・のアユムさんですからね?」

 油断も隙もないとはこの事です。
 アユムさんが誰を好きになろうと構いませんが、いくら性分だからと言っても、愛する旦那さんの事を忘れてしまうような人を好きになってもらいたくはありません。

 アシーネさんには色々と感謝してはいますが、それはそれ、これはこれです。


「そうそう。この子、この子。竜殺し様といつも一緒に居たかわいい子」
「アテナさんですね」

 アシーネさんが指差したのは、アユムさんにおぶさっているアテナさん。
 3年前と何ら変わることのないあどけない笑顔をしています。.....と言うか、あまりにも変わらな過ぎではないでしょうか。まるで成長していないような印象さえ受けます。

「この子いくつなの?あれから結構経ってるけど、全然変わってなくない?」
「年は聞いたことないです。ただ.....、見た目からしても成人15歳かどうかってぐらいでしょうか?」
「成人?もっと若く見えるけど.....。この年ぐらいの子の成長ってこんなものなの?」
「さぁ?お子さんがいるアシーネさんが分からないのでは、私が分かるはずもありません」

 アテナさんはいつもそうでした。
 つかみどころがないというか、不思議な存在というか.....。
 かわいいのは間違いないですが、言葉に形容し難い存在、私とは何か違う存在、そんなあやふやな子でした。

 だからこそ、私はアユムさんとアテナさんの事を知りたかったのですが、今もその謎は解き明かされてはいません。


「そうなると.....竜殺し様の両脇にいる子達が、ラズリの言っていたPTメンバーの子?」
「恐らくは.....」

 手紙にて教えてもらった特徴から、アユムさんの隣で腕組みをして、ちょっと偉そうにしているのが奴隷のヘリオドールさん。
 そして、まるで元気いっぱいだと写真からでも簡単に想像つくのが竜族のモリオンさんだと思われます。

「へ~。ラズリが心配する気持ちがよく分かったよ。2人ともかわいいじゃないか」
「正直、想像以上でビックリしています。特に.....」

「この子でしょ?すごくかわいいもんね。
 大人になったら、貴族様も思わず見惚れてしまうぐらいのべっぴんさんになること間違いなしだよ」

 私とアシーネさんの意見が、ヘリオドールさんで一致しました。
 ちょっと高飛車な雰囲気が写真からでもぷんぷんと漂ってきていますが、逆に、それが何とも言えない高貴さというか、優雅さを醸し出しています。.....信じられますか?これで奴隷なんですよ?

「この子はどこぞのご令嬢様なのかい?」
「い、いえ.....」

 私は手紙にて、ヘリオドールさんが獣人であることを知っていますが、写真では耳と尻尾が上手く隠れているので見分けはつきません。
 アシーネさんが勘違いしてしまうのも仕方がないでしょう。

「こっちの子は奴隷だろうね。女の子ってことは.....夜の奉仕用ってところ?」
「ち、違います!アユムさんはまだ童貞です!」
「そ、そう.....」

 アユムさんの秘密をバラしてしまったのは申し訳ないですが、ロリコン認定されるよりかはいいと思うんです。

 私には何となく分かります。アユムさんはロリコンではないと。
 どっちかと言うと、年上好き、所謂お姉さん系統が好きなのではないかと。

 わずかな期間しか一緒に居れませんでしたが、それでも、私はアユムさんをずっと見てきました。

 アユムさんは小さい子には優しいですが、いやらしい視線を投げ掛けることは一度もありませんでした。
 一方、それなりの年齢の女の子になると、隠しているようで実はバレバレないやらしい視線を、胸やお尻、足などに度々投げ掛けることがありました。

 そして、一番気になったのが、いやらしい視線は当たり前のように投げ掛けるんです。
 しかし、それとは別に、まるで心を許したような、甘やかされたいような、そんな印象を受ける視線も同時に投げ掛けていたように思います。
 ただ、その対象が、私のお母さんだったというのが納得いきませんが.....。

 でも、だからこそ、私にもチャンスがあるのかな?、と思っています。
 アユムさんはロリコンではない。その事実が、私の心を徐々に晴れやかにしていきます。

 だって、そうでしょう?
 アテナさんを始め、ヘリオドールさん、モリオンさんと、皆さんいかにも幼女っぽいですし。.....とは言え、アテナさんだけは別なんでしょうが。

 何はともあれ、やはり写真で現状を確認できたのは正解でした。

「どうやら、スッキリしたって感じね」
「はい。会えないのは寂しいですが.....。それでも、今のアユムさんを知れてとても嬉しいです」
「そう。なら、今日はラズリの奢りで一杯ね?」
「分かりました。.....あっ!この写真、貰ってもいいですか?」

 コルリカえびせんを宣伝する為に各ギルドに配布された、アユムさん一行とえびせん農家の方が写った一枚の写真。
 本来なら、私的理由での取得は規則違反なのですが.....。

 別に構いませんよね?
 だって、どうしても欲しいんですもん.....。

「別にいいんじゃない?
 だけど、掲示用写真はラズリが申請しておきなさいよ?」
「はい!」

 やった!
 お部屋に飾っておこう♪

 こうして、また一つ、私の宝物が増えました。
 今後も、時々はアユムさんに写真をおねだりしてみようと思います。


『アユムさん。
 3年も会えずじまいで寂しいですが、それでも、私は元気にしています。
 あなたへの想いを糧にもう少し頑張ってみますので、早く私に会いに来てくださいね?』

 そう手紙にしたためて、今日も元気にお仕事を頑張ります!


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後書き

次回、本編『神様10連ガチャ開幕』!

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次話より、舞台は『旧都トランジュ』へと移る為、一気に月日が経ちます。
今後もこういうことがありますが、目安としては『ある親子の想い』シリーズが出たら、次話は一気に月日が経つと思って頂けたら幸いです。

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今日のひとこま

~寂しさ募って~ side -アシーネ-

これはラズリが神殿に運ばれる前のお話。

「あぁ.....。アユムさん.....、アユムさんです.....。やっと.....、やっと会えましたね.....」
「いやいや。会えてはいないでしょ。気持ちは分かるけど、少しは落ち着きなさい」
「.....(キッ!)。私とアユムさんの感動の再会を邪魔しないでください!」
「だから、再会してないっての。ラズリ、どんだけ竜殺し様に飢えてるの.....」

「ぐへ.....。ぐへへ.....。アユムさ~ん♡」
「!?」
「ぐへ.....。ぐへへ.....。もう一生、アユムさんから離れませんからね~♡」
「ちょっ!?ちょっと!?本当に大丈夫!?」

な、なんか、ラズリの目の焦点が合っていないような?

「ぐへ.....。ぐへへ.....。もっと強く抱き締めてください!私なら大丈夫ですから♡」
「.....。な、なに!?妄想!?」
「ぐへ.....。ぐへへ.....。え?キ、キスですか!?こんな往来で!?ア、アユムさんが望むなら♡」
「.....。ど、どんな幻覚を見てるのよ.....」

「ぐへ.....。ぐへへ.....。忘れたんですか?ラピス♡。そう呼んでくれる約束ですよ?」
「!!?」
「ぐへ.....。ぐへへ.....。私の愛名、受け取ってください♡」
「.....え?俺なんかが貰っちゃっていいの?」

な、なんてことを言ってるの!?
冒険者さんが勘違いしちゃうじゃない!

「あー!あー!ダメに決まっているじゃないですか!!
 申し訳ありません。この子、いまおかしくなっているので気にしないでください」
「おかしいというか、ラリってないか?危ない薬でもやっているんじゃ.....」
「いつものことなので問題ありません」
「いつものことって.....。そっちのほうが問題だろ」

「ぐへ.....。ぐへへ.....。アユムさん、愛しています♡」
「おいおい。大丈夫かよ?幻覚でも見ているんじゃないのか?」
「恐らくはそうだと思います。私もほとほと困り果てているところでして.....」
「一旦、気を失わせたほうがいいんじゃないか?」

それが無難かな?
このままだと、しまいには脱ぎ出す恐れもありそうだし.....。

「お願いしてもいいですか?」
「あいよ」

───ガスッ!

「ぐへ.....。ぐへへ.....!?
 こ、、これ、、が、、初、、体験、、の、、痛み、、なん、、ですね、、♡」

───ばたんっ!

「あ、ありがとうございます.....」
「お、おぅ.....」
「これで、いつものラズリに戻ってくれたらいいのだけど.....。
 (じゃないと、私に仕事の波が押し寄せてくるじゃない!)」
「この嬢ちゃん、神殿に運んでおくぜ?」
「はい。ありがとうございます。よろしくお願いします」

竜殺し様?
いい加減、早くラズリに会いに来てあげてくださいよ、全く.....。


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