とある学園生活は制限付き能力とともに

りゅう

白雪姫の本気













前哨戦開始直後、僕はいきなり仕掛けようと能力を発動する。おそらくゆき姉も僕と同じ考えだったのだろう。僕とゆき姉は腕を大きく振り巨大な氷の柱を作り出した。

僕が作り出した氷の柱とゆき姉が作り出した氷の柱がぶつかり砕け散る。

「えっ……」

ゆき姉は僕の能力を見て驚いていたようだが僕はお構いなしに攻め続ける。僕はアシュリーさんが使っていた分身の能力を発動させる。

数百人に増えた僕はゆき姉の能力で小さめの氷をゆき姉目掛けて一斉に発射する。

「どんなとんでも能力持ってんのよ…あいつ…」

そう言いながらゆき姉はドーム状に氷を固めて氷のバリアを張る。僕が放った氷はゆき姉の氷のバリアに阻まれた。

「あの1年、白雪姫を圧倒してる?」
「白雪姫が負けるのか?」

などと呟く声が観客席から流れ込んできた。ちょうどその時、最初の1分が経過した。分身もあと20秒ほどで尽きてしまうだろう…このまま長期戦になれば勝ち目はない。いち早く決着をつけねないとな…

「めんどうだし一気にやっていいよね…」

ゆき姉はそう呟きながら数百人の僕の足元から氷の柱を伸ばした。まずい、と判断した僕は慌てて緑先輩のテレポートを使い上空へと離脱する。僕の分身は全て今の攻撃で消滅した。そして分身が使える時間も切れてしまった。

「空中に逃げたのは失敗…」

ゆき姉はそう言いながら空中にいる僕を氷で狙い撃ちするが、僕はテレポートを使いあっさりと躱す。

「本当に…どんな能力してんのよ…」

ゆき姉は大量の氷のつぶてを空中に向けて乱射する。僕はゆき姉の攻撃をテレポートで躱そうと思ったがここで一気に勝負を決めることにした。僕はミカさんの能力を使い10本の剣を作りその剣でゆき姉が放った氷のつぶてを全て防ぎそのままゆき姉を襲う。氷のつぶてを全て防いだ時テレポートの能力が切れた。

「本当に便利な能力ね…」

ゆき姉はそう呟きながら10本の剣全てを氷漬けにして氷の柱に変えた。僕は剣を動かそうとしたががっちりと固められていて動かせなかった。

「白雪姫が本気になった」
「ここからが本番だな…」
「今のところ1年が優勢だけどここからどうなるか…」

観客席からそんな声が聞こえてきた。僕はゆき姉の目を確認する。ゆき姉は能力を使いすぎると右目の色が水色から濃い青に変わる。これはゆき姉の周りの冷気が強くなりゆき姉の能力が強化された証…時間が経つと左目も変色すると言われているが今まで誰も左目の変色を見たことがなかった。今までゆき姉の右目の変色を見たものはその後すぐにゆき姉に敗北したからだ。

「私がこうなる前に倒して欲しかった…私が本調子になれば晴樹に勝ち目はないから…」

「へえ、じゃあ勝てるように足掻いてやるよ」

僕がそう言う頃には10本の氷の柱の中から剣は消えていた。能力が使えるのは残り7回分…自分の切り札となるsランクの能力はほとんど見せてしまったため2度めはあまり効果がないだろう…となると僕が今から使う能力はこれしかない…

僕は巫女さんの能力を使い僕が知っている式神を全て召喚した。僕の能力では制限までコピーされない…故に巫女さんの能力で一度に5体以上の式神を召喚することが可能だ。

僕が式神を召喚した瞬間、ゆき姉が僕目掛けて氷の柱を放つ。はやい!先程までとは比べ物にならない程にはやい…はやいが反射の式神と守護の式神の前ではスピードは無意味だ。僕は反射の式神と守護の式神でゆき姉の攻撃を防ぎ爆発の式神にお札を発射させる。

「このお札は…」

ゆき姉が周りに浮かぶお札を注意深く見つめる。

「爆弾か…」

ゆき姉がそう呟いた直後お札は爆発した。

「おお…」
「やったか…」
「白雪姫がついに」

おい観客ども、妙なフラグを立てるな……

「危なかった…気づくのが一瞬でも遅れたら負けてた…」

ゆき姉は爆発の直前、とっさに作った氷のドームを砕きながら言う。

「やっぱり防がれたか…」

「予想してたの?だったら次の手もちゃんと打たないと…」

そう呟いた瞬間気づいたらしい。僕がすでに次の手を打っていたことを…

「これは…」

「拘束の式神だよ」

ゆき姉は拘束の式神の鎖で縛り付けられた。

「詰みだ。ゆき姉、降参してくれると助かるんだけど…」

「詰み?私は詰んでないわよ…詰んだのはあなた…」

そう呟くゆき姉の左目は濃い青へと変色していた。

「白雪姫の左目が青に…」
「初めて見た…」

観客席がゆき姉の変化を見て一気に活気付く。これからが本番だと…これからどんな勝負が繰り広げられるのかという期待が観客席を包んだが…勝負は呆気なく終わった。白雪姫こと、白節雪の勝ちで…

「ゆき姉強すぎでしょ…」

戦いを終えて現実世界に戻って来た僕は呟く。僕はゆき姉に負けた。ゆき姉の両目が変色した瞬間、ゆき姉は一瞬で僕を氷に変えた。両目が変色したゆき姉は冷たすぎた。あれがバーチャルリアリティ空間で行われた戦闘でなければ周りにいた観客は全員凍死していただろう…その場にいた誰もがそう思うほどの冷気をゆき姉は纏っていた。



















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