歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

第96歩目 Re:プロローグ!?


前回までのあらすじ

主人公は力に溺れて死んでしまった!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今回は途中おふざけが入りますので、ご注意ください。
最後まで読んで頂けたら嬉しいです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

□□□□ ~深淵の世界~ □□□□

「あー。やっと目覚めたー。待ちくたびれたよー」

目覚めた瞬間、アニメっぽい声が聞こえてきた。

声のする方に目をやると、そこには黒いワンピースに身を包んだ美少女が椅子に座り、優雅にお茶を楽しんでいた。
傍らには「お前は死神かよ!?」とおぼしき大きな鎌が一緒にある。

(どういうことだ?訳が分からない)

周りを見渡すと真っ黒な空間で何もない見慣れない場所。
ハッキリ言って、恐怖しか沸かない場所だ。

そんな空間に今、俺と美少女だけが存在していた。

(・・・?なんだここは?なんで俺はこんなところにいるんだ?さっきまでバットと戦っていたはずなんだが?)

軽い混乱状態になりつつあった俺は、現状把握をしようと椅子に座っている美少女に尋ねてみた。

「あ、あの。ここはどこなんですか?」
「冥界だよー」

なんともかわいらしいアニメ声だった。
バカっぽい声はイラッとくるが、こういう声は嫌いじゃない。

「は、はぁ?冥界ですか。なんでまた俺はその冥界にいるんです?」
「死んじゃったからだねー。死んだらみんなここにくるよー」

(はあ?死んじゃったってなんだよ?どういうことだよ?
 さっぱり意味がわからないぞ?この人は何言ってるんだ?.....てか、これデジャブか?)

なんとも既視感のある状況にどうしても頭がついていけない。

「おやおやおやー?混乱しているみたいだねー」

普通こんな状況になったら誰でも混乱すると思う。
それにしてもこの人?この神様?は、どこか話し方がアテナに似ているような気がする。ただ纏う雰囲気は.....

「じゃー、自己紹介してあげようかなー。私はヘカテー。冥界の女神だよー」
「ヘカテー様ですね。俺は.....」
「あー、知ってる、知ってるー。アルねえから聞いてるよー、人間君」
「アル姉?」
「ごめん、ごめんー。アルテミスのことだよー。私達、従姉妹なんだー」

言われてみれば、確かに纏っている雰囲気はアルテミス様に近いかもしれない。
悪戯が好きそうな.....。アルテミス様を悪魔と例えるならば、ヘカテー様はさしずめ小悪魔だろう。

そんな小悪魔なヘカテー様は、身長はナイトさんと同じぐらいで120cmあるかないかで幼児体型。
まるで命の息吹を感じさせる新緑の髪をツインテールに結っており、更に整った顔立ちでとても可愛らしい。
アメジストの輝きを思わせる紫眼が特徴的だが、アテナ同様どうにも子供っぽさが垣間見える。

そして、そんなかわいらしい存在と一線を画しているのが大きな鎌だ。
キュートさとデンジャラスさを兼ね備えた美しさというやつだろうか。

(それにしてもヘカテー様はかわいらしいな。鎌はちょっと怖いけど.....、それを含めても愛くるしい)

なんてことを思っていたら、

「ほんとー!?うれしー☆みんなこの鎌を見ると怖がってー、私から離れちゃうんだよねー」
「ふぁ!?」

またしても心を読まれてしまった。

「あー、ごめんねー。私も女神だから心を読めるよー。でもー、誉めてくれてうれしいなー☆」

ヘカテー様はそう言うと、見た目通りのかわいらしい反応できゃっきゃと喜んでいた。すごくかわいい。
なんと言うか見た目も似ているし、アテナをお利口さんにしたみたいな感じでとても癒される。

むしろ.....、

(アテナとヘカテー様を交換したい!)

「そんなにー!?やだー///人間君はー、心が上手いねー☆」
「心が上手いってなに!?口じゃなくて!?.....てか、心を読まないでくださいよ」
「それはむりだよー、ごめんねー。たとえばー、人間君は息をしないでも生きていけるー?」

そういう仕組みなのか.....。
神様の読心術とは意識的に行っているものではなく、自然と.....、それこそ体の一部分として備わっているものらしい。

「無理ですね。それは諦めますので、そろそろ状況を説明してもらってもいいですか?」
「はーい☆と、その前にー.....」

ヘカテー様がぱちんっと指を鳴らすと、突如俺の目の前にイスが現れた。
座れということなのだろう。こういう気遣いができるところもお利口さんだ。
マジでアテナと交換したくなってきた。

「ありがとうございます」
「はやく座って、座ってー!」
「?」

よくわからないが、なぜか早く座ることを要求された。
このイスになにか仕掛けがあるのだろうか.....。
ヘカテー様はかわいらしいとは言っても、あのアルテミス様の従姉妹だ。不安になる。

恐る恐る座ってみると.....

「?」

特になんの仕掛けもなかった。
むしろかなり座り心地がいい。まるで俺の為に作られた専用のイスみたいだ。

「どうー?人間君に合わせて『創造』してみたんだけどー」
「おわ!?」

いつの間にか、俺の目の前にヘカテー様がいた。
俺はどうやらイスに気を取られていたらしい。ヘカテー様が近寄ってきていたのに全く気付けなかった。

それにしても、近くで見るとかなりかわいい。
俺の中の美貌ランキングで言えば、『アテナ』≧『成体ドール』=『ヘカテー様』といった感じだ。

ただ気になるのが.....、

瞳の奥が深いと言うか、深淵とでも言えばいいのか。深く、深く、底が見えない。
深みに嵌まりやすい.....、一度堕ちると、とことん堕ちていってしまいそうな、そんな瞳だ。
それはまるでヘカテー様の本質を表しているようで、どこか寒気すら覚える。

「どうしたのー?座り心地がよくなかったー?」
「いえ、最高です。ありがとうございます」

俺が思案に耽っていたら、ヘカテー様が不安そうに尋ねてきた。
表情がコロコロ変わるところもアテナによく似ている。

「よかったー☆人間君が妙な顔してたから心配しちゃったよー、もうー!」

俺の言葉に安心したのか、ヘカテー様はそのかわいらしいほっぺたをぷぅと膨らませてぷりぷりと怒っている。
その仕草がとてもかわいらしい。

(やばいなぁ.....。すっげぇかわいい.....。マジで娘っぽい気がしてくる.....)
 
俺は今、どんな顔をしているんだろう。
わからないが、きっとデレデレしているに違いない。

そして、そんな俺に追い打ちでもかけるかのように、

───ぽすっ

「.....え?」
「にへへー☆」

ヘカテー様が俺の膝の上に座り足をぷらぷらしつつ、アテナのお株を奪う満面のにぱー☆。

「!!!」

このにぱー☆で、俺はヘカテー様の愛くるしさに完全に心を射抜かれてしまった。
ニケさんを理想の彼女&お嫁さんだとするならば、ヘカテー様は理想の娘&子供ということになる。

「アル姉がねー、アーちゃんはこれが好きだっていってたんだー!」
「アーちゃん?」
「あー、ごめんねー。アーちゃんってのはアテナちゃんのことだよー。私とアーちゃんはお友達なんだー☆」

なるほど。
道理で言動の節々に、アテナの影がちらほらと見え隠れしていたのはそういうことか。

「あとはあれもお願いしてもいいー?」
「あれとは?」
「アーちゃんによくしてあげていることー!」

アテナによくしていることと言えば、『頬をつねる』ことか、『ぽんぽん』のどちらかだ。
さすがに恋愛経験値0の俺でもこれはわかる。

だから.....

───ぽふっ。ぽんぽん

「これでいいですか?」
「にへへー☆ありがとー!」

頭をぽんぽんされたヘカテー様は、犬歯を覗かせながらにぱー☆と微笑んだ。かわいい。


マジでアテナと代わってくれないかな.....
ヘカテー様は強そうだし、ヘカテー様さえいればアテナいらなくね?


□□□□ ~予定外の死~ □□□□

ヘカテー様をひとしきり愛でた後に、事のあらましを聞くことになった。もっと愛でたかった!

「人間君はどうして死んじゃったか覚えてるー?」
「いえ、全く.....。そもそも俺って死んでるんですか?それもよくわからなくて.....」
「そっかー。まー、しかたないよねー。だってー、人間君の死は予定外だったからねー」
「予定外?どういうことですか?」
「えっとねー.....」

そしてヘカテー様から語られたのは、この世の、そして生命の真理とも呼べるものそのものだった。
つまり人は、生命は産み出されたその瞬間に、いつ死ぬのかがおおよそ決まっているらしい。
例えば明日死ぬことになったら、それは明日死ぬことが元から決まっていたことになる。
それが天寿と呼べるもので、人は、生命はそれに従って生きているに他ならない。

「つまり今の説明からだと.....、俺は本来死ななかったはずなのに、それが狂ってしまったと?」
「そうそうー。そもそもバット君は最初から人間君を殺さないって言ってたよねー?」

確かにそう言っていた。
凄まじい威力の魔法だったけれど、恐らく死なないようギリギリ調整はしていたんだろう。

・・・。

そこまで考えて、ふと思った。

「.....あれ?ちょっ、ちょっと待ってください!
 バットは俺を殺すつもりはなかったのに、俺は現に死んでいる。つまり.....」
「わかったー?人間君は本来死なずに済んだのに自分から死にに来たんだよー」

「死にに来た.....いや、もしかしたら俺の天寿とやらが今日だったとかは.....」
「ないねー。人間君は地味だから長生きする予定だったんだよー。
 だから予定外だっていったのー。神である私もびっくりだよー。こんな人そうそういないよー?」

俺は二重の意味でおもいっきり項垂れてしまった。
まさか自分で自分の命を断ってしまうとは思わなかったことと地味だと言われたことに.....。

(俺はなんて愚かなんだ。せっかく長生きできたのに、ただただ力を求めてしまったばかりに.....)

「まー、それはバット君も驚いていたみたいだけどねー」
「.....どういうことですか?」
「人間君が絶技を使えるとは思ってもいなかったようだよー」
「絶技?」

よくわからない単語が出てきたので、ヘカテー様に教わることにした。

それにしてもこんなに親切な神様はいないと思う。それにここは冥界だし。
普通冥界のイメージだと意地悪されて然るべきな気がするのに、むしろ神界の神様よりも親切な気がする。

(もしかして、女性がおかしい法則はパルテールだけではなくて、神の世界にも適用されるのか?
 だからイメージ的には良そうな神界がおかしくて、悪そうな冥界が至って普通とか.....)

そう考えると辻褄が合う点が幾つかある。
神界に於いてはアルテミス様の傍若無人ぶり、アテナのバカさ加減.....
対して冥界ではアルテミス様の従姉妹だと言うのに、ヘカテー様は全く悪戯はしないし、むしろすごくお利口さん.....

もしかしたら「真理にたどり着いてしまったのでは?」と戦々恐々としていたら、

「ちゃんときいてるー?」
「あ、はい。聞いてますよ?俺はその『自己犠牲』って絶技を使ってしまったんですよね?」
「そうそうー。まー、人間君の場合は『自己犠牲』ってよりも『自殺』に近いんだけどねー」
「おふ.....」

ヘカテー様が何を言いたいのかは分かるつもりだ。
あの時の俺は溢れんばかりの力に自惚れていた。力の奔流に溺れていた。
『自己犠牲』なんて精神はこれっぽっちもなかった。ただただ力に満たされて、『自己満足』に浸っていた。

だからこそ.....

「死んで当然ということですよね.....。
 悔いも未練もまだまだありますが.....、仕方がないです。死を受け入れようと思います」

俺が愚かだったばっかりに失った命だ。
もはや悔いてもどうにもならないだろう。

せめて.....

(せめて一度ぐらいはニケさんとデートしたかったなぁ.....。それと童貞も捧げたかった.....)


そして俺は未練をたらたら残しつつも、その生涯を閉じた。


              『歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~』 完結


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

                企画     アテナ
        キャラクターデザイン     アテナ
             原案・脚本     アテナ
              脚本協力     アテナ

            グラフィック     アテナ
         モーションデザイン     アテナ
モーションポートレート・グラフィック     アテナ

    システムプランナー・進行管理     アテナ
   システムグラフィック・ムービー     アテナ
           マップデザイン     アテナ
   ミニキャラクター・モブデザイン     アテナ
        タイトルロゴデザイン     アテナ

             スクリプト     アテナ
              台本作成     アテナ
              構成協力     アテナ
       デバッグ・テストプレイ     アテナ

                オープニングテーマ
                曲名「歩くだけでレベルアッープ( ´∀` )」
                作詞     アテナ
                作曲     アテナ
                編曲     アテナ
                 歌     アテナ

                挿入歌
                曲名「だれが子供よーーーーーヽ(`Д´#)ノ」
                作詞     アテナ
                作曲     アテナ
                編曲     アテナ
                 歌     アテナ

                エンディングテーマ
                曲名「だって私の歩だもーん(*´∀`*)」
                作詞     アテナ
                作曲     アテナ
                編曲     アテナ
                 歌     アテナ

         スペシャルサンクス     アクアスカイ
              (50音順)     アルテミス
                       セラフィナイト
                       ニケ
                       フェンリル(狼王)
                       ヘカテー
                       ヘリオドール
                       舞日 歩
                       マシラ(猿王)
                       ラピスラズリ
                       デメテル
                       バット(蜂王麾下偵察隊隊長)
                            
           プロデューサー     アテナ

            ディレクター     アテナ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー            








『歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~』 完結.....ではなかった。


それはスタッフロールが流れ終わる頃になって....

「んー?なにか勘違いしているようだねー?」

ヘカテー様から思いも寄らない言葉が出た。

「勘違い?」
「人間君は生き返れるよー」
「・・・」

俺とヘカテー様の間に静寂が訪れる。

そして.....

「恥ずかしいから早く言って!?もうスタッフロールも流し始めてるから!」

その静寂を破ったのは当然俺だ。

本当に早く言って欲しかった。
そうすればこんな恥ずかしい思いをしなくても済んだのに.....。

「あーははははは☆ごめんねー?アーちゃんのすっごい働きに感心しちゃってさー☆」
「感心しなくていいです。実際アテナは名前だけで何もしていないですから」

アテナがこんなに頑張れる子なら、わざわざヘカテー様と交換したいとは思わない。

「それでどういうことなんですか?俺が生き返れるってのは.....」
「アーちゃんが頑張ってくれたみたいだねー。人間君は蘇生されましたー☆」
「蘇生.....ですか。神様ってのはなんでもありなんですね」
「神だしねー。世界の理は神にも適用されるけどー、その理を作っているのは神だからねー」

生かすも殺すも神次第ってやつだろう。
そんなことは既にアルテミス様との出会いで学んでいる。今さら驚くことでもない。

「どうしたらいいんですか?このまま待っていればいいんですか?」

ヘカテー様からは蘇生されたと言われたが、体には特にその兆候は見受けられない。
と言うよりも、体自体は生前と変わりないので、死んでいるという実感が沸かない。

「ごめんねー。本当はすぐにでも生き返らせてあげたいんだけどー.....」
「?」

ヘカテー様は何か言い淀んでいる。
相当言いづらいことなのだろうか。

そして.....

とても申し訳なさそうに言葉を紡ぎ出した。


「私のお願いを聞いて欲しいなーって.....いいかなー?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後書き

次回、ヘカテーのお願い!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今日のひとこま

~ぶっこみ!~

「ヘカテー様はマジでかわいいですね」
「そ、そうかなー?でもー、ありがとー☆」
「正直、俺の中のお気に入りランキングで、ヘカテー様は急上昇中です。アテナすらも抜かせそうです」
「アーちゃんは私よりもかわいいと思うんだけどー?」

「あれは駄女神ですからね~。かわいいだけなんです」
「駄女神ー?アーちゃんはかしこいよー?」
「賢いのは知っているんですが、限定的過ぎるので.....。結局、基本おバカなんですよ」
「でもー、ダメな子ほどかわいいっていうよねー?」

確かに.....。
あれ?いまアテナは然り気無くdisられたんじゃね?

「それって限度があるんですよ。実際はいい子のほうがかわいがられます」
「じゃー、人間君は私がいい子だっていうのー?」
「はい。とてもいい子だと思います」
「私の事をよく知らないのになんでいいきれるのー?」

「アテナはダメな子ですが、本当はいい子なんです。だからですかね?」
「んー?どういうことー?それって私に関係あるのー?」
「大ありです。アテナがいい子なら、そんなアテナと友達のヘカテー様が悪い子なはずがないじゃないですか」
「!」

「アテナはダメな子ですが、これからも仲良くしてやってください」
「人間君はアーちゃんのパパみたいだねー!」
「本当だらしがない娘ですよ、アテナは。ヘカテー様の父親はどうなんですか?」
「しらなーい。私は捨て神らしいよー。パパとママに捨てられちゃったみたいー」

捨て神ってなに!?
てか、いきなりシリアスな展開をぶっこまないでくれます!?

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品