手違いダンジョンマスター~虐げられた魔物達の楽園を作りたいと思います~

ノベルバユーザー168814

誰が行く?

「いやー、ミスったミスった」

 折角マスタールームに戻ってきたのにまた第3層エリアへと戻るはめになってしまった。
 正直ね、十勇士のキャラが濃すぎて俺お腹いっぱいだったしさ、おまけに精神的な疲労もあるよね。
 おのれ十勇士……精神攻撃とはえげつないことを。

 などとふざけながらも渋々戻ってきました第3層エリア。
 なんか恥ずかしいな、出ていったのに戻ってくるとか。

「む、主! どうかされましか?」
「いやね、用事を済ませずに帰ったもんだからさ、思い出して戻ってきた訳だよ」
「ほう、流石は主。問題を後に回さないとは殊勝ですな!」

 コイツは一々俺を誉めなきゃ気が済まないのだろうか。もしや、召喚したこと怒ってる? まぁ、俺だって召喚されたときは怒ったからなぁ。
 つまり、ユキムラは俺を精神的に痛め付けると言う作戦を結構しているのか、そうに違いない。

「して、その用事とは?」
「うん、あまりにも暇だからさ。外に行こうかと思ってね。でも俺1人だと死ぬわけじゃん? だから誰か護衛に……」

 ついてこれる奴いる? と言葉を綴る前に周りにいた十勇士スライム達の目、(どこにあるかはわからない)が光り、俺の周りに殺到する。

「はいはい! 私が行きたい!」

 ポヨポヨ跳ねながらアピールをしてくるピンク色のスライム、サイゾウ。

「ちょっと待ったサイゾウ、お前には冒険者の見張りがあるだろ? 代わりに俺が旦那の護衛だ」

 サイゾウの隣で自分が護衛の役割をもぎ取ろうとしている黒色のスライム。サスケ。

「何よ! 私はここんところ頑張ったんだよ? 今度はサスケが見張りの番じゃん!」
「くっ、それを言われると何も言えねぇな」
「落ち着きなさいサスケ、サイゾウ。その代わりと言っては何ですが主様の護衛の役割はこのセイカイが……」
「「却下」」
「なっ!」

 どさくさに紛れて護衛につこうとしたのは青色のスライム、セイカイ。漁夫の利を狙うとはなかなか賢い奴だな。

「ガッハッハ! 兄者も結構欲を出すよな、まぁ、主殿の事だけなんだがな」
「イサはどうなんだ? 着いて来るつもりはないのか?」

 俺がセイカイの隣に立っていた藍色のスライムのイサへと質問をする。前の3人と違って主張がなかったから気になった。

「そんな事はないぜ主殿。俺は止められようとも行く気マンマンだからな」

 キョトンとした様子でついて行きますけど何か? 見たいな雰囲気で述べるイサ。コイツもコイツで主張が強い。

 未だに言い合いをしているサイゾウ、サスケ、セイカイはほとぼりが冷めるまで放置しておくとしよう。

「あ、あの……!」
「んぁ?」

 足元に来るくすぐったい感触があり、更に声のおまけ付きだったので思わず振り替えると、言い合いをして目立ちまくってる忍び達とは比べ物にならないほどの隠密性を持った黄色のスライムが俺に接近ていた。

「あ、ユリか。どうしたのさ……って護衛以外ないよね」

 ユリと目線を合わせるためにしゃがむが、やはちょっと目線が下になるよね。スライムって小さいからな。

「は、はい! わた、私も護衛がしたいのです!」
「おおう……急に元気だな」
「す、すみません!」
「謝る必要は無いぞ、ちゃんと主張してくれたことには嬉しいんだから」

 意見聞かないで勝手に物事進めたら怒られるからね。学生時代でもクラスの一人が文化祭で必要かなと思って色々買ってきたら余分な奴ばっかりで逆に足りないものを買ってこなかった。
 しかも使ったのは平等に配当される予算を使ってスッカラカンにしたお陰で白い目で見られましたとさ。
 奴の学校生活は終わっていたな……ドンマイ。

「あら、旦那様、ユリを連れていくなら私も連れていって欲しいわね。寧ろ私だけ連れていって下さる?」

 いつの間にやら俺の肩に乗っている紫色のスライムであるカケイ。一体いつ登ったのだろうか、それにしてもここのスライム共は気配を隠すのが上手すぎないかな。
 素人の俺の評価はさておき、このスライム、さっきもだが俺と2人っきりになろうとする。何故だ。

「こう言うのは皆でいる方が楽しいんじゃないのか?」
「私は旦那様となら2人っきりが良いのよ」
「良くわからんな」

 なかなか反応に困るのがカケイだ。目的がさっぱりわからん、呼び出して2人きりになって殺す気か俺を!
 ちくしょう、ユキムラと同じように召喚に恨み持ってんのかこいつも!
 やっべ、2人きりとかならんようにしなきゃならんな!

「と、取り敢えず!? 2人きりって言うのはまだ危ないので!? 最低でも2人くらいいれば良いかなってね!? そこんとこ、どっすか?」

 徹底的に周りに人を置く作戦で避けねばなるまい!

 俺の提案を聞いたカケイは俺の肩からため息を吐いた後に飛び降り、ユリの隣に立って此方を振り替える。

「あら、この子とは2人きりで話しをする機会をくれたのに私にはないのかしら?」

 聞いてたのか……それともサイゾウとかから聞いたのか? サイゾウ何でも話しそうだからな……忍者、くノ一がそんなんで良いのか。

「私が聞き耳立てただけよ? サイゾウは悪くないわよ」
「あ、そうですか……」

 なぜ心読めるし……このダンジョンのスライムって特殊なのかな? 俺異世界初心者だし、現地の人の声を聞くべきだな。いつかね、今は無理。

「わかった、カケイにも機会は与えるからさ」
「なら、私も他に護衛がつく条件を飲んであげるわ」
「さ、最初は私がご主人さんと話すからねっ! 抜け駆けはダメだよ、カケイちゃん!」
「あら、いつになく強気ね? 譲れないのかしら?」
「ダメですっ!」

 なにやらこちらも言い合いに発展しそうだ。大人し目のユリが強くでるとは、女と言うのは人間でも魔物でも分からんものだな。
 あと、女の話し合いに介入すると録な事が起きないって山田が言ってたので俺もそれに倣って他のところに行こう。
 とは言うものの、周りはスライムだらけ、おまけに全員十勇士と来たもんでその場からは動けず、ただ方向転換するだけだったりする。

「主君、外に出るんだよね? なら、僕を連れていきなよ!」
「へぇ、理由としては?」
「単純に外に行きたい」

 だよね、外に出たのって俺とユキムラ、それにラビィだけだし、ゴブリンはそもそも外からだし。
 他の連中はダンジョンの中で特訓しかしてないからね。ぶっちゃけ、ストレス溜まるのでは無いだろうか。
 ある意味監禁だよね、俺ってば鬼。

「話を聞いていなかったのか。内容は陛下の護衛だ、遊び半分で行けば危険に晒すのだ、その事を分かっているのかお前は!」
「げぇっ! ロクロウ!」

 単純に着いていきたい橙色のスライムコスケにこれでもかと言うほどのタイミングで入ってくるのは緑色のスライムのロクロウだ。
 もうロクロウはコスケのお目付け役なのでは無いだろうか。でも何だかんだで仲が良いようにも見えるのは俺のお節介な心と野次馬根性だろう。

「ロクロウは来たくないのか?」
「そんな事はございません! 僭越ながら私も陛下のお側にお仕えしていたい。常に! 如何なる時も!」
「お、おう、そうですか……」

 迫力が凄い、ユキムラとはベクトルが違うけど慕ってくれているようだ。そんなに評価されるほどの人間じゃ無いんだけどな。つらい。

「ふふふ、我が君よ! ロクロウ君やコスケ君など放っておいて我と共に新世界へと旅立とうではないか! 安心召されよ、我が誠心誠意、真心込めてエスコートするよ?」

 金色のスライムであるモチが優雅に回りながらロクロウとコスケの間をすり抜けやって来た。
 新世界かぁ、もう来ちゃってるんだよなぁ。ほら、俺ってば異世界人じゃん。

「ちょい待ちなってモチ、ロクロウは兎も角僕まで蔑ろにされるのは違うね」
「お前も待てコスケ、自分を棚に上げる出ないわ。それにモチ、お前では護衛にならん、注意散漫だろう」
「はは、我の実力は我が君にさえ見てもらえれば良いのさ。君達二人の方が力不足ではないかな?」
「へぇ? 言うじゃん」
「なら私の実力を見せてやる。来い」

 一触即発の雰囲気の中、何だか決闘の雰囲気を醸し出しコスケ、ロクロウ、モチは何処かへ行くようだ。
 それにしてもあれだな、随分俺を慕っているような気がする奴の代表はユキムラ、ロクロウ、モチだな。方向性は違うけど根は一緒って感じ。

 ユキムラが忠誠、ロクロウが崇拝、もうが信仰って感じかな? やべ、俺は何を言ってるんだ。恥ずかしいな、考えないようにしよう。自意識過剰だ。

「さてと、残ったのは……」
「オイラだけですねー」

 銀色スライムことジンパチ、本人は色に納得を示しておらず不満そうだ、それでも止めてない辺り、良い奴なんだよな。

「集まったからにはジンパチも護衛につきたいのか?」
「そりゃねぇ、十勇士としては誰もが憧れるんじゃない?」

 十勇士って確かユキムラの為に作ったような気がするんだけどいつの間に直属になったのかわかんねぇや。

「まぁ、最終的に決めるのはボスでしょ。オイラ達はその決定に従うだけだよ」
「そうであるな! して、主よ、某達の誰を連れていくのですかな!」

 ジンパチの隣に移動してきたユキムラは俺を見上げてそう告げる、他の十勇士達も言い合いや決闘を止めて俺の方を見る。

 止めろ! 大勢の目に晒されるなんてメンタルがもたねぇよ!
 誰しもが集団の前で平気な顔出来ると思うなよ! 俺はな、クラスの人気者と言う奴をふーんて眺めて横でゲームとかしてる類い何だかんね!

 あと、1つ言っておこう、1日の間にこんなに個性の集まりにいて俺のキャパはオーバーしている。そこから人を選ぶとか無理! ……と言うわけで。

「やっぱり強い奴がいてくれると助かるよね。誰が強いかとか決めてみたら?」
「「「それだ!」」」

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