冒険者は最強職ですよ?

夏夜弘

それは突然の出来事で 14

『ジン! じっくりお話したいのはやまやまですが、今は相手との闘いに集中してください!』

「誰が邪魔してると思ってるんですか!? ……まぁわかりました。で、僕は何をすれば?」

『はい、ジンは私の加護を受けてます。それはこのオーラを纏うわせ、ステータスを向上させるものです! 今からやって貰うことは、一時的にですが、私のステータスをお貸しすると言うものです!』

「はぁ!? そんなのチートじゃないですか! その使用時間はどれくらいなんですか?」

『チートで何が悪いんですか! ジンの今のレベルだと、使用時間は一分です! その内に倒せるかが鍵になってきます』

「い、一分……」

 ジンは、一分であんな敵を倒せるのか……、と不安に思う。

 だが

『ジン! 倒せるか、倒せないかではないのです! 今やるかやらないかです! 先に倒せるかなんて考えていたらダメですよ!』

 一々頭の中の呟きを聞きやがって……変態め!

『変態じゃありません! 女神です!』

「わかりましたよ! で、その力はどんな風に使うんですか?」

『それは簡単です! オーラを纏いながら、更にその上からオーラを纏う感じに身体に力を入れるんです!』

「わかりました……やります」

 ジンは一度深呼吸をし、オーラを纏いながら、身体中に力を込める。

 すると、ジンの身体に力がなだれ込んでくる。今なら何でもできてしまうのではないかと、錯覚してしまうような力の溢れ方に、ジンは拳を握る。

『一分です! その間にあの魔王幹部を殺してください!』

「はいっ!」

 ジンは返事をしながら地面を蹴り、メルノド元へ一瞬で近寄る。

 目の前まで行くと、メルノドはそれに反応し、ジンを連続で殴る。
 その攻撃を、ジンはすべて防ぐ。

「遅く見える……これなら!」

 全ての攻撃を防いだ後、反撃に撃ってでる。

 まず顔面に強烈な殴打を入れ「これはダネットさんの分!」と言い、メルノドをぶっ飛ばす。

 メルノドは、体勢をすぐに直し、ジンの方へ向く。だが、ジンへ向き直した時には、ジンの攻撃が腹部へ直撃していた。

「これはレベッカさんの分!」

 ジンの攻撃に、メルノドは血を吐き出す。

 ジンはそのまま、限られた制限時間いっぱいにメルノドわ殴り続ける。

 メルノドは為す術なく、ただ殴られ続ける。

『残り三十秒です! このまま押し切ってください!』

「わかりました!」

 言われたとおりに、ジンはひたすら殴り続ける。

 この時、メルノドが「ふんっ……お前とたたかえて……良かった……」と呟やいた事を、ジンは知らなかった。

『残り十、九……』

 女神がカウントを続けている間も、ただただ殴り続け、制限時間終了となる。

『お貸し出来るのはここまでです!』

 そう女神が言った瞬間に、ジンの身体から力が抜けていく。

「ック……反動がデカすぎる……」

 更にオーラも解けてしまい、その場に膝をつく。

『やはり反動がでかいですか……正直な所、この土壇場でこの力を使えるレベルに達してくれた事は奇跡なんです。ジンは本当にすごいです』

「いえいえ、女神様の力が無ければここまではなれませんでしたよ。この力が無かったらきっと、ただの最弱の冒険者ライフを送ってましたよ。きっと」

『ふふ……お世辞が上手いですね!』

 機嫌が良いなぁ……なんでだ?

『さぁ? なんででしょう?』

「だから心の声を聞くな!」

 この時女神の私が笑顔だったことは、ジンにはひみつですよ?

 メルノドは、倒れたまま動かず、暫くするとメルノドの身体中から、光の泡の様な物が現れる。

「あの光の泡は……」

『あれはこの世から去る時に現れる物です。魔力の強いモンスターや、魔王幹部達は、ああやって消えていくんですよ』

「へぇ……それにしても、こんな感じの魔王幹部がまだごろごろ居ると思うと……骨が折れますね」

『えぇ。まだたくさんいますよ! だから、私の力を使って、ジン、貴方がやり遂げるのです! それが私の願いなのです』

「なぜ女神様はそんなにも魔王達を倒したがるのです?」

『それは……おっと。もうそろそろ時間の様です。その事は、夢の中ででも喋り合いましょう。今日は本当にお疲れ様でした……頼りにしてますよ……』

「あぁ! まだ聞いて……逃げるのも上手いのか? ……ま、いいか……もう……俺も限界……」

 そしてジンは、その場に静かに倒れた。

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