歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~
第38歩目 はじめてのらしさ!雇用契約4日目
前回までのあらすじ
アテナの智慧もバカにできない
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
□□□□ ~歩さんの生きがい~ □□□□
「Lv.2はスピア、Lv.3はストームだと聞いています。
Lv.1と伝説上のLv.5のみ固有名だときいています」
俺は魔物を屠りながら、ラズリさんから魔法の講義を受けていた。
「そうなんだー。知らなかったー」
智慧の女神なのに知らないのか?知識偏りすぎでは?
「スピアはLv.1とそう変わらない威力みたいですが、飛距離がすごいらしいです。ストームは地上に起こる乱気流と言われ、凄まじい威力をほこるとか」
なるほど。やはり情報ならラズリさんだな。
元冒険者にして、ギルド職員は伊達じゃないってことか。
「ファイヤースピア!」
───ドスッ
───ドスッ
───ドスッ
───ドスッ
炎の槍が4本、魔物に突き刺さった。
おぉっ!カッコイイ!
「ブヒィ!?」
「・・・!?」
「キキキ!?」
「キィィ!?」
スピアに貫かれた魔物は素材に変化していく。
この階層にいる魔物程度なら、スピアでもオーバーキルみたいだ
更に、奥で高見の見物をしている猿の集団にもスピアなら届くことが分かった。
これならアテナが言っていた、槍があればうんたらかんたらってのも納得だ。
アテナのお手柄.....いや、偉い人のお手柄か。
次にLv.3魔法を試してみる。
「ファイヤーストー.....」
しかし、詠唱しかけた時にふと疑問が沸いた。
これまでも、Lv.3スキルになると凄まじい威力になっていた。
当然魔法も想像以上の威力になるはずだ。
「魔法って、フレンドリーファイアとかは大丈夫なんですか?」
「.....それなら心配はありませんよ。パーティーメンバーには致死性のある魔法は効かないシステムですから」
ラズリさんの表情が少し曇ったような気がした。
パーティーメンバーにはってことは、それ以外には効くのだろう。
ダンジョン内で出会った冒険者を魔法で.....ってバカもいるんだろうな。
.....どの世界にもバカはいるもんなんだな。
とりあえず、俺はアテナをちらっと見る。
幸せそうなバカ面をしてお煎餅を貪っている。
バカはバカでも、こういうバカならラズリさんも気に病必要はないだろう。
だから俺は、
「ファイアボール!」
───ボッ。
「あー!なにすんのよーヽ(`Д´#)ノ私のお煎餅ー!」
アテナに向かって、ファイアボールを放った。
どうやらラズリさんの言う通り、フレンドリーファイアはないらしい。お煎餅だけが燃えていった。
「悪いな。実験だ」
「だからー!私に試さないでよーヽ(`Д´#)ノ」
「確かに大丈夫でした」
「え、ええ。アユムさんって、アテナさんには意地悪ですよね」
ラズリさんは微妙に引き攣った顔をしているようだが、気のせいだろう。
「意地悪されたアテナは可愛くありません?あまりにも可愛いので、意地悪するのが俺の生きがいなんです。ほら見てください。あのアテナの怒りながらも慌てている様子。ゾクゾクきますよね?アテナは俺の癒しですから、今後もいびり倒すつもりですよ」
「いやああああああああああああああ(lll゜Д゜)
ドSいやあああああ!やめてー!やめてよおおお!
私のお煎餅がなくなるうううううううう(´;ω;`)」
俺の爽やかな笑顔と連続で放たれるファイアボールにぶるぶる震えるアテナ。
アテナかわいいよアテナ!
これからもたくさん意地悪してやるからな!
「あ~こんな形の愛もいいですね❤」
泣き叫ぶアテナをうっとりと眺めるラズリさん。
マジか.....
俺はやばい自覚はあるが、ここにもやばいやつがいた!
□□□□ ~智慧の女神アテナ~ □□□□
とりあえずフレンドリーファイアがないことを確認した俺は、早速Lv.3魔法を試してみた。
「ファイアストーム!」
───ゴオオオオォォォォ!
部屋いっぱいに鳴り響く大轟音。
目の前に広がる不自然な炎渦流。
炎渦流にのみこまれていく多数の魔物。
炎渦流が治まった後にぽっかりと空いた魔物の群れの空間。
一気に部屋の見通しがよくなるほど、魔物を殲滅したようだ
・・・。
.....え?なんだこれ?
威力が凄まじいとかのレベルじゃないだろ.....
「・・・」
「・・・」
「さすが私の歩~!ねー?言ったでしょー?よゆうだってー!」
アテナはきゃっきゃっと楽しそうにしているが、俺とラズリさんはあまりの事態に呆然としていた。
確かに大魔道士とか言われるぐらいの力はある。
というか、ありすぎ!恐すぎるわ!魔法こわっ!!
こんな魔法があるんだから、もはや大勢は決したかのように見えたが.....
「キキィー!」
ボス猿の大号令によって、再び魔物の猛攻が始まった。
しばらく凌いでいたら、雰囲気がおかしいことに気付く。
「アユムさん!なんかおかしいです!また魔物が!」
ラズリさんの掛け声で、ようやくおかしい原因がなんなのかがハッキリと分かった。
また部屋いっぱいに魔物がひしめいているのだ。
部屋の奥には俺を嘲笑うかのように魔物がうごめいている。
さっき殲滅しつくしたのにどういうことだ!?
まぁいい。それならそれで何度でも殲滅してやる!
「ファイヤー.....」
俺がまたファイヤーストームを唱えようとしたら、
「歩~歩~!ストップー!」
意外にもアテナが待ったをかけてきた。
「歩は気付いていないのかもしれないけどー、
Lv.3魔法は今の歩だと後一発が限界だからねー!」
ちょっ!?マジか!?
「歩は強いけどー、所詮凡人だからねー。
勇者とはちがうんだよー?身の程を弁えないとねー」
───!!
アテナからこんなことを言われる日がくるとは.....
でも確かにそうだ。
俺は剣豪で武王、そして大魔道士だが、ステータスはラズリさんと大差ないんだった。
調子に乗っては痛い目にあう。
しかし、この状況どうしたら.....
ファイヤーストームを使っても、また魔物がひしめく可能性がある
そうなったらもう完全にお手上げだ。万事休すとはこのことか。
───ゴクッ!
俺は息をのむ。
背中には嫌な汗が滴り落ちる。
「ア、アユムさん」
背中からラズリさんの心配そうな声が聞こえてきた。
今からでも逃げるか?
それともまだ戦えるか?
死へのカウントダウンが刻一刻と近づきつつある。
そんな緊迫した雰囲気を、場違いな明るい声で破ってきたのはやはりこいつだった。
「しかたないなー。私が智慧を貸してあげるー!」
また?しかしさっきはナイスな智慧だったしな。
俺はわらにもすがる思いでアテナの言葉に耳を傾けた。
くだらない内容だったら、当初の作戦通り逃げればいい。
「倒した魔物がまた増えたってことは召喚されたってことだよー。
高位の悪魔がよく召喚術をつかうからねー。
悪魔ってのは魔物と違って、高い知能を持ってるんだよー。
見た目は魔物と一緒なんだけどねー。
ここまで言えば、歩ならわかるよねー( ´∀` )」
召喚術だと!?だからか!
しかも高い知能を持っているとなると.....
あいつしかいない!
部屋の中央で踏ん反り返っているボス猿!
あいつが元凶か!そうと分かれば話は早い!
「ファイヤースピア!」
これならボス猿にも届く!
そう届くはずだった.....
「キキィー!」
しかし、ボス猿の合図とともに子分猿も含めて避けてしまった。
本当に賢いな!あのボス猿!
「ダメだよ、歩~。いきなり狙ってもあたらないよー」
「いや、下手な鉄砲も数を撃てば当たるかもしれないだろ?」
「絶対あたらないよー。歩はわからないのー?
なんでお猿さん達が急に攻撃してこなくなったのかー
あれはボス猿さんを守る兵隊が減るのを恐れたからでしょー
魔法を打っても避けられるか、お猿さんが盾になるよー」
な、なるほど。確かに理にかなっている。
し、しかし.....
「じゃあ、どうしたらいいんだ?」
「えらい人がこうも言ってたよー?
将を射んと欲すれば、まずその馬を射よってねー( ´∀` )」
それは聞いたことがある。
馬.....つまり子分猿を先に仕留めるのか。
でも.....
「子分猿を倒しても召喚されるんじゃないか?」
「歩はバカだねー(´-ε -`)」
なにがバカだよ!?普通に考えられることだろ!
「さっきお猿さんが避けたの見てわからないのー?
召喚できるなら避ける必要ないでしょー?万が一もあるしー。
それにお猿さんを温存してるところをみても、
お猿さんは召喚できないとみて間違いないよー」
「・・・」
「・・・」
俺もラズリさんも空いた口が塞がらない。
な、なんなんだこれ!?
ぐぅの音も出ないほど理路整然と綴られる見解。
この状況下でも冷静沈着に物事を見通している慧眼。
こ、これがただのおっぱいでしかないあいつなのか?
い、いや。そんなはずはない.....
だから俺とラズリさんは同時に叫んだ。
「お前誰だよ!?」
「あなたは誰ですか!?」
「どういう意味よーヽ(`Д´#)ノ」
アテナはぷんぷんと怒っているが、そういう意味だよ!
本当に誰だ!?お前!?
□□□□ ~決着!魔物部屋~ □□□□
俺達と一緒にいるのは、どうやら本物のアテナだったらしい。
智慧の女神と謳われるだけの実力を示されたら、嫌でも頼りたくなる。
「どうしたら子分猿を倒せる?魔法を放っても避けるだろうし」
「お猿さんは警戒心が強い生き物なんだってー。
だからお猿さんを狙うんじゃなくてー、
他の魔物を狙う要領で少しずつ倒せばいいよー。
いいー?少しずつだよー?一気に狙うと感づかれるよー?」
ふむふむ。猿共の油断を誘うのか。
それはわかる。それはわかるのだが.....
「なぁ?それって俺がかなりきつくないか?」
他の魔物の猛攻をいなしながら、猿共に気付かれないように少しずつ攻撃を与えていく。
猛攻をいなすだけでも一苦労なんだが?
「にへへー(*´∀`*)でも私の歩ならよゆうだよー!」
「・・・」
きっと、にぱー☆と微笑んでいるんだろうな。
無茶苦茶な注文だが、なんとなくできるような気がしてきた!
ちゃんとしているアテナはすごく可愛い。胸大きいし
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
あれからどれだけの時間がたったのだろうか。
果てしなく長い時間がたったのは間違いない。
その証拠に、アテナはすやすやとラズリさんの膝枕で寝ている。
本当にいいご身分だよ、全く!
でも、アテナのアドバイスのおかげでここまできた。
「年貢の納め時なようだな、ボス猿さんよ」
「キキィ~」
ボス猿から悔しそうな鳴き声が漏れた。
あれから果てしない戦闘を繰り返し、ついにボス猿を追い詰めた。
そこらじゅうに転がる素材の数が、途方もないほどの魔物の数だったことを改めて思い知らされる。
俺が感慨に耽っていたら.....
「.....ニンゲンヤルナ」
お前しゃべれんのかよ!?最初から話せや!
「お、驚いた。話せるのか.....さすが高位の悪魔だ」
「ソレハイヤミカ?コノブザマナケッカデコウイナドト」
受け答えもバッチリとか、本当に人間と変わらないな。
さて、疑問があるんだった。
「悪魔ってなんだ?魔族とは違うのか?」
「マゾクナドトイッショニスルナ!」
「じゃあ、なんだよ?」
「・・・」
答える気はないのか。どうやら魔族とは違うらしい。
「なんでその悪魔がこんなところにいるんだよ?」
「・・・」
「ここでなにしてたんだ?」
「・・・」
黙秘ですか。もうなにを聞いても無駄らしい。
「他の冒険者の脅威にもなるし、悪いが討伐させてもらうぞ?」
俺は剣を正眼に構え、ボス猿を見据える。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『ボス猿』 レベル:246(A) 危険度:大
体力:6820
魔力:7500
筋力:6300
耐久:6000
敏捷:7800
【一言】すやすや.....( ˘ω˘)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
つえ~!さすが高位の悪魔!
しかもAランクの魔物って、Sランカー案件だろ!
確かに強い。確かに強いのだが.....
それでも俺の相手にはならないな。
俺はスキルのおかげで、事実上ステータスは8000オーバーだし。
「死ぬ覚悟はできたか?」
「ワレノヤクメハオワッタ。スキニスルガイイ」
「役目?役目ってなんだよ?」
「・・・」
ちっ。思わせぶりなセリフを残すなよ!気になるだろ!
俺は地面を蹴る。
───ヒュッ!
疾風の如く、ボス猿の懐に瞬時に入り込んだ。
剣術Lv.3のおかげで体が流れるように自然と動く。
ボス猿は観念しているのか微動だにしない。
俺はそのまま上段から右肩目掛けて振り下ろそうとした。
所謂、袈裟斬りってやつだ
今まさに剣が振り下ろされる今際の際、
「待ってー!モンキーちゃんは私が飼うのー!
殺しちゃダメえええええええええ(´;ω;`)」
アテナが起きたようだ。
それにしてもモンキーちゃんってどうよ?
「キキィ~」
なんで猿語!?話せるんだから話せや!
それでも俺は、勢いづいた剣を止められるはずもなく、そのまま振り下ろした。
ボス猿は斬られる瞬間、アテナにステキな笑顔でサムズアップしていたように見えたが気のせいだろうか?
アテナとボス猿の間でなにか通じるものがあったらしい。
「モンキーちゃああああああああああん(´;ω;`)」
後に残ったのは、無数の戦利品とアテナの悲痛の叫びだけだった。
微妙にいたたまれない雰囲気で、その場に佇みながらも俺は思う。
あれ?なんか俺が悪いことをしたような雰囲気になってないか?
ちなみにダンジョンを出てから分かったことだが、
既にダンジョン内で1日たっていたらしい。
本日の戦利品
①転送陣の設置2個(100万ルクア)
②大量の素材(計100万ルクア)
③報告報酬(10万ルクア)と掃討報酬(50万ルクア)
④ラズリさん30レベルアップ
⑤疾風の剣(ボス猿ドロップ)
⑥謎のクリスタル(ボス猿ドロップ)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『アテナ』 レベル:3 危険度:極小
種族:女神
年齢:ーーー
性別:♀
職業:女神
称号:智慧の女神
体力:50
魔力:50
筋力:50
耐久:50
敏捷:50
女神ポイント:1400【↓1600】
【一言】やっと外でれたよー!泥だらけだしお風呂入りたーい!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アユムの所持金:2834000ルクア【↑2600000】
冒険者のランク:A(クリア回数:2回)
このお話の歩数:約30100歩
ここまでの歩数:約1055900歩
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『アユム・マイニチ』 レベル:1452【↑21】
種族:人間
年齢:26
性別:♂
職業:凡人
称号:女神の付き人
体力:1462(+1452)【↑21】
魔力:1462(+1452)【↑21】
筋力:1457(+1452)【↑21】
耐久:1457(+1452)【↑21】
敏捷:1512(+1452)【↑21】
技能:言語理解/ステータス/詠唱省略
Lv.1:初級水魔法/初級風魔法/初級土魔法
初級光魔法/初級闇魔法
Lv.2:隠密/偽造/捜索/吸収/浄化魔法
治癒魔法/共有
Lv.3:鑑定/剣術/体術/索敵/感知
物理耐性/魔法耐性/状態異常耐性
初級火魔法
共有:アイテムボックスLv.3
パーティー編成Lv.1
固有:ウォーキングLv.1452 436/1453
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後書き
次回、お揃い!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日のひとこま
「おかえりなさい、アユムさん」
「ご心配おかけしました。スカイさん」
「本当に大変だったみたいですね」
「本当ですよ。勘弁してもらいたいです」
「でもあのアユムさんが.....」
「どうしました?」
「いえ。ラズリがご迷惑をおかけしました」
「迷惑だなんてそんな。助かりました」
「あらあらまぁまぁ!助かりましたか」
「ん?え、ええ、確かに助かりましたけど.....」
「そうですか。やっぱり」
「やっぱり?」
「アユムさんはそういうの慣れてなさそうですから」
「は、はぁ?そういうの?」
「朝までラズリがアユムさんを求めていたんですよね?
それで二人はついに.....今日はお赤飯にしますね!」
「お赤飯とか、やめんか!」
どんな勘違いしてんだよ!この人は!
アテナの智慧もバカにできない
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□□□□ ~歩さんの生きがい~ □□□□
「Lv.2はスピア、Lv.3はストームだと聞いています。
Lv.1と伝説上のLv.5のみ固有名だときいています」
俺は魔物を屠りながら、ラズリさんから魔法の講義を受けていた。
「そうなんだー。知らなかったー」
智慧の女神なのに知らないのか?知識偏りすぎでは?
「スピアはLv.1とそう変わらない威力みたいですが、飛距離がすごいらしいです。ストームは地上に起こる乱気流と言われ、凄まじい威力をほこるとか」
なるほど。やはり情報ならラズリさんだな。
元冒険者にして、ギルド職員は伊達じゃないってことか。
「ファイヤースピア!」
───ドスッ
───ドスッ
───ドスッ
───ドスッ
炎の槍が4本、魔物に突き刺さった。
おぉっ!カッコイイ!
「ブヒィ!?」
「・・・!?」
「キキキ!?」
「キィィ!?」
スピアに貫かれた魔物は素材に変化していく。
この階層にいる魔物程度なら、スピアでもオーバーキルみたいだ
更に、奥で高見の見物をしている猿の集団にもスピアなら届くことが分かった。
これならアテナが言っていた、槍があればうんたらかんたらってのも納得だ。
アテナのお手柄.....いや、偉い人のお手柄か。
次にLv.3魔法を試してみる。
「ファイヤーストー.....」
しかし、詠唱しかけた時にふと疑問が沸いた。
これまでも、Lv.3スキルになると凄まじい威力になっていた。
当然魔法も想像以上の威力になるはずだ。
「魔法って、フレンドリーファイアとかは大丈夫なんですか?」
「.....それなら心配はありませんよ。パーティーメンバーには致死性のある魔法は効かないシステムですから」
ラズリさんの表情が少し曇ったような気がした。
パーティーメンバーにはってことは、それ以外には効くのだろう。
ダンジョン内で出会った冒険者を魔法で.....ってバカもいるんだろうな。
.....どの世界にもバカはいるもんなんだな。
とりあえず、俺はアテナをちらっと見る。
幸せそうなバカ面をしてお煎餅を貪っている。
バカはバカでも、こういうバカならラズリさんも気に病必要はないだろう。
だから俺は、
「ファイアボール!」
───ボッ。
「あー!なにすんのよーヽ(`Д´#)ノ私のお煎餅ー!」
アテナに向かって、ファイアボールを放った。
どうやらラズリさんの言う通り、フレンドリーファイアはないらしい。お煎餅だけが燃えていった。
「悪いな。実験だ」
「だからー!私に試さないでよーヽ(`Д´#)ノ」
「確かに大丈夫でした」
「え、ええ。アユムさんって、アテナさんには意地悪ですよね」
ラズリさんは微妙に引き攣った顔をしているようだが、気のせいだろう。
「意地悪されたアテナは可愛くありません?あまりにも可愛いので、意地悪するのが俺の生きがいなんです。ほら見てください。あのアテナの怒りながらも慌てている様子。ゾクゾクきますよね?アテナは俺の癒しですから、今後もいびり倒すつもりですよ」
「いやああああああああああああああ(lll゜Д゜)
ドSいやあああああ!やめてー!やめてよおおお!
私のお煎餅がなくなるうううううううう(´;ω;`)」
俺の爽やかな笑顔と連続で放たれるファイアボールにぶるぶる震えるアテナ。
アテナかわいいよアテナ!
これからもたくさん意地悪してやるからな!
「あ~こんな形の愛もいいですね❤」
泣き叫ぶアテナをうっとりと眺めるラズリさん。
マジか.....
俺はやばい自覚はあるが、ここにもやばいやつがいた!
□□□□ ~智慧の女神アテナ~ □□□□
とりあえずフレンドリーファイアがないことを確認した俺は、早速Lv.3魔法を試してみた。
「ファイアストーム!」
───ゴオオオオォォォォ!
部屋いっぱいに鳴り響く大轟音。
目の前に広がる不自然な炎渦流。
炎渦流にのみこまれていく多数の魔物。
炎渦流が治まった後にぽっかりと空いた魔物の群れの空間。
一気に部屋の見通しがよくなるほど、魔物を殲滅したようだ
・・・。
.....え?なんだこれ?
威力が凄まじいとかのレベルじゃないだろ.....
「・・・」
「・・・」
「さすが私の歩~!ねー?言ったでしょー?よゆうだってー!」
アテナはきゃっきゃっと楽しそうにしているが、俺とラズリさんはあまりの事態に呆然としていた。
確かに大魔道士とか言われるぐらいの力はある。
というか、ありすぎ!恐すぎるわ!魔法こわっ!!
こんな魔法があるんだから、もはや大勢は決したかのように見えたが.....
「キキィー!」
ボス猿の大号令によって、再び魔物の猛攻が始まった。
しばらく凌いでいたら、雰囲気がおかしいことに気付く。
「アユムさん!なんかおかしいです!また魔物が!」
ラズリさんの掛け声で、ようやくおかしい原因がなんなのかがハッキリと分かった。
また部屋いっぱいに魔物がひしめいているのだ。
部屋の奥には俺を嘲笑うかのように魔物がうごめいている。
さっき殲滅しつくしたのにどういうことだ!?
まぁいい。それならそれで何度でも殲滅してやる!
「ファイヤー.....」
俺がまたファイヤーストームを唱えようとしたら、
「歩~歩~!ストップー!」
意外にもアテナが待ったをかけてきた。
「歩は気付いていないのかもしれないけどー、
Lv.3魔法は今の歩だと後一発が限界だからねー!」
ちょっ!?マジか!?
「歩は強いけどー、所詮凡人だからねー。
勇者とはちがうんだよー?身の程を弁えないとねー」
───!!
アテナからこんなことを言われる日がくるとは.....
でも確かにそうだ。
俺は剣豪で武王、そして大魔道士だが、ステータスはラズリさんと大差ないんだった。
調子に乗っては痛い目にあう。
しかし、この状況どうしたら.....
ファイヤーストームを使っても、また魔物がひしめく可能性がある
そうなったらもう完全にお手上げだ。万事休すとはこのことか。
───ゴクッ!
俺は息をのむ。
背中には嫌な汗が滴り落ちる。
「ア、アユムさん」
背中からラズリさんの心配そうな声が聞こえてきた。
今からでも逃げるか?
それともまだ戦えるか?
死へのカウントダウンが刻一刻と近づきつつある。
そんな緊迫した雰囲気を、場違いな明るい声で破ってきたのはやはりこいつだった。
「しかたないなー。私が智慧を貸してあげるー!」
また?しかしさっきはナイスな智慧だったしな。
俺はわらにもすがる思いでアテナの言葉に耳を傾けた。
くだらない内容だったら、当初の作戦通り逃げればいい。
「倒した魔物がまた増えたってことは召喚されたってことだよー。
高位の悪魔がよく召喚術をつかうからねー。
悪魔ってのは魔物と違って、高い知能を持ってるんだよー。
見た目は魔物と一緒なんだけどねー。
ここまで言えば、歩ならわかるよねー( ´∀` )」
召喚術だと!?だからか!
しかも高い知能を持っているとなると.....
あいつしかいない!
部屋の中央で踏ん反り返っているボス猿!
あいつが元凶か!そうと分かれば話は早い!
「ファイヤースピア!」
これならボス猿にも届く!
そう届くはずだった.....
「キキィー!」
しかし、ボス猿の合図とともに子分猿も含めて避けてしまった。
本当に賢いな!あのボス猿!
「ダメだよ、歩~。いきなり狙ってもあたらないよー」
「いや、下手な鉄砲も数を撃てば当たるかもしれないだろ?」
「絶対あたらないよー。歩はわからないのー?
なんでお猿さん達が急に攻撃してこなくなったのかー
あれはボス猿さんを守る兵隊が減るのを恐れたからでしょー
魔法を打っても避けられるか、お猿さんが盾になるよー」
な、なるほど。確かに理にかなっている。
し、しかし.....
「じゃあ、どうしたらいいんだ?」
「えらい人がこうも言ってたよー?
将を射んと欲すれば、まずその馬を射よってねー( ´∀` )」
それは聞いたことがある。
馬.....つまり子分猿を先に仕留めるのか。
でも.....
「子分猿を倒しても召喚されるんじゃないか?」
「歩はバカだねー(´-ε -`)」
なにがバカだよ!?普通に考えられることだろ!
「さっきお猿さんが避けたの見てわからないのー?
召喚できるなら避ける必要ないでしょー?万が一もあるしー。
それにお猿さんを温存してるところをみても、
お猿さんは召喚できないとみて間違いないよー」
「・・・」
「・・・」
俺もラズリさんも空いた口が塞がらない。
な、なんなんだこれ!?
ぐぅの音も出ないほど理路整然と綴られる見解。
この状況下でも冷静沈着に物事を見通している慧眼。
こ、これがただのおっぱいでしかないあいつなのか?
い、いや。そんなはずはない.....
だから俺とラズリさんは同時に叫んだ。
「お前誰だよ!?」
「あなたは誰ですか!?」
「どういう意味よーヽ(`Д´#)ノ」
アテナはぷんぷんと怒っているが、そういう意味だよ!
本当に誰だ!?お前!?
□□□□ ~決着!魔物部屋~ □□□□
俺達と一緒にいるのは、どうやら本物のアテナだったらしい。
智慧の女神と謳われるだけの実力を示されたら、嫌でも頼りたくなる。
「どうしたら子分猿を倒せる?魔法を放っても避けるだろうし」
「お猿さんは警戒心が強い生き物なんだってー。
だからお猿さんを狙うんじゃなくてー、
他の魔物を狙う要領で少しずつ倒せばいいよー。
いいー?少しずつだよー?一気に狙うと感づかれるよー?」
ふむふむ。猿共の油断を誘うのか。
それはわかる。それはわかるのだが.....
「なぁ?それって俺がかなりきつくないか?」
他の魔物の猛攻をいなしながら、猿共に気付かれないように少しずつ攻撃を与えていく。
猛攻をいなすだけでも一苦労なんだが?
「にへへー(*´∀`*)でも私の歩ならよゆうだよー!」
「・・・」
きっと、にぱー☆と微笑んでいるんだろうな。
無茶苦茶な注文だが、なんとなくできるような気がしてきた!
ちゃんとしているアテナはすごく可愛い。胸大きいし
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
あれからどれだけの時間がたったのだろうか。
果てしなく長い時間がたったのは間違いない。
その証拠に、アテナはすやすやとラズリさんの膝枕で寝ている。
本当にいいご身分だよ、全く!
でも、アテナのアドバイスのおかげでここまできた。
「年貢の納め時なようだな、ボス猿さんよ」
「キキィ~」
ボス猿から悔しそうな鳴き声が漏れた。
あれから果てしない戦闘を繰り返し、ついにボス猿を追い詰めた。
そこらじゅうに転がる素材の数が、途方もないほどの魔物の数だったことを改めて思い知らされる。
俺が感慨に耽っていたら.....
「.....ニンゲンヤルナ」
お前しゃべれんのかよ!?最初から話せや!
「お、驚いた。話せるのか.....さすが高位の悪魔だ」
「ソレハイヤミカ?コノブザマナケッカデコウイナドト」
受け答えもバッチリとか、本当に人間と変わらないな。
さて、疑問があるんだった。
「悪魔ってなんだ?魔族とは違うのか?」
「マゾクナドトイッショニスルナ!」
「じゃあ、なんだよ?」
「・・・」
答える気はないのか。どうやら魔族とは違うらしい。
「なんでその悪魔がこんなところにいるんだよ?」
「・・・」
「ここでなにしてたんだ?」
「・・・」
黙秘ですか。もうなにを聞いても無駄らしい。
「他の冒険者の脅威にもなるし、悪いが討伐させてもらうぞ?」
俺は剣を正眼に構え、ボス猿を見据える。
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『ボス猿』 レベル:246(A) 危険度:大
体力:6820
魔力:7500
筋力:6300
耐久:6000
敏捷:7800
【一言】すやすや.....( ˘ω˘)
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つえ~!さすが高位の悪魔!
しかもAランクの魔物って、Sランカー案件だろ!
確かに強い。確かに強いのだが.....
それでも俺の相手にはならないな。
俺はスキルのおかげで、事実上ステータスは8000オーバーだし。
「死ぬ覚悟はできたか?」
「ワレノヤクメハオワッタ。スキニスルガイイ」
「役目?役目ってなんだよ?」
「・・・」
ちっ。思わせぶりなセリフを残すなよ!気になるだろ!
俺は地面を蹴る。
───ヒュッ!
疾風の如く、ボス猿の懐に瞬時に入り込んだ。
剣術Lv.3のおかげで体が流れるように自然と動く。
ボス猿は観念しているのか微動だにしない。
俺はそのまま上段から右肩目掛けて振り下ろそうとした。
所謂、袈裟斬りってやつだ
今まさに剣が振り下ろされる今際の際、
「待ってー!モンキーちゃんは私が飼うのー!
殺しちゃダメえええええええええ(´;ω;`)」
アテナが起きたようだ。
それにしてもモンキーちゃんってどうよ?
「キキィ~」
なんで猿語!?話せるんだから話せや!
それでも俺は、勢いづいた剣を止められるはずもなく、そのまま振り下ろした。
ボス猿は斬られる瞬間、アテナにステキな笑顔でサムズアップしていたように見えたが気のせいだろうか?
アテナとボス猿の間でなにか通じるものがあったらしい。
「モンキーちゃああああああああああん(´;ω;`)」
後に残ったのは、無数の戦利品とアテナの悲痛の叫びだけだった。
微妙にいたたまれない雰囲気で、その場に佇みながらも俺は思う。
あれ?なんか俺が悪いことをしたような雰囲気になってないか?
ちなみにダンジョンを出てから分かったことだが、
既にダンジョン内で1日たっていたらしい。
本日の戦利品
①転送陣の設置2個(100万ルクア)
②大量の素材(計100万ルクア)
③報告報酬(10万ルクア)と掃討報酬(50万ルクア)
④ラズリさん30レベルアップ
⑤疾風の剣(ボス猿ドロップ)
⑥謎のクリスタル(ボス猿ドロップ)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『アテナ』 レベル:3 危険度:極小
種族:女神
年齢:ーーー
性別:♀
職業:女神
称号:智慧の女神
体力:50
魔力:50
筋力:50
耐久:50
敏捷:50
女神ポイント:1400【↓1600】
【一言】やっと外でれたよー!泥だらけだしお風呂入りたーい!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アユムの所持金:2834000ルクア【↑2600000】
冒険者のランク:A(クリア回数:2回)
このお話の歩数:約30100歩
ここまでの歩数:約1055900歩
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『アユム・マイニチ』 レベル:1452【↑21】
種族:人間
年齢:26
性別:♂
職業:凡人
称号:女神の付き人
体力:1462(+1452)【↑21】
魔力:1462(+1452)【↑21】
筋力:1457(+1452)【↑21】
耐久:1457(+1452)【↑21】
敏捷:1512(+1452)【↑21】
技能:言語理解/ステータス/詠唱省略
Lv.1:初級水魔法/初級風魔法/初級土魔法
初級光魔法/初級闇魔法
Lv.2:隠密/偽造/捜索/吸収/浄化魔法
治癒魔法/共有
Lv.3:鑑定/剣術/体術/索敵/感知
物理耐性/魔法耐性/状態異常耐性
初級火魔法
共有:アイテムボックスLv.3
パーティー編成Lv.1
固有:ウォーキングLv.1452 436/1453
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後書き
次回、お揃い!
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今日のひとこま
「おかえりなさい、アユムさん」
「ご心配おかけしました。スカイさん」
「本当に大変だったみたいですね」
「本当ですよ。勘弁してもらいたいです」
「でもあのアユムさんが.....」
「どうしました?」
「いえ。ラズリがご迷惑をおかけしました」
「迷惑だなんてそんな。助かりました」
「あらあらまぁまぁ!助かりましたか」
「ん?え、ええ、確かに助かりましたけど.....」
「そうですか。やっぱり」
「やっぱり?」
「アユムさんはそういうの慣れてなさそうですから」
「は、はぁ?そういうの?」
「朝までラズリがアユムさんを求めていたんですよね?
それで二人はついに.....今日はお赤飯にしますね!」
「お赤飯とか、やめんか!」
どんな勘違いしてんだよ!この人は!
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