歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

第164歩目 積み重なっていく問題点!


前回までのあらすじ

『電撃符』は姉妹用のお仕置きだった!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

□□□□ ~村ならではの問題点~ □□□□

 退屈な船旅も2ヶ月が過ぎ、俺達は『海産物の村コルリカ』へとやってきている。
 さすが海産物の村と謳う程あって新鮮な魚介類が多く、特に名産品のエビについては、アテナをして舌鼓を打たせる程の逸品物となっている。

 そんなエビ三昧の日々を過ごしていたある日───。

「.....え?ダンジョンを攻略しないで欲しい?」
「.....(こほん。こほん).....はい。申し訳ありませんが、お願いできますでしょうか?」

 突然、ダンジョン攻略を控えるよう、五十音姉妹の1人であるソシーネさんより提案されることになった。
 ちなみに、ソシーネさんは病弱の体質で、レベル3の治癒魔法でも治すことができない気の毒な人だ。

「えっと?どういうことでしょうか?」
「.....(こほん。こほん).....都や町とは異なり、
 .....(こほん。こほん).....村ではダンジョンから得られる資源が村民の生活基盤となっております。
 .....(こほん。こほん).....それを2つとも攻略されてしまうと、私達の生活が成り立たなくなり.....」

 あれ?
 これに似た話をどこかで聞いたような.....。

 ここ『海産物の村コルリカ』には、FとEランクの2つのダンジョンがある。
 その内の1つであるFランクダンジョンは、俺がこの間クリアしたばかりだ。

 それと言うのも、コルリカを訪れた時期がちょうど良かったのか、今まで閉鎖していたFランクのダンジョンが数日前に開通済みとなったので、ダンジョンマスターには悪いが速攻でクリアさせてもらった。
 そして、残るEランクのダンジョンもクリアしてしまおうと意気揚々と冒険者ギルドに立ち寄ったところ、ソシーネさんよりダンジョン攻略を控えて欲しいと言われてしまった訳だ。

 正統勇者を目指す以上、村民の生活を困窮たらしめるような結果を残していくのは、勇者としての知名度UPには繋がらないだろう。と言うか、悪評もいいところだ。

(ただなぁ.....)

 正統勇者を目指すと同時に、力を求める為には、クリアできるダンジョンは可能な限りクリアしておきたい。
 なぜなら、神様によって得られる恩恵が異なる以上、攻略の証をできるだけ多く手に入れ、たくさんの神様ガチャに挑む必要があるのだから。

(さて、どうしたものか.....)

 勇者としての知名度を取るか。
 はたまた、村を力を得る為の礎にしてしまうか。

 ソシーネさんから言い渡されたのは、あくまで『提案』であって『禁止』ではない。
 だから、俺がソシーネさんの提案に従う義務はないし、攻略してはいけない道理もない。

(う~ん。どうしたものか.....)

 ソシーネさんが咳をしつつ心配そうに見つめる中、悩む俺に見兼ねたドールが1つの提案をしてきた。.....と言うか、ソシーネさんズルいですよ!そんな姿を見せられたら断りづらいじゃないですか!!

「王都の時のように、金で解決してはいかんのか?」
「それなぁ.....。どうなんですか?」

 それは考えなくもなかった。
 多少異なるが、王都の時と事情が似ているので。

「.....(こほん。こほん).....そ、それでしたら構いませんが.....。
 .....(こほん。こほん).....ですが、その場合は王都の基準でお支払頂きます。
 .....(こほん。こほん).....何分、初めての事でございますので、ご了承くださいませ」

「なんじゃ、すぐ解決したではないか。.....くふふ。やはり主には妾が必要だのぅ♪」
「.....」

 正直、金で解決できることはある程度想定済みだった。

 村で、しかもFとEランクのダンジョン程度では、恐らく1年あっても1億ルクアの収入は得られないだろう。
 つまり、村からしてみれば、ダンジョンを2つとも攻略されたとしても想定以上の収入を得るに等しいことになる。

 ソシーネさんもそれが分かっているからか、相変わらず咳はしているもののにっこにこだ。
 まさか臨時ボーナスでももらえるのか!?と、勘繰ってしまうほどの晴れやかなまぶしい笑顔を向けてきている。

「何か不満でもありそうな顔じゃな?」
「不満というか.....。まぁ、いいか」

 お前が不満そうじゃねぇか!

 己の功績を誉めてもらえなかったことで、不満そうな態度を示すドール。
 2本の尻尾もシュンとうなだれてしまっている。.....あれ!?不満じゃなく悲しんでる!?

(はぁ.....。ちゃんと説明してやるか。これじゃ、何にも解決していないんだよなぁ.....)


 こうして、ダンジョン攻略の権利を金で購入した俺達は、ご満悦なソシーネさんにまるでVIP待遇でもされているかのように入り口まで見送られながら、冒険者ギルドを後にしたのだった。


□□□□ ~問題の解決策~ □□□□

 宿に戻った俺達は本日のダンジョン攻略を中止して、午後の観光時間まで話し合うことにした。
 改めて説明するまでもないと思うが、現在は午前中にダンジョン攻略、午後からは観光という以前からのスタイルを採用している。そうしないと、アテナとモリオンが飽きてしまうからだ。

 話し合いの議題は、当然『ダンジョンの今後について』だ。

「何を話し合うのじゃ?」
「こんなことをしていたら、あっという間に底をつくだろ.....」

 こんなこととは、ダンジョン攻略の権利を金で購入することに他ならない。
 それが最も合理的で手っ取り早いのは承知しているが、金も無限にある訳ではないので少しでも節約しておきたい。

「節約って.....。あまり倹約し過ぎるのも悪い評判に繋がるものなのじゃぞ?
 ただでさえ、主は『竜殺し』の異名のせいで、金持ちだと思われておるのだからな」

 お、おまっ!?
 なに他人事のように言ってんだよ!?

 ただ、確かにそういう風潮は存在する。
 だからこそ、ソシーネさんもドールの提案をあっさりと受け入れたのだろうから。

 仮に、俺以外の冒険者だったりしたら、そもそもがそういう話すら出てこなかっただろう。
 もし出たとしても、受け入れられる可能性は高くはなかったと思う。全ては『竜殺し』という異名が、幅を利かせてくれているおかげだ。

「第一、金ならたくさんあろう?少しぐらい使っても問題ないはずなのじゃ」

 ドールの言う通り、金はまだまだある。
 多少の事では揺るがないほどの大金が.....。

 しかし、それでも、こんな使い方をしていては、あっという間に底をついてしまうのが目に見えている。
 そもそも生活費とかを除くと、それでも30数回分出来ないということを理解しているのだろうか。

「だから、それが倹約し過ぎだと言うておるのじゃ。30数回分できると、何故考えないのじゃ?」
「この先、村がどんだけあると思ってんだよ.....」

 村だけではない。
 もしかしたら、町や都ですら出費が必要になってくる可能性を考えたら、30数回なんてあっという間になくなってしまう。

「主は慎重過ぎるのじゃ。こういうのは意外となんとかなるものなのじゃぞ?」
「その『なんとかなる』に頼りたくないんだよ。
 しっかりとした計画さえ立てておけば、なんとかならなくても大丈夫だろ?」

 石橋は叩いて、叩いて、叩きまくった結果、叩き壊すぐらいでも十分だ。
 特にお金については、新設された石橋を更に叩き壊すぐらい慎重であるべきだと思う。

「それではいつまで経っても渡れぬではないか」
「それぐらい慎重に挑めって言っているんだよ」
「一体、何がそこまで主を倹約に駆り立てるのじゃ?」
「一人暮らししてたしなぁ.....。金のありがたさが身に沁みているんだよ」

 金持ちが金を使うことで経済が回る。
 それぐらいは分かっているつもりだが、だからと言って、今まで普通な生活をしていた普通な人間が金持ちのように急に振る舞うのは結構難しい。これが、例え地球での話であっても厳しいものがある。

 ぶっちゃけ、欲しいものがない。
 彼女以外はある程度揃ってしまっているので欲しようがない。

 両親も健在で、住む場所もある。
 生活に必要なもの、あったら便利なものも所持しているので、改めて買い換える必要性はない。

 じゃあ、資産を運用する資金にでもするか? → そんな才能はない。あったらとっくにやっている。
 じゃあ、一生働かずに悠々自適に過ごすか? → 将来的にはそれでもいいが、今は働いていないと落ち着かない。

 結論、30数億あっても貯金に回してしまうと思う。
 実際、その場に立ち合ってみないと何とも言えないが、今はそれぐらいしか思い浮かばないのも事実だ。

 結局、『普通』は『特別』になれないんだと思う。
 所詮、『普通』な事しか考えられないから。

 豊かであることは憧れるが、普通以上の特別な豊かさはまぶしくて遠慮してしまう。
 望むは普通よりほんのちょっとの豊かさ。それぐらいが普通な人間には一番心地好い。

「はぁ.....。主は金はあっても金持ちにはなれぬタイプじゃな」
「ほっとけ!」

 勝って驕らず。
 金があっても財布の紐は固くて悪いことはない。

「それに、金を使わないとは少しも言ってはいないぞ?
 少し考えがあって、そっちに金を使いたいと思っている」
「その考えとは?」

「これからの旅に必要なものがあるだろ?」
「!!」

 ドールも気付いてくれたようで何よりだ。
 こればっかりは無いと俺も困る。

 これからの旅は、俺が待ち望んだ『歩きを主体』とした旅となる。
 つまり、旅に必要なものというのは.....。

「ま、まさか.....。買うつもりでおるのか!?」
「まぁ、そういうことだな」
「よ、良いのか!?あれほど渋っておったではないか!?」
「今後も活用することを考えたら、
 少しでも良い物なほうが、結果が良かったりすることは良くあることだろ?」

『安物買いの銭失い』という言葉がある。
 必要なものにお金を使うことは無駄遣いにはならない。普通である俺はこういう時にこそ散財すべきだろう。

「う、うむ。そうなると、確かにダンジョンに金を使っておる場合ではなくなるのじゃ」
「と言うか、使ってたら魔動駆輪が買えないだろ?だから、少しでも節約したいんだよ」
「じゃが、それならばどうするのじゃ?主の見立てでは、今後もこういう場合があるのであろう?」
「それなんだよなぁ.....」

 困った.....。

 大前提として、ダンジョンは可能な限りクリアしたい。
 それも勇者としての知名度は損なわずに、だ。

 その上で、できるだけお金は使わない方向でお願いしたい。

 ・・・。

 しばらくドールと一緒に考えるも、そんな都合の良い考えが当然浮かぶはずもない。
 このまま暗礁に乗り上げることになるのかと思われたその時、あるものが目に映った。と言うか、こういう困った時には、必ず俺の視界に映るのだから何とも言えない。

「.....何かあるのか?アテナ」
「とうぜーんっ!私は智慧の女神だからねー!」
「1つ忠告しておくが.....。嘘をついてダンジョンを攻略するとかは無しだぞ?」

 アテナだと、本気でそう言いかねないから怖い。
 騙されるほうがわるいんだよー( ´∀` )とか、本気で考えてそうだし。

 しかし、当のアテナは自信満々な様子。
 ドンッと叩かれ、ぷるんっと揺れる大きなおっぱいの揺れ幅が、それを如実に物語っている。いいね!

「嘘なんてつかないよー!
 ようはー、いい顔されたままー、お金を払わずにダンジョンをクリアできればいいんでしょー?」
「言い方っ!.....まぁ、その通りなんだけどさ」

「ならだいじょぶー!私にまっかせなさーい( ´∀` )」


 こうして、アテナの考えのもとに、ある計画を推し進めていくことになった───。


(65日分の取得品)

①ダンジョン攻略(DとF)の報酬  (↑10,000,000ルクア)
②コルリカまでの費用4人分     (↓800,000ルクア)
③スキル【ワールドマップLv.2】取得(女神ポイント↓20,000)共有分↓20,000
④スキル【ワールドマップLv.3】取得(女神ポイント↓60,000)共有分↓60,000
⑤スキル【マッピングLv.2】取得  (女神ポイント↓20,000)共有分↓20,000
⑥スキル【マッピングLv.3】取得  (女神ポイント↓60,000)共有分↓60,000
⑦5日分の滞在費用         (↓5,000,000ルクア)
⑧ダンジョン攻略の権利      (↓100,000,000ルクア)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『アテナ』 レベル:3 危険度:極小

種族:女神
年齢:ーーー
性別:♀

職業:女神
称号:智慧の女神

体力:50
魔力:50
筋力:50
耐久:50
敏捷:50

装備:殺戮の斧

女神ポイント:17,240【↓203,000】(65日分)

【一言】やめられないー、とまらないー、かっ〇えびせんー(*´μ`*)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アユムの所持金:3,672,102,200ルクア【↓95,800,000】(65日分)
冒険者のランク:SS(クリア回数:19回)

このお話の歩数:約1,060,000歩(65日分)
ここまでの歩数:約51,415,200歩

アユムの旅行年:28ヶ月+28日(↑65日)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『アユム・マイニチ』 レベル:10140【↑106】

種族:人間
年齢:26
性別:♂

職業:凡人
称号:女神の付き人/竜殺しドラゴンスレイヤー
所有:ヘリオドール/ねこみ/ねここ

体力:10150(+10140)【↑106】
魔力:10140(+10140)【↑106】
筋力:10145(+10140)【↑106】
耐久:10145(+10140)【↑106】
敏捷:12600(+12540)【↑106】

装備:竜墜の剣ドラゴンキラー(敏捷+2400)

技能:言語理解/ステータス/詠唱省略

Lv.1:初級光魔法/初級闇魔法

Lv.2:浄化魔法

Lv.3:鑑定/剣術/体術/索敵/感知/隠密
   偽造/捜索/吸収/治癒魔法/共有
   初級火魔法/初級水魔法/初級風魔法
   初級土魔法/ 物理耐性/魔法耐性
   状態異常耐性

Lv.4:初級風魔法 (※『竜墜の剣』装備時のみ)

共有:アイテムボックスLv.3
   パーティー編成Lv.3
   ダンジョンマップLv.3
   検査Lv.3
   造形魔法Lv.3
   奴隷契約Lv.3

待機:申請魔法Lv.3
   ワールドマップLv.3
   マッピングLv.3

加護:『ウォーキング』Lv.10140 325/10141
   『NTR』   Lv.4102  212/4103
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後書き

次回、本編『アテナの献策』!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今日のひとこま

~食費を抑えます!~

「はむはむはむ。.....アユムとお姉ちゃんは何を話しているのだ?」
「もぐもぐもぐ。.....んー?わかんなーい」
「はむはむはむ。.....我は難しいことはわからないのだ」
「もぐもぐもぐ。.....えびせんおいしーねー(*´μ`*)」

「はむはむはむ。.....あー!お姉ちゃんズルいのだ!それは我のなのだ!」
「もぐもぐもぐ。.....だいじょーぶだよー?モーちゃんの分もあるからー」
「はむはむはむ。.....それならいいのだ。お姉ちゃんと一緒に食べるのだ」
「もぐもぐもぐ。.....なくなったら買えばいいんだよー!お金はいーっぱいあるからねー( ´∀` )」

「.....のぅ、主。節約すべきは別のところにあるのではないか?」
「.....」
「どう考えても、1日で100万ルクアは使い過ぎだと思うのじゃ」
「.....」

「はむはむはむ。.....このエビってやつはおいしいのだ!」
「もぐもぐもぐ。.....ねー!お昼と夕食も楽しみー!」
「はむはむはむ。.....エビの食べ放題に行きたいのだ!あれはすごく良かったのだ!」
「もぐもぐもぐ。.....もういっそのことお店ごと買い取ってもいいよねー(〃ω〃)」

「はぁ.....。『塵も積もれば山となる』とも言うのじゃぞ?」
「.....」
「そろそろ決断すべきであろう。節約すべきところは節約すべきなのじゃ」
「だなぁ.....」

「今後は食費を抑えます!今までの半分ぐらいに!」
「はむはむはむ。.....どういうことなのだ?」
「もぐもぐもぐ。.....ェェエエエΣ(・ω・*ノ)ノ」
「とりあえず、食べるのをやめろ!話を聞け!!」

こうして節約生活に入ったのだが、アテナの献策はそれを許さなかった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品