本日は性転ナリ。

漆湯講義

113.まったりと。

『お菓子持ってきたよーん♪』

嬉しそうに部屋に戻った莉結にお婆ちゃんが一言。

『莉結は最近は合気もやりゃーせんでお菓子ばっか食べてみっともない身体にはならんよーに!爺様が生きとったらどん叱られてるとこだに…あと、せっかくだで瑠衣ちゃんは今日泊まってきゃいいでね。』

お婆ちゃんて莉結の事が本当に可愛いんだろうな。

そんなお婆ちゃんの本心を知っていると、今の一言もただの照れ隠しのように感じてしまって、つい笑ってしまう。

『ちょっと何笑ってんのぉ?』

眉をあげ、ふくれっ面の莉結がこちらを見ている。

「私って幸せだね♪」

こんないい人たちに囲まれて、今のこの何でもない日常が幸せなんだと感じた。

それを聞いた莉結が、異界の言語を聞いたかのような顔をして首を傾げた。

「これからもずっとよろしくね♪」

立て続けに発せられた"異界の言語"に首はさらに傾げられ、半ば呆れたような表情にすら見える。

『急にどしたの?』

「わかんない♪なんとなーく頭に浮かんだ言葉を並べてみました♪」

莉結の眉間にシワが寄る。

『はぁ?わけわかんなーい…』



それから何をするわけでもなく、漫画を読んだり携帯の動画を見たりした。窓の外は黄金色からサファイアへと移り変わり、青乳白色へと変わると、お婆ちゃんの温かい声が聞こえた。
晩御飯をご馳走になり、部屋に戻ってテレビを見て笑って…どうでもいいような話題で盛り上がったりした。
窓の外はすっかりダークブルーのカーテンに覆われている。

『ねぇ!見て!満月だよ!』

その指の先には、眩いばかりに白く輝く満月が見えた。

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