本日は性転ナリ。

漆湯講義

183.夏のサクラ

『……あっ。』

すぐ下の立体駐車場の屋上に浮かび上がる一本の桜。

綺麗に咲き揃った薄紅色の花たちが眩い光に輝き風に揺れている。

「どう?お花見しないッ??」

レイちゃんは瞳を潤わせながら、ただただ闇に浮かぶ桜を見つめている。
そして喉の奥から絞り出すように小さな声を震わせながら答えた。

『ウンッ…』

私たちはテーブルを窓際に移動し、その上に飲み物や食べ物を並べる。勿論、先生の許可を得て。

予め用意しておいた飾りをセッティングすると、ささやかな宴が幕を開けた。

「それでは、季節外れのお花見を開始したいと思いマスッ♪」

『それじゃぁ嶺さんっ、一言お願いしまーす♪』

『ぅぐッ…今日は本当に…ぁりがとぅ…私、絶対忘れませんッ…』

本当に良かった…涙ながらに笑顔をつくる。

『それじゃぁ…乾杯ッ♪』

夜桜を背景に写真を撮った。それからたくさん話をした。いっぱい笑って喋って、ここが病院なんて事忘れてしまうくらい楽しいひと時を過ごした。

そして楽しい宴も終わりを告げる。

『そろそろ時間的にライトアップもできなくなるわね…』
時計を見つめるアヤちゃんが寂しげに言った。

『最後にもう一度写真撮ろっか♪』

「『ハイっ、チーズッ♪』」





『ホントに…ありがと。まさかお花見できるなんて…夢みたいだったなぁ…』

「夢は叶えるモノっ、でしょ♪だから今度は沢山桜が見れるトコにさ♪」

『ウンッ♪みんなで行くッ♪』

『なんかレイちゃん元気になったんじゃない??』

『私も思った♪』

『なんかね。さっきより身体のだるさとか息苦しさが無いんだッ♪ゼンブ姉ちゃん達のおかげだよっ♪』

レイちゃんはそう言って満面の笑みでピースして見せた。





「本日は性転ナリ。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く