本日は性転ナリ。

漆湯講義

154.伝わる。


『衣瑠はそれで後悔しないんだね?』

真剣な2つの眼差しが私をしっかりと見つめて言った。

「うん。もう決めたから。それでいい。」

莉結の表情が柔らかいものになる。

すると莉結の手がゆっくりと私の手を包み込んだ。

莉結の体温がじわじわと私の手に移っていくのが分かる。

思わず私も莉結の手にもう1つの手を重ねた。

心臓の鼓動と共に体温が急上昇していく。

ふと気がつくと莉結と目が合っていた。いや、見つめ合ってしまっていたのだ。

心臓の鼓動はレッドゾーンに突入してオーバーヒート寸前だった。

すると莉結の目が優しく笑った。

『わかった。じゃぁこれからどうしよっか。』
危ないトコだった…私は何やってんだッ…

あくまで冷静に、いつも通りに返答する。
「え?どうしよっかって?」

『だって今までは"瑠衣の双子の妹"としてなんとか誤魔化してきたけど、これからはそうも行かなくなっちゃうんじゃないの?』

「そか…そこまで考えてなかった…」

『まぁそこらへんはお母さんと相談しなきゃだね。』

これで本当に"瑠衣"という存在が消えてしまう…そんな寂しい気持ちが私を襲う。
だが、それを乗り越えてこそ踏み出せる一歩は、記録に残るどんな偉大な功績よりも"私にとっては"素晴らしいものになるんだ。

「うん…そうだッ、まずは先生に連絡しなきゃな…」


その日の夕方、莉結と再び病院へとやってきた。
先生は、ちょうど休憩に入るとの事で屋上で待ち合わせをする事になった。

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