とある学園生活は制限付き能力とともに
術式
「………どういうことなの」
黒の蝶のメンバーと対峙していた楓先輩がボソッと呟く。
「おかしいですね…能力を複数持っているような感じがするような……」
楓先輩と共闘していたミカさんがボソッと呟く。楓先輩もそれに同意するかのように頷いた。
「晴樹君みたいに…いくつかの…能力を使える?」
百合子先輩が楓先輩とミカさんにそういうが二人はそれを否定するような顔をしていた。
「あれは、能力とは全く違うものだと思うわ…たぶんだけど能力とは違う…」
「えぇ、おそらくその通りです」
楓先輩の言葉をミカさんが肯定する。ミカさんは能力で作り出した浮遊剣で敵を牽制しながら話す。
「あれは術式…能力が開発される以前から存在するいわゆる魔法と呼ばれるものです。術式は能力開発の基盤となり能力完成とともに封印された古代の遺産…誰でも使える能力とは違い一握りの限られたものにしか使えない術式、術式は能力よりもはるかに危険なものが複数存在します。だから気をつけてください。私たちの能力は強力ですが術式使いは皆Aランク以上の能力保持者だと思ってください…過去に私も術式使いと戦ったことがありますが強いとかそういう次元じゃない術式使いもいますから…」
ミカさんは過去の時代での体験を語りそれを聞いた楓先輩と百合子先輩は気を引き締める。
「百合子は後ろに下がって後ろからサポートをお願い、ミカさんは状況に応じて攻めとサポートをお願いします」
「「了解」」
楓先輩の指示に従い百合子先輩は後ろに下がりミカさんは楓先輩の少し後ろに立つ。
「さあて、術式使いとやらがどれくらい強いかみせてもらうわよ」
楓先輩は能力を発動し戦闘態勢に入る。
「ふう、大人しく逃げ出せばいいものを…これだから馬鹿な能力者共は…」
「能力者の集団に属してるあんたが言う?」
黒の蝶の呟きに楓先輩が笑いながら言う。
「えぇ、私は黒の蝶の一員、だけど私が黒の蝶に属してる目的は情報収集なの、裏の能力組織は情報が集まりやすいからね…」
「情報収集…」
「えぇ、私たち魔術連合の目的達成のためにね…」
「目的?」
「えぇ、能力の撲滅、そして魔術の普及が目的よ。簡単でしょう」
黒の蝶の一員ではなく魔術連合の一員としての答えはとてもシンプルで子供の夢のような回答だった。
「さて、じゃあ黒の蝶の一員、シュバルツとしてあなたたちを狩りたかったけど、魔術連合の一員ヴァイセとしてあなたたちを殺す」
ヴァイセはそう言いながら一瞬で楓先輩との距離を詰める。
「っ…」
楓先輩は慌てて回避行動をとるが間に合わずヴァイセの拳を直にくらう。
「楓さん…」
ミカさんは慌てて剣でヴァイセを牽制し、楓先輩への追撃を防ぐ。
「楓さん、おそらく身体強化の術式を使ってます。気をつけてください」
「なるほどね。身体強化…じゃあ、私も新しい能力の使い方を試してみるわ…」
楓先輩はそう呟き全力で能力を解放する。楓先輩は自分の体内に電気を流し込む。電気を自身の神経に流し込み自身の反射性能を極限まで上げた。
「さて、ミカさんも後ろでサポートに回ってちょうだい」
「わかりました」
楓先輩の言葉を聞きミカさんは百合子先輩と同じ場所まで退がる。
そしてミカさんが退がったことを確認して楓先輩はヴァイセに向かって行く。
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