本日は性転ナリ。

漆湯講義

167.考える


『稚華さん大丈夫かなぁ…』

莉結が心配そうに呟く。
「たった1人の家族だもん。」

『私も…"あの時"は本当に信じられなくて全部嫌になって…だけど"瑠衣"とお婆ちゃんが居てくれたから頑張れたんだ。』
あの時…莉結の両親が亡くなった日。あの日から私は莉結の笑顔を取り戻すために必死だったんだ。
母さんが働き詰めで殆ど1人で過ごしていた私の心の支えになっていたのも莉結だった。
「私たちも稚華さんの心の支えになってあげなきゃだね。」
莉結は静かに微笑んで頷くと、ぐっと天井へと腕を伸ばし『今日はなんか疲れたね。お風呂入って寝よっか。』そう言って莉結はゆっくりと部屋を出て行く。
私は、閉じたドアをぼーっと見つめ、稚華さんに何をしてあげられるのかを考えた。
レイちゃんの為にも稚華さんには"普段通り"の時間を共に過ごしてあげて欲しいな…
だけどもし大切なヒトがレイちゃんのような状態になったら…

私にとっての大切なヒトって誰だろう。
母さん?…それは勿論だけど。答えはわかってる。私の1番大切なヒト…


『衣瑠ッ、起きて。お風呂いいよ。』
その声に瞼を開けると、濡れた髪にタオルを掛けた莉結が私を覗き込んでいた。
いつのまにか寝ちゃってたのか…
「ごめんッ、私もお風呂借りるね♪」
そう言って私は風呂場へ向かい、服を脱ぎ捨てる。
ふと横を見ると洗面所のラックの上には莉結のジャージが置かれていた。
そういえば着替えのコト考えてなかったな…って、エッ!!!?
綺麗に畳まれたジャージの間に何かが見える。
ツヤツヤした材質の薄い布…って!!
私は急いで莉結の部屋のドアを開けた。



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