歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

第143歩目 解き明かされる正体!モリオン②


前回までのあらすじ

ねこみとねここが主人公の奴隷になった!

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1/25 世界観の世界編!に一部追記をしました。
    追記箇所は、『スキルレベル』・『貨幣』となります。

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□□□□ ~モリオンのお勉強タイム~ □□□□

 俺がアテナにお仕置きをしていたその頃。
 ちょっと目を離しただけだったのだが、別のところでは問題が起こっていたらしい。

「おい!そこの獣人!誰の奴隷だか知らないが金払え!!」
「かね.....?かねってなんなのだ?」
「はぁ?金も知らないとかふざけんなっ!ぶっとばして自警団に突き出してやる!!」

 なにやらモリオンと出店の店主らしき人が言い争っている。
 会話の内容はよく聞き取れないが、モリオンの手に食べかけの焼き鳥が握られている以上、明らかにモリオン側に非があることは明白だ。.....だって、俺は購入していないし。

「す、すいません。今すぐお支払いします」
「なんだ、竜殺し様の奴隷でしたか。.....いえね?ちゃんと払ってくれるならいいんですが.....」

 店主に丁重に謝罪しつつ、焼き鳥13本分の料金を払う。
 わずかの間しか目を離していないのに、いつの間に13本も食べたというのか.....。と言うか、食べ過ぎだろ!?

「.....はむはむはむだ!」
「はぁ.....。前も言っただろ?食べながら話すな」
「.....(ごくんっ)わかったのだー!」

 モリオンは、のだー!とかわいく万歳しているものの、絶対に分かってはいないだろう。

 俺にはモリオンのことがよく分かる。
 だって、モリオンの瞳に映っているのは俺ではなく、次のターゲット食べ物になっているからだ。

「.....わたあめが欲しいのか?」
「なのだ!」
「じゃあ、金をやるから買ってこい」

 本当は俺も一緒に行きたいが、アテナやねこみ、ねここを放っておく訳にもいかない。
 ここはドールに付き添いを頼むしかないだろう。

「これはなんなのだ?」
「お金。欲しいものはこれで買うんだ。わかったか?」
「これがないと食べちゃダメなのだ?」
「そういうこと。また一つ賢くなったな?偉いぞ」
「なのだー!」

 喜んでいるモリオンにお金を渡す。
 ちなみに、ここでわたあめの金額ぴったし又はちょっと多目に渡す人は3流だろう。

 今回はモリオンに、『お金でものを購入させる』という体験をしてもらうことがなによりも重要だ。
 ちょっとした『はじめてのおつかい』気分でドキドキする。

 そもそも、モリオンはお金そのものを知らない。
 そうなると、先にお金の種類を一つ一つ教えることよりも、まずは『お金という存在でものを買える』ということを覚えて貰うほうが重要となる。そうなれば店先でのトラブルもなくなることだろう。

 つまり、モリオンに渡さなければならない金額は『モリオンが何も考えずにお金を店主に渡し、モリオンがわたあめを食べたいだけ購入できる分の金額』である必要がある。

 ただ.....。

 その金額がいくらなのかは当然俺にもわからないので、白金貨1枚でも渡しておけば問題はないだろう。
 わたあめ1個がおよそ6000ルクアなので多分余るだろうが.....。

(お釣りは.....ドールにでも任せておけばいいか。
 なんなら、ドールにしばらくモリオンを見ててもらうというのも.....)

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  銅貨=100ルクア
  銀貨=1000ルクア
  金貨=10000ルクア
 白金貨=100000ルクア
 王金貨=1000000ルクア
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 結局、ドールにモリオンの世話を見てもらうことにして、俺はアテナ達のところに戻ることにした。
 本当は合流したいところだが、アテナクラスのわがまま娘が2人もいるとなるとなかなか難しいのが現状だ。

(最悪、アテナを引きずってでも合流するしかないな.....)

 そう思ったのも束の間───。

「やいやいやい!金を払わないで食べるたぁ、ふてぇやろうだっ!!」
「これは我のものなのだ!」
「な、なにを言うておるのじゃ!?さっさとそれを渡さんか!」

「.....」

 またしても、モリオンと出店の店主との間で何かトラブルがあったようだ。
 ドール大先生が側に居ても問題を起こすモリオンはやはり只者ではないのだろう。

 と言うよりも、お金を渡せば済むだけなのにどうしてトラブルになるのだろうか.....。

「す、すいません。どうしました?」
「おぉ、これは竜殺し様。もしかして.....このふてぇ獣野郎は竜殺し様ので?」

 急いで現場に駆け付け、店主に丁重に謝罪しつつ訳を伺う。

「いえね?こいつが金を払おうとしないんですよ」
「どういうことだ?お金は渡しただろ?」
「これは我のものなのだ!」
「いや、お金を払わないと食べられないんだぞ?」
「.....(はむはむ).....これは我のものなのだ!!」

 そう頑なに主張してお金を手放そうとしないモリオン。
 そんなシリアスなシーンの中、もう片方の手ではしっかりとわたあめを食べているのがなんともシュールだ。

 俺と店主が意固地モリオンに困り果てていると.....。

「のぅ、主」
「どうした?」
「恐らくだが、こやつは主にもらったお金が無くなると思うておるのではないか?」
「あぁ.....」

 なるほど。
 言われてみればその通りなのかもしれない。

 これは(お釣りという存在を教えずに)1枚しかコインを渡さなかった俺に非がある。いや.....。
 と言うよりも、始めからドールにモリオンの世話を任せようと思った俺がバカだった。

「悪い、ドール。迷惑をかけた。済まないが、アテナ達を頼んでもいいか?」
「.....良かろう。貸し1つなのじゃ」

 最初からこうすれば良かったのだ。
 アテナはともかく、主人として、ねこみやねここと少しでも思い出を.....なんて思ったのがそもそもの間違いだった。
 そうしようと思った経緯はよくわからないが、それでもモリオンを引き取ろうと思った以上は他人任せなどにせず、俺が全力で面倒を見るべきだろう。

 だから.....。

「よし。お金の勉強をするか」
「いやなのだ。勉強きらいなのだ」
「でも、勉強をしないと何も食べられなくなるぞ?」
「.....アユムもいっしょなのだ?」
「あぁ、俺も一緒だ」

 ここから俺とモリオンのお勉強タイムが始まることとなった。

 何も知らないモリオンに罪はない。
 悪いのは必要なことをモリオンに教えてこなかった今までの環境だ。

 いや.....。

 勉強が嫌いだと言っていたから、教える環境はあったのかもしれない。
 しかし、モリオンが学ぶ必要性を感じていない以上は、例え教える環境があったのだとしても、やはり今までの環境が悪かったと言わざるを得ないだろう。

「これをおやじさんに渡すんだ。ちゃんと謝るんだぞ?」
「わかったのだ!.....はいなのだ。ごめんなさいなのだ」
「お、おぅ!今度からは竜殺し様から離れるんじゃねえぞ?」

 モリオンとともに迷惑をかけた店主にお辞儀をぺこりっ。

 これで一件落着。
 素直に謝れるのはとてもいいことだ。どこぞの駄女神にモリオンの爪の垢でも飲ませたい。

・・・。

 その後もモリオンとのお金のお勉強は続いた。
 少しずつだが、お金の仕組みについても教えていくことにした。

「今度はこのお金であれを買ってみろ」
「さっきと色が違うのだ」

 先程渡したのは銀貨で、今渡したのは金貨だ。
 俺が一緒に居る間は購入に必要な金額だけ渡せばいいのだが、今回はお釣りというものを経験させたかった。

「毎度あり。竜殺し様、今後ともごひいきによろしくお願いします」
「ありがとうございます。.....あっ。お釣りはこの子に渡してもらえますか?」
「お安いご用で。ほら、獣っこ。お釣りだ。落とすなよ?」

───ジャラジャラジャラ

「おぉぉおおお!?.....アユム!アユム!お金がふえたのだ!」
「あはは。そうか、良かったな。.....まぁ、増えてはいないけどな?」

 渡した1枚のコインが複数のコインとなって返ってきたことに驚きはしゃぐモリオン。かわいい。
 その元気いっぱいな姿についつい笑顔がこぼれてしまう。

 また別のお勉強では───。

「アユム!アユム!」
「どうした?」
「どれが一番つよいのだ?」

 そう言って、俺に見せてきたのは銭貨・銅貨・銀貨・金貨・白金貨・王金貨などの様々なコイン群だ。
 つまり、モリオンはどの貨幣が一番価値が高いのかを聞いてきているのだろう。

「これ」
「なんか変な絵が描いてあるのだ!」

 当然、俺が指差したのは王金貨だ。

「なんでこれが一番つよいのだ?」

 出た!モリオンのなぜなぜ攻撃!!
 それに対する答えは決まっている。

「覚えておけ?変なおっさんが描かれたお金は一番高い!これ常識な」
「こいつが一番つよいのだ?」
「そうだぞ。偉いおっさんはすぐ目立とうとするからな」

 多少の偏見は混じっているだろうが、あながち間違ってはいないと思う。
 いつの世の権力者も、何故か自身を偶像崇拝化しようとするのは異世界でも変わらないらしい。

「こいつを倒せば我が一番なのだ?」
「.....倒す?.....ぷっ、あはは。そうだな。本当に倒せたらモリオンが一番だろうな」

 無理だろうけど。
 そもそも描かれているおっさんが生きているという保証もないし。

 しかし───。

「じゃー、倒してくるのだ!」
「はぁ!?ちょっ!?それはマジでやめてっ!!」

 意外と好戦的なモリオンさん。
 モリオンの高まった戦闘意識やる気を宥める為に、大量の犠牲食べ物が必要だったことは今更言うまでもないだろう。


(.....ふぅ、危なかった。危うく犯罪者にさせられるところだった.....。
 この様子じゃあ、冗談でも迂闊なことは言えないな。教育って本当に難しい.....)


□□□□ ~モリオンの謎に迫れ!~ □□□□

 かろうじて犯罪者にならずに済んだ俺は、その後アテナ達と無事合流することができた。
 多少の心配はあったものの、アテナ組は特に問題なかったようで一安心。まぁ、ドールがいるし当然か。

 と、思ったが───。

「おいしかったねー!あーははははは( ´∀` )」
「おいしかった.....ニャ。ありがと.....ニャ、アテナおねえちゃん」
「おいしかったにゃ。ありがとうございますにゃ、アテナお姉ちゃん」

 なんか妹が増えてるっ!?

 どうやら違う意味での問題は発生していたようだ。
 それにしても、アテナのこのなんでもかんでも妹にしていく行動はいかがなものか。節操なさすぎじゃないか?

「一の妹として、アテナのこの行動はどう思う?」
「好かぬな。.....だが、妾が一番ならば問題ない」
「そうだよな。やっぱりおかしく思うよ.....えっ!?いいの!?」

 ドールからの意外な答えにびっくり。
 俺の中にあるドール像だと、猛反対すると思っていたのだが.....。

 それでも、ねこみやねここもアテナを姉として慕っているようだし、本当の姉妹のように仲良い姿を見せられると、これはこれでありなのかなと思うようになった。

「アテナおねえちゃん。どうぞ.....ニャ」
「アテナお姉ちゃん。どうぞですにゃ」
「ありがとー!もつべきものはかわいー妹達だよねー(〃ω〃)」

「.....」

 待て待て待て待て!

 まるで神に献上でもするかのごとく、自然と自分のお菓子の一部を差し出す妹のねこみとねここ。
 そして、それを当たり前のように受け取る姉のアテナ。

(この構図はどう考えてもおかしいだろっ!?なんで姉が妹からお菓子を巻き上げてんだよ!?)

 俺が異世界に来て早1年以上が過ぎたが、世の姉妹は妹が姉に気を遣うようになってしまったのだろうか。

「そんな訳なかろう」
「だよな.....。じゃあ、あれはなんなんだ?」
「善意といえば善意。強制といえば強制とも言えるのじゃ」
「どういうことだ?」
「主も経験があろう」

 その言葉だけでなんとなく察することができてしまった。
 つまり、ここでも謎の女神アテナパワーが働いてしまったということだ。

 わかりやすく例えるなら、祖父母と孫の関係がいいかもしれない。
 当然、祖父母役はねこみとねここで、孫役はアテナとなる。
 そして、祖父母が孫にとても甘くなってしまうあの現象が今回も発揮されてしまっているようだ。

 世界が、人がアテナを好きになるように、ねこみやねここもまたアテナのかわいさに惚れてしまったということだ。

 全てに好かれる存在アテナ。
 本当にアテナの人生はイージーモードである。

 ただ───。

 例え、ねこみやねここの無意識の善意であろうと、アテナの人生がいかにイージーモードであろうとも、一応姉であるアテナが妹であるねこみやねここからお菓子を巻き上げている光景は許すことが出来ない。

 せめて、逆だったらどれほど良かったことか.....。

 だから、俺はそっとアテナに歩み寄る。
 世界が、人生がアテナを甘やかすというのなら、この俺がアテナに人生の厳しさを教えなければならない。

(.....という体のお仕置きを喰らわしてやるっ!)

 そう思っていたのだが───。

「あねとかいもうとってなんなのだ?」
「え?」
「む?」

 意外なところから待ったがかかってしまった。
 何がモリオンの興味を引いたのかと不思議に思ったが、考えるまでもない.....きっとお菓子の一件だろう。

「そう言えば、お主のことをよく知らぬな。そもそもお主はなんなのじゃ?」
「我はモリオンなのだ!」
「名などどうでも良い。お主の素性を聞いておるのじゃ」

 おぉ!

 ズバッと斬り込むドールさん。マジで男らしい。
 そして、俺もモリオンの素性は非常に気になる。

 ただ、モリオンの場合は.....。

「言えないのだ」
「なぜじゃ?」
「父様と約束したからなのだ」

 そう、この壁がある。
 何度聞いても「約束した」の一点張りになってしまうのだ。

「はぁ.....。主が認めた以上、百歩譲って一緒に旅をすることはよかろう。
 だが、素性もわからぬ者を信用することなどできぬ。ましてや、主の側に居させることなど言語道断じゃ!
 良いか?お主が主とともに旅をしたいと望むのであれば、素性を語るのが道理ではないのか?」

 なんと言っていいのか.....。
 ドールには本当に頭が下がる思いだ。

 ドールの言っていることは、本来俺が言わなければならないことだ。
 仮にも、アテナやドールの命を預かる立場の俺が、よくわからない理由でモリオンの旅の同行を許可し、あまつさえ、モリオンの一点張りに簡単に引き下がってしまうことなどどう考えてもあってはならないことだ。
 特に、モリオンには不可解な点が多すぎるからこそ、そこは慎重にならないといけないはずなのに.....。

(こういう迂闊さがあるからこそ、俺はむやみやたらに奴隷とかを増やしていきたくないんだよな.....)

「.....言わないとたびはダメなのだ?」
「うっ.....」

 モリオンからの悲しい視線が心を抉る。

 本音は言って欲しいし、知りたい気持ちもある。
 ただそれは、モリオンに「父親との約束を破れ!」ということに等しい。

 果たして、こんな純粋無垢な子に父親との大切な約束を破らせてもいいものなのだろうか.....。

「主!ここで引いてどうするのじゃ!!」
「うっ.....」

 ドールからの厳しい視線に心が怯える。

 かと言って、「じゃあ、アテナやドールのことはどうでもいいのか?」と問われればそういう訳ではない。
 二人の身の安全を図る為には、ここはやはりモリオンの素性をハッキリとさせたほうがいいだろう。

「アユム.....」
「主!!」

「うぅ.....」

 モリオンとドールからの答えを求める視線に心が悲鳴をあげる。

 モリオンの純粋な心を守ってあげるべきか.....。
 はたまた、アテナやドールの身の安全を図るべきか.....。


(わからない!わからない!わからない!)

 仮にモリオンを選べば、アテナはともかく、ドールはきっと俺に失望することだろう。

 主人として、本当にそれでいいのか?
 今まで散々頼ってきたくせに、本当にそれでいいのか?


(わからない!!わからない!!わからない!!)

 仮にアテナやドールを選べば、モリオンがどういう行動をしてくるかわからないし、なによりも純粋な心を傷付けてしまうだろう。

 そんな悲しむモリオンを、俺は見ていられるのか?
 穢れなききれいな心を、俺なんかが穢してしまってもいいのか?


(わからない!!!わからない!!!わからない!!!)

 このまま解答から逃げていては、モリオンとドールからの少しはあるだろう信用を失うことは間違いないだろう。

 モリオンの純粋な心を守ってあげるべきか.....。
 はたまた、アテナやドールの身の安全を図るべきか.....。


(うわああああああああああああああああああああ!
 俺はどうしたらいいんだあああああああああああああああ!!)




 ・・・。





 俺は悩みに悩んだ。
 それでも結論は出なかった。

 あまりにも出口が見つからない迷路に迷い混んでしまって、もうこのまま脳が破裂するんじゃないかと思ったその時。

「どうしたのー(。´・ω・)?」
「.....うぁ?」

 こういう場面では決まってあいつが俺を助けてくれる。

 そう、みんなご存知、知慧の女神ことアテナだ。
 俺が本当に困った時しか力を貸さない困った相棒だ。

 とりあえず事情を説明すると───。

「なんだ簡単じゃなーい( ´∀` )」
「え!?」

 この仰りよう。
 本当に頼りになる相棒だ。

「『約束を破ること』と『秘密を暴くあばこと』は同じじゃないんだよー!」
「それはそうだろうけど.....。具体的にはどうするんだよ?」
「えー?歩はバカだねー(・ω・´*)」
「ぐっ!わ、悪かったな!!」
「モーちゃんが言わないならー、私が見ればいいじゃなーい(o゜ω゜o)」

 モーちゃんってなんだ?

(あっ!なるほど!その手があったか!!
 あまりにも微妙すぎて、ゴッドシリーズ(笑)の存在をすっかり忘れていた)

 と言うよりも.....。

「もっと早く言えよ!くそ駄女神!!悩む必要なんて全くなかったじゃねえか!!」
「ふえええええん(´;ω;`).....なーんで怒られてるのー!?」

 俺につねられたアテナの叫び声がどこまでもこだました。


 □□□□ ~モリオンの意外な正体~ □□□□

「それで?どうなんだ?」
「ふーんだ。歩はいじわるだからおしえてあげなーい(´-ε -`)」

 このくそ駄女神は!!

 ただいまアテナは絶賛不機嫌中だ。
 原因は当然、先程俺に頬をつねられたことだろう。

 それにしても、なぜこのバカはそういう態度に出ることがデメリットしか生まないとわからないのだろうか.....。

「.....そうか。じゃあ、仕方がないな」
「ふぇ?」

 アテナのもち肌の頬に両手を添える。
 ぷにぷにのすべすべで気持ちいい。まるで赤ちゃんの肌のようだ。

「安心しろ?左手は添えるだけだから、な?」
「ま、まって!まってー!ちゃーんと見るからー(゜Д゜)」
「最初からそうしろよ、全く.....」

 いい加減にして欲しい。
 このやり取りをあと何回やれば気が済むのだろうか。

 と、俺は思っていたのだが.....。

「恋人でもないのにいちゃいちゃいちゃいちゃと.....。なんだかイライラするのぅ.....」
「さっきからあれは何をしているのだ?」
「ご主人さまとアテナおねえちゃん。なかよし.....ニャ?」
「そうにゃ。あれを痴話喧嘩と言うにゃ。覚えなくてもいいことにゃ」

 なんだか色々と恥ずかしい。
 この微妙な雰囲気に耐えられないので、さっさとアテナにモリオンを見てもらうとするか。

「た、頼む」
「はーい!まっかせなさーい( ´∀` )」

 そして、ゴッドあい(笑)の鑑定はいかに!!





 ・・・。







 しばらくの沈黙後、アテナの小さくもかわいい口が静かに動く。

「ふーん。どーりで歩じゃー、鑑定できないわけだねー」
「どういうことだ?」
「モーちゃんねー、ちょーつよーいよー!」

 それは知ってる。
 鑑定Lv.3でモリオンのステータスが全く見れない以上、『特殊な加護』持ちかあるいは『Lv.4スキル』持ちのいずれかになるのだから。

「そだねー。大半はLv.3だけどー、便利そうなのはLv.4になってるよー」
「へ~。それはすごいな。Lv.4スキル持ちとか初めて会ったぞ」

 確か、Lv.4クラスだと世界の頂点に立つ腕前になるとかなんとか。

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 Lv.1~2はただ使えるだけの素人クラス。
 Lv.3~4はその道を極めた達人クラス。
 Lv.5は人外クラス。

 一般市民のほとんどが通常Lv.1クラスで、良くてLv.2。
 Lv.3は本当に達人クラスで、Lv.4~5なんて滅多にいない。

 Lv.1が見習いクラス。Lv.2が師範クラス。
 Lv.3が超一流クラス。Lv.4が世界の頂点クラス。
 Lv.5が神クラス。
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 つまり、モリオンは勇者に近い力を有しているといっても過言ではないだろう。
 そして、現地人であり、獣人でもありながら勇者に近い力を持つとなると.....。

 モリオンはかつての5英雄である勇者の子孫の可能性が高いと思われる。

 伝記によると、過去には獣人にも勇者がいたのは間違いない。
 そしてなによりも、勇者の血は異世界でも確かに息づいているとラズリさんに聞いたことがある。

 ドヤッ!!

 俺の考察は確証はないものの、かなり近いところまで来ているのではないだろうか。
 それもアテナからの解答を得れば、より信憑性が高まるものとなる。わくわく。

「それで?モリオンって結局何者なんだ?」

 そして、アテナの口から出た真相は───!!




















「竜族だねー( ´∀` )」

 おや?

「竜族?竜族っていうと確か.....」
「ずっと前に歩が大量にしとめたドラゴンの種族だねー」

 俺じゃねえし!アルテミス様だし!!

(.....あれ?も、もしかしてモリオンって.....復讐しにきたとかじゃないよな!?)


 どうやらモリオンは竜族だったらしい。

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後書き

次回、本編『出港その後』!

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今日のひとこま

~友好?侵略?~

「なんで我が竜族とわかったのだ!?」
「アテナを疑ってた訳じゃないんだが、本当に竜族なんだな」
「あっ.....。我は何も言ってないのだ」
「いやいやいや!それはさすがに無理があるだろ!」

むきーヽ(`Д´#)ノと怒っているアテナを無視して話を進める。
いや、本当にアテナのゴッドあい(笑)を疑ってた訳じゃないんだ。少ししか。

「父様と約束したから言えないのだ」
「安心しろ。モリオンは約束を破ってない。バレちゃっただけだからな」
「.....それでいいのだ?我は悪い子じゃないのだ?」
「悪い子じゃない。モリオンは俺の自慢のいい子だ」

「我はいい子なのだー!」
「いい子。いい子。.....ところで、復讐しにきたとかじゃないよな?」
「なんのことなのだ?」
「い、いや、知らないならそれでいい(俺のせいじゃないけど助かったー!)」

「我は人間となかよしになるためにきたのだ!」
「仲良し?」
「父様が人間となかよくなりたいと言ったのだ!」
「なるほど。.....と言うことは、モリオンは竜族の使節としてやってきた訳か」

あれ?
もしかしたら、この前のドラゴンの群れも実は使節だったのでは.....?

「し、知ってたらでいいんだが、モリオンの前にも誰か仲良ししにいったとか聞いたことあるか?」
「知ってるのだ!サダルメリクとアルレシャなのだ!」
「(誰だ、それ!?).....えっと、偉い人.....だよな?」
「えらいかは知らないのだ。でも、最強の竜なのだ!」

さ、最強!?
たかが友好の使節に最強の竜を派遣したりするものだろうか?.....本当に使節だったのか?

「そ、その最強の竜が死んだのは知ってるか?」
「知ってるのだ。でも、死んで当然なのだ」
「.....当然?どうして?」
「サダルメリクとアルレシャは人間をいじめにいったから死んで当然なのだ。いじめはダメなのだ!」

おいおいおいおいおい!人間をいじめにって.....。
実は友好の使節とかではなく侵略だったんじゃないのか!?

謎は深まるばかりだが、とりあえず.....アルテミス様!ありがとうございます!!

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