歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~
第118歩目 はじめてのライヴ!
前回までのあらすじ
武器フェスティバル優勝おめでとう!ナイトさん!!
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□□□□ ~異世界アイドル登場~ □□□□
時は16時少し前。
武器フェスティバルに引き続いて、毒舌派アイドルとやらのライヴがまもなく開演される時間となる。
それに伴い、武器フェスティバルの時とは異なる参加者、所謂ファンらしき人々が続々と集まり出した。
黄色いハチマキに、黄色いシャツ、そしてもはやお馴染みのペンライト。完全武装というやつだ。
(キモヲ.....いや、違う。どこか同志の臭いがするでござるな!)
この光景をみているだけで、こう胸が熱くなるというか、心が燃えたぎる思いだ。
「な、なんかすごい連中が集まりだしたのじゃ.....」
アイドルライヴ初経験のドールが唖然とするのも無理はない。
俺も大学のサークル仲間に誘われて初めて行った時なんて度肝を抜かされたぐらいだ。.....あくまでサークル仲間の付き添いでだが。
「俺が知っているライヴ通りなら、もっとすごいことになる。これしきで驚いていたら身が持たないぞ?」
「み、身が持たぬのか!?」
「場に合わせるか、俺が教えてやるから、それに合わせて全力でバカになれ」
「はーい( ´∀` )」
「わ、わかったのじゃ.....」
そしてついに.....。
恐らくはこのアイドルの曲だと思われる軽快な音楽が流れたかと思ったら、
「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」
「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」
「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」
会場を揺るがす同志達の大声援。
そして、
「みっんなー!ぉ待たせー!みんなの心のアイドル『サキ』だよー☆今日はぃっぱぃ楽しんでぃってねー!」
その大声援に迎えられるように、本日の主役がステージ上に姿を現した。
そうなると当然、
「「「「サキたそ!サキたそ!サキたそ!サキたそ!サキたそ!」」」」
「「「「恋してる!愛してる!俺のかわいいLOVELOVEサキたそ!」」」」
「「「「L、O、V、E、ラブリーサキたそ!L、O、V、E、ラブリーサキたそ!」」」」
同志達は、お前ら最初からかっ飛ばしすぎぃ!と思えるほどの大声援で、再びステージ上の主役を祝福し始めた。
「な、なんなのじゃ!?こやつらは!?」
会場の異様な盛り上がりに驚くドール。だが.....
「通常運転だな。これがアイドルライヴだ。とりあえず、こういう場合は周りに合わせて叫んどけ」
「L、O、V、E、ラブリーサキたそ( ´∀` )L、O、V、E、ラブリーサキたそ( ´∀` )」
「いい感じ。さすがはアテナだ」
と言うか、それが気に入ったのか。
いきなり痛すぎるやつをチョイスする辺り、アテナはドルヲタ女子の素質があると思われる。
「そ、そういうものなのじゃな.....。え、える、おー、ぶいー、いー、.....」
「声が小さい!叫べ!叫ぶんだ、ドール!ここではバカになったものが真の勝者なんだ!」
「L、O、V、E、ラブリーサキたそ( ´∀` )L、O、V、E、ラブリーサキたそ( ´∀` )」
勝者、アテナ!
ドールにはまだ荷が重いみたいだ。
たかがアイドル登場という、まだライヴの入り口にも差し掛かっていない段階で、ドールは既に面喰らっているようだ。
身が持つのか心配だが、ここは踏ん張ってもらいたい。
そんな俺の心配をよそに、ステージ上は早速トークショーに突入したようだ。
「サキねー、今日この日をずっと楽しみにしてたんだー!だからー、ぃーっぱぃ応援してねー☆」
内容は至って普通.....?どこが毒舌派アイドルなのだろうか、と思っていたら、
「「「「ふー!俺のサキたそー!いっぱい応援しちゃうよー!」」」」
「ぅるせぇんだよ!キモ豚ども!今はサキが話してる最中だろ!キモィんだよ!黙れ!」
観客の声援に対して、もはや毒舌ではなく罵声だろ、と思える返しをする毒舌派?アイドル。
その表情は嫌悪も嫌悪。もはや観客を、同志をゴミとしてしか見ていない軽蔑的な眼差しを向けている。
だが、
「「「「ぶひー!愛してるよーサキたそー!」」」」
「キモィつってんだろ!ハゲ豚ども!帰ってママのおっぱぃでも吸ってろ!二度と来んな!」
観客の、同志のレベルも相当高い。
むしろこれこそが、このアイドルとの通常のキャッチボールなのかもしれない。
(これだよ、これ!アイドルのライヴはこういう異常性が楽しいんだよな!
異世界に来てまで、こうも楽しめるとは思ってもいなかったでござる!ラブリーサキたそ!)
「よ、良いのか?妾達は愚弄されておるのではないのか?」
「違う。違う。このアイドルはこういうのを売りにしているんだろ。
だから観客にとってはむしろご褒美に近いんだよ。言ったろ?初めは周りに合わせろと。こういうことだ」
「な、なるほどなのじゃ.....?」
「大丈夫。直に慣れるよ」
ドールは毒舌派アイドルの毒舌?暴言?にあっけらかんとしている。
尻尾もどこか迷い気にゆっくりと振られている。今は楽しさよりも好奇心で振られているという感じか。
そんなドールとは対照的に、
「キモィんだよー!キモ豚どもー!かえれーかえれー( ´∀` )」
「.....そこは真似すんな」
既にライヴを存分に楽しんでいるアテナは、アイドルの真似をすらし始めた。かわいい。
その様は、心を抉られると言うよりかは、萌え死にさせられてしまいそうだ。
(にしても.....、ライヴは楽しめそうだが、アテナ達の教育にはよろしくない気がする.....)
その後も、毒舌派アイドル『サキ』のトークショーは続き、多くの同志達が心を抉られる快感に歓喜することになった。
ぶひ~!
□□□□ ~異世界のドルヲタ~ □□□□
トークショーは大盛況で幕を閉じた。
観客の中からは、いまだに「ぶひー!ぶひー!」と様々なところから歓喜に満ちた声が.....。
どうやら観客サイドも満足のいく結果だったのだろう。
ハイレベルなドルヲタというのは最高のエンターテイナーとも言える。
さて、トークショーが終わると次はライヴショーだ。
本日一番の盛り上がりどころとなるだろう。
そうなると、アテナ達にあらかじめ言っておかないといけないことがある。
「いいか?ここからは戦場だ。
どれだけバカになれるか、どれだけ会場と一体になれるかで面白さがグンっと変わる」
「はーい( ´∀` )」
「う、うむ」
「俺が知っているアイドルライヴ通りなら、ここから先は流儀と言うか、お決まりが存在する。
それをみんなと一緒にするだけでもかなり面白い。だから、できるだけやってみろ」
「まっかせなさーい( ´∀` )」
「そ、そういうものか。なら、主の言うことに従ってみるのじゃ」
と、口では偉そうなことを言っても、ここは異世界だ。
もしかしたら日本とはライヴそのものが違う可能性もある。だから、最初は様子見をするつもりだ。
そして、
「~♪~♪~♪~♪~♪」
ついにイントロが流れ出した。
サビから突入するタイプではなくて本当に良かった。
いきなりサビからだと、アテナはともかくドールには少しきつい気がする。
(.....と言うか、これってどういう仕組みで音楽が流れているんだ?)
とりあえず音楽が流れている仕組みを考えるのは後にして、イントロが流れ出したら異世界ではどうなる?と思っていたら、
「「「「おい!おい!おい!おい!おい!おい!おい!おい!」」」」
「「「「おい!おい!おい!おい!おい!おい!おい!おい!」」」」
「「「「おい!おい!おい!おい!おい!おい!おい!おい!」」」」
同志達がさも当たり前のように掛け声をかけ始めた。
再び会場全体が同志達の熱気と声援で包まれる。
ドルオタに、国の、世界の境界線はない。
異世界であっても、ドルオタは変わらないみたいだ。むしろ文化革命の恩恵か?
こうなると、アテナ達に教えることは決まってくる。
「いいか?新たな同志達よ。心して聞くんだ」
「同志!?Σ(・ω・*ノ)ノ 」
「この後すぐに、いくぞー!と掛け声がかかる。それが聞こえたら全力で叫べ!
恐らく会場全体が訳のわからない奇声を発するが気にするな。ひたすら同じように叫ぶんだ」
「奇声.....?同じように叫べと言われても、奇声なのであろう?そんなものわかるはずがなかろう」
「『うあ~!うあ~!うあ~!あ~!あ~!うあ~!ジャ~ジャ~!』とか適当に言っておけば大丈夫だ。
無理に合わせる必要もない。周りが、ジャ~ジャ~!、言い出したらそれに合わせればいい。
ここで一番重要なのはみんなと一緒に全力で楽しむことだ。恥ずかしがることもない。だから思いっきりいけ」
「はーい( ´∀` )」
「よ、よくわからぬが、従うのじゃ」
所謂、MIX(※1)と呼ばれるアイドルライヴでは当たり前に行われている、一種のヲタ芸だ。
ヲタ芸と聞くと恥ずかしさやハードルが高いと思う人もいるだろうが、なんてことはない。ただ周りと一緒に騒げばいいだけだ。
よくニュースなどで、ワールドカップやオリンピックなどをバーや体育館などで視聴し、多くの人々と声援を送っている光景を見たことがあると思う。それとなんら変わりない、ただのアイドル版なだけだ。
そして、ついにガチめの同志から、
「「「「あー!(パンパン。パン。パン)しゃーいくぞー!」」」」
合戦の合図が送られた。すると、
「「「「タイガー!ファイアー!サイバー!ファイバー!ダイバー!バイバー!ジャージャー!」」」」
「「「「タイガー!ファイアー!サイバー!ファイバー!ダイバー!バイバー!ジャージャー!」」」」
「「「「タイガー!ファイアー!サイバー!ファイバー!ダイバー!バイバー!ジャージャー!」」」」
会場を、いや、王都全体を揺るがすMIXの大合唱。
いま、会場の観客、いや、同志全員の心が一つになった瞬間だった。
当然、この大合唱に、
「Σ(・ω・*ノ)ノ 」
「な、なんじゃ!?」
ドールだけではなく、アテナすらもが驚き慌てている。
さすがの俺もここまでレベルが高いとは思わなかった。
アイドルを愛する気持ちに境界線はないということなのだろう。
さて、会場がこんなに盛り上げっているのに、その流れに乗らないのはもはやライヴに来ている意味がない。
一緒に盛り上がってこそのライヴだ。
だから、
「タイガ~!ファイア~!サイバ~!ファイバ~!ダイバ~!バイバ~!ジャ~ジャ~!」
俺も一人のドルオタとして、熱き魂を叫んだ。
別にサキたそは推しドルでもなんでもないが、この雰囲気に酔いしれたい気分だった。
そして、そんな俺の姿を見たアテナ達は、
「うあー!うあー!うあー!あー!あー!うあー!ジャージャー!o(≧∇≦)o」
「う、うあー!うあー!うあー!あ、あー!あー!う、うあー!ジャージャー!」
同じように熱き魂を叫び始めた。
ドールが若干固い気もするが、いずれ慣れてくるだろう。
そう思っていたら、
「「「「あー!(パンパン。パン。パン)もういっちょういくぞー!」」」」
ガチめの同志から更なる掛け声がかかった。
この曲は意外とイントロが長いみたいだ。
もちろん、中にはこういう曲もあるので問題ない。ドールのいい練習にもなるだろう。
「「「「タイガー!ファイアー!サイバー!ファイバー!ダイバー!バイバー!ジャージャー!」」」」
「「「「タイガー!ファイアー!サイバー!ファイバー!ダイバー!バイバー!ジャージャー!」」」」
「「「「タイガー!ファイアー!サイバー!ファイバー!ダイバー!バイバー!ジャージャー!」」」」
そして、再び鳴り響くMIXの大合唱とともに、
「タイガ~!ファイア~!サイバ~!ファイバ~!ダイバ~!バイバ~!ジャ~ジャ~!」
「うあー!うあー!うあー!あー!あー!うあー!ジャージャー!o(≧∇≦)o」
「うあー!うあー!うあー!あー!あー!うあー!ジャージャー!」
若干足並みは揃っていない感もあるが、俺達も熱き魂を叫び、会場の多くの同志達と一緒に楽しむことができた。
ドールも徐々に固さが取れてきているようだ。順応性が高い。
一方、アテナはノリノリだ。元々お祭り好きな性格なだけに、こういうのは好きなのだろう。
(この一体感.....。これだからライヴはやめられない!)
□□□□ ~真骨頂~ □□□□
現在はイントロも終わり、Aメロ、Bメロへと続いている。
この辺りは手拍子とコール(※2)が基本だろうから、手拍子だけして、後はガチめの同志にお任せだ。
さて、肝心のサキたその歌唱力なのだが.....。
(確か、今世紀最大の美声だったかな?)
確かに、上手いと言えば上手いのだろうが.....。
アイドルとして見たときは微妙な気がする。確実に日本のアイドルよりかは下だと思う。
日本で多くのアイドル達を見てきたからこそなんとなくそう思う。.....あっ。サークル仲間の付き添いで、だけどね。
『カラオケがちょっと上手い一般人』といったほうがしっくりくるかもしれないレベルだ。
(.....う~ん。まぁ、異世界のアイドルじゃ、こんなもんなのかな?)
その点は残念でならないが、日本のように本格的にレッスンに励んでいるプロのようなアイドルと異世界の素人同然のようなアイドルを比較すること自体が間違っているのかもしれない。
気を取り直して、先程までの感想をアテナ達に聞いてみる。
「たのしかったーo(≧∇≦)o」
「あんだけはしゃいでたら、そうだろうな」
アテナは随分ノリノリだった。
それにあまりにも楽しそうにしていたから、見ているこちらも魂を揺さぶられた程だ。
「うむ。なかなか面白いものじゃな。
どこが、というのはよくわからぬが、それでも妙な一体感があったのじゃ」
「それでいいんだよ。理屈じゃないんだ。心で感じるものなんだから」
ドールも興奮冷めやらぬ状態といった感じだろうか。
尻尾もぶんぶんと勢いよく振られている。かわいい。
(よかった。二人ともライヴを楽しんでくれているようで何よりだ)
しかし、
「だけどな?本番はここからだぞ?」
「えー Σ(・ω・*ノ)ノ」
「な、なんと!?まだあるのか!?」
いやいや。
たかがイントロとA・Bメロが流れているだけだし。
「さっきと同じようにガチの同志が合図を送ってくれるから、それを聞いたら再び全力で叫べ。そして同時に踊れ」
「踊りもあるのか?.....と言うよりも、踊っておったら歌を聞けぬのではないか?」
「ドールに良いことを教えてやろう。ライヴとは歌を聞くところに非ず。ともに楽しむところなんだ。
だから歌は聞けるようなら聞いてもいいが、それよりも楽しめ。会場の、同志との一体感に酔いしれろ」
「ふむ.....。ライヴとは何とも奥深いものなのじゃ」
「ただ今度のところは説明するよりも実際に見たほうが早い。
無理に合わせる必要もないから、周りを見ながら踊ればいい。簡単だからすぐ覚えられるよ」
踊り、通称パフォーマンスは説明したところで、頭では理解できても実際に動けるものではない。
なんの知識もないまま、見様見真似で踊ったほうが実は踊れる。俺が実際そうだった。
と言っても、ドルヲタ全盛期のようなパフォーマンスではないので、基本的には誰でも踊れるはずだ。
二人に掛け声を教え終わったところで、
「「「「イエッ!イエッ!」」」」
「「「「イエッ!イエッ!」」」」
いよいよ曲もサビに突入するようだ。
曲に合わせて、同志達も徐々に己が本性を解き放っていく。
「そろそろだぞ。この次に合図があるから、そうしたら全力で楽しめ」
「はーい( ´∀` )」
「うむ!」
そして、
「「「「イエッ!タイガー!」」」」
ガチめの同志から、今まさに曲がサビに突入したことを知らせる合図が!
すると、
「「「「おお!ふっふー!(パンパン)ふわふわ!おお!ふっふー!(パンパン)ふわふわ!」」」」
「「「「おお!ふっふー!(パンパン)ふわふわ!おお!ふっふー!(パンパン)ふわふわ!」」」」
「「「「おお!ふっふー!(パンパン)ふわふわ!おお!ふっふー!(パンパン)ふわふわ!」」」」
お馴染みのふわふわコールが曲をかき消す勢いで叫ばれた。
さすがガチめの同志達である。
ふわふわパフォーマンスも完璧なようだ。きれいに揃っている様は圧巻である。
「『おお!』ここで腕を上げる。そして『ふっふ~!』で腕を下げる。
その後、二回手拍子をして、『ふわふわ!』で手を振る。どうだ?簡単だろ?」
「かんたんだねー !」
「うむ。簡単そうだの」
二人にパフォーマンスを教え終わったので、とりあえず俺達も遅ればせながら後に続く。
「「「「おお!ふっふー!(パンパン)ふわふわ!おお!ふっふー!(パンパン)ふわふわ!」」」」
「「「「おお!ふっふー!(パンパン)ふわふわ!おお!ふっふー!(パンパン)ふわふわ!」」」」
「「「「おお!ふっふー!(パンパン)ふわふわ!おお!ふっふー!(パンパン)ふわふわ!」」」」
まさに一心同体とも言える、大きなうねりを上げる同志達と、
「おお!ふっふ~!(パンパン)ふわふわ!」
「おー!ふっふー!(パンパン)ふわふわーo(≧∇≦)o」
「おお!ふっふー!(パンパン)ふわふわ!」
踊りはバラバラだが、それでも楽しそうに元気いっぱいに小さいうねりを上げるアテナ達。かわいい。
そして、当然そんな動きをすれば、
───ぶるんっ!
アテナのおっぱいは大きなうねりを上げる訳で.....。
(おお!揺れた~!(パンパン)ぷるぷる!)
アテナが上げた(声の)うねりは小さかったものの、結果 (揺れたおっぱいは)どんなうねりよりも大きくなってしまったという世にも奇妙な物語。
更に大サビに向けて、会場は、同志達はますますヒートアップしていく。
もはやこの勢いは神ですらも止められないのではないだろうか。.....いや、神なら止めるかも?
「いいか?ここからが一番の盛り上がりどころだ。
『せ~の』と合図があるから、それがきたら『はい』の掛け声とともに手を振る。
そしてそれを3回やったら、最後は『うぇいうぇいふ~』の掛け声とともにジャンプだ」
そして、俺の最後のレクチャーが終わると同時に、
「「「「はい、せーの!」」」」
ガチめの同志から、最後の戦いの火蓋が切って落とされた。
「「「「はーい!はいはい」」」」
「「「「はーい!はいはい」」」」
「「「「はーい!はいはい」」」」
きれいに足並みを揃える同志。
「は~い!はいはい」
「はーい!はいはいー( ´∀` )」
「はーい!はいはい」
負けじと調子を合わせる俺達。
そして、最後は.....
「「「「うぇいうぇいふー!」」」」
「「「「うぇいうぇいふー!」」」」
「「「「うぇいうぇいふー!」」」」
「「「「うぇいうぇいふ~!」」」」
「「「「うぇいうぇいふーo(≧∇≦)o」」」」
「「「「うぇいうぇいふー!」」」」
会場にいる何百、何千、何万の人々の全ての魂が初めてきれいに揃った。
高鳴る鼓動、感じる熱気。
そして、触れあう心。
いま、この瞬間に全ての同志と心が一つに.....。
俺は、いや、俺達は、全ての同志と心から一緒に楽しめる『真の同志』に、『ブラザー』になったのだ。
(ぶひ~~~~~!からの~~~~~!うぇいうぇいふ~~~~~!)
その後も、ブラザーによるガチ恋口上(※3)やケチャ(※4)、締めのMIXなどでライヴ会場は大いに盛り上がった。
毒舌派アイドル『サキたそ』はアイドルとしてはいまいちだけれども、ライヴ自体は大成功だったと言っていいだろう。
ライヴの興奮冷めやらぬ帰り道、
「はじめてのライヴはどうだった?」
「うぜーんだよ!キモ豚やろー!話しかけんなー!あーははははは( ´∀` )」
・・・。
アテナの教育には本当に良くないライヴだったと改めて感じさせられた.....。
(※1)MIX ・・・自分の気分を高める行為。
(※2)コール ・・・歌の合間などにメンバーの名前などを叫ぶ行為。
(※3)ガチ恋口上・・・間奏などに入る、日本では厄介とされがちな愛の口上行為。
(※4)ケチャ ・・・アイドルを神格化させる為の儀式。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後書き
次回、接触!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日のひとこま
~異世界流握手会?~
一列にきれいに並ぶキモぶ.....いや、同志達。
この後、毒舌派アイドル『サキたそ』がわざわざ握手をしに来てくれるらしい。
「ぶひひ。楽しみでござるな、同志殿」
「う、うむ.....。(あ、主!気持ち悪いのじゃ!変わってほしいのじゃ!)」
「(.....いいのか?確かに気持ち悪いが、アイドルと握手できる機会なんてそうそうないぞ?)」
「(ダ、ダメじゃ.....。このままではこやつを殺してしまいそうじゃ.....)」
それはあかん!
と言うことで、キモぶ.....いや、同志からドールの身を守るため、俺が握手会に参加することになった。
そして、ついに姿を現した毒舌派アイドル『サキたそ』。
「ぉ待たせー!キモ豚ども!今から握手会を始めるよー☆歯ぁくぃしばれー(笑)」
握手会だというのに、なにやら穏やかならぬ文言.....。
「.....歯を食いしばれってなんだ?」
「同志は初めてでござるか?サキたその握手会はデンジャラスでバイオレンスなのでござるよ。ぶひひ」
「デンジャラスでバイオレンス.....?」
「ぶひひ。見ていればわかるでござるよ。
きっと同志も、明日からはサキたその熱狂的なファンになること間違いなしでござる」
ついに始まった握手会.....。
「あべぢっ!?.....サ、サキ、、たそ、、愛、、し、、て、、る、、、、、」
「キモッ!キモ豚の愛なんてぃらねぇんだよ、金だけよこせ!」
「けばぶっ!?.....サ、サキ、、たそ、、は、、俺、、の、、嫁、、、、、」
「キモッ!豚野郎には看板がぉ似合ぃだっつーの!看板と結婚してろ!」
次々に夜空のお星様へと昇華されていく同志達。
きっと星座は、キモ豚座になることだろう。
そして、いよいよ俺の番となった。
「.....マ?ぉっさんも勇者なわけー?」
「マ???.....と言うか、おっさん!?」
「マジ最悪なんだけどー。異世界に来てまでサキのストーカーするとかー、マジテンサゲー」
「ストーカー?テンサゲ???」
ヤバい。
何を言っているのかさっぱりだ。頭が混乱してきた。
「ぉっさん勇者だしー、フルボッコでぃぃっしょー?」
「ちょっ!?何言ってるのかさっぱ.....」
「ストーカーマジしねしー」
───ドゴッ!
「おこじょ!?.....ニ、ニケ、、さん、、は、、俺、、の、、嫁、、、、、」
───ばたんっ
こうして俺はサキたその強烈な一撃で呆気なく夜空のお星さまへとなったのだった。
めでたしめでたし。
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