手違いダンジョンマスター~虐げられた魔物達の楽園を作りたいと思います~

ノベルバユーザー168814

ダンジョン造りにあたって


 ダンジョンを作るにあたり、まずは己の作ったものを見直す必要があると思う。
 見直すことによって階層の弱点や何が足りていなくて逆に何が多すぎるか等を洗いだし、より良くするためだ。

 そんな事を言って何度も会議を開いては結論がでないまま時間が過ぎる会社には就職しては行けないぞ諸君。

「俺もまだ学生なんだけどな」

 ならなんでそんな事を言い出すかだって? そんなもん、独断と偏見だぞ。
 あと、同い年の癖にやたらとその辺詳しい山田が言ってた。つくづくあいつは何者か考えさせられる。
 
 今は山田の事を考えても仕方がないので奴は記憶の彼方に飛ばしておこう。

「仕切り直しだな」

 まず改めて俺のダンジョンは全5階層でありまともに階層の役割を果たしているのは5層中2層、第1層森林エリアに第2層の迷宮エリア位の物だろう。冒険者が来てるわけでもないので本当に機能してるかどうかは微妙な所だが。

 第1層森林エリア。

 これはダンジョンの外の森をそのまま移した、真似をして造り出した階層で馴れた者だとなんとなく見覚えがあるとの事だ。

 そして森林エリアにはホブゴブリン特性の罠が大量に仕掛けられていて、待機している魔物と言えばこれと言っていない。
 だって人が来ないんだもの。

 次に第2層迷宮エリア。

 四方500メートル程もあるこのダンジョンでその広さをふんだんに使った迷路のエリアだ。

 悪質な罠は勿論のこと、行き止まりや隠し扉何かも存在するまさに迷宮と言っても良いほどである。
 存在している魔物は十勇士直轄部隊スライム軍団だ。

 名前持ちネームドモンスターのユキムラや他の十勇士スライム達とは戦闘力に差があるものの、その実力は並のスライムには引けをとらないらしい。その辺はサイゾウとかサスケから聞いた。

 つーかなんで名前付けたら強くなんだよ、おかしくない?
 結局はファンタジーな世界だし、細かいこと考えていても仕方ない、次にいこう。

 そんで、ほんのり薄暗い迷宮エリアでの探索中に半透明の不意討ち大好きスライム達の猛攻は恐るべしだろう。

 そして第3層村エリア。

 これはもう村、ただの村だ。
 ホブゴブリンとゴブリンが仲良く生活を営んでいる、ただの居住区で攻略もくそもない。

 ただ、普通にホブゴブリン達がいるので通るときは戦闘は避けられないよ。
 極力村エリアでは争ってほしくはないんだけどな、家なんて手作りだぞ。壊された堪らない。

 それに村エリアには危険な物は取り除いているわけで、単純に冒険者が腕利きでホブゴブリンよりも上手立った場合、罠に誘導して逃げると言うことも出来ない。

 つまりは戦闘に向かないエリアとなっている。
 被害とか考えなければ常駐しているミストに大暴れさせると言う暴挙にでなければ行けないが避けたい道だ。

 また1から家作るの面倒なんだもの……作るのは俺じゃないけど。

 そしてその懸念は1つ飛ばして今造りかけの第5層でも同じだ。
 オーク達の居住区になる予定である第5層はより戦闘になると被害が大きいかもしれない。
 なぜならそもそも数が多いのだ。

 30程度しか数のいないホブゴブリンとは違い、最初から倍の60と言う数値を叩き出しDP収入源となってくれたオーク達は体も大きくそれでいて怪力だ。

 ただえさえうっかりで家を壊しそうだと言うのに戦闘になれば火を見るよりも明らかに損害が大きいだろう。
 唯一の救いはミストの様な強力な暴力の化身がいないところだろうか……ミストすげぇ。

 最後に先程説明を飛ばした第4層墓地エリア。

 これは疑似太陽のある第3層村エリアに住んでいたやたらと陽気なゾンビ達からの要望で作った。

 ちょうどどうするか考えてたしこういうエリアもダンジョンではお約束だろう。

 それにいかにも村なエリアでゾンビが徘徊してたら恐ろしいと言うか珍妙と言うか……、とにかくそれぞれにあった環境を用意した。
 おそらく墓地エリアが1番力を入れて作ったと思う。

 これが今の俺達のダンジョンの構造だ。
 あまりにも戦いに向いていない。
 墓地エリアに至っては人員不足で、強い奴と言ったらたまに来るサノーか、なに考えてるか今一良くわからないウノー位なものだろう。

 でもあいつらワイトに進化してるんだよな、と言うことは最初にあったときのミスト位の強さはあるのかも知れないな。

「まてよ、そうなるとミストはどうなるんだ?」

 最初にあったときはいつの間にか俺に気がついて接近してたし、棒倒し何かしているときはごっそり持っていかれたし……それよりも強くなっているんだろう? 被害は如何程になるだろうか。よし、これは考えない様にしよう。

 ミストの戦闘力はどれ程かと言う一種のパンドラの箱のような危険物質は記憶の彼方に飛ばしておいた。

 何せそんなこと1度考えてしまうとユキムラ及び十勇士の事まで考えなきゃ行けないので、俺の胃が持たないかもしれない。

 ダンジョンは程々に、目をつけられない程度にしたいのだ、世界征服なんて柄じゃない。

 これは忘れるためにもさっさとダンジョン造りに没頭していこう、そうしよう。
 
 森林、迷宮、墓地……村エリアを除きダンジョンと言えば的な要素のある階層を作ってきたが、どれも1層降りるだけで景色か変わるしなんだか味気ない気がする。

 これは1つのテーマで5~10層は作った方が言いかもな。
 どこがゴールか分からない、そんな不安とこの先でどんな宝が待っているのかと言う期待感を持たせることが大事だ、冒険者はその名の通り冒険をする者なのだから。

 今俺が持っているDPの総額が10万DPを越えているが生活費とか万が一の事があったときのために半分程は残して置きたい。結論、使えるのは5万ちょいだ。

 1層追加するのに5000DP程、考え無しに使えば一気に10層分追加することが出来るがそれではあまりにも愚直過ぎる。防衛に割ける人数が圧倒的に足りなくなるし、各階層に2層ずつ追加でいいか? あ、だったら。

「ラビィ、お前ダンジョンだよな?」
「え、そうだけど?」
「階層自由に動かせたり出来ないか?」
「えー、出来るかな……あ、出来るっぽいね」

 それは良いことを聴いた。

「第3層村エリアを第5層村エリアの前に移動させてくれ」

 村系エリアが飛び地になっているのはホブゴブリンやオーク達も移動が難しいからな、その辺は統合しておきたい。

「わかったー」

 人差し指を立ててこめかみの辺りを触りながらラビィが唸る。そのモーションは必要なのだろうか……。

 すると地面が揺れ始めそれを認知した時には軽い浮遊感に襲われる。
 突然の事だったので、バランスを崩してしまうが何とか立て直した。

「ふぅ、終わったよー!」

 一仕事終えたラビィは爽やかな汗をかいて俺に親指を突き立てどや顔を決める。

 これで本当に階層の移動が完了したのだろうか。確かめにいく必要があるだろうな。


◇◇◇


「うわ、本当に変わってるな」
「いやぁ、私も驚いたよ」
「なんでお前が驚くんだよ」
「出来ると思わないじゃん」
「え、あれ適当に言ってたの?」

 嘘だろお前、これで出来てなかったら笑い者だぞ。

 元第3層村エリアにやって来た俺とラビィ、階層を下る階段を降りてみると、建設中の第5層村エリアにたどり着いた。
 それとやたらとオークとホブゴブリンが騒がしい。

「うん、階層を移動させたら何て呼べば良いのか分からなくなるな」

 簡単に言えば

 第1層森林エリア
 第2層迷宮エリア
 第3層村エリア
 第4層墓地エリア
 第5層村エリア(建設中)

 これが

 第1層森林エリア
 第2層迷宮エリア
 第3層墓地エリア
 第4層村エリア
 第5層村エリア

 となった訳だ。
 安全地帯を確保したと言うべきか。

 この方が見映えはいい感じだな、こんな簡単に階層の移動が出来るとは、ラビィも意外とぶっ壊れ性能かもしれない。

 頑張ったラビィの評価をひっそりと上げつつ報酬であるイチゴミルクプレミアムを渡し、次はどうするかと考えていると、何やら族長達がやって来た。

「マスター! 敵襲か?」
「はい?」

 何を言ってるんだコイツら。

「急に地震が起きたでごわすよ! これはダンジョンが攻撃されているに違いないでごわす!」

 ふむ、地震。
 あ、それ俺だわ。
 
 やっべー、魔物達の事なにも考えてなかったわーどうしましょう。

 1、敵襲と嘘ついてマスタールームに逃げる。
 2、ラビィに責任転嫁する。
 3、素直に謝る。

 これは3だな。

「悪い、俺がやった。ホブゴブリンとオークの村を往き来しやすくしようと思って」

 おい、その頭の悪い子を見るような視線をやめろ、見れば分かるから着いてこいや。

「うぉ! すげぇなこりゃ!」
「往き来しやすくなったでごわすな!」

 そうだろうそうだろう、頑張ったと思わないかね? 主にラビィが。

「流石だなマスター。こんなことも出来るなんてな」
「やはりマスターは素晴らしいお方でごわすな」

 どうしてそう言う評価になるんだろう、俺ってばちょっと意味わかんない。

「でもなマスター、急に移動させられるとケガするかも知れねぇからよ。連絡はしてくれ」
「そうでごわすよ、パニックになった魔物達を宥めるのは大変でごわすから」
「あ、ハイ」

 怒られてしまった。
 うん、これは俺が悪い。
 大人しく帰ってダンジョン作ってます。

「クロト、元気出しなって。イチゴミルク飲む?」
「……飲まねぇよ」

 こうしてマスタールームへと戻るのだった。

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