手違いダンジョンマスター~虐げられた魔物達の楽園を作りたいと思います~

ノベルバユーザー168814

激突! ホブゴブリンVSオーク

 それから数分間、ワテらは殴りあっていた・・・・・・・

 おかしい、ワテらオークは筋力だけならかなり強い筈でごわす。

 まともに打ち合える魔物なんてこの森には居なかった。

 そもそも森に魔物があまりいないと言うのも有るでごわす。

 結構前に、ただの動物である熊と出くわしたがあれは別、化け物あいつ。

 爪は痛いしこっちの突進は避けた上で反撃してくるし、器用に取っ組み合いだってしてくるのだから質が悪すぎる。

 なんであれ動物なの? とワテも思った程。

 それは例外として、1発1発の威力なら木にへこみをつけることすら可能なワテらオークでごわすが、それを真正面からこのホブゴブリンは受け止めて反撃してきている。

「ど、どうなっているでごわす!?」

 今もワテの拳を右腕でガードし、空いている左腕で素早い反撃が飛んでくる。しかも結構重い。

 ホブゴブリンってこんなに強かったっけ!?

 ちょっとおかしくない!?

「オラァァァ!」

 ちょ、今もなんか鋭い蹴り飛んできたんでごわすが!?

 それは後ろに飛んで距離を作り、回避することに成功する。

「ちっ、オークの割には素早いじゃねぇか……」
「それはこっちの台詞でごわす。ホブゴブリンの癖に強すぎるでごわすよ」
「鍛えてるもんでな、俺だって驚いてんだ」

 苦笑いをしながらも獰猛な目付きでワテを見据える。
 これ絶対ワテのこと舐めてるよね、舐めきっちゃってるでごわすよね?

 そうでごわすか、ワテはそんなに弱く見えるでごわすか……後悔させてやるでごわすよ!

 ワテは地面を強くけりつけ、その勢いでホブゴブリンへと接近し再び拳を振るう。

「なっ!?」

 ホブゴブリンはなんとか鳩尾に食らうことなくガードをしたようでごわすが、それでも威力を殺しきれず後退し木へと激突する。

 ワテが今の今まで本気を出していたと思ったら大間違いでごわす。
 数で負けているであろう状況で全力を出して早々に退場なんてヘマをワテはしない。

 ワテの攻撃で多少はダメージを負ったのか、ホブゴブリンは膝をつく。

「だーはっはっはー! ワテを舐めてるからこうなるでごわすよ!」
「くっそ腹立つ!」

 口調は軽い様でごわすがふらついていることからダメージは抜けきっていないと予測出来るでごわす。

 このまま止めをとワテは思ったが、何かおかしい。
 他のホブゴブリンの姿が見当たらないでごわす。

 当然数の有利はこっちにある。
 しかし悔しいかな質としてはワテが見た限り向こうが上。

 連携もとれていてまんまとワテらを分断に成功し確固撃破をして見せているでごわす。
 数人はワテが吹き飛ばし、他のオークもそれなりに倒していた筈だ。

 それで数は向こうも減って消耗しているのは分かるでごわすが、自軍の旗がとられそうだと言うのに呑気に休んでいるなんて事はあり得ないでごわす。

 いくらそこのホブゴブリンが一騎討ちを望んだからと言ってそれで勝ちを捨てるほど愚かでは無いでごわす。

「……時間稼ぎでごわすか?」
「っ!」

 ワテの呟きに反応を見せるホブゴブリン。
 どうやら図星の様でごわす。

 それなら確かに周りに気配が無いのも頷けるでごわすな。
 ワテをここに引き付けてその隙にオークの陣地に向かい旗をとる。

 満足に動けるのはワテだけの様でごわすから、ワテだけ抑えていれば行けると踏んだ訳だ。

 ただ、その作戦は殆ど自軍の生命線とも言える旗の前に厄介な敵を入れなければならないと言う欠点があるでごわす。
 そして、ワテがホブゴブリンを無視して旗をとりさえすればオークの勝ちでごわすよ!

 こっちに他のホブゴブリンが流れ込まないのはこのホブゴブリンの族長が自分達の罠だらけの陣地から抜け出す為の時間を稼いで、一気にワテらの陣地から旗を取るつもりでごわす。

 そしてそれは今も続いている。
 ワテがもたつている間にも迫って来ているのだろう、そうはさせないでごわす。

「お前との戦闘はここまででごわす! その旗貰った!」


◇◇◇


【ホブゴブリン族長】

 俺は今驚いている。
 あの言わずと知れた怪力のオークと数分にわたり殴り合うことが出来ていた。

 進化して強くはなっていると分かっていたが、俺が戦ってきた相手は他のホブゴブリンか十勇士だけで、実際の戦闘力はそれほど良く分かっていなかった。

 だから初戦闘であるオークとの戦い、正直不安はあった。
 連携は上手くいくのか、俺達は本当に強いのかとかな。

 だからこの戦いは有難い。
 実戦経験も積めるし俺が、俺達がどのくらい強いのかを知る良い機会だからな。

 んで、仲間の奮闘のおかげでオークの数を減らすことに成功する。
 その変わりに他も疲れきって動けないみたいだけどな。

 その間に俺は自軍の旗の前に戻って来ることが出来た。
 時間としてはギリギリだったけどな。

 まさかオークの族長が一直線に突っ込んでくるとは思わなかった。

「これは鍛え直しですね!」

 ホブゴブリン陣地の旗の隣に桃色のスライム、サイゾウさんが明るく恐ろしい事を言う。

 この方はマスターの直轄ユキムラさんの部下のスライムではあるが恐ろしく強い。
 リーチの差はあるもののそれを帳消しにするくらいの速さでボコボコにされる。

 ユキムラさん及び十勇士には頭が上がらないし、逆らう事なんて出来ない。
 恐ろしい存在だ。

 そんな彼女に醜態をさらしてしまった俺らの結末や如何に……。

 と遠い目をして考えている間にオークの族長がやって来て戦闘が開始されたのが今までの経緯だ。

 話は戻るが俺はオークと真正面から殴り合っている。
 地獄みたいな訓練の成果だろうか、それでもオークの一撃は重くなんとか耐えていると言ったところだ。
 まだ余裕は残ってはいるがな。

 訓練して漸く渡り合っていると言うことは、鍛えてなかった場合、すぐにやられていただろう。
 万が一マスターの庇護下に入っていなければ滅んでいたのは俺達かも知れない。

 オークめ……強すぎるだろ!

 するとどうだろう、本気になったのかオークが一段と早い動きを見せ、咄嗟にガードしたが体重の差もあり俺は吹き飛ばされて膝をつく。

 重すぎだろ!

 だが、俺はこの位の攻撃なら幾らでも受けて来た。
 すぐには動けないがそれで倒れる程でもない。

「……時間稼ぎでごわすか?」
「っ!」

 なんかもたもたしてたら急に話しかけられた。
 思わずビックリして顔を上げたら何か我が意を得たり! とばかりに笑ってる。

 なんだこいつ、おかしくなったか?

 するとオークはすぐそこにある俺達の旗へと突進する。
 
 マズい! アレをとられるのは本当にマズい!
 マスターの為に勝なきゃ行けねぇってのに休憩してる暇なんざねぇ!

 急いで立ち上がった俺もオークを止めるために走り、間一髪の所で全身全霊のタックルで吹き飛ばす。

 あいつは前のめりに突っ込んで来るのだから横からの衝撃に弱い。
 あっさりとバランスを崩して倒れる。

「旗はとらせねぇよ!」
「ぬぉぉぉぉぁぁ! 勝つのはワテらでごわすぅぅう!」

 揉みくちゃになり、視界が上下に動き周り若干気持ち悪くなってくる。

 俺はここでこいつを倒さなければならない。
 他のやつらは残念だがオークとの戦いで休んでいて俺達はまだオークを攻めるための手筈は整っていないのだ。

 だから俺はここでこいつを倒さなければならない!
 くそっ、力じゃ勝てない。

 全力で止めてはいるがじわじわと旗の元に真っ直ぐオークは向かい……そして、

「ぬぉぉぉぉぁぁ! 取ったでごわすぅぅぅぅぅ!!!」


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