歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

第142歩目 はじめての獣人姉妹!

前回までのあらすじ

よくわからないけど、モリオンが仲間になった!

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1/24 第141歩目の次回告知を変更しました。
『モリオンの正体』 → 『獣人姉妹』

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 出港を翌日に控えた前日。
 俺達一行は市場へと繰り出していた。

 総勢7名の大所帯だけに目立つ、目立つ。
 その為、市場に来ている客のほとんどの視線を良い意味でも、悪い意味でも一身に集めてしまっている。

「歩~。お菓子買ってー( ´∀` )」
「はいはい」
「主。姉さまを甘やかすなと何度も言うておろう」

 当然、良い意味と言うのは、竜殺しとしてそれなりに顔が知れてきた俺であったり、超が付くほどの美少女組であるアテナや(耳や尾を隠している)ドールに視線が集まっているからだ。

 一方───。

「我も!我も!何かたべたいのだ!」
「.....(くぅぅううう)」
「.....(ちらっ)」

「.....安心しろ。お前達の分もちゃんと買ってあげるから」

 悪い意味と言ってしまうとかわいそうだが、周りに偏見の目で見られているのが、耳や尾を隠そうともせずに堂々としているモリオンや最早どうあっても獣人であることを隠しようがない猫の獣人姉妹(以降、姉=ねこみ、妹=ねここ)だ。

 仮に俺が竜殺しとして有名ではなかったり、側にアテナがいなかったとしたら、平気で石などを投げられてもおかしくはない状況だとドールはそう語る。

「い、石って.....」
「獣人とはそういうものなのじゃ。
 だからこそ、妾は「貰えるものは貰っておけ」と何度も言うたのじゃ」

 ドール先生が言っているのは『竜殺し』の件と『SSランク』の件だろう。
 あの時の俺は、ドールに「やりすぎだ」と注意したぐらいだし。

 ただ、結果的にはドールのほうが先見の明があったということになる。
 今となってはどちらも無くてはならないものになっている以上、ドールの忠誠バカぶりには感謝してもしきれない。

 特にそう感じる原因は.....。

「うまいか?」
「おいしい.....ニャ」
「おいしいにゃ.....あっ。お、おいしいですにゃ!」
「あ~。敬語とかいいから」

 先日、ドールのお墨付きを得て購入したねこみとねここについてだ。

 よくわからないが、獣人というものにも色々あるらしい。
 ドールのように耳や尾さえ隠してしまえば普通の人間にしか見えない獣人もいれば、ねこみやねここのように耳や尾を隠す以前に見た目からして既に獣人と判別できてしまう種族もいるのだとか。

「まぁ、正確には獣人というよりも人獣じゃな」
「人獣ねぇ.....。何が違うんだ?」
「ただの突然変異種なのじゃ。だが、より獣に近い性質を受け継いでおるらしい。
 ゆえに身体能力は獣人を遥かに凌ぐと言われておる。それは主も昨夜見たであろう?」

 ドールの言う通り、実はねこみとねここは思った以上に凄かった。
 理解する知能は決して高くはないのだが、(何度も説明した上で)理解したものについては驚くばかりの成果を披露してみせた。

 こういう例えはあまり良くはないのだろうが.....。

 敢えて言うのなら、機械ばりの正確さと早さを兼ね揃えたプロの仕事というべきだろう。
 そこに獣人をも凌ぐ体力も備わっているので、ぶっちゃけ、肉体労働をさせるには最適の人材だと言える。後、猫だしかわいい。

「そんな訳だからかの。昔は魔王軍の主戦力となっていたようじゃ」
「なるほどなぁ」
「今では人獣は獣人の間では『悪魔の子』として忌み嫌われておる」
「.....」

 それは知りたくなかった。

 そういう歴史的背景もあるので、「獣人差別の発端は人獣である!」と本来なら同族同士で助け合っていかなければならない獣人間でも人獣は迫害されているのだとか。

 ちなみに、ドールも人獣を嫌悪しているのかどうか尋ねてみると───。

「昔はあったが、今はないの」
「心変りした要因はなんだ?」
「奴隷に落ちたことじゃな。一度、人として奈落まで落ちた身じゃ。
 そのような小さきことなどどうでも良くなった。むしろ、同じ奴隷仲間として親近感すら沸いておる」

 この子は本当に12歳なのだろうか.....。達観しすぎだろ!

 ただ、ドールの言いたいことはなんとなくだがわかる。俺も会社では影が薄い方だし。
 同じ境遇、立場になってみないと見えてこないもの、感じることができないものは往々にしてある。

 つまりは、そういうことを言いたいのだろう。

・・・。

 話が大きく脱線してしまったが、ねこみとねここを購入するにあたり、俺の竜殺しとしての名声やSSランカーとしての地位が大きく役立つのは事実だ。

 と言うのも、奴隷を購入する前に、ナイトさんから幾つかの条件を出されていた。

 一つ目が前述した通り、女性奴隷であること。
 これはナイトさんが男性が少し苦手だからという理由だ。

 二つ目がナイトさんをバカにしない人であること。
 これは吃音に苦しむナイトさんだからこその理由だ。

 そして最後がドールのように生き生きとした人であること。
 これはドールと一緒に過ごす内に、ナイトさんの中での意識改革が行われた結果らしい。

 もともとナイトさんも奴隷についてはあまりいい印象を持ってはいなかった。
 それはこの世界の常識だから仕方がないのかもしれないが、それでも奴隷であるドールには優しく接していてくれたと思う。

 つまり、奴隷であるドールと共に過ごした『経験』が、ナイトさんを変えたという訳だ。
 逆に言えば、そういう『経験』が無ければナイトさんに限らず、その他大勢が偏見の目で奴隷を見てしまうことは確実だろう。


 以上のことから、ねこみとねここはこのままだと従業員としての役目を果たすことすら困難だろう。
 それは二人の力不足が原因ではなく、周囲の理不尽な差別によってである。

 それを解決するのが、俺の竜殺しとしての名声やSSランカーとしての地位だ。
 
 つまり、どういうことかと言うと───。

「まだ何か欲しいものがあったら遠慮なく言ってくれ」
「ご主人さま。ありがと.....ニャ」
「ご主人様。ありがとうございますにゃ」

 今更ではあるが、ねこみとねここは俺の所有物奴隷になったということだ。
 ちなみにムキムキのエルフ奴隷はナイトさんが購入した。

 恐らくだが、勘違いしている人も多いだろう。

 先日、俺が奴隷商館に行ったのは、あくまでナイトさんの付き添いに過ぎなかった。俺が奴隷を購入する為ではない。
 ナイトさんの場合は吃音による交渉難が予想されたので、俺が代わりに交渉する名目で付き添った訳だ。

 と言うことで、本来ならナイトさんが奴隷を全員購入する予定だったのだが.....。
 ここで一つの問題が起きた。

 まさかの人獣登場である。
 ただの獣人ならば、ドールのように耳や尾を隠せば問題無かったのだが、人獣となるとそれは難しい。

 そこで色々と相談して出された結果が、ねこみとねここは俺の奴隷になってもらうことだった。

 これで例え人獣であろうとも、バックに竜殺しである俺が控えている以上、多少なりとも理不尽な差別を受けづらくなることだろう。
 それでもつまらない理不尽をかざしてくる輩には、ムキムキエルフちゃんに頑張ってもらうつもりだ。

 以上のことから、ねこみとねここは俺の奴隷となったが、だからと言って、旅には連れていかない。
 旅ともなれば危険だし、ねこみとねここの二人もそれを望んではいない。特にねこみは猛烈に反対していたので無理強いするつもりもない。
 そもそも、ムキムキエルフちゃんを含め、ねこみとねここには「従業員をやって欲しい」と説明した上での購入なので旅に連れていくことなど論外だ。

 少しややこしいが、ねこみとねここの本当の所有者は俺だが、実質の所有者はナイトさんということになる。

・・・。

 そんな訳でたった1日ではあるが、本当の主人として、ねこみとねここに出来るだけのことをしてやりたいと思い、市場に繰り出した訳だ。

 ところが───。

「ねこちゃん達おいでー( ´∀` )」
「ニャ?」
「にゃ?」
「ぎゅー!ねこちゃん達かーわいー(〃ω〃)」

 完全にアテナのペットのように扱われている現実。これが先程から何度もだ。
 酷い扱いをするよりかは全然いいのだが、それでも、ねこみとねここも困っている様子。

「猫 (※)に構ってもらえなかった反動であろうな」 (※)な"ーのこと
「なるほど.....」

 言われて納得、分かってうんざり。
 本当にうちの駄女神はしょうもない女神様だ。

(アテナだけずるいぞっ!.....俺だって、ねこみとねここをぎゅーってしてみたいっ!!)

 あっ、違った。
 いや、違くはないが、二人の俺への好感度を加味すると現実問題不可能だろう。

 それでも、無理矢理にねこみとねここに抱き着こうものなら、きっと猫パンチ.....は命令しないとできないだろうから、きっと大声で叫ばれるに違いない。二人とも自由奴隷だし。

 俺は、そんな残念な気持ちとアテナへの嫉妬を多分に孕みつつ、ねこみとねここに迷惑をかけているアテナにお仕置きをすべく静かに歩み寄るのだった。


(まぁ、ねこみとねここがダメなら、ドールでももふもふするか.....)

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後書き

次回、本編『モリオンの正体』!

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今日のひとこま

~奴隷達との約束~

これはねこみやねここを購入する前のお話。

「それで?どんな感じ?」
「良いと感じたのは3人じゃな。エルフと猫の獣人姉妹じゃ」
「そうか。.....じゃあ、君達採用!」
「「「「えっ!?」」」」

ドール含め、驚く奴隷達。

「どうした?」
「あ、主も話してみぬので良いのか?」
「ドールが色々確認した上で良いと判断したんだろ?」
「そ、それはそうじゃが.....」

「なら問題ないだろ。俺はドールのことを信頼してるし」
「そ、そうか?.....ふ、ふんっ!ようやく妾の主人として様になってきたようじゃな!(尻尾バシバシ)」
「(かわいい奴め).....それとも、君達のほうから何か聞きたいことでもあるか?」
「「「.....」」」

「遠慮はいらぬ。聞きたいことを聞くが良い」
「それ、俺のセリフなんだけど.....」
「あ、あの.....。お願いをなんでも聞いてくれると聞きましたが.....」

そう尋ねてきたのは、ムキムキのエルフちゃん。
顔だけで判断するなら美少女?美女?なのだが、体がムキムキなせいかどうにも違和感。

「なんでもって.....どんな説明したんだよ?」
「知らぬ」
「お前な.....。まぁ、俺ができる範囲内だったら叶えてあげたいと思うよ?これでいいかな?」
「ほ、本当だったんだ.....」

「お、お腹いっぱいたべさせてくれる.....ニャ?」
「ん?食事のことなら約束しよう。むしろ、残さないようにな?」
「い、妹と一緒に居させてくれるにゃ?」
「それがどういう意味で言ったものなのかはわからないが、姉妹なら一緒に居るべきだろ」

「わ、私は!.....故郷に帰りたい.....です」
「故郷?エルフの国か?いつまでに帰らないといけないとかあるか?」
「い、いえ。特にいつまでとかはないですが.....」
「だったら、少し待ってもらうことになるけど約束しよう」

「他に無いようなら、君達にはこれからナイトさんのお店の従業員として働いてもらいたい」
「よ、よろ、よろしくお願いしましゅ」
「ご覧の通り、ナイトさんは人とのコミュニケーションが少し大変だから、君達が率先して動くように」
「「「はい!(ニャ)(にゃ)」」」

「予め言っておくけど、ナイトさんのお店の仕事は超きつい。
 ナイトさんには申し訳ないけど、俺はできることなら二度とやりたくないレベルだ」
「「「!?」」」
「だから申し訳ないけど、
 君達には『ナイトさんのお店から逃げ出さないこと』の命令を別途付けさせてもらう」
「「「?」」」

あ~。そうか。
自由奴隷にすることへの説明が抜けていたか。

説明後───。

「ただ、きつい仕事を押し付ける代わりに、こちらからも何かお礼をしようと思う」
「お腹いっぱいたべたい.....ニャ」
「妹と一緒に居たいにゃ」
「故郷に帰りたいです」

「あ~、うん。それとは別に、な?」
「「「!!」」」
「具体的には『奴隷解放』を考えている。これなら故郷に帰れるだろ?
 そちらの獣人ちゃん達は解放されても迷惑だろうから、何がいいか考えておいてくれ」
「「「はい!(ニャ)(にゃ)」」」

世の中ギブアンドテイク。
頑張ってくれる(予定)の奴隷達にもご褒美は必要だよな。

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