とある学園生活は制限付き能力とともに
仇討ち
「アシュリー…アシュリー….…」
目の前に倒れるアシュリーさんの体を抱きしめながらミカさんは涙を流した。何が起こったのか…何故アシュリーさんが倒れたのか…そういったことを考える余裕はミカさんにはなかった。
「アシュリー….大丈夫?アシュリー….返事を……返事をして…」
アシュリーさんは返事をしない、ミカさんは少しずつ冷たくなっていくアシュリーさんの体を強く抱きしめる。アシュリーさんの体は少しあったかくなり再び冷たくなる。
「ふう…どうやらちゃんと死んだみたいだな。これで私は自由になれる」
3と書かれた男はアシュリーさんを見つめて言う。
「戦いの音がすると思ってきて見ればまさか我らナンバーズを捕らえていた元凶がいるとは…おまけに隙だらけでこっちに構ってる様子もなかった。お前には感謝をしよう。そいつの気を引いてくれていたのだからな…礼としてお前もそいつと一緒にあの世に行かせてやる」
「お前が……お前が…アシュリーを…アシュリーを…殺したの…か…」
ミカさんは震える声で男に尋ねる。
「ああ、そうだとも…我らの自由を奪うそいつを殺したのは私だ。我らの自由のためにな!」
「よくも…よくもアシュリーを…絶対に許さない……お前は絶対に私が殺す。この命に代えても…」
ミカさんはアシュリーさんを強く抱きしめて自身の後ろに置く。
「アシュリー…少しだけ待っててね…今、あなたの仇を討つから…」
ミカさんはアシュリーさんにそっと呟いて後ろを振り向く。流れる涙を拭き取り10本の剣を構える。
「あなたを倒す…全力で…」
ミカさんは全ての剣を敵に向ける。
「ほう、見た感じだとその浮いている剣を操る能力か…もしそうだとしたらなかなか手強そうだ。おまけに私の能力と相性は最悪のようだ。これはなかなか楽しめそうだな…」
男は笑みを浮かべてミカさんに言うがミカさんの耳に男の言葉は届かないミカさんの耳には聞こえないはずのアシュリーさんの声だけがずっと響いていた。
「無視か….まあいい、死ね」
男はミカさんに襲いかかる。ミカさんは無言で10本の剣を動かす。高速で飛び交う10本の剣がじわじわと男を追い詰めていく。
「くっ…」
男はポケットに入っていた拳銃を抜きミカさん目掛けて発射するがミカさんは10本の剣のうちの1本であっさりと銃弾を切る。
「やはり私の能力は全く効果がなさそうだな…厄介な….」
男の能力は銃の弾丸を絶対に外さない能力…男に狙われた者は成すすべなく男に撃ち抜かれる。だが、ミカさんは違う。弾丸がミカさんに到達する前に弾丸を切ってしまえば全く問題はない。故に男とミカさんの能力の相性ではミカさんが圧倒的に有利だ。
その証拠にミカさんは男と戦闘を始めてから1歩も動かずに男を追い詰めている。
「3分…あと3分で詰みよ…」
戦闘を始めてから初めてミカさんが口を開いた。ミカさんが男に向けて言った言葉は死の宣告…あと3分でお前を倒すと言う勝利宣言だった。
ミカさんの言葉を聞き男はイラつきながら銃を乱射する。ミカさんはそれを10本の剣で全て捌き銃ではミカさんを倒せないと男に悟らせる。銃が効かないとわかった男はポケットから短剣を取り出した。銃が効かないなら剣で…という単純な考えが男に死を味合わせた。
「強い……強すぎる……」
10本の剣に囲まれて逃げ道を失った男はそう呟き武器を捨てた。これから男がどうあがいても男に勝ち目はないと悟ったのだろう。それほどまでにミカさんと男の力の差は大きかった。
「私の負けだ…好きにしろ……」
男の言葉を聞きミカさんは男を殺すよりも先に男の捨てた短剣と銃を剣で破壊した。男を確実に仕留めるために武器を破壊する。かつてアシュリーさんがミカさんを襲った連中を容赦なく皆殺しにした時にしていたことをミカさんもした。これで男は何も抵抗できないだろう…だが、もしものことを考えて10本の剣のうち5本を自身の近くに呼び戻した。もし、何があっても対応できるようにと…
「最後に何かいい残すことは?」
ミカさんが男に尋ねる。男は黙って上を向いた。
「さようなら……」
ミカさんはそう呟きながら男の周りを舞う5本の剣を男に向けて放った。5本の剣が男を貫くと男はその場に倒れこんだ。
「アシュリー…やったよ…仇は討ったよ…」
ミカさんはそう言いながら能力を解除して10本の剣を消す。そしてアシュリーさんの体のもとに行き強く抱きしめた。
アシュリーさんの体は戦闘前よりも冷たくなっていた………
「ごめんね。アシュリー…あなたを守れなかった。私…これからどうすれば…私はアシュリーが…あなたがいないと何もできないのに……」
ミカさんがアシュリーさんを抱きしめて泣きながら言うがアシュリーさんから返事はなかった。
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