歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

第90歩目 はじめての称号!


前回までのあらすじ

アルテミス様に無礼を働いてしまったが、最終的にはキスをされた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

□□□□ ~相変わらずな大家族~ □□□□

アルテミス様が帰界された翌日、俺はギルドを訪れていた。
目的はEランクダンジョンについての情報収集とランクアップ試験の申し込みをする為だ。

「なぜ主ほどの実力者がAランクなのじゃ?妾の元主人など実力もないくせにSランクであったぞ?」
「Sランク以上からは、その国の首都でないとランクアップできないんだってよ」
「ふむ。めんどくさいのう。では此度申請すれば、主はSSかSSSになれるのか?」
「飛び級もできないらしい。そういう決まりなんだとか」
「決まり、決まり.....煩わしいのじゃ!そんなものどうにでもなろう!妾に任せよ!」

いやいや。任せろと言われましても・・・。決まりなんだから仕方がないだろ。

俺が呆れる中、ドールは両の拳を胸の前で握り締め、やる気に燃えていた。
尻尾もいつもよりも激しく振られている。

先日のアルテミス様とのやり取りを見ていてわかったのだが、ドールの忠誠心は凄まじいものがある。
こうなんと言うか、使命感に燃えている的な?
こんな俺にそこまで忠誠を捧げる価値があるのかどうかはわからないが、それでも嬉しいものである。
本当に俺には過ぎた奴隷だと改めて思い知らされる。

ぽんぽんしてあげたいが、ドールの場合はいきなり触るのはマズいので、

───もふもふ

「ありがとうな」
「なんの礼なのじゃ?妾は当然のことをしておるまで。主は大船に乗った気でいるがよい!」

尻尾をもふもふされた妖狐は、尻尾を嬉しそうにたなびかせながら両手を口にあてる仕草でかわいく微笑んだ。かわいい。

ちゃんとしてれば可愛い子なんだよな~。もふもふしてるし。

・・・。

ギルドに着いた。

都市の大きさにも驚いたが、このギルドの大きさにも驚かされた。
今までの町のギルドの倍以上の大きさはあるのではないだろうか。
受付窓口は今までで最多の5つもある。さすが王都。

しかし・・・

「うるさーいヽ(`Д´#)ノ」

アテナが怒る気持ちもわかる。
騒々し過ぎる。なんだか渋谷センター街に来た感じで、どうにも落ち着かない。

早速、5つある内の1つの受付窓口を見ると・・・

「もっとよ!もっと貢ぎなさい!この程度のはした金で私が喜ぶと思って!?」
「もっと~、もっと踏んでください~」

そこには、明らかに場所間違えてますよね?、と言わざるを得ない光景が、受付の一角で行われていた。
この有り得ない事態。多分.....きっとそうなのだろう。

胸のネームプレートを見ると、『受付担当 クシーネ』との文字が・・・。
出たよ、出た。五十音姉妹。どこの町にも必ずいる、なにかしら問題を抱えている傍迷惑な大家族。

きっと、このクシーネさんは女王様気質なのだろう。
一定の冒険者が並んでいる辺り、人気はあるのだろうが俺はパス。俺は決してMではないはずだ。


隣の受付窓口を見ると、クシーネさんよりも行列を成している窓口を発見。
しばらく様子を窺う。

「依頼の結果を報告にきました」
「・・・(微笑み)」
「ありがとうございました」
「・・・(営業スマイル)」

無言。一言も話していない。
表情はすごい豊かなのだが、一切口を開こうとはしない。

また別の冒険者には、

「ちょっと尋ねたいことがあるんですが・・・」
「・・・(困惑)」
「あ、あの・・・」
「・・・(泣きそう)」

終始無言を貫き通している。
一体なんだと言うのだろうか。障害持ちとかだろうか。

俺も、受付嬢のケシーネさんも、そして冒険者も困っていたら、隣の受付窓口を担当しているコシーネさんが事情を説明してくれた。

「姉さんは旦那さんとしか話さないんです。子供や私達家族とも話そうとしないんですから。
 なにかご用があるなら、私の窓口までお越しください」

どうやらそうらしい。
子供や家族とも話さないとかある意味仰天する。
後に知ったことだが、晴れ舞台である結婚式ですら、旦那さん以外には口を利かなかったらしい。

ここも残念ながらパス。
急いでいる時とかは業務がスムーズに流れているので便利そうだが、情報収集には向かないだろう。


そうなると、更に隣のコシーネさん辺りが適任だろうか。
しばらく様子を窺う。

「おめでとうございます。本日ランクアップされました。今後も頑張ってくださいね」
「.....あ、ありがとうございます」

至って普通なのではないだろうか。
ただ受付嬢という仕事にしては少し表情が固いような気がする。

また別の冒険者では、

「お疲れさまでした。体を十分に休めて、怪我などされませぬよう気を付けてくださいね」
「.....は、はい。お、お気遣いありがとうございます」

表情が固すぎる。少しも変化していない。

言うなれば能面。まさにそれだ。
言葉は丁寧なのに、表情が一切変化しないというのもある意味怖い。

ここもできることなら避けたい。
無表情というのが、あんなに怖いものだとは思わなかった。

ただ、現状はここが最有力候補だろう。


更に隣の受付窓口を見る。
担当はサシーネさんらしい。

しかし誰も並んでいない。と言うか、並べない。
だって悪びれる様子もなく、窓口を堂々と閉めているのだから。

今まで色んな受付嬢を見てきたが、ちゃんと仕事していたかどうかは別としても仕事はしていた。
それが、このサシーネさんに至ってはついに仕事放棄ときたもんだ。

.....え?なに?この世界はリストラとかってないの?仕事放棄しているのにいいのか?

結局、ここもパス。
と言うよりも、窓口が開いていない以上どうしようもない。


そして最後の窓口なのだが.....ここは嫌だなぁ。

「きゃあああああ!スシーネ君、こっち見てえええええ!」
「マジかわいいんですけど!スシーネ君、仕事終わったらお姉さんと呑みに行かない?」
「今日はあたしと宿屋に行く予定なんだよね~?だから邪魔しないでよ!」

「.....あ、あの。ぼ、僕はそんな約束はしていないんだけど・・・」

こんな感じで、さっきからずっと、黄色い声援ならぬ下品なお誘いが続いている。

この窓口の担当はスシーネ君。大家族初の男性受付だ。
見た目がショタっぽいので、女性冒険者が群がっている。
男性だし、特に問題も抱えていなさそうなのに実に惜しい.....と言うか、女性冒険者の目付きが怖い。


結局、能面受付嬢コシーネさんに担当してもらうことになった。


コシーネさん、笑って!笑って!無表情な上に、漆黒な瞳が怖すぎるから!


□□□□ ~王律の壁~ □□□□

能面受付嬢コシーネさんにビクビクしながらも、情報を収集する。

「この王都って冒険者の質はかなりいいのに、どうしてダンジョンのクリア者が出ないんですか?」

ずっと気になっていた。

他の町では当たり前のようにクリアされているダンジョンが、この王都では全く為されてはいない。
王都と呼ばれているだけあって、道行く冒険者のレベルや力量はかなり高い。
それこそFやEランク程度のダンジョンなら、1日や2日でクリアできてしまいそうな程に・・・。

「それは王律で、クリアしてはならないと決められているからですよ」
「また決まり.....いい加減うんざりなのじゃ」

ドールは本当にうんざりといった表情をしている。
それでもかわいいのだから、美女ってのはお得だよなぁ。

「ダンジョンはそもそも都市の経済を担っておりますので、
 それを攻略されてしまいますと、経済が停滞してしまう恐れがあります。
 それを防ぐ為にも、ダンジョンをクリアしてはならないと定められています」

言いたいことはわかる。
実際ダンジョンをクリアしてしまったことで、ラズリさんのいた町パレスでは多くの冒険者が流出してしまった訳だし。

しかしそれならなぜ・・・

「俺は他の町のダンジョンをクリアしてしまったんですが・・・」
「他の町なら構いません。ここ王都ではしてはならないということですから」
「王都ではダメで、他の町ではいいってのがよくわからないんですが・・・」
「他の町のダンジョン攻略はむしろ推奨されています。そうすれば、自然とこの王都に人が集まる訳ですから」

き、汚すぎる・・・。

つまり人を集める為に、いや、利益を独占したいが為に、王都と他の町の差別化をしている訳だ。
他の町の経済が停滞しても、経済の元となるダンジョンを確保していれば、自分のお膝元は潤ったままになる。
それが可能となるのも、5つものダンジョンを保有している王都ならではなのだろう。

他人などお構いなしの、如何にも人間が、貴族が考えそうな胸糞悪くなる施策だ。

だからこそ・・・
金に汚い人間が、貴族が考えそうなことだからこそ、きっとあるに違いない。抜け穴というのものが・・・

「.....本当にクリアしてはいけないんですか?なにかあるんですよね?」

俺の言葉に、なぜかドールが嬉しそうに微笑んだ。かわいい。
ちなみにアテナはよくわかってはいないようだ。でも、そのバカ面もかわいい。

「はい。こちらも王律にあるのですが、
 同ランクのダンジョンの場合は金銭を支払うことで、片方のダンジョンにのみクリアを許されております」

この場合のランクとは、ダンジョンのランク(FとかE)のことではなく、冒険者が立ち入ることが許されているダンジョンのランクのことを指すらしい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【立ち入り制限あり】

資格:冒険者Aランク以上

(冒険者ランク)(立ち入り許可ダンジョンランク)

『Aランク』  F、E
『Sランク』  F、E、D、C
『SSランク』 F、E、D、C、B、A
『SSSランク』F、E、D、C、B、A、S、SS
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

例えば俺の場合、Aランク冒険者なので立ち入ることができるダンジョンはFかEランクになる。
この場合、FとEを一纏めに同ランクと見なす。
ちなみにSランク冒険者の場合は、FとEで一纏め、DとCで一纏めということになる。

つまり金さえ払えば、俺はFかEどちらかをクリアしてしまっても問題ないことになる。

ただ問題は・・・

「.....金銭っていくらですか?」
「一つのダンジョンにつき、1億です」
「い、いちおく!?」
「一年間経済が停滞しますので・・・」

言っていることは理解できる。
理解できるけど.....さすがにボリすぎではないだろうか。

誰もダンジョンをクリアしない理由がよくわかった。
例えクリアしても1億をも稼げる訳ではない。経験上、いいとこ1000万や2000万程度だ。

・・・。

困った。
非常に困った。

アルテミス様のクリスタルを手に入れるだけなら、神の試練をクリアするだけでいい。
しかしそれだけでは不十分だ。神界に行くためには、ダンジョン制覇の証『攻略の証』が必要となる。
つまり、ダンジョンを必ずクリアしなければならない。

しかし・・・

クリアしてはならないとの王律に、それを曲げるには目の玉が飛び出る程の大金が必要。
全く当てがない訳でもないのだが、ただ・・・。

かくなる上は王都を出るか?と思考していたら・・・

「どうしたのー(。´・ω・)?」

困った時には必ず俺の視界の中に入ってくる存在がいた。
狙っているのだろうか。それとも偶然か。

「.....ダンジョンをクリアしたいんだけど、金がない。全くない。用意できるとも思えない」
「そんなことー?悩むこともないじゃなーい( ´∀` )」

アテナからしてみれば、俺の悩みなんて『そんなこと』レベルらしい。恐ろしい子だ。

「.....どうすればいい?」
「簡単じゃーん!ドラゴンを売ればいいんだよー!」
「・・・」

それは俺も考えた。
ただあのドラゴンは俺の所有物ではなく、アルテミス様のものだ。俺は一時的に預かっているに過ぎない。
しかも先日、俺は粗相を働いたばかりだ。だからおいそれと勝手に、アルテミス様のものに手を出すことには躊躇われる。

「なにいってるのー(。´・ω・)?
 アルテミスお姉ちゃんが必要としてるのはお肉だけでしょー。それ以外は歩がもらっちゃえばいいじゃーん」
「.....え?そんなんでいいの?」

「アルテミスお姉ちゃんにはそもそもお金いらないでしょー。ほかの部分なんてきっと捨てちゃうよー?」
「お、おぅ・・・」

言われてみればその通りだ。
そもそもアルテミス様は呑み比べで酒代をせしめるのだろうから、金なんてもんは必要ないだろう。
アルテミス様を畏れるがあまり、考えが狭まっていたようだ。

それでも保険はかけておくべきだ。

「勝手に売ったことで、もしアルテミス様が怒るようなら、アテナも一緒に謝ってくれるんだよな?」
「怒る訳ないじゃーん!歩は心配しすぎー( ´∀` )」
「.....謝ってくれるんだよな?」
「怒らないってー!歩はすっかり牙を抜かれた虎さんだねー」

アテナは、(「・ω・)「ガオー、←こんな仕草をして、俺を小バカにしてくる。
本来ならつねるところなのだが.....かわいい。思わず、頬が弛んでしまった。

「(「・ω・)「ガオー、(「・ω・)「ガオー」
「.....主?なんか頬が弛んでおらぬか?」
「.....ゆ、弛んでない」

アテナかわいいよアテナ。
虎の衣装とかを着せたら、相当似合うに違いない。

.....コスプレ衣装って、魔道具店にないのだろうか。

「(「・ω・)「ガオー、(「・ω・)「ガオー」
「弛んでおるではないか!」
「弛んでない!」
「コンちゃんも一緒にやろー!たのしいよー!(「・ω・)「ガオー」
「それはいい!きっとかわいいに違いない!ぜひ頼む!」

ナイス!アテナ!
訳のわからないドールの怒りの矛先を変える絶妙な提案だ!

「.....む?か、かわいいかの?」
「アテナがこんなにもかわいいんだから、ドールがかわいくないはずがないだろ?」
「.....あ、主は見たいのか?」
「是非ともお願いします!」
「ふ、ふん!そ、そこまでお願いされたのなら、願いを聞き届けてやってもいいのじゃ!」

どうやら俺の熱きソウルが届いたらしい。
実際は拝み倒したようなものだけど・・・。

そして・・・

「(「・ω・)「ガオー」
「が、がお~」

かわいい。かわいすぎる。
美少女姉妹による、(「・ω・)「ガオー、は強力だ。

そう、強力なのだが、ついつい思ってしまった。

「.....ど、どうじゃ?」
「かわいいぞ。でも・・・」
「な、なんじゃ!?せっかくしてやったのに不満なのか!?」
「ドールは『がお~』じゃなくて、『こん』だよな。種族的にも」
「今更なのじゃ!」

ドールは『こん』で、もう一回お願いします!


コシーネさんをそっちのけで、俺達の演劇は続いていく。


□□□□ ~竜殺し~ □□□□

ドラゴンを売却したと噂になると困るので、場所を変えてもらった。
所謂、決闘場という場所らしく、その名の通り決闘をする為に用いられるところだ。
広さは田舎の平均的な小中学校の体育館ぐらいで、天井はない。

この他にも、王都のギルド内には様々な施設があるらしい。
魔法を訓練や実験する為の訓練場や実験場、冒険者の卵を育てる為の合宿場、ランクアップの際に使用される試験会場等々。
俺がSランクになる際には、その試験会場とやらを使うのだろう。

「ご希望通り広々とした場所を用意しました。早速査定しますので、素材をお願いします」
「わかりました。大きいですので、気を付けてくださいね」

そしてアイテムボックスから一匹?、もう死んでいるから一つ?、のドラゴンを取り出す。

───ズドオオオオオン!

決闘場に鳴り響く大轟音と、決闘場を揺るがす大地鳴り。
死んでいるとは言っても、そこはやはりドラゴン。得も言われぬ迫力がある。

そして・・・

「おおきいねー(o゜ω゜o)」
「うむ。壮観なのじゃ」

アテナやドールが言う通り大きい。
比較的小さいやつを選んでこれである。

そんな飄々としている俺達とは違って、コシーネさんは・・・

「・・・」

能面のまま、その場に立ち尽くしていた。怖すぎ!
驚いているのは間違いないのに、それでも能面が崩れない辺りはさすがプロだと言える。なんのプロかはわからないが・・・。

そして現実に戻ってきて一言。

「.....こ、これは?」
「見ての通り、ドラゴンです」
「ドラゴン・・・」

コシーネさんの能面の表情が崩れ、呆け顔に.....はならなかった。手強い!

「え、えっと.....冒険者さんのランクは?」
「Aです」
「A!?Aでドラゴンを!?」

ついにコシーネさんの能面の表情が崩れ、驚き顔に.....もならなかった。手強すぎ!

「.....どうやら冒険者さんはランク以上の力があるようですね。これは適正に判断する必要があるでしょう」
「.....え?」

なにかおかしい。
なんか俺がドラゴンを倒したことになっている。これは否定しないとマズいやつでは?

「なにか勘違いされて・・・」
「どうじゃ?すごいであろう?我が主は!こんなトカゲ程度では主の足元にも及ばぬ。
 しかもこやつ1匹ではないぞ?40じゃ!40ものトカゲを始末したのじゃ!」

「ちょっ!?おまっ!?」

ドールがとんでもないことを言い出した。
冒頭で「任せよ」とか言っていたのはこういうことか!

「よ、40!?本当ですか!?」

さしものコシーネさんもついにはその能面の表情が崩れ、慌て顔に.....どうしてもならなかった。あんたもすごいな!

「本当なのじゃ。我が主にかかれば、トカゲの100や200、朝催す前に片付けられる程度のものである」
「そ、それほどまでに冒険者さんはすごいのですか!?」

「ねー( ´∀` )私の歩にかかれば朝飯前だよねー」
「ふぁ!?アテナ、お前もか!」

アテナのまさかの裏切り。
きっとカエサルもこんな気持ちだったのだろう。

それにしても、マズい流れになった。
ドールだけではなく、アテナも参戦してくるとは思ってもみなかった。
しかもこんな子供にしか見えない連中の言葉を、コシーネさんががっつりと信じているのも余計にマズい。

「う、疑う訳ではないのですが.....全部とは言いません。他のも出してもらってもよろしいですか?」
「さぁ、主!ばば~んと出すのじゃ!この者に、主の偉大さを見せつけてやるのじゃ!」
「はやくはやくー!ばばーんだよー、ばばーん!ずどーんだよー、ずどーん!」
「・・・」

マズい流れを断ち切るのなら、今をおいて他にはない。
ここで「あるわけないじゃないですか~」とか言えば、きっとドラゴンを倒したのも偶然の産物程度で話は済むことだろう。
これ以上目立ちたくはないし、やっかいごとを抱えたくはない。

だから・・・

───ズドオオオオオン!
───ズドオオオオオン!
───ズドオオオオオン!
───ズドオオオオオン!
───ズドオオオオオン!

合計10匹、豪快に取り出した。

「!!?」

この場を埋め尽くすドラゴンのあまりの凄まじさに、あまりの豪快さに、あまりの異様さに、能面のプロとまで言わさしめたコシーネさんもついには脱帽だろう。
端正な顔立ちから作られたその能面の表情が崩れ、畏敬顔に.....なんでならないの!顔の筋肉ないんじゃないのか!?

「これが俺の実力です。まだまだありますが、この場でこれ以上出すのは危ないですからね」
「ふっふ~ん。だから言ったであろう?我が主がAランクなど有り得ぬのじゃ!ランクを見直すがよい!」
「ふぁーすごーい!ずどーん!ずどーん!ずどーん!あーはははははo(≧∇≦)o」

俺とアテナ、そしてドールは最早得意満面だった。

・・・。

確かにマズい流れだった。
断ち切るのなら、今をおいて他にはなかった。

そう、ちゃんと理解していた。
理解していたのだが・・・

アテナやドールの期待するような眼差しには勝てなかった。
いわんや、コシーネさんですらも、きらきらした眼差しで見つめてきたら断ち切れようか。いや、断ち切れない!

女性に何かを期待されるような眼差しで見つめられた経験など皆無に等しい俺にとって、3人のそれは・・・

強烈だった。
新鮮だった。
快感だった。

そして・・・

感動した!

だからこそ冷静な判断などは吹っ飛び、ちょっといい格好をしたいと悪い芽が出てしまったのだ。
後におおいに後悔することになるのだが・・・。

「お一人で全部.....本物の竜殺しドラゴンスレイヤーです。
 伝説の5英雄にも匹敵する大英雄です。.....こんな人が今の世にも本当にいるんですね・・・」

竜殺しドラゴンスレイヤーってなんだよ!?
それに5英雄!?大英雄!?どういうことだってばよ!?


多くの嘘と謎、そして後悔を残しつつ、俺は竜殺しドラゴンスレイヤーという称号を獲得した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後書き

次回、ランクアップ!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今日のひとこま

~竜肉は女性の味方~

時は朝食前に遡る。

「あれー?アルテミスお姉ちゃんはー(。´・ω・)?」
「帰った。アテナによろしくだってよ」
「ふーん。帰るのはやかったねー」
「あ、あぁ。ちょっと怒らせちゃってさ」

「.....む?主が何かしようとしたのか!?それとも何かされたのか!?」
「してないし、されてない」
「ふ、ふむ。それならばよい」
「心配してくれてありがとな」

「と、当然のことなのじゃ!それで?妾達に見せたいものとは?」
「これ」

───ズドオオオオオン!

「おおきいねー(o゜ω゜o)」
「なっ!?ド、ドラゴンではないか!」
「アルテミス様の置き土産ってやつだな。肉も少しなら食べていいらしい」
「な、なんと!まことか!?」

「お、おぅ.....どうした?」
「聞いておらぬのか?竜肉は美容にいいのじゃ!
 一口食べれば肌が艶やかに、二口食べれば滑らかに、三口食べれば蕩けるとまで言われておるのじゃ!」
「蕩けたらダメだろ!?」
「.....くふふ。これで妾の玉のような肌が更に磨かれるというもの。主との交尾も近いのじゃ」

「おもいっきり聞こえているんだが?」
「主も、妾がきれいになったら嬉しいであろう?」
「それはそうだが・・・」
「なんじゃ?なにが不満なのじゃ?」

「ドールは竜肉なんかに頼らなくても、これ以上はないってぐらい今でも十分きれいだぞ?」
「む?そ、そうか?それでも.....(好いた男の為にも、もっときれいになりたいのじゃ!)」
「なんか言ったか?」
「な、なんでもない!早速竜肉を食べるのじゃ!」

「朝から!?」
「当然であろう!竜肉は女の味方なのじゃ!」

ドールの言った通り、確かに肌が蕩けていた。アテナのほっぺただが・・・。

「歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く