とある学園生活は制限付き能力とともに
初戦開始
ランキング戦初日、初日で最初の戦い、ゆき姉とダイナの戦いが今始まろうとしていた。
「ようやく始まるね」
僕の隣でランキング戦の生放送を見ている当夜先輩が呟く。今日僕と花実はガーディアンズの仕事があったので観戦は出来なかったのだが生放送では見ることができそうだ。何も事件が起きなければだけど……おっと、妙なフラグが立ちそうだからこれ以上はやめておこう。
今日のゆき姉とダイナの試合は生放送で中継されるので僕たちは第11番基地で見ることにした。現在第11番基地には僕と花実と当夜先輩の他に杏奈先生とミカさん、ティナちゃん、ヴィオラ先輩がいる。みんな巨大モニターに映されている映像に視線が釘付けだ。
「皆さまこんにちは、本日神峰学園ランキング戦の解説聞き手を努めます大海原水夏と申します」
ランキング戦の生放送には必ず聞き手と解説者がいてランキング戦の戦いをきちんと解説してくれる。
「さて、本日は神峰学園ランキング戦の初日ということですので特別ゲスト兼解説役をお迎えしました。去年のランキング戦4位、爆裂姫です」
「ふふふ、我を呼ぶとはいい目をしてますね」
「いえ、たまたま今日フリーの総合ランキング1桁の方が爆裂姫さまだけだったので…本来なら前哨戦で白雪姫と戦った完全模倣の使い手、晴樹さんをお呼びしようと思ったのですがガーディアンズの仕事があるみたいだったので…」
「何を!いや、我がそうなるように裏で細工をだな…」
をい!いろいろとツッコミどころ満載だな…ていうかこの人呼んじゃダメだろ。放送事故確定だな…
「えー、今回は初日の初戦ということなのでステージは自動的にノーマルステージになるんですよね?」
「うむ。そのとおりだ。ノーマルステージとは先の前哨戦で使用されたごく普通の障害物等が何もないステージだ。我がもっとも嫌いなステージでもあるな…」
「たしかに爆裂姫の能力の性質上障害物が何もないこのステージでは不利ですからね…」
意外なことにリンリン先輩は解説の仕事らしいことをきちんとしていた。
「さて、そろそろ試合開始事故ですのでモニターの切り替えをお願いします」
聞き手のお姉さんがそういうと解説側のモニターが画面の端に移動しランキング戦会場の映像がメインになる。
すでにゆき姉とダイナは会場入りしていた。
「ではここで今回の戦いがどのような展開になるのかを爆裂姫に予想していただきたいと思います」
「うむ。我が思うに白雪姫の方が有利だな…白雪姫は能力を上手く使いいろいろなところから攻撃を仕掛けてくる上にこのステージでは範囲攻撃も可能だ。それに比べてこの1年の能力は範囲攻撃ができるとはとても思えない上にこの見晴らしの良いステージでは能力での攻撃が予想されやすい。故に白雪姫が圧倒的な有利だろう」
「ちゃんと仕事をしていただけて助かりました。ぶっちゃけ解説が爆裂姫と聞いた時かなり不安だったんですよね…」
「ぶっちゃけすぎだろ!我も傷つくぞ…」
「さあ、まもなく試合が始まるみたいですね」
「無視するな!」
などというやりとりで視聴者のウケを取るリンリン先輩だった。
「時間になりました。神峰学園ランキング戦開始してください」
アナウンスが流れた瞬間、ダイナはゆき姉から距離を取り光の球体を4つ作り出した。
「ダイナちゃん、本気でやるけど恨まないでね」
ゆき姉はそう言いながら地面から大量の氷の柱を空目掛けて伸ばす。
「くっ…やばい…」
ダイナは慌てて球体2つを1つにして円盤状にする。そしてその上に飛び乗り宙を舞う。
「へえ、そんなこともできるんだ」
そう、僕も以前ダイナから聞いてとても驚いた。ダイナは自身のビームに触れることができる。無論、触れても怪我をしない。というかビームがダイナを受け付けないというべきなのだろうか。ビームは決してダイナを傷つけない、ダイナはビームの外側に触れることができても内部には触れることができないのだ。故にダイナがビームに乗ろうとすればビームに乗って宙を舞うことができる。
「なるほど、上手く自分の能力を扱えているな、だがその程度では白雪姫には届かない」
「と、言いますと?」
「白雪姫もその気になれば宙へ移動することくらい容易い」
解説のリンリン先輩がそう言って直後、ゆき姉は地面から大量の氷の柱を伸ばす。そしてそのうちの1本に飛び乗りダイナと同じ目線の高さになる。
「これは…空中に移動し白雪姫の攻撃範囲から外れたと思われたのですがまさか白雪姫が空中にまで追いかけてくるとは…」
聞き手の人がどうすれば白雪姫に勝てるのかが本気でわからないと言う表情をしていた。
「本当に厄介なのかしら…」
「ええ、あの高さならゆき姉がいくら氷の柱を伸ばそうとダイナに届くまで時間がかかる…それに比べてダイナのビームはすぐにゆき姉の元に到達する。ダイナが有利になったと思ったのに一瞬でその考えを破ってくれたな…」
ゆき姉の強さに驚愕しつつも僕は2人の戦いを見守る。
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