俺、自分の能力判らないんですけど、どうしたら良いですか?

朝綾 夏桜希 因みに、イラストは「クロイ」さんのフリーイラストです

第十七話~ランク戦~

 ──遂に、ランク戦当日となった。
 あれから琥太郎は、色彩魔術の修練に加えて、体力の向上を目的とした一日50キロランニグなど、トレーニングに力を注いできた。全ては友達を作るために。

「遂に当日か……」

「せやね。わいは準備万端やで。琥太郎はどうなん?」

「やれるだけやったつもりだ」

「それで? 結局"異彩"の能力は分かったんか?」

「能力どころか、""すらわかんねぇよ」

 実はもう【治療院】での検査を終えているのだが……正直思い出したくない。

「大丈夫なんか、それ?」

「──大丈夫ですよ」

 ──琥太郎達が話していると、話しかけて来たのは澪だった。

「おはようさん」

「おはよう、澪」

「ええ、おはようございます」

「それで? 大丈夫ってどういうことなん?」

「教官も仰っていましたが、琥太郎には色彩魔術カラーマジックの才能があるそうです。それに加えて、最近はずっと特訓をしていたんですから、かなり実力は上がっていると思います」

「それもそうやな。にしても、あまり誉めない教官が誉めるなんて、琥太郎は相当才能があるんちゃう?」

「そう言ってもらえると気が楽になる。有難う」

 世辞でも嬉しいもんだな。

「事実を言ったまでです」

 エスパーなのか、お前は。

「ははっ……そうか。でも、もし相手になったら──本気で倒しに行くぞ」

 ──これまでのとは違う真剣な表情で話す琥太郎に二人も真剣な表情で返す。

「ええ、勿論。私も全力でお相手させていただきます」

「わいも、本気で相手にするで」

 ──どこか晴れ晴れとした雰囲気をぶち壊したのは、麗奈だった。

「琥太郎っ」 ダキッ

「うおっ!?」

 ──突然腕に抱きつかれた琥太郎は驚きながらも、慣れたのかバランスを崩す事も無く、麗奈と会話をする。

「はぁ、いきなり抱きつくなって。おはよう、麗奈」

「ん、おはよう琥太郎」

 ──互いに挨拶を交わし微笑み合う姿は、端から見れば完全に男女のだ。これで付き合っていないのだからなんとももどかしい気持ちを他のメンバーは抱いていることだろう。そもそも、何故麗奈がここまで琥太郎に打ち解けているのかが謎である。琥太郎自身、入学試験で初めて会ったと言ってっていたが、どう見てもたった一月程度の時間しか過ごしていないようには見えない。

「これで付き合っていないというのが不思議ですよね……」 ヒソヒソ

「ホンマやなぁ……どう見てもカップルやろ」 ヒソヒソ

「ん? 何か言ったか?」

「「いや、なにも」」

「そうか? ……あ、そう言えば皐月と雅也は?」

「お二人なら、先に演習場へ行っているそうです。琥太郎、メールちゃんと見てますか?」

「あ、忘れてた。……ホントだ、メール来てた」

「まだ少し時間がありますけど行きましょうか。二人も待っているはずですし」

「そうだな」

 ──こうして琥太郎達は学園内の転移門を使い、第一演習場へ向かった。





 ◇◇◇◇◇





「みんなー!」

 ──皐月が演習場前の門で手を振りながらピョンピョン跳び跳ねている。その隣では雅也が、やれやれといった感じで眉間に手を当てている。

「相変わらず皐月に振り回されてるんだな……」

「皐月はきょうも元気ですね」 

「雅也……ドンマイ」

「変わらんなぁ、二人は」

 ──それぞれが感想を述べるが一様にして表情は穏やかだ。とてもこれから闘うかもしれないもの同士には見えない。
 ──あ、忘れてた。ランク戦って自由参加だから。ただ、上級ランカーの特典が美味しいから参加しないメリットが無いだけで。あ、それに、具体的なランクの上げ方の説明ってしてなかったっけ。
 ま、いっか。えっと、学園生徒全員が"ランクポイント"って言うのを持っていて、最初は1000ポイント。そして、戦闘で勝った相手から相手の持っているポイントの10/1を奪える。ポイントが一定数以上貯まると晴れてランクが上がるわけ。
 ポイントはランク戦以外でも、学園から出されている"学生専用任務"をクリアする、及び学園内の生徒に"決闘"で勝つことでもポイントを入手することが出来るよ。まぁ、決闘は双方の合意がないと出来ないんだけど。"学生専用任務"は任務毎に貰えるポイントが決まっていて、"決闘"はランク戦同様勝った相手のポイントの10/1を奪える。又、ポイントを各ランクの一定水準まで落とすと降級になるので注意されたし。あ、それからランク毎の昇格ポイントのラインは後でランク戦の説明の時に一緒に説明されると思うからパスで。……決して、決して説明が面倒臭くなったとかじゃないからね?本当だよ?

「おはよう! みんな!」

「おはようさん。朝から元気やなぁ、皐月は」

「えっへん!」

「おはよう、雅也」

「あぁ、おはよう」

「二人ともおはようございます。雅也は皐月と違って落ち着いてますね?」

「皐月が元気すぎるだけなんだが……」

「それもそうですね」

 ──そんな事を言っている間にも、皐月は既に歩き出している。

  「みんな! 早く行こっ!」

 ──そんな皐月を見て、ある意味何処に居ても変わらない態度で居られる皐月を見直しながら、他の面々も演習場へ入っていくのだった。





 ◇◇◇◇◇




 ──10:00。演習場にアナウンスが流れる。

『さぁ、皆さんお待ちかね、月に一度の"ランク戦"が始まろうとしていますッ!! 実況は放送部部長の私、高橋たかはし 繚狐りょうこが行います!そして!』

 ──と、セミロングの一部をカチューシャの様に編み込んだ女子生徒が高らかに宣言する。

『解説は学園OBで現役団員の僕、峯麓ほうろく みなみでお送りするっスよ~』

 ──こちらは、マイペースな雰囲気を漂わせるサイドテールの女性だった。そして大きい。何がとは言わないが。

『『お願いします!(するっス~)』』

『南さん、今月からは新しく新入生がランク戦に参加しますが、何かアドバイスはありますか!?』

『テンションすごいっスね……。それに、先にルール説明とかをした方がいいんじゃないっスか?』

『そうですか? ならば説明して新是しんぜよう!ルールは一対一の個人戦。相手が気絶、及び降参、又は戦闘継続不能と判断された場合に負けとなります。尚、降参、気絶、戦闘不能の判断は皆さんの身に付けている腕時計生徒手帳のバイタルとランク戦中に学園内を飛び回っているドローンの映像で此方が判断します。怪我をした場合は治療院で治療いたしますので安心してくださいね! あっ! それから皆さん! 殺しちゃダメですよ! 半殺し程度にしてくださいね!』

『何さらっと物騒なこといってるんスか!?』

『いやぁ~これが毎年少数ですが、死人が出てるんですよね~。だから団長からも口を酸っぱくしていわれてるんですよ~。くれぐれも死者を出さないように!! って』

『それってここで言って大丈夫なんスか?』

『別に大丈夫じゃないですか? 禁句な訳でもないですし。あと、殺しちゃった場合は即失格。ポイントは全て剥奪の上で罰則があるのでくれぐれもご注意下さい!!』

『他に何かルールはあるっスか?』

『ありますよ! ランクの昇格ラインを説明してませんからね!』

『忘れてたっス』

『あれぇ? ひょっとして南さんってば、胸にばっか栄養が吸われて頭が──痛たたたッ!?!?』

 ──何かを言いながら峯麓さんの胸に手を伸ばしていた高橋さんは、それは見事なアイアンクローを掛けられていた。

『僕の胸がなんスか?』

『痛多々たッ!? 何でもないです!! 冗談です!! 最高です!! だからアイアンクローは止めて!? 壊れちゃうからっ!?』

『次はないっスよ?』

『はい……』

 実況のアナウンス緩っ! ぐたくだじゃねえか! それに二人ともキャラが濃いっ!! 僕っ子って!! 学園にはこんな人ばっか居んのか?

『さぁ! 気を取り直してどんどんいきましょう!!』

『反省してるっスか?』

『してますって! それよりもランク昇格ラインの説明をしないとでしょう?』

『そうだったっス……』

『しっかりしてくださいよ?』

『申し訳ないっス……』

 おい、なんか立場逆転してるぞ……なんだこのアナウンス。

『あれ? 私が謝る必要って……?』

『では説明に入ります!! 昇格するには──』

『あれ? スルーっスか?』

『──ランク毎に一定数ポイントをためる必要があるのですが、そのポイントが──』

『だからスルーっスか?』

『──ってあとにしてください。今は説明が先です!』

『そ、そうっスか……すいませんっス』

 ──またもや流される峯麓さん。どうやら推しに弱いらしい。

『では続けますが、
 Eランクから昇格するには20000ポイント、
 Dランクから昇格するには40000ポイント、
 Cランクから昇格するには80000ポイント、
 Bランクから昇格するには160000ポイント、
 Aランクから昇格するには500000ポイント、
 を貯める必要があります!!』

『相変わらずAからの昇格は厳しいっスよね~』

『そうですね! まず普通に目指して届く事はありません!! Sランクの特典は現役団員と同等の権限、つまり通常任務を受けることが出来る、ということですからね!』

『これってかなり豪華な特典っスからね~』

『いやぁ、南さんが言うと軽く聞こえますね!』

『こういう性分なもんスからね~』

『なんだか、和みますね~! ……っと、時間が差し迫ってきたので最後に! 制限時間は本日午前11:00から日付の変わる、明日の午前0時までの13時間!! なお、途中で切り上げることが出来るので、その場合は皆さんが持っている腕時計にリタイア表示があるので、そのバナーをタップしてください!!』

『この腕時計って確か、完全防塵、防水、電波式で、生徒のバイタルなんかも確認できるっスよね?それに、決闘の申請、受諾もできるとか』

『そうなんです! おまけにGPS機能もついていて、行方不明になっても創作可能! 加えて生徒手帳の役割もこなす優れものです!』

『便利っスよね~。本部にも欲しいっスよ』

『それなら団長が近々本部にも導入されるとか』

『……なんで知ってるんスか?』

『聞きたいですか?』

 ──妖艶な笑みを浮かべる高橋さんに、

『え、遠慮しとくっス……』

 ──引き吊った笑みを浮かべながら断る峯麓さん。……何故だろうか、高橋さんの闇を垣間見る事となった。

『あ、因みに学園内全体がバトルフィールドとなっておりますが、第一演習場と建物内での戦闘は禁止となっていますのであしからず!!』

 相変わらず切り替えが早いなこの人。

『僕達はここから学園敷地内全体をモニターしながら、実況してるっスよ~』

『以上でルール説明を終わります!』

『『御静聴有難う御座いました!(っス~)』』




 ◇◇◇◇◇




 ──アナウンスが終わったあと、琥太郎達は集まって話をしていた。

「さてと、取り敢えずこれからは別行動になるだろうな」

「せやな」

「あぁ、いきなりお前たちと当たるのは勘弁願いたいものだ」

「そうですね……でしたら、それぞれ開始時の居場所をバラバラに決めると言うのはどうですか?」 

「んー? どういうこと?」

「つまり、それぞれ離れた場所からスタートするんです。それなら開始して直ぐに当たることもないでしょう?」

「おー! いいね! ソレで行こう!」

「俺もソレでいいと思うぞ」

「あぁ、俺もだ」

「せやね。わいもソレでええよ」

「ん、ソレでいい」

「それでは、そう言うことで行きましょう」

 ──こうして、話し合いは終了した。



 ◇◇◇◇◇



「これからどうすっかな……」

 ──他のメンバーとの話し合いを終えた琥太郎は他に話すような友達がいないため、ぶっちゃけ暇だった。ランク戦開始まで何をしていようか考えていると、

『──あー、あー、聞こえてますかー?』

 ──突然、先程の実況担当、高橋さんがアナウンスを開始した。

『あ、聞こえてるっぽいですね。いやぁ、失敬失敬。大事なことを忘れてたました! 使える武器は学園貸し出しの、色彩転換武装CCAを使ってくださいね! 勿論、幻想形態イルシオンモードで、ですよ!ただし、異彩の系統が武具の方はそれを使っても結構ですからね!』

 ほいほい、皆様お待ちかねの補足ターイム。
 色彩転換武装CCAとは、色彩魔術と現代の科学技術の融合の末に完成した、特殊武装の総称。
 使い手の色素を原動力とし、弾丸や刃、バリアなどとして展開することを可能とした画期的な武具のことである。また、その種類は千差万別、実に様々な種類がある。加えて、色彩転換武装CCAのメリットとして、肉体を傷つける具現化形態インバディングモードと、体力のみを削る幻想形態イルシオンモードの二つを使い分けることが出来る。因みに、色素の消費量は幻想形態イルシオンモードの方が少ない。
 今は武器やバリアなどに限られるが、いずれは使い手の肉体を色素で代用することにより、擬似的なアバターを作り出すことも可能とされている。
 しかし、デメリットもある。それは動力等の全てを使い手本人が賄うことにある。このデメリットは、今研究中のアバター計画において、最も重要な問題とされている。武器程度なら賄えるが、人間一人分の体積を全て色素のみで構成すると云うことは、理論上可能でも、実際に行える者がいないのだ。以上の理由から、アバターの完成には至っていない。

『それから、服装は制服でお願いします! 制服には状態保存と、衝撃軽減、それから自己修繕の色彩魔術が付与されているので、ぶっちゃけ自前よりお得ですよ!! 特に、工房関係の人とか、ランクの高い人は分子破壊アンチマテリアルや、精神破壊アンチアストラルの能力の付与された武器や色彩魔術は使用厳禁ですからね! 以上です! いやぁ、危ない危ない、あと少しで新入生が全滅するところだった! これで残るは実況のみ! 安心だね! 安心!』

 ──そう言い残して、高橋さんはアナウンスを切った。

「……おい、マジで危なかったじゃねぇか!?安心できねぇよ!不安が増したわ!アホか!」

 なんだよ分子破壊アンチマテリアルって!? なんだよ精神破壊アンチアストラルって!? 明らかヤバイやつじゃん、初見でこれ使われたら確実アウトじゃねぇか!! てか、そんなもん此処にあんのかよ!?

 ──口に出したいことは山ほどあるが、なんとか心に押し止める琥太郎。何故なら、いきなり大声を上げた琥太郎は回りからの目線に耐えられなかったのだ。

「はぁ、やめだやめ、考えてたって仕方ない。諦めよう。人間、諦めが肝心なんだ」

 ──ここにも周囲に流される人間がいた。




 ◇◇◇◇◇




 ──ランク戦開始まで、あと5分。周りの空気は張り詰め、ピリピリと肌を刺激する。そんな中、琥太郎は最終調整に入っていた。今の琥太郎の服装は制服に、学園支給の刀型色彩転換武装CCA二本を腰に差し、手にはバイクグローブの様なものを着けている。現段階で、琥太郎が選べる最良の選択だった。

「はぁぁぁぁ……!」

 ──来る戦闘に備え、精神集中を行う。これは、琥太郎の修めている不知火流の教えで、心は熱く、頭は冷静に、という戦闘時の基本的な心構えである。

『みなさーん! 準備は良いですかぁ?カウントダウンいきまーす!!10……9……8……7……』

「いよいよか……どこまで俺は通じるんだ?」

 ──思わず口角が上がる琥太郎。存外にバトルジャンキーなのかもしれない。

『……4……3……2……1……開始ッ!!』

 ──開始の合図と共に琥太郎は学生同士が互いに蹴落とし合う、戦場ランク戦へ身を投じた。




 ◇◇◇◇◇



 ──開始5分、早速相手を見つけた。制服の色を見る限り、どうやら同じ一年生のようだ。

「お、早速発見。ついてんな」

 ──そんな琥太郎の声が聞こえたのか、その一年は突然、手にもったハルバードで攻撃を仕掛けて来た。

「うおっ!?危ねっ!?」

「くっ……!」

 ──言葉とは裏腹に、難なく体重を生かした降り下ろしを回避する。

「いきなりって酷くね?」

「ぐぁ……」

 ──身体を左に反らして攻撃を避ける片手間に、相手の首を刀型CCAで跳ねる。


 にしても、便利だよなぁ……体力だけを削るって。

「……なんか、拍子抜けだなぁ。もっとてこずると思ったんだけどな」

「隙ありッ!!」

「なーんてねっ!」

「うぐっ……」

 ──気絶した振りを見せて奇襲を仕掛けた一年を振り替える事すらせず、裏拳を顔面に叩き込む琥太郎。

「呼吸音でバレバレだっつぅの。……って聞いてねぇか」

 ──今度こそ気絶した一年を踏みつけながら移動する琥太郎。何気に先程の奇襲を根に持っているようだ。そもそも、心臓の呼吸音を聞き分ける琥太郎が異常なのだ。彼が弱いわけではない。

「早速100ポイントゲット~♪さてさて、次なる獲物を探しますかな?」



「その必要はないッ!!」



「そいっ」



「ひでぶっ……」




「声を掛けながら不意討ちをするのって流行ってんのか?」




 ──サクッと二人目の上段から放たれる斬撃を色素で強化した左手でつかみ取り、右手にもった刀型CCAで首を跳ねながら、そんな事を考える。



「おっ、この人二年だったのか。センパイ、あざーっす」



 ──この人はどうやらDランクのようで、6000ポイントが手に入った。



「てか、Dランクなら色彩魔術で遠くから狙えばよくね?アホなのかな……?」



 ──そう言いながら、琥太郎は対戦相手を探し求め、移動を開始した。





 ◇◇◇◇◇





「ふぅ……やはり一年の方はまだ色彩魔術に慣れていないようですね。『水虎すいこ』ッ!」


 青の上級魔術に分類される『水虎』は色素で生成した水を虎の用に使役し、敵への攻撃や移動手段として使う色彩魔術です。
 本来異彩に目覚め、色素を操作可能になったばかりの一年生が使える代物ではないのですが、私の異彩【水神の加護】の能力、『水神の加護』の補助により扱える、というのが現状。完全に『水虎』を支配下に置いた訳でもないため、単調な命令しか出せませんが、まだ戦闘に慣れていない一年生に使うには丁度良い練習になるのです。



「きゃっ!?」 



 相手の女子生徒が『水虎』の突進を右へ回避します。 



 今、私が『水虎』出した命令は、
 「相手に突進し、折り返して、もう一度突進」
 というもの。



「かはっ……!」




彼女が回避したところに私は蹴りを加え、反対方向へ押し出します。
そして、彼女が飛んで行った先には丁度、『水虎』が二度目の突進を行っています。



「きやぁぁぁぁぁ!!」



 彼女は『水虎』の突進をまともに喰らい、そのまま吹き飛び、気絶しました。



「ふぅ、終わりました」

私は蹴りを決めた体勢のまま、勝利を収めたことを安堵します。
ですが、『水虎』をまだ上手く使いこなせていません。これは要、精進ですね。


この時、一瞬の間だけ突風が吹き荒れました。

今の私は蹴り決めた体勢のままです。とても無防備なのです。
無防備な私のスカートは、突風に煽られ大きくめくれ上がりました。



「きゃっ!?///」



私は先ほどの戦闘以上の集中力と、速度を持ってしてスカートを押さえます。 


「もう!なんだってこのタイミングで突風なんて……はっ!誰かに見られたりしてませんよね?」


そう思い辺りを見回すも、周りに人っ子一人居ません。
よかった。誰かに見られてはいなさそうです。


「ホッ……それにしても、やはりとてつもない広さですね……全校生徒が動き回っているのにいまだに一人としか対戦出来ていませんし」


 そう、辺りには全く人の影が見当たらないのです。スカートの時は良かったものの、こう人が居なければ戦う事が出来ません。



「これ以上ここにいても仕方がないですね。移動しましょうか」



 ◇◇◇◇◇


 ー雅也sideー


「ふむ……一対三か、それも二年生が」

「悪く思うなよ、お前の行動を鑑みた結果さ」

 そう言いながら、ジリジリと間を詰める三人組。
 恥ずかしくないのだろうか? 下卑た笑みを浮かべるコイツらはさっきから近くの茂みに隠れていた連中だ。俺が戦闘で体力を消費するのを見計らって出てくるあたり、相当良い性格をしているようだ。

「悪くなど思うはずがないだろう。むしろ此方が感謝したいくらいだ」

 俺は、特に危機感を持っていないかのように振る舞いながら、何時でも戦闘に入れる準備を整えていた。

「へぇ……軽口を叩く余裕はあるんだ?この人数相手に?」

「当たり前だろう。……のだから」





 そう言い終わる頃には、俺は相手の一人の懐へ踏み込み、ゲイ・ボルグで相手の鳩尾を貫いていた。





「──は?」




 いきなり俺が消えたように見えたのだろう。まぁ、その時点でコイツらの程度は見え透いているが。


 そう考えている間にも、二人目へ踏み込み、顎を石突きで砕き上げる。


「──うっ……」



「これで、ラスト」



 ──最後は、遠心力を効かせ、相手の振り向き様に頭を穂先で跳ねた。




 ◇◇◇◇◇



 ーとある女子生徒sideー



「よろしくお願いします!」

「は、はぁ……此方こそ……」

「それじゃあいっくよー!」

「は?」

「やーっ!」




 気付いたら目の前に居た。

 律儀に挨拶をしてきたこの子は、その可愛らしい、庇護欲に駆られる小動物の様な見た目とは裏腹に、とんでもないスピードで迫っていた。
 その小さな拳には、バイクグローブに鉄板を取り付けたようなガントレット型CCAが装備されている。

「殺られる」と、そう思った時にはもう遅かった。
 その小さな拳から放たれた一撃は余りにも重く、鋭かった。




「あがぁぉっ!!」



 そして、おおよそ淑女が出すはずのない声を出しながら、私は壁にめり込んだ。


 ー皐月sideー


「あ!ごめんなさい!やり過ぎちゃた!」 パァァ




 うーん。力加減が難しいよぉ……。この装備は少し軽すぎるのかな?でも頑張らないと! 皆に褒めてほしいからね!
 よぉ~し!頑張るぞ~!




「次はだぁーれ?」 ニッコリ

「「ひぃぃぃぃぃぃ!!??」」



 あれ?何でみんな後ろに下がってるの?




 ◇◇◇◇◇


 ー麗奈sideー


「喰らえぇぇぇぇぇ!!」




 片手用直剣型のCCAを乱雑に振り回す女子生徒。彼女はどうやらご立腹の様だ。




「お前のっ! ことはっ! 前からなぁっ! 気に入らなかったんだよっ!!」




 罵倒の言葉と共に繰り出される攻撃を、流れるような動きで回避しながら私は考える。この人、誰だっけ?




「いつもっ! 青山君にっ! ちやほやされてっ! ムカつくんだよぉ!!」




 青山? ……誰? そんな人居たっけ?




「……」




「無視するなぁ!!」




 渾身の気勢と共に放たれた袈裟斬りを、顎に手をあて、眉間にシワを寄せながら危なげもなく避ける。
さっきから単調な攻撃しかして来ないけど、何かの罠なのだろうか?


「避けるなぁ!!」



 だって避けなきゃ痛いじゃん。何を言ってるんだろう?
 あれ? そもそも何でこの人の話を聞いてるんだろう? とっとと倒せば良かった。



「ていっ」





「きゅうぅぅ……」 ばたり



 小太刀型のCCAを首に突き立てる。

 ふぅー、うるさかった。
 そういえば琥太郎はどうしてるだろうか?順調に進んでるだろうか。そうだと良いな。




「ん、すっきり」 ドヤァ




 琥太郎に会いたいなぁ……やっと会えた。今度は伝え忘れないようにしよう。




 ◇◇◇◇◇


 ー宗sideー


「お前、顔がいいからって調子にのってるらしいな?」

 わいに話しかけて来たのは、大柄な正しく"番長"とでも言われそうな、厳つい顔の二年生やった。

「わいですか?」

「お前以外誰がいるッ!!」

「起こらんといて下さいよ、センパイ?」

 なんか、めんどくさそーな人やね? わいはこういうタイプの人嫌いやわ。


「うるさいッ!!貴様のような生徒は俺が矯正してやるッ!!」




「いや、話を聞きなはれやぁ……」



こういうタイプの人って何で話を聞かへんのやろ?



「うおおお!!」





 そう言うや否や、メリケン型のCCAを着けた右腕を振りかぶり、突進して来よった番長。
 せっかちな人やなぁ……絶対に関わり合いになりたくないなぁ。


 番長の拳を避けながら、わいは考える。「今日の晩御飯何にしよう?」と。
 馬鹿らしいと思うかもしれへんが、コレが以外と重要だったりするんよ。気分はパエリアでも、家にある食材は肉じゃがみたいな時ってあるやろ?──っていうか……。



「危ないで?暴力反対やで、センパイ」 ひょいっ



「ぬぅっ……!?」



 人が晩飯の意義について話してるときに攻撃しんといてや。めんどくさいやろ?捌くの。
 あ、とういうか、先にこっちを何とかすればエエ んやないか?


「すんまへんね、センパイ」



「ぐうっ……!?」



 攻撃を捌かれ、体制を崩した番長を縦に真っ二つに叩き斬ると、番長は、巨木が倒れるような音を立て、倒れた。



「まったく、人の話は聞くもんやで?」



 まぁ、そう言うわいもあんたの話聞いとらんかったけど。
あ、この人Cランクやったんや。ラッキーやね。




 ──残り、12時間。







 ~現在のランクポイント~

 琥太郎:7100P

 麗奈:1100P

 宗:P9000

 澪:1100P

 皐月:1200P

 雅也:7300P

「俺、自分の能力判らないんですけど、どうしたら良いですか?」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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コメント

  • ノベルバユーザー301876

    とても面白いです!更新待ってます!

    0
  • ノベルバユーザー283247

    こういう感じの小説好きなので更新待ってます!
    頑張って下さい!

    1
  • かりんとう

    面白いです。更新待ってます。

    1
  • 豆腐

    宗の戦闘シーンで怒るが起こるになってます?

    1
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